集積化DC対数アンプ

2006年06月07日
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要約

対数アンプのクラスの中でも、DCログアンプは広ダイナミックレンジセンサ信号を圧縮するための大変パワフルでコスト効率のよいソリューションであり続けています。このアプリケーションノートでは、バイポーラトランジスタのVBE-ICトランス特性から全体のDCログアンプトランス機能を取り上げます。今日の高集積DCログアンプで起こる回路ブロック、ログアンプ性能に影響するさまざまなエラー、およびMAX4206を使った設計例を示します。最後に較正とデザインポインタを通してログアンプ性能を最適化するアドバイスの詳細が記載 されています。

このアーティクルはマキシムの「エンジニアリングジャーナルvol. 56」(PDF、867kB)にも掲載されています。

半世紀以上にわたって、エンジニアは信号圧縮と計算に対数アンプを使用してきました。計算を必要とするアプリケーションでは、ほとんどの場合ディジタルICが対数アンプに取って代わりましたが、信号の圧縮には現在も対数アンプが使われ続けています。そのため、ビデオ、光ファイバ、医療、検査と測定、およびワイヤレス分野の多くのシステムで、対数アンプは依然として主要コンポーネントの1つになっています。

その名が示すとおり、対数アンプは入力に関連した出力を数学の対数関数で表します(対数の底が異なる関数同士は定数によって結びつけられるため、底は重要ではありません)。対数関数を利用することによって、システムが遭遇する信号のダイナミックレンジを圧縮することが可能です。広いダイナミックレンジを持つ信号を圧縮することには、いくつかの重要なメリットがあります。対数アンプを使わないと高ビット数ADCが必要になるような場合、多くは対数アンプと低ビット数ADCの組み合わせによって基板スペースとシステムコストを削減することができます。さらに、低ビット数のADCであれば対象のシステムやその中のマイクロコントローラに最初から含まれていることが少なくありません。測定値をデシベルで評価するアプリケーションや、センサが指数関数的またはそれに近い伝送特性を示すアプリケーションが数多く存在しますが、これらのアプリケーションでも対数パラメータへの変換が有効です。

1990年代、特定の光通信アプリケーションにおける光強度の測定用として、光ファイバ通信業界が対数アンプ回路を使い始めました。それ以前は、高精度な対数アンプICは高価で、しかもかさばるものであり、そうした代価が正当化されるような電子システムはごく一部でした。それらのICソリューションに対する唯一の代替品は、ディスクリート部品で構成された対数アンプでした。ディスクリート部品による対数アンプは、さらに多くの基板スペースを消費する上に、温度変化に敏感であることが多く、慎重な設計と基板レイアウトが要求されました。また、広範囲な入力信号に対して適正な動作を保証するためには、高度にマッチングの取れた部品が必要でした。それ以来半導体メーカ各社は、温度感受性を抑え機能を追加した、より小型でコストを抑えた集積型対数アンプ製品を開発してきました。

対数アンプの分類

対数アンプには大きく分けて3つのクラスがあります。第1のクラスであるDC対数アンプは、伝統的におよそ1MHzまでの帯域幅でゆっくり変化するDC信号に対して動作します。議論の余地なく、pn接合が本質的に備える対数的な電流-電圧変換特性を使用するのが最も一般的です。これらのDC対数アンプは単極の入力(電流または電圧)に対して動作し、しばしばダイオード、トランスダイオード、トランスリニア、およびトランスインピーダンス対数アンプと呼ばれます。電流を入力とすることから、DC対数アンプは広いダイナミックレンジを持つ単極フォトダイオード電流(絶対値またはレシオメトリック)の監視に広く使用されています。フォトダイオード電流の監視は、光ファイバ通信機器で必ず必要になるのに加えて、様々な化学的および生物学的サンプル処理装置でも使われています。上記の用法以外にも、RC回路が持つ時間と電圧の対数的関係に基づくものなど、いくつかの種類のDCベース対数アンプが存在します。しかし、それらの回路は信号に依存して分解能や変換時間が大きく変化するなど複雑化しやすいのが一般的であり、温度感受性も高くなります。

