リニア電圧レギュレータを簡単に並列接続する方法

2015年05月21日
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リニア電圧レギュレータは、DC/DCレギュレーションのためのシンプルで低ノイズのソリューションを実現します。しかし、リニア電圧レギュレータは効率が低く消費電力が大きいので、電圧差VIN-VOUTが大きい場合は実際に供給できる出力電流の量が制限されます。複数のリニア電圧レギュレータを並列に接続すれば、負荷(および熱)が複数のICに分散されて、ソリューションの供給できる出力電流の有効範囲が広がります。しかし、リニア電圧レギュレータを並列に接続することは必ずしも簡単ではありません。

電圧リファレンスベース・リニア電圧レギュレータの並列配置

複数のリニア電圧レギュレータによる電流分担は、単にデバイスを並列に接続すればいいというものではありません。2個の電圧リファレンスベースのリニア電圧レギュレータを同じ出力電圧に設定して、その出力を互いに接続しても、それらのレギュレータが分担する電流量は等しくなりません。LDOの出力電圧は、帰還抵抗に基づくゲイン係数をリファレンス電圧に乗じた値によって決定されますが、電圧リファレンスと帰還抵抗の許容誤差のために出力電圧は一致しなくなります。出力が一致していない場合、LDOは電流を分担しません。1つのLDOが電流の大部分を供給し、そのLDOが電流制限値に達する、熱制限値に達する、あるいは出力ドループが十分小さくなって他のLDOがその電流を補完し始めるまで、その状態が続きます。これら3つの状況は回路動作上の課題となり、信頼性に関わる懸念を生じさせることがあります。ひいては、LDOに過大なストレスが加わって、早期に故障を発生させるおそれもあります。

LT1763-3.3の場合を見てみましょう。これは、広く使われている1.8V~20V動作、3.3V出力、500mAの頑丈なPNPリニア電圧レギュレータです。その最大出力電圧誤差は室温で1%、全温度範囲で2.5%です。

LT1763-3.3の代表的アプリケーション回路

LT1763-3.3の代表的アプリケーション回路

全負荷時および全温度範囲におけるLT1763の出力電圧範囲は3.22V~3.38Vで、16mVの幅があります。デバイスを並列に接続した場合、一方のLDO出力が高く他方の出力が低いと、それらのLDOは電流を分担しません。出力電圧の高い方のLDOが、負荷電流範囲全体にわたり単体で電流を供給します。

下の図に示すように、各レギュレータの出力に同じバランシング抵抗を追加すれば、電流分担能力を改善できます。ただし、厳密なマッチング(90%程度)を行うには、レギュレータの出力電圧に差があっても出力電流のわずかな差でオフセットできるように、抵抗値をかなり大きくする必要があります。

例えば、許容誤差が3%の3.3V出力1A LDOを2個並列に接続する場合、最も厳しい条件での出力電圧シナリオは、一方のLDO(#1)が3.4V、他方(#2)が3.2Vのときになります。2Ωのバランシング抵抗を使用した場合、2つの電圧のバランスを取るためにLDO #1のバランシング抵抗に流れる出力電流の増分はわずか100mAです(電圧出力の高い方のLDOがより多くの電流を供給)。このLDOが100mAの電流を余分に供給すると、バランシング抵抗における電圧降下の増加によって2つの出力電圧が一致し、両LDOが電流を分担するようになります。これにより、厳密な電流分担が実現されます(最大負荷電流の差は10%のみ)。しかし、全負荷時は電流バランシング抵抗の電圧降下が非常に大きくなります(1.1A×2Ω = 2.2Vの降下)。

バランシング抵抗によって出力に大きな電圧降下が発生

バランシング抵抗によって出力に大きな電圧降下が発生

入力または出力(または、アンプが電流制限機能を備えている場合は電流制限ピン)に電流検出回路(電流検出抵抗とアンプ)を追加し、電流をバランスさせて適切な出力電圧を維持することもできますが、外部回路はコストの増加を招き、余分なボードスペースも必要になります。

