高精度オペアンプのレイアウト
最新の高精度オペアンプは、非常に優れたオフセット・ドリフト性能を備えていますが、それらの性能は、PCBレイアウトが適切でなければ、簡単に損なわれてしまいます。以下では、ICの性能を維持するために有用なレイアウト手法について、いくつか説明します。
熱電対の影響
µVレベルの精度を実現するには、熱電対の影響を考慮する必要があります。異種金属を接続すると熱電接点が形成され、温度に応じてわずかな電圧が発生します。ゼーベック効果とも呼ばれるこのような熱起電力は、低ドリフト回路の主な誤差要因となり得ます。
コネクタ、スイッチ、リレーの接点、ソケット、抵抗、およびハンダは、いずれも大きな熱起電力を発生させる可能性があります。メーカーが異なる銅線を接合するだけでも、200nV/ºCの熱起電力が発生することがあります。これは、LTC2057に仕様規定されている最大ドリフトの13倍以上です。図1と図2に、熱起電力によって発生する電圧の大きさと温度に対する感度を示します。

図1.メーカーが異なる2本の銅線によって生じる熱起電力
熱電対による誤差を最小限に抑えるには、回路基板のレイアウトと部品の選定に注意を払う必要があります。アンプの入力信号パス内の接点数を最小限に抑え、コネクタ、ソケット、スイッチ、リレーをできる限り使用しないことを推奨します。このような部品が必要な場合は、熱起電力が低い部品を選択するようにしてください。更に、回路基板上の熱勾配の面から、両方の入力の接点の数、タイプ、レイアウトを一致させる必要があります。そのため、避けられない接点よって生じる誤差を相殺するために、ダミーの接点を意図的に設けて接点数を合わせる場合もあります。

図2.ハンダと銅の接点で生じる熱起電力
また、空気の流れによって熱勾配が生じ、測定系に大きなノイズが発生することもあります。影響を受けやすい回路間に気流を起こさないことが重要で、そうすることによって、熱電対ノイズが大幅に減少することも少なくありません。これらの手法の概要を図3に示します。

リークの影響
リーク電流が高インピーダンスの信号ノードに流れ込むと、ナノアンペア以下の信号の測定精度は簡単に低下してしまいます。高電圧で高温度のアプリケーションでは、特にこうした問題の影響を受けやすくなります。高品質の絶縁材料を使用し、絶縁表面からフラックスなどの残留物を除去してクリーンな状態に保つ必要があります。湿度の高い環境では、表面にコーティングを施して防湿層を形成しなければならないこともあります。

図4.
基板のリーク電流は、入力ピンの電位に非常に近い電位で動作するガード・リングで入力の接続を囲むことにより、最小限に抑えることができます。ガード・リングは、低インピーダンスのノードに接続してください。ガード・リングは、反転構成の場合、正入力(+IN)の電位に接続し、非反転構成の場合は、負入力(–IN)の電位に接続します。この手法では、効果を上げるために、ガード・リングがハンダ・マスクで覆われないようにしなくてはなりません。プリント回路基板の両側にリングが必要な場合もあります。

図5.リーク・電流用ガード・リングを備えた非反転アンプのレイアウト例
LTC2057は、低リーク・アプリケーション用に、ガード・リング構造のレイアウトを簡単に行える特別なピン配置のMS10パッケージで提供されています。入力に隣接するピンには内部接続がないため、それらのピンを通じてガード・リングを配線できます。


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