入力電圧範囲が2.7V~38Vの低ノイズ250mA昇降圧チャージポンプ・コンバータ
LTC3245は、従来のインダクタを省略し、代わりにコンデンサによるチャージポンプを使用する昇降圧レギュレータです。LTC3245の入力電圧範囲は2.7V~38Vで、帰還抵抗分割器を接続せずに2種類の固定出力電圧(3.3Vおよび5V)のいずれかを出力するか、帰還抵抗分割器を介して2.5V~5.5Vの範囲の任意の出力電圧を設定することができます。最大出力電流は250mAです。昇降圧回路構成の結果として、LTC3245は入力電圧より高い電圧または低い電圧を安定化できるので、自動車のコールド・クランク要件を満たすことができます。

図1.5V出力の昇降圧コンバータ
LTC3245は12V電源から5V、100mAを供給する場合、80%の効率を達成し、LDOより効率が大幅に高いので、LDOとヒートシンクの基板面積とコストが不要になります。LTC3245は、露出パッド付きのMSOP12パッケージまたは3mm×4mmのDFN12パッケージで供給されます。

図2.図1のコンバータの効率
チャージポンプの動作
LTC3245コンバータの簡略ブロック図を図3に示します。チャージポンプはN/M×VINコンバータとして動作できます(NとMは整数)。½、1、および2が最も簡単な形であり、必要なのはフライング・コンデンサ1個だけです。NとMが高次になると、必要なフライング・コンデンサとスイッチの数は増えます。

図3.チャージポンプ・ブロックの詳細
NとMは整数なので、線形動作のチャージポンプを使用して任意の出力を生成することはできません。代わりに、コントローラはVINを調整してVIN′を生成し、これをチャージポンプに供給します。チャージポンプは降圧、LDO、昇圧の3つのモードのいずれかで動作でき、それぞれ½VIN′、VIN′、2VIN′になります。
VIN′とチャージポンプの動作モードを正しく制御することにより、任意の電圧を生成できます。降圧モードで動作している場合、入力電流は同等なLDOのおよそ半分なので、効率が大幅に向上します。
入力リップルとEMI
LTC3245はスイッチング周期ごとにフライング・コンデンサを充電するので、VINは十分にデカップリングしてEMIを最小限に抑える必要があります。
LTC3245をデカップリングするには、3.3µF~10µFのMLCCコンデンサをVINピンにできるだけ近づけて配置します。MLCCコンデンサを近づける1つの方法はコンデンサの電圧定格を制限することです。これによってコンデンサのサイズを最小限に抑えることができ、コンデンサが小さくなるほどVINピンの近くにコンデンサを配置できます。たとえば、LTC3245の動作入力電圧の最大定格は38Vですが、自動車用電源では、MLCCの定格は16Vで充分です。
デカップリング・コンデンサの電源接続配線が短くて低インダクタンスでも、グランド接続配線のインダクタンスが高いとあまり有効ではありません。理想的な状況は、電源接続配線が短くて幅が広く、グランド接続配線パターンがLTC3245の露出パッドと非常に広い面積で接していることです。
VINと低インピーダンスの電源の間の配線が長い場合には注意が必要です。入力電源が高インピーダンスの場合や、入力電源までの接続配線が5cmより長い場合は、必要に応じて電源を追加のバルク容量でデカップリングすることを推奨します。多くの場合、33µFが適切です。
LTC3245は、高効率のBurst Mode®動作または低ノイズ・モードを選択することにより、軽負荷時の効率または低出力リップルに合わせて最適化できます。Burst Mode動作は低静止電流を特長としているので、軽負荷電流時の効率が高くなります。低ノイズ・モードでは、軽負荷時の効率と引き換えに軽負荷時の出力リップルを低くしています。
CISPR25に従ってマイクロチャンバでテストしたLTC3245の放射シグネチャおよび伝導シグネチャの測定値を図4に示します。この図で分かるように、適正なデカップリングを行いさえすれば、LTC3245を放射性輻射や伝導輻射の政府規制に適合させることには何の問題もありません。

