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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CN0533-EBZ ($88.28) 4-20mA Wideband MEMs Vibration Sensor
在庫確認と購入

機能と利点

  • 10kHz MEMs振動センサー
  • 4mA~20mAの産業用出力
  • EVAL-XLMOUNT1取り付けキューブとの互換性

回路機能とその特長

状態基準保全(CbM)とは、様々なセンサーを使用して装置の経時的な動作状態を評価する予防メンテナンスの形態の 1 つです。収集されたセンサー・データはベースラインの傾向を明らかにするのに使用されるほか、診断や故障の予測にも役立ちます。従来の定期的な予防メンテナンス・モデルとは異なり、CbM を利用することで必要に応じてメンテナンスが実施されるため、時間とコストの両方を削減できます。

一般的な CbM 計測として、振動モニタリングが挙げられます。多くの場合、振動トレンドの変化は、摩耗などの故障モードを示しています。振動データを計測するには、高帯域幅(10kHz以上)、超低ノイズ(100μg/√Hz 以下)の MEMS 加速度センサーが、コスト効果に優れた信頼性の高い選択肢となります。

アプリケーションによっては、サポート回路の近く(同一基板上または短いケーブルを使用した基板外)に加速度センサーを配置する場合もありますが、ある程度離れた所に加速度センサーを配置する必要があることもあり、この場合は接続オプションが制限されます。通常、MEMS 加速度センサーの出力はアナログ電圧やデジタル(通常はシリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)または I2C)で、どちらも長いケーブルでの駆動には適していません。この出力は、USB、低電圧デジタル信号(LVDS)、イーサネットなどの高速デジタル・インターフェースに変換できます。ただし、追加で必要になる電力、サイズ、およびコストは実用的ではありません。

これに対し、業界標準である 4mA~20mA などのアナログ電流ループ・データ伝送では、優れたノイズ耐性、電磁干渉(EMI)の影響を受けやすい環境での堅牢性、高帯域幅、最大 20m のデータ転送といった性能をすべて実現しながら、回路基板上のデバイス数は少なくて済みます。更に、4mA~20mA 信号標準は従来のほぼすべての産業用データ・アクイジション(DAQ)システムでサポートされており、最新のインダストリ 4.0 スマート・センサー・ノードに簡単に適用できます。

図 1. EVAL-CN0533-EBZ の簡略化した回路図
図 1. EVAL-CN0533-EBZ の簡略化した回路図

回路説明

図 1 に示す回路は、電圧出力が 4mA~20mA アナログ信号に変換された、MEMS 加速度センサー振動センシング・ソリューションの簡略化した回路図です。


4mA~20mAの電流ループとインターフェース

4mA~20mA の電流ループは、1950 年代から業界におけるアナログ信号の標準となっています。この信号標準の主な利点は、長いケーブル上でほとんど減衰がないことです。これにより、産業環境や工場環境など、EMI の影響を受けやすい環境での堅牢性が高まります。電圧出力を使用した場合は反対に、ケーブルが長い(10m 以上)とケーブル抵抗によって電圧降下が見られ、センサー・データが喪失したり、センサー指示値が不正確になったりします。

図 1 に示すリファレンス設計は、1 軸の ADXL1002 MEMS 加速度センサーで構成されており、そのアナログ電圧出力はAD5749電圧/電流コンバータを使用して 4mA~20mA の信号標準に変換されています。AD5749の入力(VIN)は 0V~4.096Vの間で変動し、ADXL1002 のアナログ出力電圧(VOUT)は 0V~VDD の間で変動するため、VDD は 4.096V に設定する必要があります。そのため、−55°C~125°Cの温度範囲で、10ppm/°Cの温度安定性を実現しながら 4.096V を供給するのに LT6654AMPS6-4.096 が選択されています。−3dB 帯域幅が 36kHz の 2 極 RC ローパス・フィルタが、VOUT と VIN の間に配置されています。このフィルタによって広帯域ノイズが制限され、アプリケーションの DAQ 回路のサンプル・レートとフィルタリング特性に応じて、帯域内にエイリアスが生じる可能性のある、ADXL1002 の内部クロックの 200kHz のノイズ成分が減衰されます。

AD5749 では、プリント回路基板(PCB)のフットプリントへの影響を最小限に抑えながら、ADXL1002 電圧出力信号が 4mA~20mA電流出力に直接変換され、最大50kHzの帯域幅と優れたノイズ耐性を実現します。