第2のクラスの対数アンプは、ベースバンド対数アンプと呼ばれるものです。この回路クラスは、(ある種のオーディオ/ビデオ回路で一般的な)AC信号の圧縮が要求されるアプリケーションに使用され、急速に変化するベースバンド信号に対して動作します。このアンプは、それぞれの瞬間における入力信号の対数に比例する出力を提供します。ベースバンド対数アンプの特別な形として、「真の対数アンプ」があります。これは、双極の入力に対して、入力の極性を維持した形で圧縮された出力電圧を提供するものです。真の対数アンプは、無線IF段や医療用の超音波受信回路でダイナミックレンジ圧縮に使用される場合があります。

最後の、第3のクラスの対数アンプは、復調対数アンプ、または連続検出対数アンプです。このクラスの対数アンプは、RF信号の圧縮と復調の両方を行い、整流された信号のエンベロープを対数で出力します。復調対数アンプは、受信したRF信号強度を測定して送信機の出力電力を制御するために、RFトランシーバアプリケーションで広く使用されています。

古典的なDC対数アンプ

古典的なpn接合ベースのDC対数アンプの場合、バイポーラトランジスタを使ってI-Vの間に対数関係を作ります。図1に示すように、オペアンプの帰還パスにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を配置します。使用するトランジスタの種類(npn型またはpnp型)によって、対数アンプはそれぞれ電流シンクまたは電流ソース回路になります(図1aおよび1b)。オペアンプは、負帰還を通して有効な入力電流がすべてBJTのコレクタを通して取り出される ことを保証するのに十分な出力電圧を、BJTのベース-エミッタ接合に印加します。フローティングダイオードでは、オペアンプの出力電圧に入力換算オフセットが含まれることになるため注意してください。ベース接地型では、この問題はありません。

Figure 1a. The basic BJT implementation of a DC log amp has current-sinking inputs that generate negative output voltages.

図1a. BJTを用いたDC対数アンプの基本構成には、負の出力電圧を発生させるシンク電流があります。

Figure 1b. By changing the BJT from npn to pnp, the log amp becomes a current-sourcing circuit and the output is positive.

図1b. BJTをnpn型からpnp型に変えることで対数アンプが電流ソース回路になり、出力がプラスになります。

入力にシリーズ抵抗を付加することによって、このDC対数アンプを電圧入力デバイスとして機能させることもできます。オペアンプの仮想接地を基準として、入力電圧がそれに比例する電流に抵抗を通して変換されます。明らかに、正確な電圧-電流変換を実現するためには、オペアンプの入力換算オフセットを最小化しなければなりません。バイポーラトランジスタによるアプローチは温度変化に敏感ですが、後述の通り、基準電流とオンチップ温度補償の使用によって、この感受性を大幅に低下させることが可能です。

詳細

図2の回路は、IINとIREFという2つの入力を持つBJT対数アンプを示しています。前節で述べたように、IINに流れる電流によって、オペアンプA1はそれに対応する出力電圧を生じることになります:

Equation 1

ただし、
k = 1.381 x 10-23 J/°K
T = 絶対温度(°K)
q = 1.602 x 10-19°C
IC = コレクタ電流(mA、またはIINおよびISと同じ単位)
IIN = 対数アンプの入力電流(mA、またはICおよびISと同じ単位)
IS = 逆方向飽和電流(mA、またはIINおよびICと同じ単位)

(式1において、「ln」は自然対数を表しています。以後の式では、10を底とする対数を「Log10」で表します。)

Figure 2. When two of the basic BJT-based input structures are used, subtracting VOUT2 from VOUT1 removes IS temperature dependence from the output. The remaining PTAT dependence can be minimized by using a suitably selected RTD (resistive temperature detector) with the gain-setting resistors of the difference amplifier.

