補聴器の紹介と設計上の重要な検討事項

2010年11月24日
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要約

このアプリケーションノートは、耳の後ろに装着する型式(BTE)、耳内に装着する型式(ITE)、外耳道入口に装着する型式(ITC)、外耳道内部に隠す型式(CIC)を含む補聴器の型式を紹介し、アナログおよびディジタル両方の補聴器の技術を簡潔にまとめています。また音声処理経路の重要性、電気部品の機能、および部品を選択する上で設計者が検討する必要のある極めて重要な要素についても議論しています。

概要

電子補聴器は、難聴の人が耳の中または耳の周囲に装着することで聴力を向上させるための小型装置です。補聴器の基本部品は、マイクロフォン、信号調整回路、レシーバ(すなわちスピーカ)、およびバッテリです。マイクロフォンは音声を電気信号に変換します。その信号はさらに、全周波数帯域を均等に増幅するような単純なコンディショニングや、ディジタル信号プロセッサ(DSP)が関わるより高度なイコライゼーションまで、必要な処理を施されます。レシーバはその電子信号を音声に逆変換し、バッテリは電子回路の電源となります。

型式

現在市販されている補聴器には、主に4つの型式があります。耳の後ろに装着する型式(BTE)、耳内に装着する型式(ITE)、外耳道入口に装着する型式(ITC)、外耳道内部に隠す型式(CIC)があり、装置のサイズはBTEが最大でITE、ITC、CICの順に小さくなります。BTE型式は耳の後ろに装着し、透明のチューブで耳の中のイヤーモールドに接続して音声を伝えます。この型式のバリエーションとしてOpen-Fit-Behind-The-Ear (OTE)と呼ばれるものがあり、イヤーモールドの代わりに小型の先端具を使用するため、開放感がより大きくなります。その他のバリエーションとしては、チューブの代わりにワイヤを使用するものや、レシーバを耳の後ろではなく耳内に置くものなどがあります。ITE型式では、補聴器をイヤーモールドと一体化させて外耳内に装着します。この型式は外耳の大半を覆う1つの塊のように見えます。ITC型式では、補聴器の一部が外耳道に入り込むため、外耳の占有スペースは小さくなりますが、それでも外からははっきりわかります。CIC型式は、4つの型式の中で最も小さく、完全に外耳道内に収まるため、外からはほとんど見えません。

耳の後ろに装着する型式(BTE)、耳内に装着する型式(ITE)、外耳道入口に装着する型式(ITC)、および外耳道内部に隠す型式(CIC) (写真提供:Starkey Laboratories, Inc.)

耳の後ろに装着する型式(BTE)、耳内に装着する型式(ITE)、外耳道入口に装着する型式(ITC)、および外耳道内部に隠す型式(CIC) (写真提供:Starkey Laboratories, Inc.)

技術の種類

補聴器の技術には、基本的にアナログとディジタルの2種類があります。先に開発されたアナログ補聴器は、音声信号をアナログ領域で処理します。それに対して、最新のディジタル補聴器は音声信号をディジタル領域で処理します。初期のアナログ補聴器は音声と雑音の両方を増幅するだけのものであり、購入にあたって患者が必要とする特定の周波数応答を確認する検査が行われていました。より新しいアナログ補聴器はフィットさせる際に設定可能であり、患者がボタンで選択可能な複数のリスニングプロファイルを内蔵しているものもあります。ディジタル補聴器もフィットさせる際に設定可能であり、患者が選択可能な複数のリスニングプロファイルを内蔵しています。音声のディジタル化によって、ノイズ低減、フィルタリング、音響フィードバック(リンギング)抑制など、より高度な信号処理が可能となっています。アナログ補聴器に比べて性能や柔軟性に優れているため、現在販売されている補聴器は大部分がディジタルです。

ディジタル補聴器のファンクションブロックダイアグラム。マキシムが推奨する補聴器の設計ソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/hearingをご覧ください。

ディジタル補聴器のファンクションブロックダイアグラム。マキシムが推奨する補聴器の設計ソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/hearingをご覧ください。

機能

最新の補聴器では、音量調節、リモート制御、テレコイル、直接音声入力、FM受信、Bluetooth®機能、指向性マイクロフォン、圧縮、クリッピング、周波数シフト、風切り音管理、データロギング、自己学習、耐湿性、通気性のあるイヤーモールドなど、多数の機能を利用することができます。これらの機能の中には、実装のために外部領域が必要なものや補聴器のサイズが小さくなるほど内蔵するのが難しくなるものがありますが、すべての補聴器に実装可能な機能もあります。

音量調節は、補聴器に付いているボタンまたは回転ダイヤルによって手動で行います。リモート制御を備えている場合は補聴器にボタンやダイヤルが不要になり、リモート制御によって補聴器の機能をすべて操作することができます。テレコイルは、マイクロフォンとは別の入力手段です。テレコイルは、当初磁気巻線駆動のスピーカを備えた旧式の電話機で生成される磁気信号の検出に使用されていました。この方式では、電話機で通話する際にマイクロフォンよりも明瞭な音声が得られます。今日の電話機やその他の聴音器は、テレコイルと連携し、特に補聴器と互換性があることを示すために、この機能を内蔵しています。直接音声入力とFM受信は、音声を補聴器に入力するための代替手段であり、前者は有線コネクタを入力として使用し、後者はFMラジオ受信機を使用します。最近の流れの1つは、携帯電話や音楽プレーヤーから音声を受信するBluetooth機能の内蔵です。Bluetoothデバイスは、補聴器に内蔵されるか、またはテレコイルやFM入力を経由するアドオンデバイスとなっています。

