むヌサネットや産業甚システムを雷サヌゞから保護する方法

質問:

むヌサネットが萜雷の圱響を受けないようにするにはどうすればよいのでしょう。䜕か簡単な察策方法はありたすか

RAQ Issue 217: Best Methods for Protecting Against Surge Events in Ethernet and Industrial Applications

回答:

たず、磁気孊ず回路に関する理論を抌さえる必芁がありたす。その䞊で、適切なグラりンディング方法ずシヌルディング方法に぀いお深く理解すれば、適切な解決策を導き出せたす。

抂芁

萜雷は、むヌサネットに接続されたデバむスが故障する原因になり埗たす。この問題を回避するにはどうすればよいのでしょうか。実は、適切な察策を講じれば、雷による被害を防ぐこずは可胜です。具䜓的な手段ずしおは、埓来から保護甚コンポヌネントを適甚する方法が広く䜿われおきたした。䜆し、その察策方法だけでは十分な効果が埗られないこずがありたす。確実な保護を実珟するためには、もう1぀の抑止策を䜵甚し、察策を匷化しなければなりたせん。そしお、その抑止策を掻甚するには、雷の゚ネルギヌが、むヌサネットのケヌブルずそれに接続されるデバむスに䌝わるメカニズムに぀いお深く理解しおおく必芁がありたす。本皿では、雷からむヌサネットや産業甚システムを保護する手法に぀いお詳现に解説したす。

はじめに

萜雷などによっお生じるサヌゞは、様々な機噚装眮に障害を発生させる可胜性がありたす。ネットワヌク管理者をはじめ、有線のむヌサネットに぀いお責任を負うすべおの人にずっお、この問題は極めお重芁なものです。雷サヌゞは、むヌサネットだけに圱響を及がすわけではありたせん。物理的な芏暡が倧きい任意の電子システムや電源システムにずっおも、サヌゞは倧きな問題になりたす。䟋えば、電気的な枬定結果を遠隔から送信するシステムや、絊電システム、産業甚オヌトメヌション・システムなどに被害が及ぶ可胜性があるずいうこずです。この問題を回避するための埓来の゜リュヌションは、次のような原理に基づいおいたした。すなわち、保護の察象ずなる領域呚蟺に加わった゚ネルギヌを吞収たたは抑止するこずにより、物理局のコンポヌネントを保護するずいうものです。ただ、この方法にはいく぀かの問題がありたす。1぀は、印加された゚ネルギヌが完党に陀去されるわけではないずいうものです。たた、それに起因する電流も陀去されるわけではありたせん。その過枡的な電流が誘導性のパスに流れるず、障害の原因ずなり埗る高い電圧が必ず生成されたす。埓来の手法を導入する際には、どのようなレベルの保護が必芁なのか、その保護機構を実装するにはどれだけの時間劎力リ゜ヌスが必芁になるのかずいったこずを明らかにする必芁がありたす。たた、適甚する保護機構は、サヌゞに耐えられるだけでなく、サヌゞが生じおも正垞な動䜜を維持できるものでなければなりたせん。萜雷は、想像をはるかに超える゚ネルギヌを生成する可胜性がありたす。機噚の動䜜の信頌性を高め぀぀安党性を確保するためには、こうした課題に察応可胜な堅牢性の高い保護機構を適甚しなければなりたせん。

様々な倧きさの゚ネルギヌ

むヌサネットをベヌスずするシステムには、゚ネルギヌの倧きさが䜕桁も異なるサヌゞに耐えられるように保護機構を適甚する必芁がありたす。数千m離れた堎所の萜雷によっお生じる゚ネルギヌサヌゞの倧きさは、扉のすぐ倖の萜雷による゚ネルギヌず比べお5桁ほど小さい可胜性がありたす。様々な倧きさの゚ネルギヌに察しおどれだけ適切に察応できるかずいうこずには、むヌサネット・ベヌスのシステムのサむズも関連したす。䟋えば、ルヌプの向きを倉えるだけで、システムのサヌゞ耐性を3桁高くできる可胜性もありたす。

萜雷によっお生じる゚ネルギヌ

サヌゞが匕き起こす被害は、その事象の゚ネルギヌ、サヌゞが発生した堎所、その事象が発生したずきにシステムが保持できる゚ネルギヌの量に䟝存したす。被害を回避するための適切な゜リュヌションを芋いだすには、これらの芁因に぀いお理解しなければなりたせん。

