過電圧状態が長時間続く場合に用いるスイッチング・サージ・ストッパ
要約
本稿では、産業用エレクトロニクスにおける過電圧保護のために、標準的なリニア・サージ・ストッパの代わりにスイッチング・サージ・ストッパを用いる方法を説明します。スイッチング・サージ・ストッパを用いると、サージが長時間にわたって継続する場合でも負荷は動作し続けます。標準的なリニア・サージ・ストッパでは、電力パスのMOSFETが処理できる以上の発熱をする前に、電流の流れを遮断する必要があります。
信頼性の高い産業用エレクトロニクスでは、多くの場合、電源ラインの過電圧を防止してエレクトロニクスを損傷から保護する保護回路を備えています。過電圧は、電源ラインの負荷に高速の変化が生じた場合に発生する可能性があります。寄生ライン・インダクタンスが高電圧スパイクの原因となることもあります。これは、図1に示すアナログ・デバイセズのLTC4380を用いる回路のような、入力保護回路で対処できます。電源スイッチM1が導電パスにあります。過電圧がVINで発生すると、スイッチM1が線形領域で動作します。それによって、M1がオーミック領域の抵抗の役割をし、VOUTがMOSFET M1の電圧降下によって安定化できます。そのため、出力電圧が過剰に高いレベルに増加するのが防止され、後続のエレクトロニクスが保護されます。この方法は、ある一定の時間制限内では有効です。この時間は、スイッチM1の許容可能な安全動作領域(SOA)で決まります。しかし、パワーMOSFETでの電圧降下が大きなままこの時間が制限値を超えた場合、MOSFETはその最大温度スレッショルドを超えて過熱状態となり、損傷してしまいます。LTC4380などの集積回路には過電圧から保護するためのタイマーが内蔵されています。過電圧状態時にMOSFETが線形領域で動作する時間の量が、このタイマーで設定されます。この時間は通常、数ミリ秒あるいは数マイクロ秒のオーダーです。ひとたびこの設定時間が経過すると、スイッチM1は完全にシャット・オフします。その結果スイッチは保護されますが、システムへの電源もシャット・オフされます。
図1 リニア・サージ保護ICを用いた過電圧保護(簡略化した回路図)
どのような状況においても信頼できる動作と産業用エレクトロニクスへの切れ目のない電力供給を確保するには、長時間にわたり過電圧に耐えられるソリューションを選択することが極めて重要です。それには、過電圧の原因となり得る電源ラインの誤接続など、過失による状況を考慮することも必要です。こうした状況に対処できるソリューションを選択することで、回路は高い信頼度で動作し、電源電圧の混乱を回避できます。そのようなソリューションが、図2に示すスイッチング・サージ・プロテクタで実現できます。
図2 過電圧に対する時間制限のないスイッチング過電圧保護回路(簡略化した回路図)
図2の回路では、サージ・プロテクタICの他にインダクタと外付けショットキー・ダイオードが用いられています。基本的に、降圧(バック)スイッチング・レギュレータが保護回路として動作します。しかし、このスイッチング・レギュレータは、設定された最大値を入力電圧が超えた場合にのみ動作を開始します。この期間の動作は通常、特に電力効率が良い必要はありません。単純なショットキー・ダイオードをフライバック・ダイオードとして使用できます。
図3に、入力電圧の応答を青色で示します。通常の入力電圧は16Vです。約2msの時点で40Vに達する過電圧が発生します。出力電圧の時間変化は赤色で示しています。VINの過電圧が続く間、スイッチングDC/DCレギュレータがアクティブ化されて出力電圧を16Vに安定化します。スイッチング・ノードの電圧(MOSFET、ショットキー・ダイオード、インダクタ間のノードの電圧)を緑色で示します。
図3 過電圧に対する入力電圧および出力電圧の応答(上図)および高周波数範囲におけるスイッチング・ノードでのスイッチング(下図)
このように、過電圧保護回路は、図1に示すようにリニアに設計することも、図2のLTC7860などの特別なスイッチング(バック)DC/DCレギュレータで設計することもできます。単純な降圧スイッチング・レギュレータは、このアプリケーションには適しません。この場合はNチャンネルMOSFETが連続的にはオンになることができないためです。
過電圧保護回路には、リニア・サージ・プロテクタICとスイッチング・サージ・プロテクタICの両方が含まれます。後者を用いると、過電圧イベントが長時間にわたる場合でも、回路の連続動作が可能です。これは、過電圧が長時間にわたり続く場合でも、給電される回路は常に保護され、動作可能であることを意味します。
まとめ
様々な処理を正確に制御し測定するために、多くの産業用アプリケーションおよび計測機器アプリケーションで高精度コンバータがますます必要とされるようになっています。更に、これらのエンド・アプリケーションでは、柔軟性、信頼性、機能セットを一層要求するようになっている一方で、コストとボード面積を同時に縮小することも求めています。部品メーカーは、こうした課題に取り組んでおり、現在および将来の設計に対するシステム設計者のニーズに応える、数多くの製品を提供しています。本稿からわかるように、高精度アプリケーションに適した部品を選択するには様々なアプローチがあり、それぞれに固有の短所と長所があります。システムの精度が増すにつれ、アプリケーションのニーズに適した部品を選択する際には十分な検討がますます必要となっています。
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