要約
このアプリケーションノートでは、リモートキーレスエントリ(RKE)システム、タイヤ圧モニタ(TPM)、ガレージ開閉器、ホームセキュリティセンサ、またはTVリモコンなど、今日のハンドヘルドトランスミッタアプリケーションに使用されている各種アンテナについて詳述します。このアプリケーションノートでは、ループ/ホイップ、立体ストリップ/「ペーパークリップ」、従来型ホイップ、ヘリカル、およびパッチの各アンテナについて検討し、それらをマキシムのトランスミッタにマッチングさせるネットワークを紹介します。
はじめに
リモートキーレスエントリ(RKE)、タイヤ圧モニタ(TPM)、ガレージ開閉器、ホームセキュリティセンサ、およびTVリモコンに使用されるトランスミッタ用アンテナは、超小型パッケージに収まる必要があります。このため、これらのアプリケーションに使用されるほとんどすべてのアンテナは、電気的に短くなります(大きさは0.1波長以下)。このアプリケーションノートでは、これらのアンテナの形成方法について説明し、それらのインピーダンスの推定値を提供します。
アンテナのタイプ
プリント基板ループまたはホイップアンテナ
プリント基板ループまたはホイップアンテナは、プリント基板(PCB)上の円形、楕円形、正方形、または長方形のトレースです。両面PCBがアプリケーションで使用される場合、アンテナの下のPCBの反対面は何もない状態にする必要があります。アンテナの下にグランドプレーンや他のトレースを配置することはできません。
入力(「アンテナトレースの駆動」または「給電点」端とも呼ばれる)は、じかに、またはマッチングネットワークを介して、パワーアンプ(PA)に接続されます。マッチングネットワークの各コンポーネントは、PCBの反対面のグランドプレーン上に配置されています。PCBの反対面のグランドプレーンがプリントアンテナの下の領域が何もない状態になるように終端するのは通常、駆動端の側です。プリントアンテナの他端は、グランドプレーンに接続されます。これは通常、ビアで真下のグランドプレーンに接続されるPCBの最上層の大きな領域でトレースを終端して行いますが、アンテナをビアで下のグランドプレーンにじかに接続することによって行うこともできます。
アンテナの他端がオープンの場合、アンテナはホイップ、または単極アンテナになります。ホイップは、直線、または円形/楕円形/正方形/矩形の一部分であるトレースを走らせることによって、PCB上にプリントすることができます。図1は、PCBループ/ホイップアンテナの略図です。
図1. PCBループまたはホイップアンテナ
多用途のアンテナは、グランドへの短絡で終端されずに、オープンまたはグランドに短絡可能なパッド/接続で終端するループです。パッドには、インダクタまたはコンデンサを配置し、アンテナの適切な周波数チューニングを補助することができます。
ハンドへルドトランスミッタ(各辺2cm~5cm)の標準サイズの小さいループは、30nH~100nHのインダクタンスと数Ωの等価直列抵抗を持っています。理論的には、直列抵抗は1Ωより小さくなりますが、基板損失、任意のカバーからの誘電損失、他の回路コンポーネントへの結合、および測定許容差によって、抵抗部はネットワークアナライザで10Ωの高さまで測定することができます。
標準サイズのハンドヘルドトランスミッタによる小さいホイップは、1pF~5pFの容量と数Ωの等価直列抵抗を持っています。小さいホイップ用の理論的な直列抵抗は、同サイズの小さいループの直列抵抗の約10倍ですが、それでもまだ小型で、実際の測定抵抗は、ループアンテナの場合とほぼ同じです。
プリントアンテナはコストを節約しますが、それらを使用した場合の不利点は、それらの特性が基板材料とトレースの製作公差に依存していることです。格段に多くの反復可能な特性を利用可能な表面実装アンテナがあります。アンテナ設計の一貫性が重要な場合はそれらを考慮する必要があります。
立体ストリップまたは「ペーパークリップ」アンテナ
立体状またはペーパークリップアンテナ(図2)は、プリントループまたはホイップアンテナと非常に類似しています。通常、PCBに接続し、数ミリメートル立ち上った後、プリントアンテナと同じ曲線をたどるのは、外部ワイヤまたは金属製のフラットストリップです。このタイプの小さな利点は、PCB上の他のコンポーネントから少し離れていることです。アンテナの遠端は、浮遊させたままにする、非導電性の支持棒によって支える、または、下方向に曲げてPCBに接続することができます。PCB上では、それは、配置されることができるパッドまで進み、グランドプレーンに接続する、オープン状態を維持する、またはインダクタまたはコンデンサなどの受動素子を介してグランドに接続することができます。
