ヘルスケア・モニタの中身は?
概要
健康意識の高まりと、様々な病気の予防や治療を行うためにモニタリングが可能となったことから、自分自身の健康状態をモニタリングすることに、より多くの関心が払われるようになってきました。例えば、糖尿病、肥満、高コレステロールなどの問題が蔓延していますが、これらは少なからずライフスタイルの変化によるものと言える一方で、スマートフォンやウェアラブル・デバイスの急速な普及により、そのユーザがヘルス・モニタリング・アプリケーションを利用して、健康を維持するために適切な支援が受けられます。
患者中心のヘルスケア・アプリケーションは、ユーザに投薬時間、消費カロリー量、体内の脱水レベルなどの情報を知らせてくれます。これを行う方法としては、携帯電話を利用するのが一般的です。例えば、Apple, Inc.によれば、iPhoneユーザは平均して1日に80回、自分の電話のロックを解除しているということです。この事実は、携帯電話が生体測定データを受信して表示するための理想的な媒体になっているということを示しています。このことにより、ヘルス・アプリケーションの開発者や、携帯型ヘルス・モニタリング製品のハードウェア・プラットフォーム・メーカーが製品販売のターゲットとする大きな集団が生み出されます。
このヘルスケア情報技術システムを志向するトレンドの高まりによって、医療従事者は、患者の同意があれば、患者のデータにアクセス可能になります。モバイル・デバイスから送られてくる検査レポートを定期的に診断できるだけでなく、放射線レポートや病理レポートに容易にアクセスできることも、患者中心のヘルスケア・アプリケーションの発展を明らかに後押ししています。モニタリング・システムの例を図1に示します。

図1 在宅患者モニタリングの例
医療機器
アナログ・デバイセズは、数十年にわたり医療の分野に製品を供給してきました。低消費電力で高精度の部品が、ポータブルなワイヤレス医療機器の急速な発展を可能にしてきたと考えられます。この種の医療用製品は一般に、信頼性、稼働時間、堅牢性の面で高い水準を保持しており、この役割の大部分はパワー・マネージメント・システムとそれに搭載された部品が担っています。医療モニタリング製品では、バッテリ、AC主電源のコンセント、スーパーキャパシタのみならず、再生可能エネルギー源といった様々な電源が正常に動作し、電源間の切替えが滑らかに行われる必要があります。
電源システム設計者は、システムを故障から守り、場合によっては故障し難いように、またバッテリ駆動の場合は稼働時間が最長になるように設計する必要があります。その一方で、安定した電源から供給される場合には、通常のシステム動作が常に安定するように万全を期す必要があります。
携帯用のワイヤレス医療計測機器の発展を促すもう1つのトレンドとしては、この他に患者ケアにおける変化があげられます。具体的に、このような傾向が見られる理由として、患者が自宅でリモートのモニタリング・システムを利用する機会が増えていることが考えられます。その理由の1つは経済性です。すなわち、患者の入院費用が、患者にとっても医療提供者にとっても非常に高額になっていることです。こうした事情が、無線周波数(RF)トランスミッタを内蔵したポータブルの電子モニタリング・システムが増加傾向にある理由となっています。このシステムを使えば、患者から取得したデータは病院や診療所の監視システムに直接送信され、後日、検討や分析を行うことができます。
患者が自宅で利用する専用の医療計測器に支払う対価は、患者が診察のための入院費として支払う対価より高くて良いと考えるのは当然のことです。とは言っても、このような機器は専門家の管理下で使用されるわけではないため、患者が使用する機器は安全で信頼性の高いことが何よりも重要です。こうした製品のメーカーと設計者は、機器が複数の電源で途切れなく動作可能で、患者から収集したデータをワイヤレスで送信する際に、高い信頼性が確保されるように徹底しなければなりません。そのためには、パワー・マネージメントと電力変換のアーキテクチャが幅広い帯域にわたり、堅牢、柔軟、小型、高効率、そして低ノイズでなければなりません。
