自動車システムにおいて前途有望なLVDSマルチメディアインタフェース

2005年12月28日
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要約

データ通信の需要が増大することによって、データインタフェースのための様々な新しい形態が生まれることになり、各アプリケーションに適した色々なレベルのパフォーマンスが提供されています。このインタフェース開発に対する主要な要件は、より高速なデータレート、高度な干渉耐性、および簡単な構成です。

このアプリケーションノートでは、マルチメディアに対応した様々なLVDSの機能について述べるとともに、低電源電圧、低消費電力、低電磁放射、高干渉耐性、および簡単な配線と終端に対する適合性についても取り上げています。

低電圧差動信号(LVDS)は試行、テストされることによって、広範囲なアプリケーションで利用可能な技術であることが実証されています。LVDSは、高データレートを実現するとともに、以下の多くの利点を備えています。

  • 低電源電圧との適合性
  • 低消費電力
  • 低電磁放射
  • 高干渉耐性
  • 簡単な配線と終端
LVDSは差動で動作するため(図1)、その動作モードに伴うコモンモードの除去によって、高度な干渉耐性が得られます。信号対ノイズ比が高いため、信号振幅を100mV近くに減少させることが可能となり(図2)、極めて高速なデータレートが得られます。この信号振幅が小さいということによって、消費電力も低減されます。このような利点は、信号伝送の各チャネルに2本の線が必要であるというLVDSの主な欠点を大きく上回るものです。

図1. LVDSトランスミッタ/レシーバの基本構造
図1. LVDSトランスミッタ/レシーバの基本構造

図2. LVDS信号の強度と振幅
図2. LVDS信号の強度と振幅

電子化により安全性と便宜性を備えたより多くの自動車サブシステムが統合されることによって、自動車業界では、より高速なデータレート機能に対する要望が大幅に増大しています。この機能は特に、運転者をサポートするビデオ表示システム(電子化バックミラーとサイドミラー、ナビゲーションシステム、駐車距離制御システム、補助サイトディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ)や、さらには娯楽のためのビデオ表示システム(テレビやDVDプレーヤ)で要望されていますが、画像の伝送を実現するための高速なデータレートが必要となります。LVDSは、これらのアプリケーションで非常に良好に機能します(図3)。

図3. 自動車における代表的なLVDSの接続
図3. 自動車における代表的なLVDSの接続

LVDSは自動車用途に非常に適しています。自動車には数多くの電磁放射源が存在するため、干渉耐性が不可欠です。LVDS線そのものによる低レベルの放射は、実質的に干渉を起こしません。LVDSシステムへの簡単な抵抗接続と簡単な配線(ツイスト銅線ケーブル)によって、配線に対する要件は最小限になっています。LVDSは、以下の様々なバストロポジに対応しています。

  • ポイントトゥーポイント(1つのトランスミッタと1つのレシーバ)
  • マルチドロップ(1つのトランスミッタと複数のレシーバ)
  • マルチポイント(複数のトランスミッタと複数のレシーバ)
自動車で問題になることがわかっている領域は、車体の様々な場所にあるグランドオフセットであり、電位差が合計で数ボルトになります。DC結合のインタフェースでは、このような電位差によって、データ伝送は直ちに中断されてしまいます。この問題は、コンデンサを使用して信号伝送をデカップリングすることによって解決することができます。ただし、データ伝送でこれらのコンデンサが長時間にわたって一方向に帯電されない場合に限ります。

このような帯電は、たとえば、一連の長い「1」が送信されるときなどに生じます。MAX9213/MAX9214 (図4)などのICは、DCバランシング手法を用いてこの問題を回避しています。この手法では、通過するデータをICがモニタしています。一連の長い1または0が見つかると、ICは、送信する前にデータを反転します。トランスミッタは、データストリームが通常か反転かを常にレシーバに通知するため、レシーバは選択的に反転を行うことによって容易に元のデータを再現することができます。このように1と0の長い列を排除することによってコンデンサの帯電が最小限に抑えられ、結果としてグランドオフセットの問題が解消されます。

図4. 上図の2つのICによって、トランスミッタ/レシーバおよびシリアライザ/デシリアライザの機能を結合
図4. 上図の2つのICによって、トランスミッタ/レシーバおよびシリアライザ/デシリアライザの機能を結合

図3で、もう1つの潜在的な問題が明らかになります。多くの接続箇所があるということは、多数のツイスト銅線ケーブルが必要になるということですが、通常、自動車のケーブルツリー(ワイヤハーネス)は、すでにいっぱいの状態です。ただし、すべての接続で非常に高いデータレートを必要とするのでなければ、1対のツイストペア銅線だけを使用して700Mbpsまで送信可能なデバイスがマキシムによって開発されています(図5に示すMAX9217/MAX9218など)。この機能を使えば、解像度が480 x 800のディスプレイを難なく接続することができるようになります。

図5. AC結合のシリアライザとデシリアライザの機能図
図5. AC結合のシリアライザとデシリアライザの機能図

すでにマキシムのICでは電磁放射に対する低妨害感受性が実現されていますが、これをさらに向上させるため、これらのICには電磁環境適合性を向上させる追加手段が組み込まれています。すなわち、パラレルデータを表示する間のスイッチング動作はすべてクロック周波数に合わせられ、3MHz~35MHzに調整されます(特定のアプリケーションに対して最小許容クロックを使用することによって、EMI放射を最小限に抑えます)。その他の策として、特殊なデータコーディングやシリアル出力に対するコモンモードフィルタがありますが、これらは、データストリームそのものによって生じるスイッチング量を削減することでEMIを最小限に抑えるというものです。光インタフェースによって、EMI値を向上させることができますが、この手法には別の不都合な点もあり、また費用もはるかに高くつきます。

LVDSコンポーネントは、特に入力と出力のピンにおいて高度なESDの安定性が必要となります(自動車業界では一般的な要件)。このため、これらのピンには、ESD保護に関してIEC 61000-4-2の±15kV (空中放電)と±8kV (接触放電)、あるいはISO 10605の±25kV (空中放電)と±8kV (接触放電)が規定されています。

上述のすべての機能を考慮すると、LVDSインタフェースは自動車のオンボードシステムを接続するための、今日と未来における優れた選択肢と考えられます。この目的のため、第1世代のLVDS製品で得られた成果とこれらのアプリケーションで得られた経験を生かして、マキシムは、より高機能なICの開発を促進しています。次の数年で、これらのICは間違いなく、LVDSインタフェースが自動車の重要なバスシステムであるためになくてはならない製品になっていることでしょう。

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