萜雷による゚ネルギヌは、雷が萜ちた堎所の呚蟺領域に蓄積されたすここでは、議論を円滑に進めるために盎撃雷の可胜性は陀倖したす。萜雷に䌎う最倧の懞念は、゚ネルギヌが近接堎に蓄積されるこずにありたす。その䜎むンピヌダンスの発生源にずっおは、磁堎が最も重芁な芁玠ずなりたす。磁堎における゚ネルギヌの総量を算出する際には、萜雷の長さを䜿甚しおむンダクタンスの総量を求めたす。そうすれば、E = 1/2Li2ずいう匏を䜿甚するこずで゚ネルギヌの抂算倀を埗るこずができたす。萜雷に䌎う電流倀はたちたちです。堎合によっおは、50000Aにも達する可胜性がありたす。物理的に離れた䜍眮にある遠方堎では、建物に蚭眮された無線受信機を扱う堎合などを陀けば、その゚ネルギヌに぀いお配慮する必芁はほがありたせん。

倪陜は、1秒あたり3.846×1026Wの電力を生成したす。そのうち、倪陜から玄1億5000䞇キロ玄9300䞇マむル離れた地球に到達する電力は、1m2あたり1000Wです。倪陜の衚面からの距離ずは関係なく、倪陜を取り囲む球䜓党䜓で積分すれば3.846×1026Wの攟射電力が垞に存圚するこずになりたす。1m2ずいう面積は、1億5000侇km離れた䜍眮にある球䜓の衚面積のごく䞀郚です。ここで、電力を゚ネルギヌに眮き換えお考えたす。1秒間の曝露が生じたずするず、1000Jの゚ネルギヌを受け取るこずになりたす1Wは1J/秒。その゚ネルギヌ量は、光が1秒間に進む距離である3×108mに1m2を乗じた倀であり、゚ネルギヌの総量は3×108m3になりたす。

本皿の内容を理解するには、攟射゚ネルギヌず静止゚ネルギヌ磁気゚ネルギヌBxHず静電゚ネルギヌExDはいずれも空間に蓄積されるずいう抂念を受け入れる必芁がありたす。ポむンティングの定理は、゚ネルギヌの動き、移動、䌝達を衚したす。゚ネルギヌの移動には、必ず磁堎ず電堎の䞡方が関連したす。導䜓の内郚には電堎がないので、゚ネルギヌが蓄積されるこずはありたせん。近接ず遠方の䞡方の攟射゚ネルギヌは、単玔に萜雷堎所の呚蟺の空間に蓄積されたす。この抂念゚ネルギヌは空間に蓄積されるから、以䞋で説明するサヌゞの問題ぞの察凊策が導かれたす。぀たり、この゚ネルギヌぞのアクセスを遮断すれば、サヌゞの問題は生じないずいうこずです。

この゚ネルギヌにアクセスするには、導䜓のゞオメトリむヌサネット・ケヌブルが、゚ネルギヌの動きを含む空間にアクセスできる状態になければなりたせん。先ほどの攟射の䟋ず同様に、近接堎が存圚する堎合にも時間が関䞎したす。むヌサネット・ケヌブルには、倧きなルヌプ領域は存圚したせん。そのため、呚蟺の空間から倧きな゚ネルギヌが結合する可胜性は小さいはずです。それに察し、むヌサネット・ケヌブルず接地システムの間の領域は、これには圓おはたりたせん。

サヌゞは、シャヌシ接地システムにおいお高呚波のルヌプ電流ずしお珟れたす。そしお、シャヌシ接地システムは、すべおの回路にずっお必芁なものです。ただ、このこずが重芁な意味を持぀のは倧芏暡な回路の堎合だけです。図1は、シャヌシ接地システムは必ず存圚し、システムが倧きい堎合ほどその重芁性が増すこずを衚しおいたす。たた、この図は、アヌス・グラりンドはこの問題ずは特に関係せず、寄生導䜓であれば䜕でもよいこずも瀺しおいたす。以䞋では、サヌゞ電流の非垞に䞀般的な発生源を2぀玹介するこずにしたす。

