要約
電圧監視回路ICは、最小電源電圧リセット以下の有効なリセットを生成する前に最小電源電圧を必要とするため、電源電圧レールに従って、リセットグリッチを生成します。リセットグリッチは、起動時にプロセッサまたは重要な負荷に対する不正な信号をトリガする可能性があります。このアプリケーションノートは、グリッチのない監視回路ICのさまざまな側面について解説します。
はじめに
監視回路ICは、信頼性を高め、システムの性能を向上させ、過電圧過渡を防ぎ、電力障害を防止するため、ほぼあらゆるシステムに追加する価値があります。半導体メーカー各社は、電圧監視回路ICの性能を強化するための努力を常に続けています。パワーオンリセットグリッチは、この業界が改善しようとしている性能領域の1つです。
監視回路ICは、クリーンまたは高信頼性のリセット信号を生成するために最小電圧(VPOR)を必要とします。起動時、電源レールがVPORに達する前、リセット信号の状態は不定です。一般に、これをリセット時のグリッチを呼びます。
このアプリケーションノートでは、リセットグリッチの基礎を解説し、マキシムの方式が従来の方式のグリッチのない監視回路ICよりどのように優れているかを説明します。
リセットドライバの回路構成
RESET端子で使用される回路構成には、主としてオープンドレインまたはプッシュプルの2種類があります。いずれの回路構成もNMOSプルダウンMOSFETを使用します。
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オープンドレイン構成 | プッシュプル構成 |
図1. 監視回路ICで使用される異なるリセット回路構成
オープンドレイン出力は、出力をシステム内の任意の電圧にプルアップすることが可能なため、より高い柔軟性をシステム設計者に提供し、異なる電圧レベル(VIH、VIL)を必要とするプロセッサへの入力として機能する場合に役立ちます。プッシュプル出力構成は、同等の電圧レールを備えたシステムでより役立ちます。
パワーオンリセットグリッチ
起動時、出力MOSFETを駆動する内部回路は、電源電圧の立上がりがVPORに達するまで非アクティブです。この間、出力MOSFETはオフのままで、リセットはプルアップ電圧(VPULLUP)に比例して立ち上がります。電源電圧がVPOR以上になると、内部MOSFETはリセットを有効なリセット状態に駆動します。VCCが0VからVPORに立ち上がるときのこのリセット電圧の意図しない立上がりは一般にリセットグリッチと呼ばれ、信頼性の低いシステム動作を引き起こします。
図2. 従来の電圧監視回路ICの「電気的特性」の表に記載されているPOR電圧
"図3. リセットグリッチを示すパワーオンシーケンス
なぜグリッチのない監視回路ICか?
一般に、電圧監視回路ICはマイクロコントローラのリセット端子またはDC-DCコントローラのイネーブル端子を制御します。リセットグリッチの大きさがマイクロコントローラのリセット端子またはDC-DCコントローラのイネーブルの最小ハイロジックスレッショルド(VIH)に近いと、不正な信号をトリガする可能性があります。以下では、リセットグリッチがシステム設計の主要なパラメータの1つになる非常に重要なアプリケーションの例を紹介します。
低電圧プロセッサとのインタフェース
電圧監視回路ICは、電圧がわずか1Vの場合もあるFPGA、ASIC、またはDSPの低電圧レールの監視に使用することができます。低電圧プロセッサでは、I/Oロジックレベルは非常に微妙で、図3に示すようにVIHはわずか0.5Vの場合もあります。
起動時、FPGA、ASIC、またはDSPデバイスは、全電源レールが安定するまでリセット状態である必要があります。VDDがVPOR以下の場合RESETにグリッチがある可能性があるため、このグリッチはそれらの非常に重要なコンポーネントの未知の状態をトリガする可能性があります。VDDがVPOR以上になると、内部MOSFETがオンになり、RESETをGNDに接続して、RESETが正常なローのロジックレベルを出力するようにします。
図4. 電圧監視回路ICと低電圧プロセッサ(ASIC/FPGA/DSP)のインタフェース
DC-DCコントローラのイネーブルの制御
多くのアプリケーションで、さまざまなDC-DCコンバータは起動前に最小電源電圧を必要とするか、またはコンバータの突入要件に対応するために入力コンデンサに十分なエネルギーが必要です。十分なエネルギーがないと、突入電流によって入力電圧が過度に低下し、システムまたはコンバータのリセットを引き起こします。電圧監視回路ICでコンバータのイネーブル端子を制御することで、電源電圧が安定するか電圧監視回路ICの監視スレッショルド以上になるまでイネーブル端子をローに保持します。
