要約
このアプリケーションノートでは、車載用照明アプリケーション向けHB LEDドライバの選択基準の概要を提示します。インテリア照明、エクステリア照明、およびディスプレイバックライトを含む様々な車載用照明アプリケーションのための、HB LEDドライバのトポロジと推奨される構成について概説します。
はじめに
消費者の間の環境に対する関心に牽引される形で、一般照明から車載用照明アプリケーションまでの幅広いアプリケーションにおいて、ソリッドステート照明(SSL)が照明技術として選ばれる例が急速に増えています。実際、市場調査会社Strategies Unlimitedは、今後数年間の高輝度LED (HB LED)市場における成長が、一般照明、ディスプレイバックライト、および車載アプリケーションによって推進されると予測しています。HB LEDドライバICの全体市場は、2011年には19億ドルに達すると予想されています¹。
HB LEDは、CCFLの水銀のような危険物質を含まず、消費電力が少なく、寿命が大幅に長いなど、従来の照明技術に対していくつかの優位性を備えています。さらに現在のHB LEDは、特に総所有コスト(すなわち、運用コストと維持コスト)を考えた場合、従来の技術に対して非常に高いコスト競争力があります。
しかし、特に車載アプリケーションの厳しい動作環境で使用する場合、HB LEDには固有の難題も伴います。このアプリケーションノートでは、HB LEDドライバの選択基準の概要を提示し、ドライバのトポロジについて概説し、ドーム照明、日中走行用ライト(DRL)、リアコンビネーションライト(RCL)、フォグランプ、およびロー/ハイビームライトを含む様々な車載用照明アプリケーション向けの構成を推奨します。
定電流を必要とするHB LED
HB LEDドライバ回路はHB LEDに供給される電力を管理するため、ドライバ回路が一定の電流を維持して、電圧の変動を最小限に抑えることが非常に重要です。駆動電流が大きすぎる場合、HB LEDの接合部温度が上昇し、それによってHB LEDの劣化が速まる可能性があります。
照明アプリケーションが要求するルーメン数が高い場合、大出力HB LEDの使用が必要になります。これらのHB LEDの順方向電流は、350mA~1A以上の範囲です。順方向電圧降下は、ホワイト、ブルー、およびグリーンHB LEDの場合は2.8V~4.5V、レッドおよびアンバーHB LEDの場合は2.3V~3.5Vの範囲で変化します。
一定のカラースペクトルと輝度を維持するためには、指定された電流定格でHB LEDを駆動する必要があります。電圧ソースでHB LEDを駆動して、直列抵抗によって電流を制限する方法では、輝度と放射スペクトルの変動が許容範囲を超える結果となります。
HB LEDの調光
HB LEDの色は、それを通る電流によって変化します。そのため、一般にHB LEDの調光は、実際に電流の大きさを変化させるのではなく、一定の電流をパルス幅変調(PWM)することによって行うべきです。すなわち、異なる輝度レベルにわたって放射スペクトルを維持するためには、DC電流をHB LEDのメーカーが指定する値に維持した上で、特定の周波数とデューティサイクルで電流を断続するのが最も良い方法です。視認可能なフリッカを防止するため、調光周波数は100Hz以上にしてください。調光範囲は、HB LEDドライバの最小デューティサイクル能力によって制限されます。
ほとんどのHB LEDドライバは、マイクロコントローラまたは外付けのタイマーからの調光信号を必要とします。しかし、MAX16806などの一部のHB LEDドライバは、DIM入力に印加する外部電圧で設定される変調に応じて、PWM信号を内部的に生成する機能を備えています(図1)。この構成では、自動車のインテリア照明アプリケーションについて、外付けのマイクロコントローラやスイッチモードコンバータが不要になります。
図1. MAX16806のような350mAのリニアHB LEDドライバICによって、マイクロコントローラやスイッチモードコンバータが不要になります。
インテリア照明に最適なリニアドライバ回路
