DS2784への残量ゲージパラメータの格納

2007年10月16日
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要約

DS2784は、アプリケーションおよび使用バッテリの正確な要件に合わせてユーザがスタンドアロン残量ゲージをカスタマイズすることが可能です。要求されるパラメータは、一般的にmA、V、mAhrs、mΩなどの単位で知られているものです。DS2784には、これらのパラメータをµV、µVhrs、mhoなどの単位で格納する必要があります。このアプリケーションノートでは、一般的な単位から実際にデバイスに格納される単位への変換に必要な計算について解説します。

はじめに

DS2784スタンドアロン残量ゲージは簡単に使用することができ、アプリケーションに応じた正しいパラメータがデバイスに格納されていれば、非常に正確です。残量ゲージを最適化するには、正しいデータを格納することが非常に重要です。DS2784Kは、DS2784を簡単にプログラムするための方法を提供します。図1に示すように、ユーザはバッテリの特性およびその他のアプリケーションデータを、mA、V、mAhrs、mΩなどの単位で入力します。その後、図2に示すように、DS2784Kがそのデータを実際にデバイスに格納される形式に変換します。DS2784に格納されるすべてのパラメータの選択方法については、アプリケーションノート3463:「Getting Started with the DS2780」で解説しています。以下のテキストでは、それらのパラメータをデバイスに格納する際に必要となる計算について解説します。

図1. ParametersタブのApplication Unitsサブタブを使って、mA、V、mAhrs、mΩなどの慣習的な単位でユーザがアプリケーションデータを入力します。

図1. ParametersタブのApplication Unitsサブタブを使って、mA、V、mAhrs、mΩなどの慣習的な単位でユーザがアプリケーションデータを入力します。

図2. ParametersタブのDevice Unitsサブタブに、実際にDS2784に格納されるパラメータが表示されます。

図2. ParametersタブのDevice Unitsサブタブに、実際にDS2784に格納されるパラメータが表示されます。

計算

図1は、DS2784が残量ゲージとして正確に動作するために必要なパラメータを示しています。Write & Copyボタンをクリックすると、図2に示すように、DS2784Kソフトウェアがパラメータを実際にデバイスに格納される形式に変換します。そしてそれらの値が、EEPROMのアドレス60h~7Fhに書き込まれ、コピーされます。

以下の各セクションでは、アプリケーションのパラメータから実際にデバイスの各アドレスに格納される値への変換に必要な計算を示します。計算の中で使用する単位を表すために、AccBias_µVで積算バイアス(Accumulation Bias)レジスタの値をµVで表したものを示し、AccBias_mAで同じ値をmAで表したものを示すという形を使用します。各EEPROMアドレスにプログラムする値は、ValueStored (EEPROMアドレス)という形式を使って16進数で示してあり、それぞれ1バイト長です。以下の計算におけるデータ例は図1の値を式中で使用しており、結果として図2の値が与えられます。


Controlレジスタ(アドレス60h)


Controlレジスタはアドレス60hに格納され、各ビットはDS2784のデータシートに記述された配列になります。計算は不要です。


Accumulation Biasレジスタ(アドレス61h)


Accumulation Biasレジスタは、検出抵抗を通過しないバッテリ電流、またはバッテリの自己放電を推定するために使用されます。これは、LSB値1.5625µV/RSNSの符合付きレジスタです。アドレス61hに格納され、範囲は-200.000µV~198.4375µVです。検出抵抗の値を20mΩとすると、78.125µAステップで-10mA~9.921875mAの範囲になります。

AccBias_µV = AccBias_mA × SenseResistor_mΩ
AccBias_µV = 0.3125mA × 20.00mΩ
AccBias_µV = 6.25µV

式1


Aging Capacityレジスタ(アドレス62/63h)


Aging Capacityレジスタには、通常の使用中におけるバッテリ容量減少の推定に使用する定格容量を格納します。これは、LSB値6.25µVhr/RSNSの符合なしレジスタです。アドレス62hおよび63hに格納され、範囲は0~409.59375mVhrsです。検出抵抗の値を20mΩとすると、0.3125mAhrsステップで0~20479.68755mAhrsの範囲になります。

AgingCapacity_µVhrs = AgingCapacity_mAhrs × SenseResistor_mΩ
AgingCapacity_µVhrs = 1220mAhrs × 20.00mΩ
AgingCapacity_µVhrs = 24,400µVhrs

式2


Charge Voltageレジスタ(アドレス64h)


Charge Voltageレジスタには、満充電状態の検出に使用する充電電圧スレッショルドを格納します。これは、LSB値19.52mVの符合なしレジスタです。アドレス64hに格納され、範囲は0~4.9776Vです。

式3


Minimum Charge Currentレジスタ(アドレス65h)