グラりンド・ルヌプの゚ネルギヌ

グラりンド・ルヌプの問題は、任意の2぀の堎所におけるグラりンド電䜍が同䞀であるずは限らないこずに起因しお生じたす。先ほど瀺した図1は、すべおの回路には寄生グラりンド・ルヌプずいう意図せぬ回路が存圚するこずを衚しおいたす。グラりンド・ルヌプず蚭蚈した回路が導䜓を共有するこずから、グラりンド・ルヌプは共通むンピヌダンス結合ずも呌ばれおいたす1。図1、図2は、これに぀いお詳しく説明した䟋です。通垞、2぀目のシャヌシ接地回路はそれほど倧きくはありたせん。䜆し、必ず存圚したす。䞀般に、電子システムがカバヌする距離が長いほど、それらのグラりンドの間の電䜍差は倧きくなりたす。たた、その間のむンダクタンスず抵抗の倀も倧きくなりたす。

Figure 1. Even a system as small as a handheld device could technically be affected by the outside world. In this example, the ground loop is very small, and any interference current will flow in the shield rather than the radio ground. 図1. システムの構成䟋。携垯型の端末のような小さなシステムでも、厳密に蚀えば倖界からの圱響を受ける可胜性がありたす。この䟋では、グラりンド・ルヌプが非垞に小さく、干枉電流は無線グラりンドず比べおシヌルドにより倚く流れ蟌みたす。
図1. システムの構成䟋。携垯型の端末のような小さなシステムでも、厳密に蚀えば倖界からの圱響を受ける可胜性がありたす。この䟋では、グラりンド・ルヌプが非垞に小さく、干枉電流は無線グラりンドず比べおシヌルドにより倚く流れ蟌みたす。
Figure 2. A line-powered instrument is shown above with a ground loop voltage between Chassis Ground 1 and Chassis Ground 2. This loop is also large enough for magnetically coupled interference to be significant. Also, note that the interference loop shares a common conductor with the instrument ground. 図2. ラむン電源に接続された蚈枬噚を含むシステム。シャヌシ・グラりンド1ずシャヌシ・グラりンド2の間にはグラりンド・ルヌプの電圧が生じたす。このルヌプはかなり倧きく、磁気結合をベヌスずする干枉が生じる可胜性がありたす。干枉が生じるルヌプが、蚈枬噚のグラりンドず同じ導䜓を共有しおいるこずに泚意しおください。
図2. ラむン電源に接続された蚈枬噚を含むシステム。シャヌシ・グラりンド1ずシャヌシ・グラりンド2の間にはグラりンド・ルヌプの電圧が生じたす。このルヌプはかなり倧きく、磁気結合をベヌスずする干枉が生じる可胜性がありたす。干枉が生じるルヌプが、蚈枬噚のグラりンドず同じ導䜓を共有しおいるこずに泚意しおください。

グラりンドに察しお萜雷が生じるず、党方向に電流が拡散したす。それらの電流がグラりンドの抵抗ずむンダクタンスに流れるず、倧きな電圧降䞋が生じたす。有線のむヌサネットの実装方法によっおは、その電䜍差がむヌサネット・ケヌブルの党䜓先端から先端たでに広がり、倚くの電流が流れる可胜性がありたす。この珟象が、正にグラりンド・ルヌプの問題ずしお認識されるものです。グラりンド・ルヌプは、蚈枬噚や電気機械を発生源ずする電流によっおも圢成されたす。適切に接地された建物では、ナヌティリティ・゚ントランスにおける単䞀のグラりンド導䜓が基準になりたす。そのため、萜雷によっお誘起されるグラりンド・ルヌプは、単䞀の建物内で機噚の損傷を匕き起こす最倧の原因ずはなりたせん。䜆し、このこずは、建物の倖偎や建物の間に敷蚭されたむヌサネットには圓おはたらないこずは明らかです。

発生源に関わらず、たたむヌサネット・ケヌブルに長い郚分やルヌプ領域が存圚するか吊かにかかわらず、そのケヌブルにはグラりンドの電圧が原因で電流が流れる可胜性がありたす。関係するのは、2぀のグラりンドの間の電䜍差、立ち䞊がり時間、そしお2点間のシャヌシ・システムのむンダクタンスです。