指向性マイクロフォン内蔵の補聴器は、複数のマイクロフォンを使用して複数の方向からの音声を受信します。これによって、雑音の多い環境で音声を聴き取るときの信号対ノイズ比(SN比)が改善され、ディジタル信号処理を併用すると音声品質がさらに向上します。圧縮とクリッピングは、いずれも音声の中で大き過ぎる成分を削減し、場合によっては単に音声を切り落としたり制限することによって、聴き取りの快適さを向上させます。周波数シフトは、ディジタル信号処理を利用して音声を低周波側にシフトさせます。この機能は、高周波側に難聴がある人に役立ちます。風切り音管理は、風を検出して、使用者に聞こえるリンギング音を引き起こすようなフィードバックを除去します。

データロギングは、聴き取りの環境や補聴器の使用の仕方を記録します。この情報によって、聴覚の専門家が補聴器の性能を微調整することができます。自己学習機能は、データログを利用して、自動的に性能を微調整していきます。耐湿性は湿気にさらされることによる不具合を削減するのに役立ち、通気性のあるイヤーモールドは、イヤーモールド型の補聴器を装着したときの閉塞感を緩和して快適さを高めます。

一般的要件

補聴器の設計上、決定的な要素は、音声処理の経路にあります。1つまたは複数のマイクロフォンとレシーバを、プリアンプ(必要な場合)およびスピーカアンプと組み合わせて選択します。最新の補聴器では、A級やB級のアンプに比べて低電力動作、低歪み、および小型であるため、D級アンプが使用されています。音声帯域幅が20kHzであろうと、8kHzに制限されていようと、オーディオコーデックは高いSN比を備えて音声を正確に保存し再現する必要があります。

システムの中心部はディジタル信号プロセッサ(DSP)です。ディジタル補聴器の利点はすべてDSPに実装されています。DSPの実装はメーカーによってさまざまです。一般に、DSPでは、帯域ごとの圧縮/展開、正のフィードバック抑制、ノイズ低減、および音声強調を実行します。また、指向性情報を処理し、補聴器を患者になじませるのに役立つ独自の信号を生成することもできます。

電源およびバッテリマネージメント

補聴器によっては再充電可能な単一セルリチウムイオン(Li+)バッテリの使用が始まっていますが、大部分の補聴器はまだ1次亜鉛空気電池を電源にしています。使用される亜鉛空気電池は、補聴器の型式やサイズ、回路の電力消費量、およびバッテリ寿命の要件に応じて、主に5種類のサイズがあります。表1は、最も一般的な5種類の亜鉛空気電池の容量およびサイズを比較したものであり、見分けやすくするためのカラーコードや、よく使用される補聴器の型式もあわせて記載しています。

亜鉛空気電池は初期電圧1.4Vであり、使用して約1.0V以下まで下がると交換が必要になります。1日あたり16時間使用した場合、その寿命は電池の容量や補聴器の設計に応じて2日間から数週間になります。最も電力効率の高い設計は単一のバッテリで直接動作させる場合ですが、スイッチングレギュレータを使用すると、1.8Vまたは3.0Vのいずれでも、設計要件に合わせて電圧を昇圧することができます。亜鉛空気電池で動作させるときの電力損失の目標は1mW~10mWです。充電式のLi+バッテリを使用する補聴器では、単一セルLi+バッテリの最大充電電圧である標準の4.2Vで回路を直接動作させることができない場合、リニアレギュレータやスイッチングレギュレータでバッテリ電圧を降圧することが必要になることがあります。あるいは、回路の要件に応じて、バッテリチャージャで充電をより低い最終電圧(3.3Vなど)に制限することもできます。患者の補聴器が機能しなくなるのを防ぐため、正確な残量ゲージを備えてバッテリが枯渇する前に警告を発することが極めて重要です。

表1. 亜鉛空気電池の比較.
種類 容量(mAh) サイズ(奥行 x 高さ、mm) カラーコード 使用される補聴器の型式
675 540 to 640 11.6 x 5.4 青色 BTE (高出力)、蝸牛埋め込み
13 230 to 285 7.9 x 5.4 金色 BTE、ITE
312 120 to 160 7.9 x 3.6 赤紫色 miniBTE、ITE、ITC
10 60 to 90 5.8 x 3.6 黄色 ITC、CIC
5 30 to 40 5.8 x 2.1 赤色 CIC

静電放電

すべての補聴器は、静電放電(ESD)に関するIEC 61000-4-2の要件を満足する必要があります。ESD保護を組み込んだ電子回路を使用したり、ESDラインプロテクタをむき出しになった配線に追加することで、これらの要件を満足することができる場合があります。



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