Minimum Charge Currentレジスタには、満充電状態を検出するための充電電流スレッショルドを格納します。これは、LSB値50µVの符合なしレジスタです。アドレス65hに格納され、範囲は0~12.75mVです。検出抵抗の値を20mΩとすると、2.5mAステップで0~637.5mAの範囲になります。

ChargeCurrent_µV = ChargeCurrent_mA × SenseResistor_mΩ
ChargeCurrent_µV = 80mA × 20.00mΩ
ChargeCurrent_µV = 1600µV

式4


Active Empty Voltageレジスタ(アドレス66h)


Active Empty Voltageレジスタには、アクティブエンプティポイントの検出に使用する電圧スレッショルドを格納します。これは、LSB値19.52mVの符合なしレジスタです。アドレス66hに格納され、範囲は0~4.9776Vです。

式5


Active Empty Currentレジスタ(アドレス67h)


Active Empty Currentレジスタには、アクティブエンプティポイントを検出するための放電電流スレッショルドを格納します。これは、LSB値200µVの符合なしレジスタです。アドレス67hに格納され、範囲は0~51.2mVです。検出抵抗の値を20mΩとすると、10mAステップで0~2560mAの範囲になります。

AECurrent_µV = AECurrent_mA × SenseResistor_mΩ
AECurrent_µV = 240mA × 20.00mΩ
AECurrent_µV = 4800µV

式6


Active Empty 40レジスタ(アドレス68h)


Active Empty 40レジスタには、(DS2784のデータシートの図11に示されている) +40℃でのアクティブエンプティポイントの値を格納します。これは、+40℃におけるフルポイントのppm (百万分率)をLSB値とする符合なしレジスタです。アドレス68hに格納され、範囲は+40℃におけるフルポイントの0~24.9%です。

式7


Sense Resistor Primeレジスタ(アドレス69h)


Sense Resistor Prime (RSNSP)レジスタには、絶対的な容量の結果を計算するための検出抵抗の値を格納します。これは、LSB値1mhoの符合なしレジスタです。アドレス69hに格納され、範囲は1mho~255mho、すなわち1Ω~3.922mΩです。

式8


Full 40レジスタ(アドレス6A/6Bh)


Full 40レジスタには、+40℃におけるフルポイントの値を格納します(DS2784のデータシートの図11参照)。これは、LSB値6.25µVhr/RSNSの符合なしレジスタです。アドレス6Ahおよび6Bhに格納され、範囲は0~409.59375mVhrs/RSNSです。検出抵抗の値を20mΩとすると、0.3125mAhrsステップで0~20479.6785mAhrsの範囲になります。

Full40_µVhrs = Full40_mAhrs × SenseResistor_mΩ
Full40_µVhrs = 1051mAhrs × 20.00mΩ
Full40_µVhrs = 21020µVhrs

式9


フルの傾き(アドレス6Ch~6Fh)


+40℃におけるフルポイントはレジスタに格納される値(フル40)であり、他の温度におけるフルポイントは、フルのラインの傾きを使用して計算されます(DS2784のデータシートの図4参照)。プログラマブルな各温度ポイント(T34、T23、T12)間のフルのラインの傾きを、ppm/℃を単位とする符合なしバイトで格納します。+40℃におけるフルポイントは、フルのライン上で最も高い点であるものとされます。フルのラインは、どの温度のフルポイントも必ず次に高い温度のフルポイント以下になるように、1度ごとの増分で再現されます。傾きは、0~15564ppm/℃の範囲が可能です。注:デバイスに格納される温度ポイントは3点だけですが、フルのセグメント1の傾きを計算するために第4のポイント(T01)が必要になります。

以下の式で使用している変数は、次のような意味と形式を備えています。Full Seg_4 Slopeは、+40℃におけるフルポイントと温度T34におけるフルポイントとの間の傾きを示します。Full_40C_mAhrsは、+40℃におけるフルポイントをmAhrsで示したものです。Full_T34_mAhrsは、温度T34におけるフルポイントをmAhrsで示したものです。T34は、温度ブレークポイントを℃で示したものです。他の式で使用している変数も、同じ形式に従っています。

式10


アクティブエンプティの傾き(アドレス70h~73h)


アクティブエンプティのラインは、フルのラインと同様に再現されます。+40℃でのアクティブエンプティポイントはレジスタに格納される値(アクティブエンプティ40)であり、他の温度におけるアクティブエンプティポイントは、各温度ブレークポイント(T34、T23、T12)間の傾きから計算されます。各アクティブエンプティポイント間の傾きは、ppm/℃を単位とする符合なしバイトで格納します。アクティブエンプティのラインは、どの温度のアクティブエンプティポイントも必ず次に高い温度のアクティブエンプティポイント以上になるように、1度ごとの増分で再現されます。傾きは、0~15564ppm/℃の範囲が可能です。注:デバイスに格納される温度ポイントは3点だけですが、AEのセグメント1の傾きを計算するために第4のポイント(T01)が必要になります。