市場における多くの 4mA~20mA ドライバは、電流出力の D/Aコンバータ(DAC)で構成されており、SPI または I2C 外付けコントローラが必要です。AD5749 4mA~20mA ドライバは、スタンドアロン動作モード(ハードウェア・モード)という利点も備えています。

ハードウェア・モードでは、HW_SELECTピンをハイに設定します。R0~R3およびRSETピンはすべてローに接続され、AD5749出力範囲が4mA~20mAに設定されるため、AD5749出力範囲を構成するのにするための外付けマイクロコントローラは不要です。温度に対する出力電流の安定性を向上させるには、REXT1ピンとREXT2ピンの間に外付け低ドリフト抵抗を接続します。

DAQ フロントエンド回路(図示なし)には、電流/電圧(I-V)変換アンプが 1 つのみ必要です。トランスインピーダンス(I-V抵抗)は、DAQ フロントエンド回路の入力範囲に応じて設定する必要があります。

図2には、手動で振動を加えた場合の回路電流出力(IOUT)の例(黒線)を示しています。0gレベルはIOUTミッドレンジに対応しており、4mA~20mA構成の場合は12mAとなります。参考のためにフルスケール・レンジ(FSR)を灰色の破線で強調表示しています。

 

図2. 加速度入力に対応する電流出力と加速度
図2. 加速度入力に対応する電流出力と加速度

 


MEMS振動センサーの長所

ADXL1002 MEMS 加速度センサーは超低ノイズを特長とするほか、25μg/√Hz のノイズ・スペクトル密度、3dB 帯域幅が 11kHzの広帯域動作、およびセンサー共振周波数が 21kHz という特性を持っています。ADXL1002 は、温度感度、DC/低周波数応答、位相応答(つまり群遅延)、耐衝撃性、および回復における優れた性能に加えて、圧電式センサーに匹敵するノイズ・レベルと帯域幅を実現できます。

センサーの直線(±0.1% FSR 以内)計測範囲は±50g であり、これは広範な CbM アプリケーションに対応できる十分な大きさです。従来の圧電式センサーとは異なり、容易にハンダ付けできる LFCSP により、ADXL1002 や周囲の回路を簡単に組み込むことができます。

ADXL1002 は長期の優れた信頼性を実現する、CbM アプリケーション向けのロー・コストで高性能なセンシング・ソリューションとなります。このような特長により、この MEMS 振動センサーは CbM ソリューションのあらゆる場所で利用でき、インダストリ4.0に向けてスマート・テクノロジの応用範囲を拡大しつつあります。

バリエーション回路

アプリケーションの要件に応じて、CN0533回路はADXL1001ADXL1003ADXL1004ADXL1005といった他の1軸電圧出力MEMS加速度センサーに対応できます。センサー共振周波数に基づいて、ローパス・フィルタのカットオフ周波数も選択できます。

ADXL1002 に対して 5V 電源を使用し、AD5749 の入力が行われる前に、高精度の分圧器で出力を 4.096V にスケーリングすることで、この回路で加速度センサーのデータシートに記載のスペクトル・ノイズ・レベルを実現できます。

回路の評価とテスト

以降のセクションでは、回路と機械的な取り付け部のセットアップ方法、出力の読出し方、および予想される性能に関して簡単に説明します。

詳細については、CN0533のユーザ・ガイドを参照してください。


必要な装置


以下の装置類が必要になります。

  • 4mA~20mAのレシーバー(ナショナル・インスツルメンツのNI-9203など)。電流DAQの代わりに、高精度で温度安定性を備えた抵抗と電圧DAQシステムを使用することもできます。抵抗値はDAQの入力電圧範囲に応じて設定する必要があります
  • 電源(12V~24V)
  • EVAL-CN0533-EBZ ボード
  • EVAL-XLMOUNT1 アルミニウム・マウンティング・ブロック
  • 振動台または振動源
  • コネクタとケーブル


テストの開始にあたって


以下に示すのは、テスト・セットアップを理解および再現するための基本的な手順です。

  1. EVAL-CN0533-EBZボードのVCC、IOUT、およびGNDの各パッドに3本のワイヤをハンダ付けします。
  2. EVAL-XLMOUNT1をシェーカーまたは振動台にしっかりと取り付けます。
  3. 感度方向に注意しながら、EVAL-CN0533-EBZボードをEVAL-XLMOUNT1に取り付けます。
  4. VCCとGNDを電源に、IOUTとGNDを4mA~20mAレシーバー回路に接続します。
  5. DAQまたは振動計測装置の加速度感度を128μA/gに設定します(ADXL1002の感度スケールは部品ごとに多少異なる場合がありますが、ADXL1002は重力場や他のリファレンス・センサーで簡単に補正できます)。