起動時、リセットグリッチの大きさが最小イネーブルハイスレッショルド電圧(VIH)以上の場合、コントローラはトリガされシステム障害を引き起こす可能性があります。
図5. 電圧監視回路ICによるDC-DCコントローラのイネーブルの制御
グリッチのない動作のディスクリートソリューション
現在、システムエンジニアは監視回路ICのグリッチのない機能を模倣するために、図6に示すように従来の監視回路ICに外付け回路を追加しています。ソースフォロワ構成に設定された標準JFETを追加することによって、ソースの電圧はVGの電圧(ゲート電圧)からJFETのスレッショルド電圧を引いたものに従います。JFETのスレッショルドによってVGとVOUTの間に約1Vの降下が生じるため、内部回路が動作状態になるまで出力の電圧の上昇の可能性が排除されます。
図6. 従来の監視回路ICと外付けP-JFETによるグリッチのない動作の実現
集積ソリューションによるグリッチのない動作
マキシムはnanoPower、真のグリッチのない電圧監視回路ICのMAX16161/MAX16162を発表しました。MAX16161/MAX16162は、たとえVCCが0Vの場合でもRESET端子を介して電流をシンクすることができます。これによって、電源電圧がゼロでのRESETの有効な状態が保証され、グリッチのないパワーアップ/ダウン動作を提供します(図7)。
MAX16161/MAX16162はグリッチのない動作のために外付け部品を必要とせず、小型でコスト効率に優れたソリューションを提供します。MAX16161/MAX16162の主な特長と利点は、以下のとおりです。
- パワーアップグリッチなし
- 825nA (typ)の自己消費電流によってバッテリ駆動時間を延長
- 正および負レベルトリガのMR入力オプション(MAX16161)
- MRデバウンス回路(MAX16161)
- 個別のVCCおよびVIN入力(MAX16162)
- 複数の利用可能なリセットタイムアウト時間
- スレッショルド電圧オプション:1.7V~4.85V (MAX16161)、0.6V~4.85V (MAX16162)
- 小型4ピンWLPおよび4ピンSOT23パッケージ
- 広い動作温度範囲:-40℃~+125℃
図7. MAX16162のアプリケーション図およびタイミング図
試験結果
MAX16161をパワーオングリッチのある従来の監視回路ICと比較し、グリッチのない監視回路ICがLDOのスムーズな起動にどのように役立つかを示します。図8は、LDOとINレール(1.8V)を監視する従来の監視回路ICとの基本的な接続を示しています。
監視回路ICのスレッショルドは1.7Vに設定されており、LDOの最小電源要件以上です。
図8. 電圧監視回路IC (パワーオングリッチあり)によるMAX38908のイネーブルの制御
図9はLDO (MAX38908)の起動時応答を示し、VBIAS (ピンク)は3Vに設定され、IN (緑)は0から1.8Vに立ち上がっています。電圧監視回路IC (VPORは1.1V)はINを監視します。RESETはMAX38908のEN (青)に接続され、INにプルアップされています。イネーブルがVOH (1V)レベル以上になったとき、LDO出力(黄色)が不正に現れます。INがVPOR (1.1V)以上になると、INはスレッショルド電圧(1.7V)以下のためRESETはローに引き下げられます。これによってLDOの出力が放電されます。
図9. イネーブルのグリッチが不正な出力を引き起こしているMAX38908の起動シーケンス
INがスレッショルド電圧を超えたあと、監視回路ICはハイに引き上げられLDOをイネーブルします。
同様のテストを、グリッチのない電圧監視回路ICのMAX16161で繰り返します。この実験では、図10に示すように、たとえINがVPOR以下の場合でもRESETはローに引き下げられ、LDOの不正なOUTはないことがわかります。
図10. MAX16161 (グリッチのない監視回路IC)によるMAX38908のイネーブルの制御
図11. MAX16161によってクリーンなイネーブルが生成されるMAX38908の起動シーケンス
まとめ
真のグリッチのない監視回路ICは、もう単なる概念ではありません。設計者はnanoPower MAX16161/MAX16162によって、ゼロ電源電圧付近で高信頼性のリセット信号を生成して低電圧(1V以下)電子回路の電源監視を実現し、小型パッケージで提供され、わずか825nAの自己消費電流でシステムのバッテリ駆動時間の延長に役立つ監視回路ICを手に入れることができます。
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