以下の式で使用している変数は、次のような意味と形式を備えています。AE Seg_4 Slopeは、+40℃におけるアクティブエンプティポイントと温度T34におけるアクティブエンプティポイントとの間の傾きを示します。AE_40C_mAhrsは、+40℃におけるアクティブエンプティポイントをmAhrsで示したものです。AE_T34_mAhrsは、温度ブレークポイントT34におけるアクティブエンプティポイントをmAhrsで示したものです。T34は、温度ブレークポイントを℃で示したものです。

式11


スタンバイエンプティの傾き(アドレス74h~77h)


スタンバイエンプティのラインは、フルおよびアクティブエンプティのラインと同様に再現されます。+40℃におけるスタンバイエンプティポイントは、ゼロに固定されています。他の温度におけるスタンバイエンプティポイントは、各温度ブレークポイント(T34、T23、およびT12)間の傾きから計算されます。各スタンバイエンプティポイント間の傾きは、ppm/℃を単位とする符合なしバイトで格納します。スタンバイエンプティのラインは、どの温度のスタンバイエンプティポイントも必ず次に高い温度のスタンバイエンプティポイント以上になるように、1度ごとの増分で再現されます。傾きは、0~15564ppm/℃の範囲が可能です。注:デバイスに格納される温度ポイントは3点だけですが、SEのセグメント1の傾きを計算するために第4のポイント(T01)が必要になります。

以下の式で使用している変数は、次のような形式と意味を備えています。SE Seg_4 Slopeは、+40℃におけるスタンバイエンプティポイント(値はゼロ)と温度T34におけるスタンバイエンプティポイントとの間の傾きを示します。SE_40C_mAhrsは、+40℃におけるスタンバイエンプティポイントをmAhrsで示したものです。SE_T34_mAhrsは、温度T34におけるスタンバイエンプティポイントをmAhrsで示したものです。T34は、温度ブレークポイントを℃で示したものです。

式12


Sense Resistor Gainレジスタ(アドレス78/79h)


Sense Resistor Gain (RSGAIN)レジスタには、SNSとVSSの間に基準電圧が印加されているときに電流レジスタの正確な読み値を生成するための較正係数を格納します。これは、LSB値1/1024の11ビット値です。アドレス78hおよび79hに格納され、範囲は0~1.999です。このレジスタの名目値は1.000です。

式13

Sense Resistor Temperature Coefficientレジスタ(アドレス7Ah)

Sense Resistor Temperature Coefficient (RSTCO)レジスタには、検出抵抗の温度係数を格納します。これはLSB値30.5176ppm/℃の8ビット値です。アドレス7Ahに格納され、範囲は0~7782ppm/℃です。値が0の場合、温度補償機能が無効化されます。

式14


Current Offset Biasレジスタ(アドレス7Bh)


Current Offset Biasレジスタによって、生の電流測定値にプログラマブルなオフセット値を付加することが可能になっています。これは、LSB値1.5625µV/RSNSの符合付きレジスタです。アドレス7Bhに格納され、範囲は-200.000µV~198.4375µVです。検出抵抗の値を20mΩとすると、78.125µAステップで-10mA~9.921875mAの範囲になります。

OffsetBias_µV = OffsetBias_mA × SenseResistor_mΩ
OffsetBias_µV = -0.3125mA × 20.00mΩ
OffsetBias_µV = -6.25µV

式15


温度ブレークポイント(アドレス7Ch~7Eh)


フル、アクティブエンプティ、およびスタンバイエンプティの各ライン(DS2784のデータシートの図4参照)は、前述のように計算される傾きと、3つのプログラマブルな温度ブレークポイント(T34、T23、T12)とを使用して再現されます。これらのブレークポイントは、LSB値+1℃、範囲-128℃~+40℃の符合付きレジスタとして格納します。

ValueStored (7Ch) = T34 = +18°C = 12h
ValueStored (7Dh) = T23 = 0°C = 00h
ValueStored (7Eh) = T12 = -12°C = F4h


Protection Thresholdレジスタ(アドレス7Fh)


Protection Thresholdレジスタはアドレス7Fhに格納され、各ビットはDS2784のデータシートに記述された配列になります。計算は不要です。

結論

DS2784は、アプリケーションの精密なパラメータに合わせてユーザが残量ゲージをカスタマイズすることが可能です。しかし、デバイスに格納される単位は、一般的に使用されている単位ではありません。このアプリケーションノートで概説した計算に従うことによって、理解しやすい単位から、DS2784によって要求される単位に変換することができます。



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