iCMOS — 産業部門エレクトロニクスにおける革新

最先端の集積回路技術によって、産業市場の再発見が始まろうとしています。これまで、電気的ノイズの多い環境において高電圧で動作するコンバータ、アンプ、スイッチ、マルチプレクサなどのデバイスは、より小さな形状プロセスへと向かう技術上の転換に対応するために悪戦苦闘してきました。アナログ・デバイセズがiCMOS (industrial CMOS)を投入したことで、すべてが変わります。この新しいプロセス技術によって、サブミクロン形状のチップに30Vもの電圧を加えることができるようになります。オプションのドレイン・エクステンションを使用すれば、最高50Vまでの動作が可能です。
高電圧MOSに加えて、アナログ・デバイセズのiCMOS産業用プロセス技術には、高電圧の完全相補型バイポーラ・デバイスがあります。これらの部品によって、iCMOSは、相補型バイポーラ・プロセス– CBプロセス –の高性能、CMOSの効率性、高電圧機能を一挙に実現します。このプロセスで利用できる多数の部品素子によって、オンチップ集積から新しいレベルの性能が得られます(図1を参照)。iCMOSの場合、実現できる広範なデバイスのいずれについても性能と堅牢性が損なわれることなく、これまでのような集積化のためのトレードオフがないという点で、完全にモジュラー式の半導体製造プロセスと言えます。
![]() Figure 1 |
サブミクロン・プロセスであるiCMOSでは、高電圧のアナログ部品を備えた最新のデジタル・ロジックの集積が可能になります。このため、これまでの世代の高電圧デバイスに比べて、iCMOSデバイスは、高性能、集積化の進んだ機能セット、低消費電力、格段に縮小された基板スペースを実現します。
iCMOSデバイスを使用すれば、消費電力の大幅な削減だけでなく、性能と安定性の向上、シングル・チップでの高集積化も実現するため、産業用アプリケーションにおいてこれまで以上の設計の柔軟性が得られます。ソフトウェアで入力を選択できる12~16ビットのiCMOSのA/Dコンバータ(ADC)によって、±2.5~±10Vまでの広い入力範囲が可能となり、消費電力は既存のソリューションの85%に抑えられます。iCMOS D/Aコンバータ(DAC)は、30%縮小されたパッケージで業界トップの性能を提供します。iCMOSマルチプレクサは、16ピンTSOPで3~4Ωのオン抵抗を実現します。これは、±15Vマルチプレクサの業界標準オン抵抗に比べて約85%の低減になります。
アナログ・デバイセズのiCMOS産業用プロセス技術について
iCMOSのベースとなっているのは、厚いゲート酸化膜の成長を可能にする製造プロセスの開発です。これにより、従来の5Vデバイスとともに高電圧を処理できるスイッチを製造できるようになります。
iCMOSは、容量性アレイを用いてオンチップ電圧減衰を行うことで、従来の抵抗アレイ信号コンディショニングに比べて、消費電力とボード・スペースを大幅に削減します。iCMOSの設計者は、多種多様なアプリケーション向けに高電圧/低電圧デバイスを製造できる、真にモジュラー式のプロセスの作成を目指しました。これには、さまざまなタイプの構成でスムーズに機能する、特殊なエピタキシャル・マスクとフォトリソグラフィ・マスクの開発が必要でした。
この課題は、周囲のデバイスに影響を与える条件をともなうことの多いバイポーラ・トランジスタで特に深刻でした。iCMOSはこの問題を克服し、デバイスの全体的な性能が損なわれないようにしました。多くの異なるプロセス技術を一元化して実行するiCMOSは、コスト効率が高く、極めてフレキシブルです。
部品素子オプション
iCMOSの最大の特長は、16/24/30Vのいずれのデバイスでも、5V CMOSと高電圧CMOSの両方を、基板に対してだけでなく、相互に完全に絶縁できることです。この絶縁によって、複数の電源電圧を1つのiCMOSチップに接続できます。たとえば、ミックスド・シグナル・デバイスでは、-15Vのサブストレート・バイアスの±15Vの製品でも、標準の5Vデジタル・ロジックを組み込むことができます(図2を参照)。
![]() Figure 2 |
iCMOSオプションには、以下の項目が含まれます。
- 絶縁されたバーティカルPNP/NPNトランジスタ(いずれもポリ・エミッタ構造)
- 1,000Ω/平方のトリム可能な高密度の薄膜抵抗アレイ
- 標準のpoly-polyコンデンサ(高電圧CMOSと5V CMOSの両方で使用可能)
- ヒューズ・ベース/ROMベースのメモリ機能
- その他多くの抵抗、ダイオード、JFET
