大電流電源における正確なマルチフェーズ電流分担を実現するサブ・ミリオームDCR電流センス
電子デバイスの機能的な複雑さが増大し、マイクロプロセッサの計算速度向上や環境への配慮の必要性が高まることにより、電源に対する要求もますます厳しくなってきています。とくに大電流の電源に関しては、最高の効率で動作することが期待されています。導通損失を最小限に抑えるため電源は負荷の近くに配置する必要があり、同じ基板上に複数の電力段が存在します。さらに個々の電力段は、限られた基板面積に収まるように小型化する必要があります。基板面積当たりの最高の性能を達成するため、コントローラは、パワーブロック、DrMOS、MOSFET使用の外付けゲート・ドライバなど、外部の電力段と連携する必要があります。
LTC3861 は、パワーブロック、DrMOS、および外付けゲート・ドライバと連動できるマルチフェーズ・デュアル出力の同期整流式降圧DC/DCコントローラです。このデバイスは、デュアル出力、3+1出力、または最大12相のシングル出力降圧コンバータとして動作できるだけの柔軟性を備えています。
LTC3861は、固定周波数電圧モード・アーキテクチャの採用に加え、非常にオフセットが小さい広帯域エラーアンプと、チャネル毎のリモート出力検出用差動アンプを組み合わせることで、優れた過渡応答と出力安定化を実現します。エラーアンプと差動アンプの利得帯域幅は40MHzと高いため、出力リップルを最小化する目的ですべての出力コンデンサに低ESRのセラミック・コンデンサを使用した場合でも、ループ補償および過渡応答に影響しません。差動アンプは、0.6V~VCC – 0.5Vの全出力電圧範囲にわたって、抵抗分割された帰還電圧を差動で検出し、電源グランドとコントローラのグランド間の電位差とは無関係に、LTC3861が実際の出力電圧を読み取れるようになっています。
電圧モードの制御ループでは、エラーアンプ出力が鋸歯状のランプ波と比較され、これによってコンバータのデューティ比を直接制御します。エラーアンプの出力電圧は、差動で検出された出力電圧と基準電圧との間の誤差信号の大きさに比例します。600mVのリファレンスの精度は、0°C~ 85°Cの温度範囲で±0.75%です。この基準電圧の精度と、エラーアンプの持つ低いオフセットの組み合わせにより、-40°C~125°Cの温度範囲で±1.3%の全出力安定精度が保証されます。
LTC3861は、入力電圧の変化を補償するためにデューティ比を瞬時に調整するフィードフォワード補正方式を使用して優れた入力過渡応答を実現し、出力のオーバーシュートとアンダーシュートを大幅に低減しています。この方式により、DCループの利得が入力電圧に依存しません。コンバータの最小オン時間は20ns なので、高い周波数で動作する降圧比の高いコンバータに最適です。動作周波数は抵抗により250kHz~ 2.25MHz の範囲にプログラムできますが、内蔵のPLLにより外部クロックに同期させることもできます。
マルチフェーズの電流分担
このコントローラはセンス抵抗、または低損失のインダクタ直流抵抗(DCR)による電流センスを使用して、位相間の電流バランスを保ち、過電流保護を実現します。マルチフェーズ動作時には、LTC3861は電流分担の補助ループを組み込みます。このループは、FBピンに対する設定と、IAVGピンへのコンデンサの追加によって作動します。IAVGピンの電圧は、マスタ位相の瞬間的な平均インダクタ電流と一致します。各スレーブ位相は、そのインダクタ電流とマスタのインダクタ電流との差を積分します。ILIMピンに接続されている抵抗は、正と負の過電流フォルト保護コンパレータのしきい値を設定します。–40°C~125°Cの温度範囲での位相間での電流検出ミスマッチの最大値は、±1.25mVです。
回路の性能
低DCRによる検出機能を備えた効率の高い12V入力0.9V/120A出力の4 相降圧コンバータを図1に示します。この設計回路では、DCR= 0.45mΩ のインダクタを使用しています。120Aの最大負荷電流では、4つの位相間での電流分担精度は±2.15%です。図2に、負荷電流を変えた場合に位相間の電流分担がどのようになるかを示します。

図1.DrMOSを使用した4相、VIN =12V、VOUT = 0.9V/120A降圧コンバータ、fSW = 500kHz

図2.負荷電流を変化させたときの4つの位相間での電流分担
図3に示す120A負荷時の熱画像は、最も高温のスポットがチャネル2および3のMOSFETであることを表しています。120Aの最大負荷での効率は、図4に示すように86%に近い値です。図5は、定常状態での電圧リップルが出力電圧の約±0.3%であることを示しています。負荷ステップに対するトランジェント解析は、最大負荷の75%から100%まで負荷を変化することによって行われました。これは、90Aから120Aまで振幅30Aの負荷ステップになります。負荷ステップ時のピーク・トゥ・ピークの電圧オーバーシュートおよびアンダーシュートは60mVで、これは出力電圧の約±3.3%です。

図3.0.9V/120A、400 FPM、fSW = 500kHzでの熱画像

図4.4相、0.9V/120Aコンバータの効率

図5.定常状態での電圧リップル

図6.90Aから120Aまでの30A負荷ステップのトランジェント応答
まとめ
LTC3861は、最大12 相のマルチフェーズ電源における正確な電流分担機能を備えた電圧モード・コントローラです。このデバイスはゲート・ドライバ出力のかわりに、トライステートのPWM出力を備えているので、大電流の経路から離して配置することができます。出力電圧を差動で検出するので、電源グランドとLTC3861のグランド間の電位差は負荷安定化に影響しません。
LTC3861は、DrMOS、パワーブロック、およびLTC4449ゲート・ドライバと組み合わせた外付けのMOSFETを制御します。このデバイスは、大電流の分散給電システム、DSP、FPGA、およびASIC電源、データ通信システム、電気通信システム、および産業用電源に使用されます。LTC3861は、36ピンの5mm×6mm QFNパッケージで供給されます。さらに、LTC3861-1は、LTC3860とピン互換の32ピンの5mm×5mmQFNパッケージで供給されます。
著者について
{{modalTitle}}
{{modalDescription}}
{{dropdownTitle}}
- {{defaultSelectedText}} {{#each projectNames}}
- {{name}} {{/each}} {{#if newProjectText}}
-
{{newProjectText}}
{{/if}}
{{newProjectTitle}}
{{projectNameErrorText}}