図2. 基本的なBJTベースの入力構造を2組使用する場合、VOUT1からVOUT2を引くことによって出力からISの温度依存性を取り除きます。残った「PTAT」依存性は、適切に選択したRTD (測温抵抗体)と差動アンプのゲイン設定抵抗を使うことによって最小化することができます。

この式は、VOUT1がIINに対して対数的依存性を持つことを明確に示していますが、項ISおよびkT/qは温度に依存しており、そのためVBE電圧に大きな変動幅がもたらされることになります。ISによって生じる温度依存性を排除するため、A3とその周囲の抵抗によって構成される差動回路を使って、VOUT1から第2の接合電圧を減じてやります。この第2の接合電圧は、IREFが入力電流になる点を除いてVOUT1とほぼ同じ方法で作られます。適正な相殺効果を得るためには、2つの接合を形成するトランジスタが互いにほぼ等しい特性を備えなければならず、緊密に熱的接触させる必要があります。

Equation 2

Equation 3

Equation 4

Equation 5

IREFが存在することには、2つのメリットがあります。第1に、x軸の「対数切片」電流(対数アンプの出力電圧が理論上ゼロになる電流)を任意に設定可能です。第2に、絶対値の測定に加えてレシオメトリックな測定が可能になります。レシオメトリック測定は、減衰された光源を基準光源と比較しなければならない光センサや光システムで頻繁に使用されます。

式5は、VDIFFが絶対温度に比例(proportional to absolute temperature:PTAT)しているため、さらに温度の影響があります。後続の温度補償回路(通常は、ゲインの一部として測温抵抗体[resistive temperature detector:RTD]またはそれに類する素子が組み込まれた追加のオペアンプ増幅段)を付加することで、残留PTAT誤差を実質的に除去でき、理想的な対数アンプの関係が得られます:

Equation 6

ただし、Kは対数アンプゲインとも呼ばれる新しいスケールファクタ定数です(単位はV/桁)。比ILOG/ IREFのlog10を取るとILOGがIREFの何桁上または下であるかが決まるため、それにKをかけることによって求めるボルト数が得られます。

集積型の設計はDC対数アンプに最適です。温度に依存する主要なコンポーネントを同じ物理的回路上に配置することができるため、それらのコンポーネントの優れた温度トラッキングが得られるためです。さらに、製造中に様々な残留誤差を除去することも可能です。残留誤差がある場合は、通常、対数アンプのデータシートに明記されています。

現代のDC対数アンプ

図3の機能ブロック図は、典型的な現代型DC対数アンプであるMAX4206を示したものです。旧世代と同様、今日のDC対数アンプも、オペアンプ入力構造、BJT帰還、差動アンプ、および温度補償を備えています。エミッタの負の駆動電圧を排除するため、BJTトランジスタの回路接続を見直すことで単一電源動作を可能にしています。後続のゲイン、オフセット調整、場合によってはPID制御のために、汎用のオペアンプが引き続き広く使用されています。

Figure 3. A typical DC log amp, like the MAX4206, integrates components such as trimmer pots and output amplifiers. Therefore, it requires few additional components for operation.

図3. 典型的なDC対数アンプ(MAX4206など)には、トリマポットや出力アンプなどのコンポーネントが集積されています。したがって、ほとんど外付け部品を必要とせずに動作します。

旧世代の製品と比べて、現代の対数アンプはより小さなパッケージにすべてのエレクトロニクスが組み込まれています(MAX4206の場合、4mm x 4mmの16ピンTQFNパッケージで提供されています)。2001年以前は、市販のDC対数アンプはピン数14から24のずっと大きなDIPパッケージしかありませんでした。それらの旧世代コンポーネントには、20ドル~100ドルという高額な値段が付けられていました。それらに代わる今日の製品は、5ドル~15ドルの範囲で容易に手に入ります。

単一電源動作は、一部の現代的DC対数アンプが備え始めた新たな改良点の1つであり、単一電源のADCやシステムでの使用に適したものとなっています。MAX4206は、+2.7V~+11Vの単一電源または±2.7~±5.5Vのデュアル電源のどちらでも動作可能です。単一電源動作の結果として、これらの単数アンプではロギングBJTに対する適切なバイアスを維持するため、入力端子に典型的な0.5Vのコモンモード電圧を印加するのが一般的になっています。これらの対数アンプは電流入力デバイスであるため、ほとんどの電流測定アプリケーションでは内部生成されるこのコモンモード電圧が普通問題になることはありません。