電力変換アーキテクチャ
スイッチング・レギュレータはリニア・レギュレータよりノイズを多く発生しますが、その効率は一般的にはるかに高くなっています。スイッチャが予測どおりに動作すれば、ノイズに敏感な多くのアプリケーションにおいて、ノイズ・レベルとEMIレベルは、制御可能であることが証明されています。スイッチング・レギュレータがノーマル・モードに設定され、固定周波数でスイッチングが行われ、しかもスイッチング・エッジがクリーンかつ予測どおりで、オーバーシュートや高周波のリンギングがなければ、EMIは最小限に抑えられます。パッケージが小さく、動作周波数が高いため、小規模で高密度のレイアウトが可能となり、EMI放射が最小限に抑えられます。更に、レギュレータを低ESRのセラミック・コンデンサと共に使用すれば、入出力両方の電圧リップルが最小限に抑えられます。しかしながら、すべてのシステム設計者が、これらのノイズ干渉という現象に対処する際、スイッチモードの電力変換について、広範な背景知識を持っているわけではありません。
また、これらのシステムの多くは、低消費電力センサー、メモリ、マイクロコントローラ・コア、I/O、論理回路などに給電するために、多種多様な低電圧レールを必要とし、更に冷却用の気流やヒート・シンクがないため、熱設計上の制約を受けて、一層複雑化しています。
アナログ・デバイセズのPower by Linear™ 製品グループは、業界をリードする各種製品を揃え、電源の専門家と共に電源ソリューションに注力してきました。例えば、主電源が遮断された場合でも、安定した電源が求められる医療用電子システムは、多くのアプリケーションがありますが、このようなシステムには、堅牢なバックアップ電源が必要となります。こうしたシステムのバックアップの稼働時間は通常、主電源が失われた後、適切にシステムを停止するために必要な時間で定義されています。この時間はエンド・アプリケーションによって、数分から数時間まで幅があります。
設計上の制約を緩和する新しいソリューション
スーパーキャパシタは、ハイ・パワーで短時間のバックアップ電源を必要とするシステムにとって優れた選択肢となります。通常、このタイプのアプリケーションに対応するICは、主電源が遮断されている間、2.9V~5.5Vの電源レールをサポートする機能が必要です。スーパーキャパシタには、高いピーク電力を出力できる能力があり、アプリケーションが短い時間間隔で高いピーク電力をバックアップする必要があるようなシステムには、理想的な選択といえます。
例えば、LTC4041は、内蔵の双方向同期整流式コンバータを使用し、高効率の降圧スーパーキャパシタの充電機能や、大電流高効率の昇圧バックアップ電源を提供します。外部電源が利用可能な場合は、このデバイスはシステム負荷を優先しながら、1個または2個のスーパーキャパシタ・セル用に降圧充電器として動作します。入力電源が調整可能なパワー・フェイル・インジケータ(PFI)閾値より低くなると、LTC4041は昇圧モード動作に切り替わり、スーパーキャパシタからシステム負荷に最大2.5Aを供給できます。パワー・フェイル・イベントの間、デバイスのPowerPath™制御によって逆流が防止され、入力電源からバックアップ電源へスムーズな切替えが可能となります。LTC4041の代表的なアプリケーションには、医療機器などに一般的にみられるような「Dying Gasp」状態の電源のライドスルー機能、電力量計、工業用アラーム、ソリッドステート・ドライブなどがあります。図2に、LTC4041の代表的なアプリケーション回路図を示します。

図2 3.3Vシステム用LTC4041単一スーパーキャパシタ・バックアップ
スーパーキャパシタを2個使用する場合は、内蔵のスーパーキャパシタ・バランス回路により、各スーパーキャパシタへの印加電圧を均等に保ち、かつ各スーパーキャパシタの最大電圧を事前設定された値以下に制限します。調整可能な入力電流制限機能があるため、システム負荷電流をバッテリ充電電流より優先しながら、電流制限のある電源で動作が可能です。外付け切断スイッチにより、バックアップ中は主入力電源がシステムから切り離されます。このデバイスには、入力電流モニタリング、入力パワー・フェイル・インジケータ、システム・パワー・フェイル・インジケータなども内蔵されています。また、LTC4041には、外付けMOSFETを使用するオプションのOVP機能があり、60Vを超える入力電圧からICを保護できます。