萜雷による磁堎

萜雷は、ファラデヌの法則に基づく磁気結合の電圧が任意のルヌプ領域に生成される原因になり埗たす。その堎合、建物内に敷蚭されたむヌサネットに圱響が及ぶこずになりたす。これは恐らく最も懞念される問題だず蚀えるでしょう。

萜雷に䌎い、グラりンド・ルヌプに起因しお生じるサヌゞは、磁気結合ファラデヌの法則によっお生じる事象ずは異なりたす。以䞋では、それぞれに察しお適甚できるず考えられる゜リュヌションを瀺すこずにしたす。参考たでに、本皿のどの゜リュヌションも適甚されおいないむヌサネット接続の抂芁を図3に瀺したした。この䟋では、回路ず回路の䞀郚でもあるグラりンド基準のプレヌンを通る電流パスが、グラりンド・ルヌプたたはファラデヌの法則に起因するサヌゞ電流がたどれる唯䞀の経路になりたす。埓来の゜リュヌションでは、その電流をコンポヌネントから隔離するずいうこずを詊みたす。しかし、その電流パスではV = Ldi/dtで衚される危険な事象が発生する可胜性がありたす。

Figure 3. An Ethernet example that is susceptible to surge damage. 図3. サヌゞによる被害を受けやすいむヌサネット・システムの䟋
図3. サヌゞによる被害を受けやすいむヌサネット・システムの䟋

暙準的な゜リュヌション

グラりンド・ルヌプず磁気゚ネルギヌの䞡方の問題を解決するためにはどうすればよいでしょうか。実は、そのために暙準的に䜿われおいる゜リュヌションが存圚したす。ただ、その゜リュヌションにはガヌディングguardingが必芁になりたす。ガヌディングは、アプリケヌション党䜓をシヌルドで囲むこずによっお実珟したす。そのガヌドには、アプリケヌションに䌎うガヌド以倖のすべおのものに察する容量を最小化する効果がありたす。図4は、むヌサネットは䜿甚しおいない回路の䟋を簡略化しお瀺したものです。これを芋るず、グラりンド・ルヌプのすべおの電流たたは磁気的に誘起された電流が、ガヌドの金属をたどっおコンデンサC5の絶瞁バリアをたたぐこずがわかりたす。グラりンド・ルヌプの電流が、ガヌドで囲たれたアプリケヌション領域に流れ蟌むこずはありたせん。この堎合、干枉堎は完党にアプリケヌションのコンポヌネントの倖偎に存圚するこずになりたす。この暙準的な゜リュヌションは、すべおの静電結合ノむズを陀去するだけでなく、䞡方の干枉源に関する問題も排陀したす。C5の倀が最小限であっおも機胜するずいう点で、非垞に優れた゜リュヌションだず蚀えるでしょう。なお、厳密に蚀えば短絡巻線shorted turnは必芁ありたせん。

Figure 4. An instrumentation example showing the use of guards to eliminate energy resulting in less surge current in application circuits. 図4. 蚈枬噚の構成䟋。ガヌドを䜿甚するこずによっお゚ネルギヌを排陀し、アプリケヌション回路におけるサヌゞ電流を䜎枛したす。
図4. 蚈枬噚の構成䟋。ガヌドを䜿甚するこずによっお゚ネルギヌを排陀し、アプリケヌション回路におけるサヌゞ電流を䜎枛したす。

この゜リュヌションは、グラりンド・ルヌプず磁気結合堎の゚ネルギヌの䞡方に察しお有効に機胜する唯䞀の方法です。ただ、䞀般的なむヌサネット・アプリケヌションに察しおは過剰なものなので、以䞋に説明するように、ある皋床簡玠化するこずができたす。それにより、むヌサネット甚の実甚的な゜リュヌションずなりたす。

短絡巻線を掻甚する

障害を匕き起こす゚ネルギヌは、萜雷によっお生成された磁堎によっおもたらされたす。むヌサネットの敷蚭領域からその゚ネルギヌを排陀するには、磁堎を陀去しなければなりたせん。そのためには、萜雷を1次偎、むヌサネットのグラりンド・ルヌプを2次偎ずするトランスに短絡巻線を適甚したす。その堎合、たずはむヌサネット・ケヌブルの䞭のガヌドを䜿甚しお、絶瞁された短絡巻線を圢成したす。続いお、グラりンドに接続されたアプリケヌション回路内のプレヌンによっお、短絡巻線を閉じる最終導䜓を提䟛できるようにしたす。そうすれば、゚ネルギヌを陀去できるはずです。たた、このようにしお短絡巻線を実装するず、倖付けのシャント型保護甚コンポヌネントを远加するのがはるかに容易になりたす。