図4.放射性輻射と伝導輻射
フライング・コンデンサの選択
チャージポンプ・ブロックの詳細(図3)は、フライング・コンデンサがチャージポンプ自体にのみ関与していることを示しています。しかし、フライング・コンデンサはVIN′を生成する可変減衰器にも関与します。したがって、フライング・コンデンサは直接的な計算に基づいて選択してはならず、いくつかの制約条件を順守して選択します。
フライング・コンデンサは、電解コンデンサやタンタル・コンデンサなどの有極性コンデンサにすることはできません。フライング・コンデンサの定格は出力電圧より約1V高い値にします。たとえば、5V出力では6.3Vのフライング・コンデンサを使用します。
フライング・コンデンサの最小容量は0.4µF にする必要があります。有極性コンデンサは使用できないので、最も適したコンデンサはMLCCです。0.4µF に適合する十分な容量を持つMLCCコンデンサは、容量の電圧係数が大きいクラスII の誘電体コンデンサが有力です。容量の電圧係数は最大電圧の関数なので、最大電圧が16Vのコンデンサが5Vで動作する場合、公称の容量およびサイズが同じ6.3Vのコンデンサが5Vで動作する場合よりも、回路容量は大幅に増加します。
したがって、0.47µF、6.3V のクラスII 誘電体コンデンサが5Vで動作する場合は最小容量を満たさない可能性が高いが、0.47µF、50VのクラスII 誘電体コンデンサの場合は要件を満たすと考えられます。TDK C1005X5R1C105K1µF、16V、0402などのコンデンサは、ほとんどのアプリケーションに適しています。
出力コンデンサ
出力コンデンサ値の選択は、リップルとステップ応答との兼ね合いになります。出力容量が増えるにつれてリップルは減少しますが、ステップ応答も次第に過減衰されます。
出力コンデンサに必要な電圧定格はレギュレータの出力電圧なので、5V出力の場合は6.3Vのコンデンサで十分です。それにもかかわらず、上述したように、クラスII 誘電体コンデンサは定格電圧では公称容量の半分以上を失います。したがって、コンデンサの定格電圧付近で動作する場合は、より大容量のコンデンサを選択してリップルを最小限に抑えることが必要と考えられます。
リップルとステップ応答の両方をうまく満足させるには、バイアス印加時にフライング・コンデンサの10倍~20倍の容量を持つコンデンサを採用します。つまり、フライング・コンデンサの推奨値が1µFである場合は、10µF~20µF のコンデンサということです。クラスII のコンデンサが定格電圧時に失う容量は半分より少し多いので、これを考慮すると、公称容量が47µFのコンデンサになります。
可変出力
図5に示すように帰還抵抗を使用すると、3.3Vおよび5Vという2 種類の固定出力電圧値の他に、LTC3245の出力電圧を設定することが可能です。

図5.3.6V出力の昇降圧コンバータ
可変出力モードにするには、SEL2を“L”に設定して、SEL1を“H”に設定します。OUTS/ADJピンは、固定出力電圧の出力を検出する目的で使用するか、可変出力電圧の帰還ピンとして使用します。このピンは、固定値を使用する場合は出力に直接接続します。可変出力の場合、帰還リファレンス電圧は1.200V ±2%です。適切な帰還抵抗を選ぶことにより、出力は2.5V~5Vの範囲内の任意の値に設定できます。
シャットダウン
LTC3245は、シャットダウン状態にして静止電流をわずか4µAまで減少させることもできます。LTC3245をシャットダウンするには、SEL1とSEL2の両方を“L” にします。
PGOOD
PGOODはアクティブ“H” のオープンドレイン信号で、LTC3245の出力がレギュレーション状態であることを示します。PGOOD表示のしきい値は、目的の帰還電圧つまり検出電圧の90%です。
まとめ
LTC3245は、2.7V~38Vの入力電圧から安定化出力(3.3V、5V、または可変)を生成するスイッチト・キャパシタ型昇降圧DC/DCコンバータです。インダクタは必要ありません。LTC3245 は動作電流が小さく(無負荷時は20µA、シャットダウン時は4µA)、外付け部品点数が少ない(3つの小型セラミック・コンデンサ)ので、スペースの制約がある低消費電力の自動車用および産業用アプリケーションに最適です。
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