要約
ほとんどの回路遮断器は電流を検出します。たとえば、ヒューズは、電流が制限値を超えると電流を遮断することによって回路を保護します。電流検知の回路遮断器は、一定のDC電源電圧やRMS電源電圧の場合は正常に機能しますが、ノートブックコンピュータのバッテリのように電源電圧が一定でない場合は、電力検出回路遮断器の方が安全です。このアプリケーションノートでは、電流検出法ではなく電力検出法を使用して回路遮断器を実装する方法とその利点を示します。
はじめに
ノートブックコンピュータの主電源電圧は、ACアダプタを抜くと低下します。これは、バッテリの電圧が通常、ACアダプタの電圧より低いために起こります。Li+バッテリの電圧ですら、完全に充電されたときの4.1Vから、ほとんど放電されたときの3Vまで変動します。このため、ノートブックコンピュータのように、電力がわずかで電圧源が一定でないシステムには、電力検出回路遮断器の方をお勧めします。
電力検出回路の動作理論
負荷に供給される電力は、負荷電圧に負荷電流を乗じたものと定義されます。したがって、電力監視の集積回路には、電圧出力を備えた電流検出回路とアナログ乗算器が含まれている必要があります。ハイサイド電流センサは負荷電流に比例した電圧を出力します。これに負荷電圧を乗じると、負荷電力に比例した出力電圧が得られます(図1)。
図1a. 基本的な電力センサには、電流を測定して比例電圧を生成する電流センサが含まれます。この比例電圧に負荷電圧を乗じると、負荷電力に比例した電圧出力が得られます。低コストのMAX4210オールシリコン電力センサ。
図1b. 基本的な電力センサには電流センサとアナログ乗算器が組み込まれています。
シリコンハイサイド電流検出アンプ
表1に示すように、電流検出の回路遮断器の回路は、多くの方法で実現することができます。ヒューズ、リセット可能ヒューズ、およびバイメタルストリップは電熱タイプです。これらの回路設計では、抵抗値が既知の材料を負荷と直列に設置します。電流がこの抵抗を流れると抵抗の温度が上昇します。電流が危険な(トリップ)レベルに達すると、「材料が溶融する(ヒューズ)」、「抵抗が大幅に増加する(リセット可能ヒューズ)」、あるいは「熱によって金属が曲がりスイッチが開く(バイメタルストリップ)のいずれかによって回路が開きます。電磁回路遮断器の動作は、バイメタルストリップ遮断器の動作とよく似ています。ただし、機械的な動きは熱の代わりに電磁石によって起動されます。
Type |
Principle | Accuracy | Complexity | Cost | Comment | |
Current switches |
Fuse | Thermal | Poor | Simple | Very low | Not resettable |
Resettable Fuse (PTC) | Fuse | Thermal | Poor | Very low | ||
Circuit breaker (bimetallic strip) | Thermal | Poor | Simple | Low | Bulky mechanical device | |
Circuit breaker (electromagnetic) | Electromagnetic | Poor | Simple | Low | Bulky mechanical device | |
Current sensors |
Current transformer | Magnetic | Good* | Medium to high | Medium to high | Bulky transformer, AC signal only |
Giant magnetoresistance (GMR) | Magnetic | Good* | Medium to high | High | Similar to hall-effect but better sensitivity. | |
Integrated circuit-current mirror (MAX4006) | Resistor | Good | Simple | Low | Wide dynamic range, low-current capability | |
Integrated circuit (MAX4210) | Resistor | Good | Simple | Low | Immune to magnetic interference | |