電源構成


回路電源電圧範囲は12V~55Vであり、最大電流消費量は24mA(代表値)です。


テスト


振動計測アプリケーションの回路の性能を確認するために、アナログ・デバイセズの振動ラボで回路のテストを行いました。振動 DAQシステムの入力はすべて電圧入力であるため、電流ループを閉じるのに、温度安定性を備えた高精度の 50Ω の抵抗を使用し、回路の出力を抵抗での電圧降下として間接的に計測しました。この回路では、その周波数応答、ノイズ・スペクトル密度、衝撃、および群遅延に対する特性評価が行われています。各テストの詳細と結果を以下に示します。


周波数応答の計測


図 3に示すように、EVAL-CN0533-EBZはアルミニウム・ブロック取り付けインターフェース(EVAL-XLMOUNT1)に取り付けられた後、振動台に取り付けられます。振動台では 100Hz~30kHz の制御された機械振動が、2g の固定加速度振幅で生成されます。その後、回路出力と振動基準(この場合は、レーザ・ドップラー振動計)が記録されます。図 4 にプロットされた周波数応答を示しています。この周波数応答は、ADXL1002 の伝達関数と整合性があります。

 

図 3. EVAL-XLMOUNT1 を使用して振動台に取り付けられている EVAL-CN0533-EBZ
図3. EVAL-XLMOUNT1を使用して振動台に取り付けられているEVAL-CN0533-EBZ

 

 

図 4. 周波数応答
図4. 周波数応答

 

このテスト、および高周波数での他の振動テストでは、機械信号パスの完全性が重要となります。つまり、信号源からセンサーまでの間に振動信号に(ダンピングによる)減衰または(共振による)増幅が発生してはいけません。例えばこの例では、アルミニウム・ブロック(EVAL-XLMOUNT1)、4つのスクリュー・マウント、および厚いPCBによって、目的の周波数範囲に対する平坦な機械的応答を確保しています。


ノイズ・スペクトル密度


図 5に、異なる温度レベル(−40°C~+105°C)におけるセンサーのノイズ密度特性評価を示しています。この結果は、温度範囲に対するノイズ密度の変動が ADXL1002 センサーIC よりもわずかに大きいことを示しています。ノイズ密度が上昇した理由は、ADXL1002の電源電圧が5Vではなく、4.096Vであるためです。この電源の低減によってスペクトル・ノイズ密度が約 20%増加します。AD5749 の電圧リファレンス(VREF)と ADXL1002 の出力電圧(VOUT)の共通電圧源として 4.096V の電源を選択しています。これにより、2 つの電圧レベル間の不一致が原因となる変換誤差が発生しません。

 

図 5. 1kHz でのノイズ密度と温度の関係
図5. 1kHzでのノイズ密度と温度の関係

 


正弦波振動に対する応答


図6は、EVAL-CN0533-EBZで取得したデータのサンプル・セットを示しています。ここで、EVAL-CN0533-EBZは10kHzの正弦振動と10gの振幅(赤色のデータ)で駆動されています。このテストで示しているリファレンス・センサー(図6に示す青色のデータ)は、レーザ・ドップラー振動計による加速度計測のものです。EVAL-CN0533-EBZは、振動計に関連する約20μsの遅延を示しています。

 

図6. 10g加速度正弦波励起信号に対するデバイスの応答
図6. 10g加速度正弦波励起信号に対するデバイスの応答

 


衝撃テスト


この回路では衝撃プロファイルを加えるテストも行いました(図 7 を参照)。衝撃ピーク加速度は 10g、幅は 500μs、形状は方形波です。ADXL1002 MEMS センサーは不足減衰の 2 次系を使用してモデリングできるため、出力のリンギングが想定されます。

この場合のリファレンス・センサーは、共振周波数と 4μs の特性評価済み群遅延を持つ圧電式センサー(モデル 353C23)です。ここで、リファレンス・センサーの出力と ADXL1002 の出力に25μs 以下の位相差があることに注意してください。そのため、回路全体の群遅延は約 21μs になります。

 

 7. 10g での衝撃プロファイル
図7. 10gでの衝撃プロファイル