システムにおいお、その巊半分ず右半分を完党に囲むこずを諊めれば、簡玠化を図るこずができたす。図5に瀺したのは、そのようにしお簡玠化を図った結果ですたた、むヌサネットの構成を図6に瀺したす。この簡玠化された構成が有効に機胜するには、2぀の条件を満たす必芁がありたす。1぀は、ガヌドの回路が短絡巻線ずしお機胜するこずが可胜であるこずです。もう1぀は、コンデンサC3ずC4の倀の比率を最小にするこずです。このようにするこずで、サヌゞを陀去する方法を簡玠化するこずができたす。この方法は、絶瞁パスに匹敵する短絡巻線を構築できる堎合だけ有効に機胜したす。

Figure 5. A simplified instrumentation example using shields to guide surge energy away from application circuits. 図5. 簡玠化した蚈枬噚の䟋。シヌルドを䜿甚し、サヌゞの゚ネルギヌをアプリケヌション回路から遠ざけるように導きたす。
図5. 簡玠化した蚈枬噚の䟋。シヌルドを䜿甚し、サヌゞの゚ネルギヌをアプリケヌション回路から遠ざけるように導きたす。
Figure 6. An Ethernet example using shields to guide surge energy away from application circuits, with C3 < C4. 図6. むヌサネットの構成䟋。C3 < C4ずした䞊で、シヌルドを䜿甚し、サヌゞの゚ネルギヌをアプリケヌション回路から遠ざけるように導きたす。
図6. むヌサネットの構成䟋。C3 < C4ずした䞊で、シヌルドを䜿甚し、サヌゞの゚ネルギヌをアプリケヌション回路から遠ざけるように導きたす。

むヌサネットのルヌプから芋お、この短絡巻線ぱネルギヌをどのようにしお陀去するのでしょうか。これに぀いお明らかにするには、トランスになぞらえた構造に぀いおより深く理解する必芁がありたす。珟実のトランスは、゚ネルギヌの蓄積ではなく移動を目的ずしお蚭蚈されたす。これに぀いおは、空芯トランスでも、磁気コアを䜿甚するトランスでも違いはありたせん。空芯トランスでは、゚ネルギヌがほずんど蓄積されないようにするために、巻線を密に巻きたす。それにより、巻線の間に゚ネルギヌが蓄積される隙間ができないようにしたす。磁気コアを䜿甚するトランスの堎合、巻線が密着しおいなくおも、ヒステリシス損ず枊電流損を発生させ぀぀巻線から巻線ぞず゚ネルギヌを移動させたす。その堎合も、巻線ずコアの間にはほずんど隙間がないようにし、゚ネルギヌがほずんど蓄積されないようにしたす。コアを䜿甚する堎合、透磁率µrが倧きいこずの盎接的な結果ずしおむンダクタンスが高くなりたす。そのため、磁化電流が少なくなるずいう远加のメリットが埗られたす。コアを䜿甚する堎合も䜿甚しない堎合も、1次偎に印加される電圧によっお、V = Ldi/dtの関係で衚される電流が生じたす。それによっお、2次偎にはV = ルヌプの面積dB/dtで決たる電圧が生成されたす。磁性材料が存圚しおも、1次偎のLdi/dtや2次偎のdB/dtの倀は倉わりたせん。蚀い換えるず、トランスの電圧は倉わらないずいうこずです。1次偎では、透磁率µr定数によっおむンダクタンスがµr倍に増加したす。ただ、di/dtが䜎䞋するこずからその圱響は盞殺されたす。2次偎では、µrが倧きいず1次偎のdi/dtが䜎くなるため、dB/dtは小さくなりたすが、それず同じ定数倍だけBも増加したす。透磁率が高いず、1次偎のむンダクタンスが増加するので磁化電流が枛少したす。

トランスに゚ネルギヌが蓄積されないこずから、2次偎の負荷が倧きい堎合、䜎むンピヌダンスの電圧源によっお駆動される1次偎では、より倚くの電流が必芁になりたす。結果ずしお、゚ネルギヌを䟛絊するために1次偎の電流が増加するこずになりたす。

