クリック/ポップサプレッサの選択方法

2009年10月23日
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要約

このアプリケーションノートは、ヘッドホンから可聴クリック/ポップを取り除くために異なるアプローチを使用している、MAX9890およびMAX9892を紹介しています。各デバイスは、個々に異なるアプリケーションについて適合します。

はじめに

クリック/ポップサプレッサは、設計を大幅に変更せずにクリック/ポップの問題を排除するために、設計過程の終盤においてシステムに追加することが可能な、独特なデバイスです。2種類のデバイス、MAX9890およびMAX9892は、ヘッドホン再生装置からクリック/ポップを除去することに主な焦点を合わせています。これらのデバイスは異なるアプローチを示し、従って、デザイン中の異なる原因によって、異なるタイミングで生成されたクリック/ポップを解決します。

MAX9890のシリーズスイッチによる方法

MAX9890 (図1)は、出力結合コンデンサに起因したクリック/ポップのみに対応します。多くのヘッドホン再生装置は、ヘッドホンアンプをトランスデューサに結合するために、DCブロッキングコンデンサを使用しています。これらのシステム中で、クリック/ポップの主な要因は、結合コンデンサのターンオンおよびターンオフ時の充電および放電です。一般に、100µF~330µFのコンデンサが使用されます。通常、このようなコンデンサの充電に起因する「ポップ」は、非常に大きいものです。

図1. MAX9890のクリック/ポップサプレッサ
図1. MAX9890のクリック/ポップサプレッサ

MAX9890は、結合コンデンサによって発生するクリック/ポップに対応するために、可聴周波数以下の範囲の遅い速度で、コンデンサの充電および放電を可能にします。これを行うためにMAX9890は、アンプと結合コンデンサ間に配置されます。デバイスは、ターンオン時にヘッドホンアンプからコンデンサにDCバイアスを低速で供給するために、2つのアナログスイッチを使用しています。ターンオフ時、抵抗は結合コンデンサを低速で放電するために使用されます。

このMAX9890のシリーズスイッチによる方法は、結合コンデンサによって引き起こされたクリック/ポップを非常に効果的に除去し、クリック/ポップの他の要因については何も行いません。併せてこのアプローチは、結合コンデンサの出力側におけるヘッドホントランスデューサを通したグランドへのインピーダンスが低いことを仮定しています。このため、予想される負荷が標準で10kΩより大きい場合、この設計は、ライン出力用としては効果的に機能しません。

MAX9892のシャントモード

クリック/ポップ源が出力結合コンデンサではない、または、出力がライン出力であるシステム中では、MAX9892が理想的な解決手段となります。MAX9892は、各出力とグラウンド間にスイッチを配置していて、これによって電源投入および電源切断時のトランジェントをグラウンドへシャントします。スイッチが閉じている期間、出力は完全に消音され、すべてのクリック/ポップを除去します。

図2. MAX9892のクリック/ポップサプレッサ
図2. MAX9892のクリック/ポップサプレッサ

MAX9892は、十分な減衰を達成するために、アンプとジャック間に直列抵抗を必要とします。MAX9892のスイッチと結合されたこれらの抵抗は、アンプによって生成される全てのクリック/ポップを減衰させるための分圧器を出力上に構成します。クリック/ポップが終了した時、MAX9892をディセーブルすることが可能となり、出力信号上への影響はなくなります。

結論

設計において、可聴クリック/ポップを抑制するためのデバイスは多数存在します。デバイスは異なる動作をするため、これらのICがすべてのアプリケーションにおいて理想的なわけではありません。クリック/ポップサプレッション用デバイスを選択する場合、どちらのデバイスが最も設計に適しているかを決定するために、以下の基本的な質問を行ってみてください。予期される負荷はヘッドホンか?結合コンデンサの充電はシステム中のクリック/ポップの唯一の要因か?

この両方の質問に対する答えが正解である場合、MAX9890がクリック/ポップを除去する理想的なソリューションです。他の全てのケースについては、MAX9892が最もよい結果を提供します。

著者について

Adrian Rolufs

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