VCO技術の発展の歴史

2004年02月23日
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要約

このアプリケーションノートでは、約1910年にまでさかのぼる電圧制御発振器(VCO)歴史を追い、RF ICにVCOを組み込んだ例を示します。技術をたどり、製品性能およびサイズの進化について説明しています。今後の動向を予測します。

本記事に類似した内容が、2002年7月発行の「Microwaves & RF」という雑誌に掲載されています。

はじめに

電圧制御発振器(VCO)は通常、周波数帯域の全体にわたってチューニングを必要とするワイヤレスシステムやその他の通信システムに実装されています。VCOは、さまざまな製造業者からさまざまなパッケージ形式と性能レベルで提供されています。今日の表面実装VCOや無線周波数集積回路(RFIC) VCOの技術遺産は、100年近く前に始まった設計開発から引き継がれたものです。VCO技術はその時期から進歩を続け、位相ノイズ特性やチューニングリニアリティの向上とともに回路の小型化を実現してきました。

発振器回路の進化

Edwin Armstrongがヘテロダイン方式を発明して以来、発振器は必要不可欠な部品となりました*。この方式では、発振器が正弦信号を非線形のミキシング素子に供給し、その正弦信号に他の入力信号を乗算することで周波数変換を行います。Armstrongは、周波数変換を制御するためには、時間に対して正弦的に変化する安定した電圧(または電流)とそれに対応する周波数を発生する電子回路が必要であることに気付きました。同じ頃彼は、Audion (オーディオン)という初期の真空管を構成することで発振を実現できることを発見し、(初期のワイヤレストランスミッタに使用されていた単純で低機能なスパークギャップ発振器に代わって)初の電子発振器を発明しました**。

当時、Armstrongの起こした発振器の技術革新によって、スパークトランスミッタは急激にすたり、高性能の無線レシーバが生み出されることになりました。1910年代のArmstrongの発見から現代に至るまで、VCO技術は、真空管発振器からトランジスタ発振器、発振器モジュールのソリューション、ついには今日のRFICベースの発振器にまで進歩を遂げました。VCO技術の状況は再び急速に変化しつつあります。近い将来登場するシステムの多くは、基本的なトポロジや理論のみ、初期の発振器と類似することになるでしょう。

Armstrongの発見は、まもなくして、Ralph V. L. Hartleyが発明した発振器の回路トポロジによって改良が加えられました(図1)。 Hartleyは真空管の技術に改良を加えて発振回路を発明しました。この発振回路では、誘導性のフィードバックを追加した増幅器として真空管を働かせることによって再生発振を行っています。発振器の周波数は、コイルのインダクタンスと回路の容量によって決まります。この回路は正弦信号の生成に飛躍的進歩をもたらしました。この回路の発明によって、コイルまたはコンデンサの値を変えるだけで、得られる周波数の範囲を大幅に拡大することができるようになりました。Hartleyの発振回路はトランスミッタに広く普及し、第1次世界大戦で使えるように迅速に改良されました。この新しい真空管ベースの発振回路は、トランスミッタとレシーバの両方で利用されるようになりました。このように、発振回路の技術革新が普及した結果、今日でも使用されているHartley、Colpitts、Clapp、Armstrong、Pierceなどの主要な回路トポロジへと導かれることになります。

図1. Hartley発振器の例:(a)トライオードを実装、(b) JFETを実装

図1. Hartley発振器の例:(a)トライオードを実装、(b) JFETを実装

Armstrongのスーパーヘテロダインレシーバ方式は、入力信号と発振信号を混合して一定の中間周波数(IF)を出力する方式です。一定のIFを維持するには、入力信号の周波数を変化させるとともに発振器の周波数も変化させる必要があります。可変周波数発振器では、RF入力信号の幅広い範囲に対応して周波数変換回路をチューニングすることができるため、AM (振幅変調)ラジオのようなマルチチャネル通信が実現しました。このような可変周波数発振器は、共振素子(インダクタまたはコンデンサ)の一方の値が変化する基本的な共振回路発振器を応用したものです。ほとんどの場合、コンデンサが変化します。高品質の可変コンデンサは、連動式多重プレート金属エアギャップ型コンデンサで構成されていました。