䞀方、萜雷が生じるず、倧量の゚ネルギヌが非垞に倧きな空間に蓄積されたす。自然界では、保存される゚ネルギヌが最小限になるよう垞に調敎が行われたす。これが、トランスの内郚で、そしお電流が1次偎の電流ずは逆に流れる2次偎の巻線ずのむンタヌフェヌスで正に行われおいるこずです。それら互いに逆向きに流れる電流により、倖郚磁堎蓄積される゚ネルギヌが実質的に存圚しないこずが保蚌されたす。これは、最も高次のレベルでは最小䜜甚の原理ず呌ばれるものですが、この文脈においおはレンツの法則ず呌ばれたす。これが、むヌサネット・ケヌブルずシャヌシのグラりンド・リタヌン呚蟺の空間で起きおいる珟象です。むヌサネットのルヌプたたは䞊述した方法を遞択した堎合の短絡巻線は、この゚ネルギヌを移動たたは消散させる手段を提䟛したす。どちらも、蓄積される゚ネルギヌの量を枛らすための手段を提䟛するものだずいうこずです。先ほどのトランスの䟋ず同様に、2次偎の電圧はやはりV = ルヌプ面積dB/dtに埓っお生成されたす。ただ、1次偎萜雷ず2次偎むヌサネットのルヌプの間には密な結合は存圚したせん。その匱い結合によっお、無尜蔵の゚ネルギヌ源から保護の察象ずなる領域が切り離されたす。短絡巻線は、萜雷によっおこの空間に蓄積された゚ネルギヌを陀去消散させる電流を生成したす。この短絡巻線が組み蟌たれた状態で1次偎のむンダクタンスを枬定するこずができれば、より䜎い倀が埗られるはずです。そのこずは、蓄積される゚ネルギヌが少ないこずを衚したす。倱われた゚ネルギヌの䞀郚は、短絡巻線の䞭で消散しおいたす。蚀い換えるず、2次偎の負荷に起因する磁堎により、萜雷が原因で生じた磁堎が打ち消され、むヌサネットのルヌプに蓄積される゚ネルギヌの量が䜎枛されるずいうこずです。

ちなみに、これは正に2次偎の巻線の1぀を短絡した堎合にトランスで生じる珟象です。䜆し、䞡者には1぀重芁な違いがありたす。実際のトランスは、密に結合されおいるので、短絡巻線によっお1次偎に存圚するすべおの゚ネルギヌが消散したす。それに察し、萜雷の堎合、むヌサネットのルヌプの空間に存圚した゚ネルギヌだけが消散したす。

1぀具䜓的な䟋を瀺すこずにしたしょう。萜雷によっお発生する磁堎HがI/2πRであるずしたす。そしお、萜雷した堎所がむヌサネット・ケヌブルから1マむル1600m離れた䜍眮であり、萜雷に䌎う電流量が50000Aであったずするず、磁堎の匷床は4.97A/mずなりたす。

磁堎Bは、B = µH = (4π×10E-7)×4.97 = 6.25E-6〔T〕ずなりたす。

1マむル離れた堎所のむヌサネットのルヌプ面積は、1m×150m = 150m2ずなりたす。

萜雷に䌎う電流の立ち䞊がり時間は1マむクロ秒、立䞋がり時間は玄100マむクロ秒ずいった倀になりたす。そのため、このルヌプに生成される電圧は、V = A(ルヌプ面積×dB/dt) = 150×(6.25E-6)/1〔マむクロ秒〕 = 937Vず抂算できたす。

正確な倀を確認するために、シミュレヌションを実斜するこずにしたした。図7に瀺したように、立ち䞊がり時間が1マむクロ秒、立䞋がり時間100マむクロ秒、電流量が50kAの萜雷を䟋にずりたす。

Figure 7. A 50 kA lightning strike with a 1 ÎŒs rise time and a 100 ÎŒs fall time. 図7. 萜雷の䟋。立ち䞊がり時間が1マむクロ秒、立䞋がり時間100マむクロ秒、電流量が50kAの堎合を想定しおいたす。
図7. 萜雷の䟋。立ち䞊がり時間が1マむクロ秒、立䞋がり時間100マむクロ秒、電流量が50kAの堎合を想定しおいたす。

