集積化ダイオードベースRFディテクタの理解、 動作、およびインターフェーシング
ダイオードは、その基本的な整流特性のため、常にACおよびRF信号に比例したDC電圧を生成するために使われてきました。この記事では、ダイオードベースのRFおよびマイクロ波回路の性能と、集積回路を使用した同様の回路の性能を比較します。対象となる項目には、伝達関数の直線性、温度安定性、およびADCとのインターフェーシングが含まれます。
ディスクリート回路による ダイオードベースRFディテクタ
一般的なダイオードベースのRF検出回路を図1に示します。これは、出力をフィルタリングする単純な半波整流と考えることができます。入力信号の正のハーフ・サイクルがショットキー・ダイオードに順方向バイアスをかけ、ダイオードがコンデンサを充電します。負のハーフ・サイクルではダイオードが逆バイアス状態となり、コンデンサの電圧が維持されて入力信号に比例したDC出力が得られます。入力信号が減少したとき、あるいはオフになったときにこの電圧が低下するようにするには、コンデンサに並列抵抗を接続して放電経路を構成します。

図 1. ショットキー・ダイオードベースRFディテクタ
この回路の伝達関数を図2に示します。入力パワーの単位はdB、出力電圧は縦軸に対数目盛で示されています。25°Cでの伝達関数を見ると、曲線上に2つの異なる動作領域が確認できます。いわゆる線形領域は入力範囲の上限(約15dBm)から0dBm付近までです。この線形領域という呼び方は、この領域の出力電圧が入力電圧にほぼ比例しているという事実から来ています。

図 2. ショットキー・ダイオードベースRFディテクタの伝達関数
0dBm未満からは、いわゆる2乗則領域になります。この領域の出力電圧は、入力電圧の2乗にほぼ比例します。したがって、プロットの勾配が大きくなります。
図2には、温度−40°Cと+85°Cにおける出力電圧と入力パワーの伝達関数も示されていますが、0dBm未満の出力レベルが大きく異なっています。これは、温度が大きく変化するようなアプリケーションでは、デバイスを使用できないことを示しています。
この温度ドリフトをある程度緩和することのできる手法がいくつか存在します。これらの手法は、もう1つのダイオードをリファレンス・ダイオードとして使用するもので、ダイオードは回路の一部として使用するか、固有出力を持つ独立した回路として使用します。リファレンス・ダイオードの温度ドリフトは、プライマリ・ダイオードと同じです。減算を(回路構造に基づきアナログ領域またはデジタル領域で)行うプロセスによって、ある程度のドリフトを相殺することができます。
多くの画期的な特長を持つショットキー・ダイオードベースの集積化ディテクタADL6010の25GHzにおける伝達関数を図3に示します。信号処理の一部として、入力信号は、一定のパワー・レベル未満の信号に対してだけ平方根機能を実行する回路を通過します。遷移点は、ダイオードが2乗則領域から線形領域へ遷移するパワー・レベルと同じになるように、意図的に設定されています。この結果ダイオードの2乗則効果が打ち消されます。図1では伝達関数が2つの領域にはっきり分かれていましたが、そのようなこともなくなります。

図 3. 25GHzにおける集積化ショットキー・ダイオード・ディテクタの 出力電圧と入力パワーおよび直線性誤差の関係
図3には、−55°Cから+125°Cまでの様々な温度での伝達関数を示すプロットも含まれています。また、伝達関数と温度の関係の変動(誤差)もプロットされています。25°Cでの伝達関数の線形回帰をリファレンスとして使用し、各温度の誤差をdB単位でプロットしています。内蔵された温度補償回路と2乗則特性除去回路により、入力レンジのほとんどで、直線性と温度ドリフトによる誤差が約±0.5dBとなっているのが分かります。
ADCとのインターフェーシング
RFおよびマイクロ波ディテクタはアナログ・パワー制御ループに使われることもありますが1、図4のようにデジタル・パワー制御ループを構成する方が一般的です。これらのアプリケーションでは、パワー・ディテクタの出力がA/Dコンバータによってデジタル化されます。デジタル領域では、パワー・レベルはADCのコードを使って計算されます。パワー・レベルが分かると、システムは、必要に応じて送信パワーを調整することによってこれに応答します。

