MOSFETをベースとする電流リミッタICの活用方法
電子回路では、電流制限の機能が必要になるケースは少なくありません。例えば、USBポートにおいては、電気回路を確実に保護するために過剰な電流が流れるのを防ぐ必要があります。また、電源バンク(モバイル・バッテリ)には、バッテリの異常な放電を防ぐための仕組みを設けなければなりません。放電によってあまりにも多くの電流が流れると、バッテリにおいて許容できないレベルの大きな電圧降下が生じます。つまり、下流のデバイスに対する供給電圧が低くなりすぎるおそれがあります。
パワー・コンバータにおいても、電流量を特定の値までに制限しなければならないケースが少なくありません。そのため、ほとんどのパワー・コンバータ製品は、過電流を防止するためのリミッタ回路を内蔵しています。それにより、過剰な電流による障害を防ぐということです。DC/DCコンバータ製品の中には、その閾値も調整できるようになっているものがあります。
図1に、電源バンクにおいて電流制限を行う場合の回路構成を示しました。この例では、昇圧DC/DCコンバータに対し、独立した電流リミッタ回路(青色)を適用しています。実際には、電流リミッタを内蔵するDC/DCコンバータ製品を使用することも可能です(上述したように、電流の制限値を調整可能なものも存在します)。その場合、図1の回路において電流リミッタのブロックを省くことができることになります。ただ、電源パスにおいてDC/DCコンバータを使用しないアプリケーションも少なくありません。その一例としては次のようなものが挙げられます。すなわち、システム内で利用可能な電圧が24Vで、負荷の動作にはまさに24Vの電圧が必要であるというケースです。そのラインの電流を制限する必要がある場合には、図1の例と同様に、電流リミッタを追加のブロックとして使用することになるでしょう。
電流リミッタは、保護用モジュールの一種です。つまり、ホット・スワップ・コントローラ、サージ・プロテクタ、電子回路プロテクタ、理想ダイオードといった保護用モジュールのカテゴリに含まれます。
上記の各保護用モジュールは、IC製品として提供されています。その大半は、電流のオン/オフを切り替えるためだけでなく、電流を制限するためのスイッチとしても外付けのMOSFETを使用します。電流を制限する場合、そのMOSFETの動作はリニア・レギュレータと似たようなものになります。但し、どのような条件においても、そのMOSFETは常に安全動作領域(SOA:Safe Operating Area)で動作するということを保証しなければなりません。SOAの範囲外で動作させると、MOSFET自身あるいは回路に損傷が生じる可能性があります。適切なMOSFETを選択し、そのSOAの範囲を決して超えないように動作させるのは、必ずしも容易なことではありません。その動作には、温度、電圧、電流の影響が及ぶからです。加えて、時間も特に大きな影響を及ぼす要因になります。安全な動作を保証するには、それらすべてについて考慮しなければなりません。図2は、標準的なNチャンネルのMOSFETのSOAを示したものです。このMOSFETは、青色の線よりも下の範囲で動作させなければなりません。
図3は、アナログ・デバイセズが提供する電流リミッタIC「MAX17523」の内部ブロック図です。同ICは、150mA~1Aの間の値に電流を制限するための2つのMOSFETを内蔵しています。このICでは、電流が閾値に達した場合、3種類のうちいずれかのモードで電流を制限します。1つ目のモードは、その電流を遮断して一定の時間待機した後、動作を再開するというものです。2つ目のモードは、次にスイッチがオンになるまで電流を連続的に遮断するというものです。3つ目のモードは、電圧を低下させることによって電流を制限するというものです。電流を制限する際、内蔵MOSFETは線形領域(オーミックな領域)で動作します。つまり、リニア・レギュレータと同じように機能します。調整が可能な各モードにおいて、内蔵MOSFETは必ずSOAの範囲内にあり、損傷が生じることはありません。また、複雑な計算や評価も必要ありません。
MAX17523のような集積度の高いICを適切に使用すれば、電子回路の電流制限は特に問題にはなりません。使用したいDC/DCコンバータが、調整が可能な電流リミッタ回路を内蔵していないケースもあるでしょう。そのような場合には、MAX17523のような製品を組み合わせるというのも合理的な対応方法となります。
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