最も良いのは、定電流ソースでHB LEDを駆動する方式です。定電流ソースを生成するための最も単純な回路は、HB LEDと直列にMOSFETを配置し、HB LEDの電流を測定し、それをリファレンス電圧と比較して、オペアンプ経由でそれをフィードバックしてMOSFETのゲートを制御するというものです。このタイプの回路は理想的定電流ソースのような挙動を示し、順方向電圧と電源電圧の変動に関係なく電流を一定に保ちます。
リニアドライバはスイッチモードドライバよりも実装が容易であり、高周波数スイッチングを使用しないためEMIの問題がありません。さらに、外付け部品点数を最小限に抑えることができるため、ソリューション全体のコストが削減されます。
MOSFETと高精度リファレンスを内蔵したMAX16806のようなリニアHB LEDドライバICは、各照明器具の輝度を一定にします(図1)。MAX16806は、HB LEDストリング両端での総電圧降下より1Vだけ高い入力電圧を要求します。外付けの検出抵抗によってHB LEDの電流が測定され、それによって入力電圧またはHB LEDの順方向電圧が変化した場合にMAX16806が電流を一定に保つことが可能になります。
リニアドライバの消費電力は、HB LEDの電流と、内部(または外部)の直列パスデバイス両端での電圧降下の積に等しくなります。HB LEDの電流または入力電圧が増大するにつれて電力損失も増大しますが、それによってリニアドライバの使用に限界が生じます。温度過昇によってHB LEDの寿命が短縮し、この光源の主な優位性の1つが失われることになるため、照明器具の消費電力を制限することが重要になります。
幸い、温度過昇はHB LEDの瞬間的な減光によって防止することができます。これを実現するために、MAX16806は入力電圧の測定を行います。電圧があらかじめプログラムされたレベルを超えると、HB LEDの電流が低減され、消費電力が減少します。この機能によって、異常なバッテリ高電圧状態に対してライトを減光することが可能な車載ドーム照明やDRLなどのアプリケーションでは、スイッチモードドライバが不要になる場合があります。
車載エクステリア照明に最適なスイッチモードステップダウンドライバ
入力電圧がHB LEDストリング両端の総電圧より高い場合は、スイッチモードステップダウン(バック)コンバータドライバ(図2)を使用するのが最善であり、照明器具における消費電力の最小化とドライバ効率の最大化が実現します。
図2. スイッチモードステップダウンコンバータドライバの使用によって、照明器具における消費電力の最小化とドライバ効率の最大化が実現します。
HB LEDの給電に最も広く使用されている汎用のバックコントローラとは異なり、MAX16819、MAX16820、MAX16822、およびMAX16832の各HB LEDドライバはヒステリシス内蔵の制御を採用しています。制御ループの補償が存在しないため、設計が単純化して、部品数がさらに減少します。内蔵の高電圧電流検出アンプと最大2MHzのスイッチング周波数によってスペースと部品数が削減されるため、フロントやリアの車載用照明(RCL、DRL、およびフォグ/ロービームライト)アプリケーションに最適です。
車載ヘッドライトに理想的なスイッチモードバックブースト(SEPIC)ドライバ
入力電源電圧がHB LEDストリング両端の総電圧の上下に変動する場合は、バックブーストドライバトポロジを使用してください。バックブースト構成では、HB LED電流の測定および安定化のためにフローティング電流検出アンプが必要になります。HB LEDの断線や短絡時に備えて、過電圧保護のような追加の保護回路も必要です。バックブースト回路は、入力電圧がコールドクランク時の5.5Vからダブルバッテリ状態の24Vまで変化する可能性がある車載フロントライトアプリケーションにおける大出力LEDの駆動に最適です。このドライバには、40Vを超えるロードダンプスパイクに対する耐性も要求されます。
MAX16812やMAX16831のような高度に集積化されたHB LEDドライバは、フロントライトアプリケーションの部品数とコストの削減に役立つ可能性があります。たとえばMAX16812には、単一のHB LEDストリングの電流を制御するように設計された、フローティング差動電流検出アンプと76V定格の0.2ΩパワーMOSFETが内蔵されています(図3)。さらに、内蔵の調光用MOSFETドライバが負荷ダンプ事象の発生時にLEDストリングへの電力を自動的に遮断することによって、システムの信頼性が強化されます。
