スイッチング・レギュレータの同期によるノイズの低減
今日の電子回路の大部分には複数の電源電圧が必要です。20年前のTTLロジックを始めとするシステム内のあらゆる回路には、汎用の5V電源電圧があれば十分でした。今日では、例えばマイクロコントローラの入出力(I/O)には2.5Vが必要で、コアには0.9V、センサーには3.3Vが必要です。インターフェースにも様々な電圧が必要で、例えばUSBには5Vが必要です。最大限のエネルギー効率実現を目的に、現在では、個々のDC/DC変換段を動作させるための手段として、スイッチング・レギュレータが使われています。
代表的な電力変換アーキテクチャを図1に示します。
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図1 12V電源レール上の様々なスイッチング・レギュレータ
スイッチング周波数の異なる様々なスイッチング・レギュレータが1つのシステム内で動作している場合は、周波数スペクトラムにはそれぞれの基本周波数および高調波だけでなく、様々なスイッチング・レギュレータの周波数差に対応するビート周波数も現れてきます。
生成される放射エミッションとスイッチング・レギュレータの入力における伝導エミッションに関わるこの問題は、システム内にある様々なスイッチング・レギュレータの同期を通じて軽減することができます。多くのDC/DCコンバータICにはSYNCピンがあって、そこにクロック信号を入力することができます。それぞれのDC/DCコンバータのスイッチング周波数は、内部フェーズ・ロック・ループ(PLL)によってこの入力周波数に設定されます。
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図2 降圧コンバータによる入力側パルス電流の生成
これは優れたソリューションですが、このクロック信号はどのように生成されるのでしょう。降圧コンバータは入力側にパルス電流を発生させるので、降圧コンバータのすべてが同時に入力電流を引き込まないようにするのは、合理的な措置です。位相シフトされた外部SYNCクロック信号はこの問題の解決策を提供し、スイッチング・レギュレータ入力側の伝導エミッションを大幅に減らします。
LTC6902は、システム内にある複数のスイッチング・レギュレータのSYNCピンを制御する、小型の追加クロック・ジェネレータ・デバイスです。これは電源の開発者が使用できる便利なツールの1つです。このクロッキング・デバイスは100kHz~20MHzのクロック信号を出力し、最大で4個のスイッチング・レギュレータのSYNCピンを一定の位相シフトで個別に駆動します。更に、必要な場合は、オプションのスペクトラム拡散周波数変調(SSFM)機能を使用して、周波数領域内の個々のピークを下げることもできます。アプリケーションによっては、この方法を使って様々なEMC仕様を満たすことが可能です。
図1の電源アーキテクチャにLTC6902マルチフェーズ発振器を使用した例を図3に示します。この回路には5V電源が使われます。この電圧は、12Vを5Vに変換する降圧コンバータによって生成されます。最初に複数のスイッチング・レギュレータがそれぞれの専用内部発振器によって起動されて、その後に外部クロックがそれらのレギュレータに供給される場合は、通常、このことがスイッチング・レギュレータにとって問題となることはありません。詳細は、それぞれのスイッチング・レギュレータのデータシートに記載されています。
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図3 LTC6902などの外部クロック・ジェネレータ・モジュールを使用する、クロック問題へのソリューション
4フェーズ出力デバイスのLTC6902に加えて、2フェーズ出力のLTC6908と8フェーズ出力のLTC6909もあります。
1つのボード上に複数のスイッチング・レギュレータがある場合は、低ノイズ・システムの設計も可能です。通常の最適化、例えば適切なスイッチング・レギュレータICの選択、ボード・レイアウトの最適化、様々なフィルタの追加といった方法とは別に、クロッキング・モジュールを1つ追加するのも効果的な方法です。
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