LTspice:シンプルな理想ダイオード

2017年05月02日
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LTspiceによるシミュレーションには、半導体ダイオード・モデルが欠かせません。特に、ブレークダウン動作や再結合電流を含む結果を確認したい場合には、同モデルが重要な役割を果たします。実際、LTspiceでは、半導体ダイオードの動作を完璧に表現可能なモデルを提供しています。ただ、実用上は、シンプルな理想ダイオードを使えると都合が良いケースも少なくありません。例えば、アクティブ負荷、電流源、電流制限ダイオードなどのシミュレーションを簡単に実施したいといった場合です。そこで、LTspiceでは理想ダイオード・モデルも利用できるようになっています。

LTspiceで理想ダイオード・モデルを使用するには、ダイオードのモデル(D)を含む.model文を記述します。一意的な名前を付与した上で、Ron、Roff、Vfwd、Vrev、Rrevの各パラメータのうち1つ以上を使って定義を行います。

.model MyIdealDiode D(Ron=1 Roff=1Meg Vfwd=1 Vrev=2)

LTspiceの理想ダイオード・モデルには、オン、オフ、逆ブレークダウンの3つの線形領域が存在します。順方向の導通と逆方向のブレークダウンについては、電流制限用のパラメータIlimit、revIlimitを使うことでより詳しく定義することが可能です。

.model MyIdealDiode D(Ron=1 Roff=1Meg Vfwd=1 Vrev=2 Ilimit=1 RevIlimit=1

また、オフの状態と導通している状態の間を滑らかにするためには、Epsilon、RevEpsilonの両パラメータを使用できます。

.model MyIdealDiode D(Ron=1 Roff=1Meg Vfwd=1 Vrev=2 Ilimit=1 RevIlimit=1 Epsilon=1 RevEpsilon=1)

Ideal Diode Schematic

EpsilonとRevEpsilonを使用することで、オフの状態とオンの状態の間に2次関数を適用し、理想ダイオードのI-V曲線の値と傾きを連続的かつ滑らかにすることができます。この場合、両パラメータに値を指定した電圧で遷移が行われるようになります。

LTspiceの回路図上で.model文を挿入したら、コンポーネントの属性(<Ctrl> + 右クリック)において、ダイオードのシンボルの値を.model文で指定した名前と一致するように編集することができます。ダイオードのモデルの詳細については、LTspiceのヘルプ(<F1>キー)を参照してください。

Ideal Diode Waveform

単なる実験的な試みですが、以下の回路には理想ダイオード・モデルを適用しています。それにより、非同期方式の降圧コントローラと共に用いるMOSFETのRDS(ON)のシミュレーションを行っています。ショットキー・ダイオードの代わりに理想ダイオード・モデルを使用することで、同期整流時の導電損失を簡単に比較することができます。

Ideal Diode Example

著者について

Gabino Alonso
Gabino Alonsoは、アナログ・デバイセズのPower by LinearTMグループで戦略的マーケティング・ディレクターを務めています。アナログ・デバイセズに入社する前は、Linear Technology(現在はアナログ・デバイセズに統合)、Texas Instruments、カリフォルニア・ポリテクニック州立大学で、マーケティング、エンジニアリング、オペレーション、教育など、多岐にわたる業務に従事していま...

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