図2. 立体ストリップアンテナ
立体ストリップアンテナのインピーダンスは、プリントアンテナのインピーダンスに非常に類似しています。
従来型ホイップアンテナ
一部のハンドヘルドデバイスは、従来型ホイップまたは「スタブ」アンテナ用に別方向のスペースを持っています。このアンテナは通常、2cm~5cmのワイヤで、多くの場合、保護的な誘電材料で被覆されています。これは、性能データを持っている既成(OTS)のアンテナ、または「DIY」の金属片が可能です。OTSアンテナは、一部のPCBアンテナより多くの反復可能なインピーダンス特性を持っています。その理由は、これらのアンテナがより多くの内部損失を経験して抵抗がより大きくなるためである可能性があります。一部の大型OTSアンテナは、リアクタンス(容量またはインダクタンス)なしに50Ω近いインピーダンスを持つことができます。これらは、容量を調整することができる内部インダクタを持つこともできます。図3は、2つのスタンドアロン型のホイップアンテナを示しています。
図3. スタンドアロン型ホイップアンテナ(アンテナ要素の拡大写真)
ヘリカルアンテナ
ヘリカルアンテナは、太いホイップアンテナに非常に類似しています。これは通常、2cm~5cmの細いワイヤのコイルで、図4に1例が示されています。多くのユーザは、各自のアプリケーション用に独自のコイルを巻きます。また、ヘリカルアンテナのOTSバージョンもあります。大部分のこれらのヘリカルアンテナは、20Ω~50Ωの実数、およびほぼ0Ωの虚数(つまり、容量またはインダクタンスなし)のインピーダンスを持っています。これらの値の論拠は、巻線のインダクタンスがホイップアンテナの固有容量を取り消すことです。ヘリカルアンテナは、マッチングが容易ですが、同サイズの他のアンテナより良く放射しません。
図4. ヘリカルアンテナ(アンテナ要素の拡大写真)
パッチアンテナ
パッチアンテナは、300MHz~450MHzでほとんど使用されていません。その理由は、これらのアンテナの従来のサイズが通常、波長の¼であるためです。他のPCBアンテナと異なり、パッチアンテナはPCBの反対面にグランドプレーンを持っています。小さいパッチアンテナのインピーダンスは、ホイップのインピーダンスに類似しています。その理由は、アンテナの駆動されない端がオープンで、容量を形成するためです。小さいパッチアンテナのインピーダンスは、直列抵抗が小さい1pF~5pFのコンデンサに似ています。
マキシムのトランスミッタ用の汎用マッチングネットワーク
図5は、マキシムのトランスミッタを上述の任意のアンテナにマッチングさせる優れたネットワークを示しています。指定されたパッドは、希望するアンテナタイプに応じて、インダクタまたはコンデンサをその上に配置することができます。直列エレメントE6、またはシャントエレメントE5を使用し、一部またはすべてのリアクタンスの調整とアンテナの等価抵抗の変更を行うことができます。エレメントE3、E4、およびE5は通常、パイネットワーク(pi-network)のローパスフィルタ(LPF)を形成しPA出力から高次の高調波を除去するために使用されます。E5がアンテナのチューニングエレメントとして使用される場合、その値をパイネットワークLPFに必要な値と組み合わせることができます。インダクタ(L1)はRFをDC電源から絶縁するために必要となり、コンデンサ(C1)はDCブロックを提供するために必要となりますが、必要に応じて、それらの値を選択し、別のインピーダンス変換を実行することもできます。大部分のマキシムのトランスミッタは、125Ω~250Ωの抵抗(実数のインピーダンス)を駆動している場合、それらの最大効率とパワー出力で機能します。例外は、60Ω~120Ωの抵抗で最適に動作する高パワーのMAX7044です。この理由は、MAX7044がより小さい負荷抵抗においてRF電圧振幅を維持しているためです。
図5. ループ、ホイップ、ヘリカル、その他の一般的なアンテナを採用するトランスミッタ用の汎用マッチングネットワーク
図6は、小さいPCBループアンテナ用のマッチングネットワークを示しています。直列コンデンサC4の値は、ループのインダクタンスのほとんど(全部ではない)を調整するために選択されます。このインダクタンスは、小さい直列抵抗を、ネットワークの残りのためのより管理可能な抵抗に変換します。
図6. PCBループアンテナ用のマッチングネットワーク案
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