現代のほとんどのDC対数アンプでは、オンチップの電流基準が存在するのが非常に一般的になっています。この基準を対数アンプの基準入力に接続することによって、対数アンプの主電流入力に与えられる電流を、レシオメトリックではなく絶対値で測定できるようになります。MAX4206の場合、0.5VDCの電圧源、電圧-電流変換回路、および10:1カレントミラーを使って基準電流を取得しています。任意の基準電流をプログラムするには、外部抵抗が必要です。

これもDC対数アンプの新しい機能として、汎用オペアンプのアンプオフセット調整を補助するために、オンチップの電圧基準が提供されることもあります。この基準は、汎用の目的に使用することも可能です。

アプリケーション例

DC対数アンプの最も一般的なアプリケーションが光の測定を伴うものであることは間違いありません。使い方としては主に2つあります。第1の方法では、単一のフォトダイオードをロギング入力に接続し、基準電流を基準入力に接続します。第2の方法では2つのフォトダイオードを使用し、一方をロギング入力に、もう一方を基準入力に接続します。前者では光強度の絶対値測定が必要な場合に使用され、後者では対数レシオメトリック(「ログレシオ」)による光強度測定に使用されます。

この2つの用法を一般化した回路図を図4に示します。図4aは、光ファイバタップ(1%伝送)から発散する光を観測することによって、単一のフォトダイオードで光ファイバチャネルの光を測定するものです。図にはPINフォトダイオードが描かれていますが、応答性をさらに高めるためにアバランシェ・フォトダイオードを使うことも考えられます(フォトダイオードのバイアスに高電圧を使用する場合は、電源について適切な予防措置を取っておく必要があります)。フォトダイオードの出力電流は一般に入射光パワーに比例し(典型的なフォトダイオードの応答性は0.1A/mW)、MAX4206は5桁のダイナミックレンジにわたって動作するため、図のような回路でファイバからの10µW~1Wの光強度を高い信頼性で測定することができます。MAX4206は-40°C~+85°Cの温度範囲で動作することが保証されていますが、動作温度と光周波数の変化によってフォトダイオードの性能が大きく影響される可能性があるという点に注意が必要です。

Figure 4a. Logging applications that measure optical intensity are easily created by placing a photodiode at the input of the log amp.

図4a. ログアンプの入力にフォトダイオードを配置することで、光強度を測定するロギングアプリケーションを簡単に作成することができます。

フォトダイオードのアノードが、多くの光ファイバモジュールに見られる高速トランスインピーダンスアンプ(TIA)のような他の回路用に確保されている場合は、フォトダイオードのカソードに高精度カレントミラー/モニタを使用する方法があります。MAX4007シリーズの製品がこのアプリケーションに最適です。詳細については、MAX4206およびMAX4007のデータシートを参照してください。

ロギングアプリケーションで2つのフォトダイオードを使用する場合は、基準光源と、その基準光源から分岐された減衰光源とを比較するのが目的になります。そうすることで、特定の媒体によって生じる減衰を、光源の強度と無関係に(あるいは少なくともわずかな強度の変化で)測定することができます。このタイプのアプリケーションは、多くの光ベースのガスセンサ・アプリケーションに広く見られます。図4bでは、光源の出力が2本の経路に等分されています。第1の経路は基準PINフォトダイオードに入射し、そのアノードがMAX4206のREFIIN入力に接続されます。もう一方の経路はミラーで90°反射され、試料を 通過して(LOGIIN入力に接続された)もう1つのPINフォトダイオードに到達します。基準フォトダイオードからの電流の測定値が1mAになるように調整したとき、もう一方のフォトダイオードからの電流は(光が通過する減衰に応じて)1mA以下の値になります。入力電流を1mA以下に固定することで、MAX4206が持つ広い5桁のダイナミックレンジがフルに活用されます。

Figure 4b. Log-ratio applications use two photodiodes and generally measure optical attenuation.