無線技術が発達するにつれ、発振回路の実装における革新技術が続きました。技術者は多種多様のコイル、可変コンデンサ、フィードバック技法、および真空管を開発し、発振器と周波数変換回路の実装に使用しました。また、ラジオの前面の機械式ダイヤルで発振器の周波数を精密かつ高品質にチューニングするための綿密で斬新な方法が数多く考案されました。図2の写真は1929年型のHartley式のトランスミッタを再現したものです(アマチュア無線愛好家W9QZによって再現)。大半の初期の電子回路の実装に言えることですが、この回路も大型な上に高価で、高電源電圧を必要としました。

図2. 1929年型のHartley式トランスミッタ

図2. 1929年型のHartley式トランスミッタ

バイポーラトランジスタおよびバラクタ

真空管発振器は長年、AMラジオやFM (周波数変調)ラジオ、テレビ、および軍事用の音声通信など、民間および軍事用の無線レシーバ用途に幅広く利用されてきました。しかし、トランジスタやバラクタダイオードのような半導体増幅器の発見によってVCO技術に第2の大変革が起こりました。

初のバイポーラトランジスタは1940年代後半にベル研究所(ニュージャージー州ホルムデル)によって発見されました。トランジスタは1950年代には真空管に代わって使用され始めています。この新しいトランジスタは真空管に比べて小型で消費電力が少なく、また動作に必要な電圧が低いため、結果としてコスト削減となりました。トランジスタが発振器の能動素子として真空管に取って代わり、発振器のトポロジを決定する実際の実装に大きな変化をもたらしました。

バラクタダイオード(逆バイアスが加えられたPN接合によって生じる電圧可変容量を備えたダイオード)の登場は、おそらくトランジスタよりもVCOの方向付けに与えた影響が大きかったといえます。1960年代初期には、バラクタ技術に関する研究がさかんに行われ、バラクタはVCOの可変容量素子として機械的な調整部品に急速に取って代わりました。バラクタは、PLL (phase-locked-loop)回路の開発で周波数源の電子制御を正確に行うために不可欠なものとなりました。この時期のテレビの急成長は、バラクタとトランジスタベースのVCOへの移行に拍車をかけました。この結果、固有な電子調整機能と周波数範囲の簡単な再設定機能を備えた、低コスト、低電力、かつ高品質なVCOが実現しました。ディスクリートトランジスタとバラクタベースのVCOは1960年代から1980年代にかけて電子設計の主流となりました。しかし1980年代には、モジュール方式とモノリシックVCO集積回路(IC)という2つの新しい技術がVCOの開発に影響を及ぼすようになりました。図3は過去80年のVCO技術の進歩を示した対照年表です。

図3. VCO技術の対照年表

図3. VCO技術寿命年表

モジュール方式

バラクタ、コンデンサ、およびインダクタの小型化が進むにつれてモジュール型のVCOが可能になりました。VCOモジュールは、実質的にはディスクリート部品で構成された発振器の小型版で、金属製ハウジングに取り付けられた基板上に構築されています。このモジュールは自己完結型であるため、モジュールに求められる要件は、グランド接続、電源電圧、同調電圧、および出力負荷だけです。このようなモジュールは1960年代に主に軍事用途として初めて登場しました。当時のモジュールは数平方インチもある、かなり大型で高価なものでした。ただし、市販の製品には依然としてディスクリートトランジスタとバラクタによるVCO実装が使用されていました。VCOモジュールの市場が形成されるのは、携帯電話が登場してから以降のことです。

ディスクリートVCOは任意の周波数範囲と同調範囲にカスタム設計できましたが、部品のばらつきを補正するため、製造時に多大な労力を費やして周波数設定素子を調整する必要がありました。さらに、ディスクリートVCOでは、放射を最小限に抑えてプリング効果を削減するために適切なシールド手段が必要でした。しかし、1980年代後期と1990年代初期に携帯電話の売上が増加するにつれて、発振器の「超小型」モジュールの需要が増加しました。日本企業の中には、ますます小型化の技術を身につけて、携帯電話向けの小型で費用対効果の大きいVCOモジュールを開発する企業も現われました。新しいワイヤレスアプリケーションが登場すると同時に、VCOモジュールの製造業者は、各アプリケーションに独自の周波数配列を備えた製品を開発しました。また、表面実装素子の小型化が段階的に実現されるごとに(1206、0805、0603、0402、0201)、さらに小型化された低コストの新しいVCOモジュールが開発されました。図4は、もはや一般的となった最先端の技術を駆使した市販VCOモジュールのサイズ縮小化の推移を示しています。

