ハンドヘルド機器のプラグを電源に差し込むと自動的にオンするオプション機能を備えたプッシュボタン式オン/ オフ・コントローラ
大半の機械式押しボタン・スイッチは、押したときにバウンスが発生するので、きれいな信号を押しボタンから生成するにはデバウンス回路が必要であることがよく知られています。デバウンスの解決策は多数あり、一般的にはフリップ・フロップやR-S ラッチが使用されます。ただし、デバウンス回路を設計して実装するのは思ったほど簡単ではなく、特にハンドヘルド機器の場合に困難です。
押しボタンのデバウンス回路は常時オンとなっている必要があるので、バッテリ駆動式のハンドヘルド機器では、消費電流が小さいことが重要です。さらに、この回路は、スタンバイ電源からの電圧をリニア・レギュレータの必要なく受け入れられることが必要です。それに加えて、押しボタンの入力は、通常、人間の指が接触する可能性があるので、動作中に高いESDレベルに耐えることができる必要があります。最後に、プリント回路基板の片隅に配置できるように、回路サイズは十分に小さい必要があります。
LTC2955 プッシュボタン・コントローラは、これらの要件をすべてカバーします。このデバイスは、ノイズの多い押しボタン入力から、ラッチされたイネーブル出力を生成します。イネーブル出力は、アクティブ“H”(LTC2955-1)またはアクティブ“L”(LTC2955-2)のオプションが用意されているので、あらゆるシステムまたはレギュレータのオン/オフ入力を駆動することができます。
LTC2955 は、ACアダプタや自動車のバッテリなどの2 次電源に機器をプラグ接続した場合、システムの自動電源投入に使用できる電圧モニタ・ピン(ON)を備えています。これはハンドヘルド機器で見られる一般的な機能であり、ACアダプタや充電器のケーブルを電源に差し込むと、機器の電源は自動的に投入され、オン/オフ・スイッチを押す必要はありません。
LTC2955 は、LTC2955 のINT(割り込み)出力ピンおよびKILL 入力ピンを介してマイクロプロセッサとのインタフェースをとるように設計されています。LTC2955 のINT 出力は、押しボタンが押されたことをマイクロプロセッサに通知し、マイクロプロセッサが何らかの電源切断タスクを実行できるようにします。これらのタスクが完了すると、マイクロプロセッサは、(KILLピンを介して)システムをオフに切り替える準備が完了していることを伝達できます。マイクロプロセッサが割り込み信号に応答しない場合(KILLピンが“H”のままの場合)には、システムの電源を強制的に切断することもできます。これは、規定の電源オフ期間より長い時間ユーザがボタンを押し続けるというよくある状態です。電源オフ期間は、TMRピンのコンデンサによって調整可能であり、偶発的なターンオフを防ぐために必要なだけ長くすることができます。
LTC2955 は、各押しボタン・イベント後のブランキング時間を備えた設計にもなっています。ブランキング時間には、すべての入力が無視されます。これにより、押しボタンが押された位置に保持されているか固定されている場合、EN 出力がオンとオフを継続的に繰り返すことがなくなります。これらのブランキング時間により、電圧レギュレータには、その出力を完全に充電するか放電するのに十分な時間が確保され、システムまたはマイクロプロセッサには、電源のオン/ オフ・タスクを実行する時間が与えられます。さらに、電源切断時のデバウンス時間を、外付けのコンデンサを使用して調整できます。これにより、設計者は、一部のシステムが電源切断タスクを実行するのにより長い時間が必要な場合、電源切断時間を延長できます。
LTC2955 は、昇圧レギュレータやLDO を追加する必要なく、最小1.5Vの単電池バッテリから最大36V の複数段電池までの入力で直接動作することにより、部品点数を最小限に抑えています。静止電流が1.2µAと低いので、バッテリの寿命が長くなります。このデバイスは、省スペースの10ピン3mm × 2mm DFNパッケージと8ピンThinSOT™パッケージで供給されます。
プラグを差し込むと自動的に電源が入るハンドヘルド機器
ハンドヘルド機器向けの標準的なLTC2955-1アプリケーションを図1 に示します。3.6V 電源はハンドヘルド機器のバッテリから直接供給されますが、12V の2 次電源はAC アダプタから供給されます。3.6Vと12V の入力は、どちらの電源もシステムに給電できるように、ダイオードOR を介してLT3060 レギュレータに接続されます。LTC4412 は、P チャネルMOSFET を制御して、3.6V 電源に接続されているダイオード両端の電圧降下を減らす理想ダイオード・コントローラです。