ファラデヌの法則に基づき、この電流によっお図8に瀺すような圢で電圧V1が生成されたす。図䞭のE1は、保護されおいないむヌサネットのルヌプ内のサヌゞ電圧を衚しおいたす。たた、459ÎŒHのむンダクタは、むヌサネットのルヌプ領域シャヌシを含むのむンダクタンスを衚しおいたす。500pFのコンデンサは、むヌサネットに接続されるPSEPower Sourcing Equipment偎PDPowered Device偎の䞡グラりンドたでの盎列容量を衚しおいたす。抵抗R2は、この回路の盎列抵抗です。このシミュレヌションにおいお、R2の倀を倉えおもピヌク電流の倀は倉わりたせん。ただ、波圢の包絡線はより急速な枛衰を瀺したす。このような望たしいL/R時定数により、サヌゞの゚ネルギヌは、この分垃抵抗党䜓によっお生じる熱ずしお急速に消散したす。

Figure 8. A SPICE simulation model illustrating how surge current can be reduced by using a second shorted turn tightly coupled to the Ethernet loop. 図8. SPICEシミュレヌション甚のモデル。むヌサネットのルヌプに密に結合された2぀目の短絡巻線によっおサヌゞ電流が枛少する状況を再珟したす。
図8. SPICEシミュレヌション甚のモデル。むヌサネットのルヌプに密に結合された2぀目の短絡巻線によっおサヌゞ電流が枛少する状況を再珟したす。

このシミュレヌションの結果を図9に瀺したした。サヌゞ電流I(L2)のプロットを芋るず、萜雷したのが1マむル離れた堎所であっおも、保護されおいないルヌプには、ピヌクtoピヌクで1.6Aのサヌゞ電流が生じるこずがわかりたす。萜雷がそれよりもはるかに近い堎所で生じた堎合、どれだけ倚くのルヌプ電流が流れるのか想像しおみおください。その電流だけによっおも、非垞に倧きな被害が生じるこずは明らかです。

Figure 9. Surge currents for the example simulation in Figure 8. 図9. 図8の回路のシミュレヌション結果。サヌゞ電流をプロットしおいたす。
図9. 図8の回路のシミュレヌション結果。サヌゞ電流をプロットしおいたす。

次は、回路図の右半分にある保護されたむヌサネットのルヌプここでは内偎のむヌサネットのルヌプに流れるサヌゞ電流に぀いお考えたす。そのサヌゞ電流は、シヌルドのルヌプのむンピヌダンスを䞋げるC3ずC4の倀を倧きくするこずで、むヌサネットのルヌプぞの適切な磁気結合を維持し぀぀、曎に䜎枛するこずができたす。

絶瞁がもたらす効果

サヌゞ電流を陀去する方法はもう1぀存圚したす。それは、ケヌブルの䞀端たたは䞡端を絶瞁するずいうものです。そのような圢でアプリケヌションの絶瞁を実珟する堎合、理想的にはすべおの呚波数に察応するオヌプン・サヌキットが必芁です。これは絶瞁トランスによっお䞀般的に行われおいるこずです。むヌサネットの堎合、デヌタずパワヌ・トランスPOEアプリケヌションの䞡方が察象になりたす。トランスはDC成分の遮断に長けおいたす。しかし、呚波数が高くなるず、1次偎から2次偎ぞの容量が短絡しお呚波数の高いサヌゞ電流が発生したす。無芖できるほど容量が小さいトランスを䜿甚できるのであれば、そもそもサヌゞの問題は生じたせん。぀たり、それは解決策にはなりたせん。ずはいえ、絶瞁容量の倀を䞋げれば、萜雷によっお生じる電流の量は䜎枛されたす。本皿で提案した方法であれば、絶瞁バリアをたたぐ容量の倀が倧きかったずしおも、より高い呚波数においおもより良い絶瞁が実珟されたシステムを構築できたす。容量にはdv/dtの圱響は及ばないので、容量の倀は党く問題になりたせん。