図4b. ログレシオ・アプリケーションでは2つのフォトダイオードを使用し、一般には光の減衰を測定します。

MAX4206は10nA~1mAの入力電流範囲外では動作の保証がありませんが、この範囲を超えても入/出力間の単調性を維持したまま動作させることが可能な場合が多いということも付記しておきます。

DC対数アンプの誤差原因

今日のDC対数アンプも、依然として旧世代の製品と同じ制約をかかえています。式6は、DC対数アンプの理想的近似式です。可能な限り最も正確な式を得るためには、ゲイン、バイアス電流、オフセット、および直線性の誤差に起因する項も考慮に入れなければなりません。温度と時間に依存するドリフトによってそのような不正確さが悪化する場合、この点が特に重要になります。

BJTベ-スのDC対数アンプを表す、より包括的な式は、次式で与えられます:

Equation 7

ただし、ΔKはゲインの変動、IBIAS1IBIAS2はそれぞれLOGIIN入力とREFIIN入力に対応するバイアス電流です。VCONFは対数適合誤差、VOSOUTは出力基準オフセットです。KILOGIREF、およびVOUTは以前の定義と同じです。多くのアプリケーションでは、バイアス電流に伴う誤差は入力電流および基準電流に比べて非常に小さく、したがって通常は誤差の式から省略します。対数適合誤差は、式6の理想的な対数関係からの最大偏差として定義されます(他の誤差原因をすべてゼロと仮定)。理想的プロット線からのわずかなずれを容易に調べられるよう、この誤差はしばしば差分形式で表されます(図5a)。

Figure 5a. A typical log-conformity error plot is commonly shown as a function of input current(s) and operating temperature.

図5a. 典型的な対数適合誤差のグラフは、入力電流と動作温度の関数として示されるのが一般的です。

すぐには気づきにくいですが、基準電力IREFには初期の不正確性、温度ドリフト、および経時関連のドリフトが含まれる可能性があり、大きな誤差原因になりかねません。対数アンプの動作の全体的誤差を見積もる場合は、そのような誤差を含める必要があります。

これらの非理想的な変動の影響を示したものが図5bの変換曲線です(分かりやすくするため、これらの影響を強調してあります)。黒の線で示したのが、対数切片100nA、ゲイン1V/桁の理想的な/望ましい式です。出力オフセット誤差による黒の線から上または下へのずれを緑の線が示しています。オフセット誤差でずれた変換特性がゲイン誤差によって回転された状態を示すのが、青の線です。赤の線は、非直線性誤差と出力マージン誤差を含めた場合の影響を示します。

Figure 5b. The effect of the different errors, presented in Equation 7, on the log transfer function is shown. Errors have been exaggerated for clarity.

図5b. 式7に含まれる様々な誤差が対数変換機能に与える影響を示します。明確化のため誤差を誇張してあります。

実際には、対数アンプのメーカーはこの節で取り上げた誤差の多くを最小化しています。それに加えて調整と温度監視を行うことで、設計者はこれらの誤差による影響をさらに減少することができます。設計者は通常、対数アンプの出力をディジタル化した後で、較正表を使ってこれらの修正を実施します。

DC対数アンプの設計

DC対数アンプの性能は、それが含まれている回路の性能によって左右されます。優れた設計とレイアウト技術によって、入力漏れ電流とコンポーネント間の熱変位を最小化することができます。しかし、ほとんどの対数アンプアプリケーションで要求される性能を保証するには、特に一定範囲の入力電流および温度にわたって動作させる場合、優れた設計とレイアウトだけで十分なことはまれです。アプリケーションの要件と動作環境に応じて、累積誤差を最小化するための適切な較正処置を施す必要があります。

以下、DC対数アンプを設計する際に考慮すべき手法を上げておきます。


1点較正


これは、実質的に図5bの生の性能曲線(赤の線)を上下に平行移動し、理想的性能曲線(黒の線)と一点で交わるようにする「最低限の」技法です。標準的な動作温度で、公称の入力電流と基準電流を対数アンプのそれぞれの入力に印加します。その結果得られる、望ましい結果からの偏差を、通常の動作時に実際の対数アンプの出力から減じます。

長所:較正が短時間で終わり、製品の最終テスト中に実施することができ、必要な計算量も少なくて済みます。単一のトリマ抵抗を使ってアナログ領域で較正を行うことも可能です。

短所:ゲインとオフセットの誤差を一緒にした、単一の、過度に一般化された補正を行うことになります。入力および温度が較正時の条件から変化すると、補正値の有効性が失われます。