図 4. デジタル制御による代表的なRFパワー制御ループ
このループの応答時間はディテクタの応答時間にもわずかに依存しますが、ADCのサンプリング・レートとパワー制御アルゴリズムの速度の方が、はるかに大きく影響します。
RFパワー・レベルを測定して精密に設定するループの能力は、RFディテクタの伝達関数やADCの分解能などの複数の要素に影響されます。これをより正確に理解するために、ディテクタの応答を詳しく見てみましょう。図5は、20GHzにおけるADL6010ダイオードベース・ディテクタの応答と、マイクロ波ログ・アンプHMC1094の応答を比較したグラフです。ログ・アンプの伝達関数はデシベルリニアで、入力パワーが1dB変化したときの出力電圧変化は常に同じです(概ね−50dBm~0dBmの線形入力範囲)。これに対し、横軸をdBスケールにして、出力電圧を示す縦軸を線形スケールにした場合、ADL6010などのダイオードベース・ディテクタの伝達関数は指数関数的な形状を示します。

図 5. デシベルリニア特性の比較
A/Dコンバータの伝達関数は電圧あたりのビット数を単位として表されるため、これは、dB/bitを単位とするシステム分解能が、入力パワーの減少と共に連続的に低下していくことを意味します。図5のプロットには、フルスケール電圧が5Vの12ビットADCをADL6010で駆動した場合に実現することのできる、bit/dBで表した分解能も示されています(このプロットは、見やすいように第2軸に対数表示で示されています)。デバイスのパワー・レンジ下限である−25dBm付近での増加率は約2bit/dBで、分解能は約0.5dB/bitとなります。これは、ADL6010の出力をその全レンジにわたって正確に分離検出するには、12ビットADCで十分であることを示唆しています。
RF入力パワーが大きくなると、bit/dB単位で表した増加率も最大値の300bit/dBまで徐々に増加します。この最大増加率時の入力パワーは15dBmです。これは、システムが最大パワーにある時の精度が最も重視されるRFパワー制御アプリケーションで、重要な意味を持ちます。そして、これは、ハイパワー・アンプ(HPA)のパワーを測定して制御するためにRFディテクタを使用するアプリケーションの典型的なシナリオです。HPAの過熱を防ぐためにパワーを制御することが多いアプリケーションでは、最大パワー時における高分解能のパワー測定が重視されます。
これに対し、図5に示したHMC1094ログ・アンプの伝達関数も、その線形動作範囲の勾配が一定であることを示しています。これは、実現する分解能が1dBよりずっと低いような場合は、分解能の低いADC(10ビット、場合によっては8ビット)で十分であることを示唆しています。
AD7091は最大1MSPSでサンプリングが可能な12ビットの高精 度ADCですが、これにADL6010を接続するアプリケーション回 路を図6に示します。このADCは、フルスケール入力電圧を設 定する2.5Vリファレンスを内蔵しています。ADL6010ディテク タの電圧は最大で約4.25Vに達することがあるので、電圧が2.5V を超えないように、簡単な抵抗分圧器を使ってこの電圧をスケールダウンします。このスケーリングを行う場合、オペアン プ・バッファは必要ありません。入力パワー・レンジの下限で 実現可能なdB/bit単位の分解能は、上に示した例と同じです(つ まり約0.5dB/bit)2。

図6. 集積化マイクロ波パワー・ディテクタと高精度ADCのインターフェーシング
まとめ
集積化RFおよびマイクロ波ディテクタは、ディスクリート実装と比較して多くの利点を提供します。集積化温度補償回路を使用すれば、そのままで、広い温度範囲にわたり約±0.5dB以内の出力電圧を簡単に得ることができます。また、内蔵の平方根機能を使用すれば、低入力パワー・レベル時の2乗則特性を効果的に除去することができます。これによって伝達関数が単一の線形関数となり、デバイスのキャリブレーションが容易になります。集積化ディテクタのバッファ付き出力は、ADCを直接駆動することができます。負荷によって計算精度に影響が出る心配はありません。低入力パワー時に適切なbit/dB値を実現できるように、ADCの選択とサイズ決定には注意を払う必要があります。
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