今日、これまで重ねてきた改良は、ついには小型(4mm x 5mm x 2mm)モジュールに凝縮され、量産では約1ドル(USD)の価格を実現しています。この15年周期のVCOモジュール容積の縮小は、驚くべき大幅なサイズ縮小を実現し、セルラ電話などの新しいモバイルワイヤレス機器に要求される厳しいスペースの制限を満たしてきました。しかし、1990年代末にはさらに小型化と費用対効果の高いVCO技術であるモノリシックVCO IC技術が登場しました。

図4. VCOモジュールのサイズ縮小化の推移

図4. VCOモジュールのサイズ縮小化の推移

モノリシックVCO

モノリシックVCO技術は、LC (インダクタンス-容量) VCOの回路要素(トランジスタ、コンデンサ、抵抗器、インダクタ、およびバラクタダイオード)のすべてが1つのチップに内蔵されたVCOの実装技術と定義されます。このデバイスは、VCOモジュールにあるのと同様に、完全なVCOを作成できるように構成されており、その要件は、電源、グランド、出力、チューニング入力、およびすべてのデジタル制御ラインへの接続だけです。(:電圧制御リング発振回路は、位相ノイズ特性が劣っており大半の無線システムで使用できないため、ここで定義されているVCOからは除外されています。)

最初のモノリシックVCOは、ガリウムヒ素(GaAs) IC技術とモノリシックマイクロ波IC (MMIC)の開発と同時期に登場しています。モノリシックVCOは、MMICの民間用および軍事用でのアプリケーションの研究(米国のDARPAによるMIMICプログラムが大部分を出資)が精力的に進められた1980年代初期の論文1、2で紹介されています。初期のMMIC VCOは、2インチ直径のウェハを使用してGaAs ICプロセスで製造されました。MMIC VCOはサイズの効率化には特別に対応していなかったため費用対効果は望めませんでした。それらのVCOは一般的に、対象のアプリケーション、衛星レシーバ、およびレーダーシステムに適合した数GHzの周波数で動作します。

DARPAによるMIMICの研究として開発された初期のモノリシックGaAs VCOの大部分は、一般市場にはあまり影響を与えませんでした。1980年代は、シリコンIC技術はまだ低周波数にしか対応していなかったため、周波数がGHz帯のモノリシックVCOに必要な帯域幅を満たしていませんでした。しかし、1990年代までにはシリコンIC技術は十分に高い遷移周波数(fT)と適切なモノリシック部品(高Qインダクタ、高周波数コンデンサ、およびバラクタダイオード)で進歩を遂げ、高周波シリコンモノリシックVCOの開発が可能になりました。一方、ワイヤレス市場は、著しく拡大/発展し、帯域幅が800MHz~2500MHzの低コストなVCOの需要を促進するまでに成長しました。

1990年代のこういった発展以前は、大半の市販用の無線システムは低周波数で動作していたため、モノリシックVCO ICの構築は実用的ではありませんでした。チップ内のインダクタの値が大きすぎたからです。シリコンモノリシックVCO ICは1992年のカリフォルニア大学バークレー校によって発表された論文で初めて紹介されました3。そのVCOは、2つの個別の共振回路の間を電気的に「補間」することによって周波数を変化させるという今までにない斬新なトポロジを採用しているにもかかわらず技術的にはこれまでのモノリシックシリコンVCO IC技術を実装したものでした。バークレー校のこの業績とその後のRobert Meyer教授と大学院生たちによる研究は、モノリシックVCOの研究がさかんに行われる時代の先駆けとなりました。

シリコンモノリシックVCO ICの開発は、1995年までに主要な大学の研究者によって技術論文として報告されています4、5。これらの報告で、研究者たちは最新のモノリシックLC共振器VCO ICの初例をいくつか公表しました。1996年から1997年の間に多数の論文が発表され、モノリシックVCOのさまざまな実現方法についての研究が報告されました6~11。市販のモノリシックVCO ICはこの期間に事実上登場したものです。