図3. 入力電圧がHB LEDストリングの総電圧の上下に変動するアプリケーションでは、バックブーストドライバトポロジを使用してください。
車載用設計におけるLCDバックライトを可能にするスイッチモードブーストドライバ
入力電圧が常にHB LEDストリングの総電圧より低い場合は、ブーストコンバータが必要になります。これは、2010年モデル以降の自動車で、ヘッドアップディスプレイやLCDバックライトなどのアプリケーションに広く使用されています。これらのアプリケーションでは、自動車の車内で遭遇する幅広い周囲光条件に対応するために、3000:1の調光範囲が要求されます。非常に短時間でLEDのオン/オフを行うことができるように、ドライバは追加の調光用MOSFETドライバを備えている必要があります。調光用MOSFETは、ロードダンプ状態でのLEDの保護も行うことができます。
図4に、車載アプリケーションのLCDバックライト用に設計されたHB LEDドライバの図を示します。MAX16834には、ハイサイド電流検出アンプ、PWM調光用MOSFETドライバ、および堅牢な保護回路が内蔵されており、LCDバックライトアプリケーションを容易に実装することができます。このHB LEDドライバは3000:1のPWM調光範囲を提供し、コールドクランク時や負荷ダンプ事象の発生時にも安定した動作を保証する4.75V~28Vの入力動作電圧範囲を備えています。
図4. 3000:1の広い調光範囲と組込みの保護回路を備えたブーストドライバを、車載インフォテイメントアプリケーションのLCDバックライトに使用することができます。
まとめ
適切なHB LEDドライバを選択するためには、LED照明システムの理解に基づく最良のトレードオフが求められます。入力電圧、LED電流、LED順方向電圧、およびそれらの変動などの、基本的な電気的仕様から開始する必要があります。安全性、EMI、熱的、および機械的な仕様に加えて、利用可能な基板スペースについても考慮する必要があります。
インテリア照明のような、低コストで、実装が容易で、低EMIのアプリケーションには、リニアドライバを使用してください。スイッチモードドライバは、高出力、高効率、または広い入力動作電圧範囲を必要とする、エクステリア照明のようなアプリケーションに最適です。しかし、コストが増大し、EMIの問題が発生する可能性があります。
マキシムは、車載アプリケーションにおけるソリッドステート照明のサイズ、複雑性、コストの削減に特化して設計されたHB LEDドライバを、幅広いポートフォリオで提供しています。マキシムのすべての車載用照明ソリューションは、-40℃~+125℃での動作を完全に保証しており、短絡保護と熱シャットダウンに関する一般的な車載要件を満たしています。
参考文献
¹Strategies Unlimited、「The Market for High-Brightness LEDs in Lighting: Application Analysis and Forecast-2007」(2007年1月)。
この記事に関して
製品
ハイサイドLED電流検出およびPWM調光MOSFETドライバ内蔵、ハイパワーLEDドライバ
アナログおよびPWM調光制御付き、高電圧、ハイパワーLEDドライバ
アナログおよびPWM調光制御付き、高集積高電圧LEDドライバ
EEPROMプログラマブル、高電圧、LED電流フォールドバック付き、350mA LEDドライバ
MOSFETおよびハイサイド電流検出内蔵、2MHz、高輝度LEDドライバ
MOSFETおよびハイサイド電流検出内蔵、2MHz、高輝度LEDドライバ
ハイサイド電流検出および5000:1調光付き、2MHz高輝度LEDドライバ
ハイサイド電流検出および5000:1調光付き、2MHz高輝度LEDドライバ
MOSFETおよびハイサイド電流検出内蔵、2MHz、高輝度LEDドライバ
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