負荷電流をバランスさせるためにLDO入力電流を測定

負荷電流をバランスさせるためにLDO入力電流を測定

下のLT3065の例に示すように、電流制限値を調整できるLDOを使用するという方法もあります(LT3065は入力範囲1.8V~45V、500mA出力の25µVRMSリニア電圧レギュレータで、プログラム可能な精度10%の電流制限機能を備えています)。一方のアンプの出力電圧を調整することにより、帰還ループを使用して2つの電流制限値を一致させます。前の例と同様に、動作させるには外付けのアンプと電流設定抵抗が必要です。

分担電流をバランスされるためにLDOの電流制限を使用

分担電流をバランスされるためにLDOの電流制限を使用

電流源ベースのリファレンスを備えたリニア電圧レギュレータの並列接続

LT3081は、この問題を非常にシンプルかつユニークな方法で解決するリニア電圧レギュレータの一例です。LT3081は1.5A出力のLDOで、電流源リファレンスを備えた正/負電圧リニア電圧レギュレータのユニークなファミリの製品です。このデバイスは並列接続が容易で、非常に良好な電流分担を実現します。正出力レギュレータの入力電圧範囲は最大40Vで、0.2A~3Aの出力電流を供給します。

LT3081の簡略図を下に示します。LT3081は、電圧リファレンスではなく電流源ベースのリファレンスを使用します。この電流は、リファレンス電圧値を設定する外付けのRSET抵抗を通じて流れます。リファレンス値は、選択された抵抗に基づいて最小ゼロ・ボルトまで設定できます。帰還抵抗を追加する必要はありません。

LT3081のブロック図

LT3081のブロック図

 

もう1つの重要な点は、下に示すようにSETピン電流が狭い範囲で分布していることです。これにより、VSETピンから出力ピンまでの間で、室温時で±1.5mVという非常に低い最大オフセット電圧仕様が実現されています。
LT3081の狭いSETピン電流分布と、それによる低いオフセット電流分布

LT3081の狭いSETピン電流分布と、それによる低いオフセット電流分布

複数のLT3081を並列で使用すると、出力電流を大きくすることができます。個々のSETピンを互いにまとめて接続し、INピンも同様に互いにまとめて接続します。均等な電流分担を促進するために、PCパターンのごく一部をバラスト抵抗として使い、ピン出力を1箇所に接続します。PCパターンの抵抗(mΩ/inch)を表1に示します。バラスティングに必要なのはPCB上のわずかな面積だけです。

必要最小PCBパターン抵抗

必要最小PCBパターン抵抗

最も厳しい条件下での室温時オフセットはSETピンとOUTピンの間で±1.5mVに過ぎないので、非常に小さいバラスト抵抗を使用できます。下の図に示すように、それぞれのLT3081は10mΩの小さいバラスト抵抗を使用しており、これは最大出力電流時で80%を超える電流の均等分担を実現します。10mΩの外付け抵抗(並列に接続した2個のデバイスに対し5mΩ)による出力レギュレーションの低下は、3Aの出力に対し約15mVに過ぎません。つまり、出力電圧が1Vという低い値でも、低下量の増大は1.5%に止まります。もちろん、3個以上のLT3081を並列接続すれば、さらに大きい出力電流が得られます。PCボード上にデバイスを分散させれば、熱も拡散されます。入出力電圧差が大きい場合は、直列入力抵抗によってさらに熱を拡散させることができます。

LT3081の並列接続

LT3081の並列接続

便宜を図るために、1.1AのLT3080がバラスト抵抗を内蔵したLT3080-1というバージョンとなって提供されています。リニア・テクノロジーの電流検出アンプのファミリは、出力電流モニタリング、ダイ・ジャンクション温度モニタリング、シャットダウン、逆電流および逆バッテリ保護機能など、その他の便利な機能を豊富に備えています。これらすべてのデバイスが、LDOの並列接続に伴う問題を過去のものにします。

著者について

Kevin Scott
Kevin Scottは、アナログ・デバイセズのパワー製品グループでプロダクト・マーケティング・マネージャを務めています。昇圧、昇降圧、絶縁型コンバータに加え、LEDドライバとリニア・レギュレータを担当しています。以前は、シニア・ストラテジック・マーケティング・エンジニアとして、技術トレーニング用コンテンツの作成、セールス・エンジニアのトレーニング、各種製品の技術的な優位性を紹介するウェブサイト向け記事の執筆を行っていました。半導体業界で2...

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