モノリシックVCO ICは、高周波バイポーラトランジスタIC技術とシリコンCMOS IC技術の両方において開発されていました。大学研究機関の研究者たちは通常、CMOS技術を使用して広範に入手可能なIC技術を利用しましたが、産業界の研究者たちは、RFIC向けのバイポーラ/BiCMOSプロセス技術を使用しました。図5は、CMOSとバイポーラ/BiCMOSプロセス技術の両方で実現されたモノリシックVCO回路の一般的な例を示しています。

図5. MOS及びバイポーラを使用したモノリシックVCOコア回路の一般例

図5. MOSおよびバイポーラを使用したモノリシックVCOコア回路の一般例

これらの初期のVCO IC実装の全体的な性能は、一般的にディスクリート実装やVCOモジュールよりも劣っていました。特に、位相ノイズとチューニング特性は、ディスクリート設計またはVCOモジュールで通常得られる機能よりも劣っていました。この欠点の主な原因は、当時のIC技術では、低Qインダクタと性能の低いバラクタダイオードしか一般的に入手できなかったからです。

しかし、モノリシックVCOは、極めて小型で、費用対効果が高く、RFトランシーバ機能と同じ実装プロセスで使用可能なことが明らかになりました。つまり、ミキサ、低ノイズアンプ(LNA)、およびPLL (phase-locked-loop)など、その他のRF/IF機能にVCOを組み込むことが可能であるということです。他のレシーバおよびトランスミッタ機能に低コストでVCOを組み込むことができるため、モノリシックVCO ICの商品化の実現化に役立ちました。初期のこの良い例の1つに、900MHzスペクトラム拡散コードレス電話のチップセットの商品化があります12

1990年代後半に、VCO IC技術の研究は著しく増大しました13~19。これは、ワイヤレス市場の大幅な進展と高周波バイポーラ、CMOS、およびBiCMOSプロセス技術の普及が大きな要因となっています。重要な研究と開発が産業界と大学/研究機関の両方で進められました。研究者たちはオンチップでの位相ノイズ性能の向上、動作周波数の拡張、VCOの同調範囲の調整などに焦点を当てました。これらの進歩は有用な性能の向上をもたらし、VCOをコードレス電話、Bluetooth®、WLAN、GPS、およびDBSアプリケーション向けのRFICに使用できるような電気的仕様を実現しました。表1はモノリシックVCOを含むRFIC商品例です。

表1. モノリシックVCOを内蔵したRFIC商品の例
Unit Frequency Range (MHz) Source Application
MAX2622/MAX2623/MAX2624 855 to 998 Maxim General purpose, 900MHz ISM
MAX2750/MAX2751/MAX2752 2025 to 2500 Maxim General purpose, 2.4GHz ISM band
MAX2754 1145 to 1250 Maxim 2.4GHz cordless phones
MAX2114 925 to 2175 Maxim DBS
MAX3580 170 to 230, 470 to 878 Maxim DVB-T
MAX3540 54 to 100, 100 to 300, 300 to 860 Maxim Analog/digital terrestrial receivers
MAX2900 902 to 928 Maxim 900MHz ISM band (wireless meter reading)
MAX2820 2400 to 2500 Maxim 802.11b WLAN
MAX2830 2400 to 2500 Maxim 802.11g WLAN
MAX2837 2300 to 2700 Maxim 802.16e Mobile WiMAXSM
MAX2838 3300 to 3900 Maxim 802.16e Mobile WiMAX
MAX2839 2300 to 2700 Maxim 802.11n WLAN with MIMO down link
RF105 902 to 928 Conexant 900MHz cordless phones
SA2400 2400 to 2500 Philips® 802.11b WLAN
BlueCore-01 2400 to 2500 CSR Bluetooth
TRF 2400 to 2500 TI® Bluetooth
GRF2i/LP 1575 SiRF GPS
AR5111 5.2GHz to 5.8GHz Atheros® 802.11a WLAN

これらのVCO ICとその統合ソリューションは、VCOモジュールよりも小型で低コストで、またディスクリートソリューションよりもすばやく簡単に応用することができます。モノリシックVCO ICはこれまでの技術に比べて大幅な価値の向上を提供します。

