簡単なPSPICEモデルによるMAX8546の安定性と過渡応答の予測

2005年02月07日
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要約

MAX8546はローコスト、広入力電圧範囲のフォールドバック電流制限を備えたステップダウンコントローラです。MAX8546の設計用にオープンループゲインのボード線図を生成し、負荷過渡応答を推定する簡単なPSPICEモデルを提示します。

MAX8546はローコスト、広入力電圧範囲のフォールドバック電流制限を備えたステップダウンコントローラです。スイッチング周波数は300kHzであるため、フェライトインダクタやアルミ電解コンデンサなどのローコストの外付け部品の使用に適し、なおかつ、良好な過渡応答を得るために必要な帯域幅が確保されます。ローサイドMOSFETのRds(on)を利用してローコストの無損失過電流保護が達成されます。MAX8546用の詳細な設計手法はMAX8546のデータシートに示されています。

ここに提示するのはそれとは別のデザインツールである簡単なPSPICEモデルであり、MAX8546の設計用にオープンループゲインのボード線図を生成し、負荷過渡応答を推定します。モデル化のために使用する評価キットのアプリケーション回路はダウンロードして使用することができます。そのモデルは簡単であり、ダウンロード可能なPSPICEの評価版で実行することができます。

図1にはDC入力電圧が一定のステップダウンコンバータのACモデルが示されています。出力LCフィルタと負荷を駆動するAC電圧はDC入力電圧のVin、および補償されたコントローラの出力であるデューティサイクルの摂動(perturbation)との積です。

Figure 1. Model of step-down converter for AC analysis.
図1. AC解析用のステップダウンコンバータのモデル。

図2はACモデルのPSPICEによる実装が示されています。出力電圧は抵抗R1とR2によって分圧されてフィードバックスレッショルド電圧のVfbになります。MAX8546のトランスコンダクタンスエラーアンプはデータシートに規定されている108µsの利得を備えた電圧制御電流源のGでモデル化されています。MAX8546のCOMP端子に接続された補償回路はR4とC10で構成されます。トランスコンダクタンスアンプの出力抵抗Roは37MΩに設定されています。MAX8546はPWMコンパレータ用に1Vのランプ波を使用するため、PWM変調器の小信号利得は1です。コントローラの出力を入力DC電圧(12V)に等価な利得で乗算し、その結果のAC電圧によって出力LCフィルタと負荷が駆動されます。図示されているように出力コンデンサのESRやインダクタの直列抵抗などの寄生要素を含める必要があります。PSPICEでは100mVのAC電圧源V2が周波数領域のAC解析用にループを摂動します。V2の正端子からその負の端子までの利得がオープンループの利得になります。このようにして得られたボード線図が図3に示されています。およそ85°の位相マージンがあるため、十分に制動されたシステムあることを示しています。

Figure 2. PSPICE schematic for MAX8546 AC analysis.
図2. MAX8546のAC解析用のPSPICE回路図。

Figure 3. Simulated open-loop gain and phase for step-down converter.
図3. ステップダウンコンバータのシミュレートされたオープンループ利得と位相。

負荷過渡応答は図4に示したPSPICE回路図の時間領域のシミュレーションから得られます。時間領域の解析ではAC源のV2が除去されます。パルス電流源のI2が3Aの負荷ステップをシミュレートします。負荷ステップのスルーレートはI2のTR (立上り時間)とTF (立下り時間)を設定することによって15A/µsに設定されます。図示されるように初期条件は各標準値に設定され、シミュレーションの設定用ダイアログボックス内の該当するボックスをチェックすると、PSPICEはバイアス点の計算をスキップするよう指示されます。補償コンデンサの場合は、初期条件はVo/Vinとして得られる標準のデューティサイクルに等しい電圧です。シミュレートされた負荷過渡応答が図5に示されています。十分に制動された出力電圧の過渡応答波形によってACモデルから得られた周波数応答が確認されます。

Figure 4. PSPICE schematic for MAX8546 time domain analysis.
図4. MAX8546の時間領域解析用のPSPICE回路図。

Figure 5. Simulated load transient response.
図5. シミュレートされた負荷過渡応答。

ピーク偏差のVoutは62mVであり、セットリング時間Tsは30µsです。図6はMAX8546の評価用キットで測定された実際の負荷過渡応答を示しています。この結果はモデルから推定した値に十分に一致しています。測定されたピーク偏移はおよそ65mVで、セットリングタイムはおよそ28µsです。

Figure 6. Measured load transient response.
図6. 測定された負荷過渡応答。

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