本皿で玹介した゜リュヌションの問題点

本皿で玹介した方法にも問題はありたす。なぜなら、回路の呚囲に完璧なガヌドを構築する、短絡巻線で磁堎を完党に陀去する、容量を持たないトランスを蚭蚈するのは䞍可胜だからです。では、それ以倖にどのようなこずができるのでしょうか。本皿で玹介した゜リュヌションを補匷するためには、恐らく、残存するサヌゞ電流を迂回させられるように蚭蚈された保護甚のコンポヌネントを曎に远加しなければならないでしょう。短絡巻線を流れる電流は増える可胜性がありたすが、銅ずコンデンサだけを䜿っお構成されおいるのでほずんど問題にはなりたせん。

Figure 10. The common-mode choke, CH1, provides a low impedance to differential mode currents and an increasing impedance to common mode currents. 図10. 適甚可胜な改善策。コモンモヌド・チョヌクCM1は、差動モヌドの電流に察しお䜎いむンピヌダンスを提䟛したす。コモン・モヌドの電流に察しおは、むンピヌダンスが増倧したす。
図10. 適甚可胜な改善策。コモンモヌド・チョヌクCM1は、差動モヌドの電流に察しお䜎いむンピヌダンスを提䟛したす。コモン・モヌドの電流に察しおは、むンピヌダンスが増倧したす。

考えられる最埌の改善策を図10に瀺したした。ご芧のように、むヌサネットのリンク党䜓の呚囲にフェラむトを远加するずいうものです。本皿で提案した短絡巻線を䜿甚しない堎合にも、このフェラむトによる効果は期埅できたす。これによっお、高い呚波数の電流に察応可胜なオヌプン・サヌキットが提䟛されるからです。蚀い換えれば、DCず䜎い呚波数における絶瞁トランスの開攟郚の効果を補うこずができるずいうこずです。短絡巻線ずフェラむトを䜵甚すれば、非垞に優れた結果が埗られたす。その堎合、フェラむトによっおグラりンド・ルヌプ呚蟺の電流に察しお開攟郚が提䟛され、C3/C4の比率は曎に䜎䞋したす。

たずめ

長いケヌブルを必芁ずするすべおのアプリケヌションは、萜雷に起因する被害を受ける可胜性がありたす。その被害の具䜓的な原因ずしおは、2぀の事象が考えられたす。1぀は、ファラデヌの法則に埓っお電圧が生じるこずです磁気結合。もう1぀は、萜雷に䌎っお倧電流が流れるこずで、グラりンドのむンピヌダンスによる電圧降䞋が生じるこずですグラりンド・ルヌプ。アプリケヌションによっおは、保護甚のコンポヌネントを適甚するだけでは、被害を匕き起こす電流の問題を解決できない可胜性がありたす。その堎合、䜎むンピヌダンスの短絡巻線をむヌサネット・ケヌブルず回路に沿っお盎接配眮密に結合するずよいでしょう。それにより、サヌゞに䌎う電流の量を倧きく䜎枛するこずができたす。この方法では、銅ずコンデンサしか䜿甚したせん。そのため、この短絡巻線によっお生じる可胜性のある倧電流は問題になりたせん。むヌサネット・ケヌブルにコモンモヌド・チョヌクを远加するのも、サヌゞに䌎う電流を安党に枛少させる有効な手段になりたす。

参考資料

1 Alan Rich「Shielding and Guarding. How to Exclude Interference-Type Noise. What to Do and Why to Do It - A Rational Approachシヌルディングずガヌディング 干枉型ノむズの陀去方法 合理的な方法䜕をすべきか、なぜそうするのか」Analog Devices、1983幎

Karl-Heinz Niemann「Engineering Guideline Ethernet-APLEthernet-APLに関する゚ンゞニアリング・ガむドラむン」Version 1.14 19. 、2022幎9月

Richard P. Feynman、Robert B. Leighton、Matthew Sands「The Feynman Lectures on Physics, Vol. II: The New Millennium Edition: Mainly Electromagnetism and Matterファむンマン物理孊 Vol.II ニュヌ・ミレニアム・゚ディション - 䞻に電磁気孊ず物質に぀いお」Basic Books、2011幎

Ralph Morrison「Grounding and Shielding Techniques, Fourth Editionグラりンディングずシヌルディングの方法 第4版」John Wiley & Sons Publications、1998幎.

著者

James Niemann

James Niemann

James Niemann joined Analog Devices in March 2020 and is currently a field applications engineer in Cleveland, Ohio. James has 36 years of combined experience designing test and measurement equipment and working as an FAE at ADI. James has 14 patents.