2点較正


この手法は前述のものに比べ若干複雑ですが、はるかに良い結果が得られます。図5bの赤い線に対して実質的に回転と上下の平行移動を行い、望ましい黒の実線に近づけます。この場合も、標準的な動作温度を選んでおく必要があります。入力電流は、所定の動作範囲をカバーするようにします。較正と動作の両方に単一の基準電流を使うと、手順を大幅に簡略化することができます。

長所:較正が比較的短時間で終わり、ゲインとオフセットの誤差が大幅に減少します。較正は、ゲインとオフセットの計算を適用することによってディジタル領域で行うか、またはゲインとオフセットのトリマ抵抗を使ってアナログ領域で行うことができます。

短所:入力と温度が変化すると補正値の有効性が失われます。


多点較正


この手法では、主要なサンプル点に基づく較正データの表を作成します。サンプルは単一の動作温度で取得します。サンプル点の間を内挿補間することで補正を行います。

長所:十分な数の入力条件を戦略的に選択すれば、ゲイン、オフセット、および非直線性の各誤差を大幅に最小化することができます。

短所:何からの内挿補間が必要になり、処理に伴う計算量が増大します。入力と温度が変化すると較正の有効性が失われます。


温度調整付き較正


多点較正に似ていますが、この手法では試験温度も考慮に入れるため、自由度が増します。

長所:この手法は、ゲイン、オフセット、非直線性、および温度による変動が全体の誤差に与える影響を大幅に低減します。高性能で少量生産の製品に適した手法です。

短所:温度の範囲があるために、最終製品テスト中の較正時間がはるかに長くなります。サンプルデータの多次元内挿補間に伴って、必要な計算リソースが大幅に増大します。温度監視回路の追加も必要になります。


適切な入力マージンの確保


対数アンプの出力は電源レールの近傍で動作させるべきではありません。対数アンプの出力は、これらのレールの近くでは限られたソース/シンク能力しか持たないからです。基準電流付近またはそれ以下の電流、あるいは最大入力電流付近の電流を測定しようとするときには、このアドバイスを忘れがちです。予想される最低の入力電流よりも低い基準電流を選択してください。最大入力電流を流したときに対数アンプの最大出力電圧に達しないようにゲインを設定します。デュアル給電の対数アンプも役立ちます。ほとんどの設計では、入力電流と基準電流を同一にすると出力がスケール中央になるからです。

長所:極端な入力条件下での精度と応答時間が増大します。

短所:使用可能な出力レンジがわずかに減少します。


部品の選択


同一種類で低温度係数を持つ外付け抵抗を使用します。抵抗の絶対値が性能に影響する場合(たとえば基準電流生成回路など)、これが特に重要になります。ゲインやオフセットなど抵抗比に影響されるパラメータは、一般に温度変化による影響をそれほど受けません。補償部品の温度安定性は一般にあまり重要ではありません。小電流を測定する際の漏れ問題を避けるため、低漏洩のPC材料も検討すべきです。

長所:外付け部品によって生じる余計な性能低下を最小限にできます。

短所:低温度係数の部品は一般に若干高価ですが、提供される性能の向上を考えると、コストをかける意味は十分にあります。


均一な温度露曝


対数アンプ回路のどの部分も、回路の他の部分と大きく異なる温度にさらすべきではありません。この点に注意することで、温度によって生じるすべての回路の変化がより緊密に追随し合うことを保証することができます。

長所:それ以上の自由度が較正プロセスで排除されます。

短所:レイアウトの引き回しや全体的な回路サイズの面で不都合が生じるかもしれません。

結論

要約すると、DC対数アンプICは、特定のアナログ設計に最適な小型で使いやすいコスト効率に優れた回路に進化しています。対数関数が幅広いダイナミックレンジの信号を都合良く圧縮し、(準)指数変換関数を使ってセンサを線形化します。対数関数によって作られる圧縮によって、広ダイナミックレンジ信号のディジタル化に必要となるADCのビット数が減少します。DC対数アンプICの回路の構築は単純明快であり、わずかな手間で最適化することができます。較正手順によって対数アンプの性能を強化することができますが、すべてのアプリケーションに必要というわけではありません。



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