温度およびスペースの制約を受ける医療用システムの電源設計者にとって、変換効率が高く、温度の制約が最小限に抑えられ、ソリューションのフットプリントと高さが非常に小さく抑えられる小型・高効率の5V降圧コンバータが入手できることは重要なことです。
Power by Linear LTC3309Aは、特にスペースと温度に関する設計上の制約に対処したものです。このデバイスは非常に小型で低ノイズのモノリシック、降圧DC/DCコンバータで、2.25V~5.5Vの入力電源で最大6Aの出力電流を供給することができます。ホット・ループ・バイパス・コンデンサを外付けしたSilentSwitcher®アーキテクチャを採用しており、3MHzという高いスイッチング周波数で低EMIと高効率を両立します。
また、LTC3309Aは、固定周波数、電流モードの降圧DC/DCコンバータです。各クロック・サイクルの開始時に、発振器が内部の上側の電源スイッチをオンにします。インダクタを流れる電流は上側のスイッチ電流コンパレータがトリップするまで増加し、トリップすると上側の電源スイッチがオフになります。上側のスイッチがオフになるときのピーク・インダクタ電流は、ITHノードの電圧によって制御されます。エラー・アンプは、FBピンの電圧と500mVの内部リファレンスを比較することによって、ITHノードを制御します。負荷電流が増加すると帰還電圧がリファレンスよりも減少するため、平均インダクタ電流が新しい負荷電流に見合った値となるまでエラー・アンプがITH電圧を引き上げます。上側の電源スイッチがオフになると、次のクロック・サイクルが始まるまで(あるいは、パルス・スキップ・モードの場合はインダクタ電流が0に低下するまで)同期電源スイッチがオンになります。過負荷状態となって下側のスイッチに流れる電流が過大となった場合は、スイッチ電流が安全なレベルに戻るまで次のクロック・サイクルの開始が遅延されます。ENピンがローになるとLTC3309Aはシャット・ダウンされ、低静止電流状態になります。ENピンが閾値を超えると、スイッチング・レギュレータがイネーブルされます。

図3 2.25V~5Vの入力電圧で1.2V、6Aを給電するLTC3309Aのアプリケーション回路図
LTC3309Aは固定周波数のピーク電流モード制御アーキテクチャを使用しているので、最小限の出力容量で高速の過渡応答を実現することができます。500mVのリファレンスが低電圧出力を可能にする一方、100%のデューティ・サイクルでの動作は低ドロップアウトの給電を可能にします。その他の機能としては、出力がレギュレーション状態にある場合のパワー・グッド信号、高精度イネーブル閾値、出力過電圧保護、サーマル・シャットダウン、温度モニタ、クロック同期、モード選択、出力短絡保護などがあります。このデバイスは、小型で12ピンの2mm × 2mmLQFNパッケージを採用しています。
まとめ
在宅患者のヘルス・モニタリングのために使用される携帯型のワイヤレス医療モニタリング機器のシステム設計者が、非常に困難な設計課題に直面するのは疑いのない事実です。こうした課題には、調整を図るべき複数の制約事項がありますが、その多くは互いに両立が不可能なように思われます。例えば、温度とスペースの両方に制約のあるパッケージ封入や、干渉や中断がなく、データを送信できる機能の場合です。しかし幸いなことに、アナログ・デバイセズが最近導入したLTC3309AとLTC4041を使用すれば、設計者はポータブルなフォーム・ファクタの機器に適した、小型で熱効率の高いソリューションに対する要求を満足満たす設計を実現することができます。
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