図1.機器の電源をプラグに差し込むと自動的に電源が投入される、バッテリ駆動機器向けの押しボタンによるオン・オフ制御
LTC2955-1 のONピンは、抵抗分割器R1およびR2 を介して12V入力をモニタします。ユーザがAC アダプタを電源に差し込むと、12V 電源が供給されます。LTC2955-1 は、ONピンが“H” であることを検出し、32ms のデバウンス時間後にEN(イネーブル)ピンを“H”にして電圧レギュレータをオンにし、システムに電力を供給します。これにより、ユーザがACアダプタを電源に差し込むとシステムに電源を自動的に投入できます。システムの電源は、押しボタンを押すことによっても投入できます。LTC2955 は、PGD 出力ピンを“H” または“L” にすることにより、それぞれ12V 電源の有無をマイクロプロセッサに通知します。

図2.LTC2955-1の波形
押しボタン・ピンのESD 保護
LTC2955 のPB(押しボタン)入力は、グランドを基準にして最大±25kV(人体モデル)のESDレベルに対して保護されています。この保護レベルは、電源切断、電源投入、電源をバッテリから切り離した場合を含むすべての動作モードで有効です。動作中に押しボタン・ピンにESD が印加された場合、デバイスはその時点でのロジック状態を保持します。デバイスはリセットすることもラッチアップすることもないので、電源をいったん切って回復させる必要はありません。
多用途の押しボタン入力
LTC2955 が必要とする外付け部品は、図1 に示すように、ほとんどのアプリケーションではわずか数個です。マイクロプロセッサとインタフェースをとる目的で使用するロジックレベルのピンを除き、ほとんどのピンは最大電圧である36V に耐えられるので、外部電源や抵抗分割器を接続する必要がありません。入力電源電圧が高い場合、特に、標準的な基板レベルの電源(5V など)が使用できない場合でも、柔軟な設計が可能です。
PB入力は、厳しい環境やノイズの多い環境で動作するように設計されています。このピンは、±36Vまで正負両方の電圧に耐えることができます。これにより、押しボタン・スイッチとLTC2955 の間のケーブルの引き回しを長くすることができます。入力にリンギングが生じた場合でも、デバイスは損傷しません。
押しボタンのピン接続および内部回路を図3に示します。デバイス内部の900k プルアップ抵抗により、このピンを押しボタン・スイッチに直接接続することが可能です(もう一方の端子はグランドに接続します)。外付けのプルアップ抵抗は必要ありません。押しボタン・スイッチに漏れ電流が流れるアプリケーションで、外付けのプルアップ抵抗が望ましい場合は、図に示すように、このオプションのプルアップ抵抗を最大36Vまでの任意の電圧に接続することができます。内部のダイオードD1は、外部電源の電流がデバイスに流れ込むのを阻止し、不必要な電流消費を防ぎます。

図3.押しボタンの入力
多用途のイネーブル出力
電圧レギュレータのSHUTDOWN 入力を駆動するLTC2955-1 のアクティブ“H” ENピンを図4 に示します。LTC2955-1 のENピンは、アクティブ・モードでは内部の2µAプルアップ電流によって4.3Vの“H” になります。より高い値のVOH 電圧が必要な場合は、図に示すようにオプションの外付けプルアップ抵抗を追加して、このピンの電圧を4.3Vより高くすることができます。ダイオードD2 は、外部電源の電流がデバイスに流れ込むのを阻止します。ENピンは最大36Vの“H” レベルにすることができます。

図4.LTC2955-1のEN出力
P チャネルMOSFET を駆動してシステム電源を制御するLTC2955-2 のアクティブ“L” ENピンを図5 に示します。LTC2955-2 のENピンは、非アクティブ・モードの間は内部の900k 抵抗によって“H” になります。このピンが“L” になっているアクティブ・モードでは、この900k 抵抗が電源から切断され、900k 抵抗で消費される静止電流が最小限に抑えられます。電源電圧より低い値のVOH が必要な場合は、図に示すように、このピンをオプションのプルアップ抵抗を介して外部電源に接続することができます。

図5.LTC2955-2のEN出力
ON 入力およびSEL 入力は、36Vまでの電圧に耐えることができます。これにより、抵抗分割器を接続する必要なく、これらのピンを高電圧の電源に直接接続することができるので、抵抗分割器で消費される静止電流を最小限に抑えることができます。
まとめ
LTC2955 は、マイクロパワー(1.2µA)で入力電圧範囲の広い(1.5V ~ 36V)プッシュボタン・コントローラ・ファミリです。これらのデバイスは、堅牢な押しボタン入力、柔軟なイネーブル出力、さらに高度な電源投入および電源切断機能を実現する簡素なマイクロプロセッサ・インタフェースを集積することにより、システム・コストを低減し、バッテリの寿命を延ばします。このデバイスは、省スペースの10ピン3mm × 2mm DFN パッケージと8ピンThinSOT パッケージで供給されます。
著者について
この記事に関して
{{modalTitle}}
{{modalDescription}}
{{dropdownTitle}}
- {{defaultSelectedText}} {{#each projectNames}}
- {{name}} {{/each}} {{#if newProjectText}}
-
{{newProjectText}}
{{/if}}
{{newProjectTitle}}
{{projectNameErrorText}}