*良好な精度を得るには通常キャリブレーションが必要です。 |
上表に記載されている4つの電流スイッチ回路遮断器では、正確な電流検出を行うことができず、トリップポイントの精度が貧弱です。一方、電流センサは、電流検出と電流測定の精度が回路遮断器よりも優れているため、回路遮断器として簡単に設計することが可能です。
変流器は通常、大きくて複雑なものですが、AC信号にのみ適した、一種の電流センサです。変流器は基本的にトランスであり、1次トランスは電源と直列で、2次トランスは電流に比例した電圧出力を供給します。
ホール効果および巨大磁気抵抗(GMR)センサは、実際には磁場センサです。導電ワイヤまたはPCBトレースによって磁場が発生するため、電流を検出する場合に磁気センサが役立ちます。また、磁気センサは導電体と接触しないため、ガルバニック絶縁も実現することができます。センサの出力電圧は、流れる電流だけでなく、センサを基準とした導電PCBトレースの物理的な位置にも左右されます。したがって、良好な精度を得るには、通常、ホール効果とGMRセンサのキャリブレーションが必要であり、このため、回路の複雑さとコストが増大します。さらにこのタイプのセンサは、隣接回路からの磁気妨害による影響も受けやすくなります。
電流ミラーは電流を測定する別の方法であり、サイズの異なる2つのマッチングトランジスタで構成され、電流ミラー配置で接続されています(図2)。補助分岐は、たとえば10:1の比率で主分岐の電流をミラーリングします。つまり、補助分岐内の比例電流によって主分岐の電流を測定することができるということです。電流ミラーの検出手法によって広いダイナミックレンジ(最大60)が得られますが、通常、低電流のアプリケーションに限定されます。
図2. MAX4006ハイサイド電流モニタの電流ミラーは、60のダイナミックレンジで電流を測定します。電流は最大10mAに制限されます。
電流ミラーが機能するためには、MOSFETを飽和領域で動作させることが必要です。ドレイン-ソース間の電圧は通常1Vよりも大きくなります。電圧降下が0.1V以下である他の手法と比較すると、1Vの降下は過大な値です。したがって、たとえばフォトダイオードの電流を測定する場合と同様に、主電流を10mA以下に制限する必要があります。電流ミラーの手法は、低電流アプリケーションには良好な手法ですが、バッテリを必要とする大電流で低電圧のアプリケーションには、電力効率が良くありません。
バッテリなどのDCアプリケーションの場合、電流をモニタする最も簡単な方法はオームの法則:V = IRを利用することです。すなわち、検出抵抗器の両端の電圧は抵抗器を流れる電流に直線的に比例します。抵抗器を用いた電流センサには通常、外部の回路に電圧を出力するためのアンプが必要です。このような電流検出アンプは、工場で調整して1%以下の精度を容易に得ることができます(図3)。このタイプの回路は、負荷のグランド経路を妨害することなく電圧源の電流を測定するため、ハイサイド電流検出アンプと呼ばれます。
図3. このハイサイド電流検出アンプは負荷電流に比例した電圧を出力します。
ハイサイド電流検出アンプでは、バッテリ(電圧源の終端)と負荷の間に電流検出抵抗器が配置されます。このように配置することによって、グランドプレーン内に異質な抵抗が生じることが防止され、レイアウトが大幅に簡素化され、また通常、回路全体の性能が向上します。検出抵抗器RSを流れる電流によって、抵抗器の両端で電圧降下が生じます。この電圧がオペアンプによって検出されると、MOSFETトランジスタが駆動され、シンク電流がRに流れます。R両端の電圧降下は、検出抵抗器の両端の電圧降下に等しくなります。したがって、以下の式が成立します。
KISRS = IOR、
IO = KIS(RS/R)、および
VO = KIS(RS/R)RO。
センサの出力電流は負荷電流に比例します。一般に、電流ミラーは出力電流をK倍に増大するために組み込まれています。電圧出力が必要な場合、電流出力とグランドの間に出力抵抗器ROを配置することによって、電流を電圧に変換します。抵抗RおよびROを工場で調整することによって、1%以下の電流検出精度を容易に得ることができます。
電力モニタ