複数の部品素子を搭載し動作電圧をマッチングする機能によって、iCMOSプロセスは特に柔軟になります。どれほどの柔軟性が得られるかを、いくつかの例によって示します
バイポーラ・トランジスタはいろいろな理由で使用されますが、重要な目的の1つは、低オフセット電圧アンプでのマッチングを改善することです。iCMOSによる2組の相補型バイポーラの場合、1組はNPN用に6GHz、PNP用に4GHzのft(遷移またはカットオフ周波数)により16Vで動作し、もう1組はNPNとPNPの両方で約1GHzの性能を実現しながら30Vで動作します。バイポーラは、ADCとDACでの精度を実現するために、非常に優れたリファレンス、マッチング、安定性を提供します。
薄膜抵抗を使用すれば、プロセスで高精度と高正確度を備えた素子を利用できます。これらの抵抗は非常によくマッチしており、未補正で約12ビットのマッチングを実現するほか、設計者が選択したアーキテクチャによっては最高16ビットのマッチングが可能です。これらの抵抗の温度係数と電圧係数は、従来のポリシリコン抵抗の約20分の1、また、温度と電圧に対するミスマッチは10分の1になっています。このように、iCMOSには、高い確度と高精度を備えたDACを実現するためのさまざまな機能が用意されています。
同様に、iCMOSの標準poly-polyコンデンサでは、スイッチド・キャパシタ・フィルタなどの高精度デバイスが使用できます。
内蔵メモリは、製造後にデバイスの設定を必要とするアプリケーションでは、特に重要です。この内部メモリによって、高精度コンバータでの積分非直線性、オフセット、ゲインをキャリブレートするための、デジタル・キャリブレーション技術が使用できるようになります。最後に、このプロセスでは、入力電圧範囲やその他のパラメータをソフトウェアで切り替えることもできます。この機能によって、iCMOSデバイスをさまざまなアプリケーションに導入した場合、在庫や生産設計を大幅に簡素化できます。
iCMOSの長所
iCMOSの主な長所は、小さな形状プロセスを使用して、産業用レベルの電圧に対応できる高精度のコンバータ、アンプ、その他のミックスド・シグナル・デバイスを作成できることです。
これまで、iCMOSデバイスのレベルの高速性と低消費電力を実現するには、産業用デバイスのユーザには、外部の信号コンディショニング、バイアス、オペアンプ、さらには複数の電源が必要でした。30Vに対応できるこれまでの製造技術は、3~5µの範囲にありました。このようなデバイスにデジタル機能を追加すれば、容認できるサイズを超えてしまいます。
iCMOSの登場で、この手法は今や時代遅れとなりました。これまでは28ピンSOICパッケージでのみ可能であった機能が、今では16ピンTSSOPや10ピンµSOICパッケージでも可能となっています。
さらに、iCMOSでは、性能を損なうことなく、多くのシグナル・チェーンを1つのデバイスに統合できます。
このプロセスのバーティカルPNP/NPNは、所定の電力で最高のリファレンスと最小ノイズのアンプを提供することにより、一般デバイスで必要な消費電力を大幅に低減します。ADCでも、高インピーダンス入力によって抵抗アレイ信号スケーリングが不要となり、消費電力が低下します。さらに、iCMOSマルチプレクサの低いオン抵抗で低消費電力を実現します。
iCMOSiCMOS製品の一般的なアプリケーションとして、大規模で高ノイズの困難な環境において±10Vの信号レンジを使用するプロセス制御、ファクトリ・オートメーション、制御ループがあります。これらのアプリケーションでは、iCMOSプロセスによって、主にシグナル・チェーンの統合とシステム設計の全体的な簡素化が実現します。
さらに、計測器部門(±5Vの信号レンジを持つ通信、自動テスト機器、医療用デバイス)でも、消費電力の大幅な低下、デバイス寸法の縮小、性能の向上によるメリットが得られます。
iCMOSという最先端のプロセスによって、アナログ・デバイセズは、多種多様なアプリケーションのニーズに応えます。
著者について
この記事に関して
製品カテゴリ
{{modalTitle}}
{{modalDescription}}
{{dropdownTitle}}
- {{defaultSelectedText}} {{#each projectNames}}
- {{name}} {{/each}} {{#if newProjectText}}
-
{{newProjectText}}
{{/if}}
{{newProjectTitle}}
{{projectNameErrorText}}