この世代のVCO技術の性能は、コードレス電話、ワイヤレスデータ無線機、およびDBSレシーバのようなシステムに十分であるため、この技術はこれらのシステムで広く使用されています。しかし、位相ノイズ性能は、現在約5dB~10dBほど大きいため、(GSM、IS-136、CDMAのような)高データレートの携帯電話システムの要件を満たすには不十分です。インダクタの低Q値と過剰なバイアスノイズが、VCOの位相ノイズ特性に制限を加えている原因です。一部の研究ではボンドワイヤインダクタを使用することで改善の余地があることを実証していますが、低位相ノイズ性能についてはまだ解明されておらず、モノリシックVCO IC技術での実現は困難です。しかし、1999年から2001年にかけてVCO設計の著しい進歩が報告されており、将来の明確な見込みある方向性を示唆しています。

主な動向

いくつかの動向がモノリシックVCOの位相ノイズ特性の向上に影響を与えています。例えば、基本的なRFICプロセス技術の継続した向上です。半導体プロセスによる品質の向上が増し、能動および受動素子の性能が改善されています。シリコンプロセスによっても、50GHzを超えるfT性能のトランジスタが製造可能となり、またより高いQバラクタダイオードが広い容量比の同調範囲(低直列抵抗)で入手可能です。これらのプロセスは、より厚みのある金属被覆とより高いQインダクタを備えたより低い損失の基板を特長としています。また、これらのプロセスでは寄生成分の少ない素子を持つデバイスをつくることが可能なため、低位相ノイズ、高動作周波数、および低電流動作のVCOを実現することができます。

設計技術も進歩しています。VCO研究者は、IC技術の力を利用してさらに精密な回路を設計することで性能向上を図っています。これらの研究者は、ディスクリートVCOまたはモジュラーVCOの実装では以前実用化が不可能であった技術を導入しています。例としては、差動発振器トポロジ、振幅制御、第2高調波トラップ、カップリング改善のためのICトランス、マルチ発振器によるトポロジ、および高周波動作を実現するアーキテクチャなどがあります。

また、設計エンジニアのVCO理論への理解もさらに深まっています。エンジニアはVan der PolやLeesonの方程式のような過去の数学モデルに基づいて作成しています。また、(同調特性や位相ノイズ性能のような)発振器の動作の新しい解析式を考案しています。回路設計者は、Abidiの関係式を使ってLeesonのノイズ方程式の修正を進めています。さらに、パーソナルコンピュータやワークステーションコンピュータの処理能力が向上するにつれて、CAE (computer-aided-engineering)ツールも強力になり高性能化が進んでいます。エンジニアはVCO動作モデルの実験を行い性能拡張を実現できます。

モノリシックVCO技術は数多く登場する新製品に次々に応用されており、現在、高品質のVCOはトランシーバの回路に実装されています。例えば、WLAN、WiMAX、TVチューナ、GPS、およびBluetoothの市場向けの最新のワイヤレスICにはVCOが組み込まれ、ディスクリート部品に比べて大幅なサイズ縮小化を実現しています。さらに高性能なWLAN無線機(2.4GHz IEEE® 802.11bおよび5GHz 802.11aバージョン)およびWiMAX無線機(IEEE 802.16eモバイルWiMAXおよび802.16-2004/802.16d固定WiMAX)では、必要なパケットデータレートとブロッキング性能レベルを実現するため、システム要件として、位相ノイズが非常に低いより高性能のVCOが求められます。

RFIC VCO技術の進歩によって、これらの内蔵デバイスは、増大するRFアプリケーション製品にとってますます魅力的なものとなっています。代表的なRFアプリケーションとしては、衛星レシーバ、CATVのセットトップボックス、ワイヤレスデータアプリケーション、コードレス電話、および携帯電話などがあります。モノリシックVCOが、ディスクリートやモジュラーVCOソリューションに比べて量産アプリケーション市場での占有率を拡大しつつあることは明らかです。

モノリシックVCOが量産ワイヤレスシステム製品における発振器手法の主流となる時代は間近でしょう。VCOは、大型の真空管を用いた回路から、1ミリ四方未満のシリコンに至るまで著しい発展への道を歩んできたのです。

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