以上により、正確かつ低コストの電流センサを用いて電流を測定するという設計が可能となり、この電流に電圧を乗じて電力の測定値を得ることができます。低コストのオールシリコン電力センサは、内蔵の電流センサとアナログ乗算器で構成されています(前述の図1bを参照)。乗算器は第一象限、すなわち入力と出力の両方が正の電圧となる領域で動作します。必要なものは単一の電源電圧のみです。電流センサと同様に、アナログ乗算器も工場で調整することによって良好な精度を得ることができます。
たとえば、MAX4210電力モニタICは、ノートブックコンピュータのバッテリをモニタするよう設計されています。電力センサのコモンモード電圧範囲(4V~28V)は、さまざまなバッテリ電圧に対応可能です。電流を測定するには、電源(バッテリ)と負荷の間の経路に検出抵抗器を挿入します。次に、電流検出アンプは、負荷電流に比例した電圧をアナログ乗算器の1つの入力に供給します。乗算器の他の入力は、負荷に接続された電圧分圧器に接続します(乗算器の最大入力電圧が1Vであるため、負荷電圧を分圧器によって減らす必要があります)。これら2つの電圧を乗じると、負荷電力に比例した出力電圧が得られます。
所望の電力測定精度を得るには、工場での調整が必要です。図4は、工場で調整した後のMAX4210の標準的な電力測定精度対検出電圧を示します。VSENSEが50mV~150mVの場合、誤差は1%未満です。検出電圧が50mV未満の場合、電流検出アンプの入力オフセットが原因で測定誤差が増大します。したがって、検出抵抗器の両端の電圧降下が最大電流で50mV~150mVになるように検出抵抗器を選択します。たとえば負荷電流の予測最大値が10Aの場合、10mΩの検出抵抗器を選択すると、フルスケールで100mVの電圧が確保されます。
図4. MAX4210ハイサイド電力/電流モニタの電力測定誤差は、電流検出アンプでの入力オフセットが原因で、低い検出電圧で増大します。検出電圧が50mVを超える場合、誤差は1%未満です。
電子式の電力検出回路遮断器
電源電圧が変化するシステム、または供給電力が限られているシステム、あるいはその両方に該当するシステムでは、電流障害しか検出しない回路遮断器に比べて、過電力障害を検出する回路遮断器の方が優れた保護が可能となります。このようなシステムには、ノートブックコンピュータ、スマートバッテリ、および高信頼性パワーサプライがあります。MAX4211などの電力検出ICは、回路障害の保護を目的として設計されています。
電力検出回路遮断器はバッテリの短絡障害や過電力障害の保護に有効ですが、遮断器が過電力障害を検出すると、負荷への電流を遮断します(図5)。障害が検出されると、MOSFET M1がオフになり、手動リセットボタンが押されるか、ロジックハイがCIN2-入力に加えられるまでオフの状態が維持されます。入力電源の再投入を行うことによっても、回路遮断器をリセットすることができます。再投入によって、LEピンがローになり、コンパレータの出力OUT1のラッチが解除されるからです。コンパレータに接続されたRCネットワークR3-R4-C1によって、電圧のトランジェント中に誤って遷移することが防止されます。
図5. このソリッドステートの電力検出回路遮断器は、過電力障害に応答して負荷への電流を遮断します。手動リセットボタンを押すか、あるいはロジックハイをCIN2-に加えることによって、回路遮断器がリセットされます。コンパレータのINHIBIT入力は、電圧トランジェントが行われるときに一時的に機能を停止することによって、誤った過電力の警告を防ぎます。
結論
バッテリの放電に伴って端子電圧が変動するバッテリアプリケーションの場合、電流モニタリングよりも電力モニタリングの方をお勧めします。また、電力モニタリングは電流モニタリングよりも安全です。現代のICは、低コストで高性能なオールシリコン電力センサの製作に必要な部品のほとんどを統合しています。このようなICは、工場で調整して1%未満の精度を得ることができます。内蔵のコンパレータと、外付けのMOSFETスイッチによるリファレンスを組み合わせることによって、これまで簡単に実現することができなかったデバイス、すなわちMAX4210のような簡単な電力検出回路遮断器を構成することができます。
関連製品
MAX4172およびMAX4211は関連製品です。詳細はMAX4172、MAX4211EEVKITのデータシートをご覧ください。
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