白金抵抗温度検出器(PRTD)と高精度デルタシグマADCによる高精度な温度測定

2012年02月19日
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要約

産業や医療分野の高度なアプリケーションでは、広範囲にわたる温度測定を、±1℃~±0.1℃以上の精度、妥当なコスト、さらに多くの場合は低消費電力で実施する必要があります。これらのアプリケーションに一般的な温度範囲(-200℃~+1750℃)では、通常、熱電対と白金抵抗温度検出器(PRTD)を使用する必要があります。

同様の記事が「EDN」誌の2011年8月25日号に掲載されています。

はじめに

産業や医療分野の高精度アプリケーションに-200℃~+800℃の温度範囲で絶対的な精度と再現性が不可欠である場合、最善の選択は白金抵抗温度検出器(PRTD)です。白金は安定性に優れ、腐食や酸化の影響を受けません。ニッケルや銅などの金属もRTDに使用されますが、それらの物質は安定性や再現性の面で白金に及ばないため、それほど普及していません。

欧州のIEC 60751や米国のASTM 1137といった最新のPRTD規格の策定に伴って、センサーにはシステム間で公差と温度係数の仕様に基づいた十分な互換性が確保されています。これらの規格によって、メーカーを問わずセンサーの交換が容易になっています。また、システムの再設計や再較正をほとんど行わなくても、定格性能を保証することができます。

PRTDの基礎

一般的なPRTDは、PT100、PT500、PT1000の3つです。これらのPRTDは、0℃でそれぞれ100Ω、500Ω、1000Ωの抵抗値を示します。PT10000のようにデバイスの抵抗値がさらに大きくなると、やや高コストになります。従来はPT100が広く使用されていましたが、今日では、ほとんど同じコストで感度と分解能に優れた、より抵抗値の大きなデバイスの採用が広がっています。そうしたデバイスの典型は、0℃の抵抗値が1kΩであるPT1000です。

Vishay®やJUMO Process Controlなどのメーカーは、現在、(表面実装型抵抗パッケージとほぼ同じ)標準的なSMDサイズでPRTDを提供しており、その価格は抵抗値、サイズ、公差によって変わりますが、数ドル程度であるのが普通です。そうしたデバイスによってセンサーのコストが大幅に引き下げられ、あらゆるタイプのプリント基板(PCB)にPRTDを配置する設計上の柔軟性が得られます。以下の例では、コスト効率に優れた1000ΩのPRTDとして広く使用されている、Vishay Beyschlag製のPTS 1206を取り上げます1。電流ソース励起を利用した従来のPRTD測定方式を図1に示します2

図1. 4線式(a)、3線式(b)、2線式(c)のインタフェースを使用したPRTDによる温度検出。各設計では差動信号をADC (この場合はMAX1403)に供給。

図1. 4線式(a)、3線式(b)、2線式(c)のインタフェースを使用したPRTDによる温度検出。各設計では差動信号をADC (この場合はMAX1403)に供給。

異種のリード線を使用した一定距離の測定では、図1の(a)に示す4線式の手法(Kelvin接続)で最も正確な結果が得られます。この手法では、通電用と測定用の配線が分離されています。この構成では、OUT1がPRTDに200µAのソースを提供し、OUT2はフローティングのままです。RTD素子がADCの近くに実装されない大部分の産業アプリケーションでは、配線が増えるほどシステムコストと信頼性の問題が増大するため、配線の少ない手法が好まれます。

図1の(b)に示す3線式の温度検出法は、リード線が同種のものであれば、より経済的に正確な測定値が得られます。そのため、この設計が最も広く使用されています。MAX1403 ADCのマッチした2つの電流ソースは、リード線の抵抗によるIR誤差を帳消しにします。OUT1とOUT2は、両方とも200µA電流を供給します。

図1の(c)に示す2線式の手法は最も経済的であり、配線の寄生抵抗が既知で不変であるときにのみ使用されます。配線のIR誤差は、通常、マイクロコントローラやDSP内の演算によって補正されます。PRTDのPT1000は抵抗値が大きいためにリード線の抵抗の影響を受けにくく、自己発熱による誤差も小さいため、2線式の構成でもADCに直接接続することができます。

ADCのMAX11200は、さまざまなタイプのPRTDのサンプリングに適しています。このADCの重要な特性のいくつかを表1に示します。

表1. MAX11200の主な仕様
MAX11200 説明
Sample rate (sps) 10 to 120 MAX11200の可変オーバーサンプリングレートは、低ノイズ用と50Hzまたは60Hzの-150dB電力線ノイズ除去用に最適化することができます。
Channels 1 GPIOによって、マルチチャネル測定用に外付けマルチプレクサの制御が可能です。
INL (max, ppm) ±10 測定で非常に優れた直線性を発揮します。
Offset error (µV) ±1 ほぼゼロオフセットの測定を実現します。
Noise-free resolution (bits) 19.0 at 120sps; 19.5 at 60sps; 21.0 at 10sps 低電力で非常に大きなダイナミックレンジ。
VDD (V) AVDD (2.7 to 3.6)
DVDD (1.7 to 3.6)
AVDDとDVDDの範囲は、産業用の一般的な電源範囲に対応しています。
ICC (max, µA) 300 単位電力当りの分解能が業界最高で、ポータブルアプリケーションに最適です。
GPIOs ローカルマルチプレクサ制御など、外付けデバイスの制御が可能です。
Input range 0 to VREF, ±VREF 広い入力範囲
Package 16-pin QSOP, 10-pin µMAX® (15mm²) 10ピンµMAXは非常に小型で、スペースに制約がある設計に適しています。

電流励起のほか、高精度な電圧ソースによってPRTDを励起することもできます。抵抗値の大きなPRTDには、電圧励起の方が望ましいといえます。ADCにバイアスをかける同じ電圧リファレンスを、PRTDのバイアスにも使用することができます。PRTDをADCに直接接続することが可能で、ADCのリファレンスから高精度抵抗1つを使用してPRTDのバイアス電流を供給します(図2)。その後、このADCで正確かつレシオメトリックな温度測定を行います。

図2. この回路の検出法では、抵抗値の大きなPRTDに最適な電圧励起を利用。

図2. この回路の検出法では、抵抗値の大きなPRTDに最適な電圧励起を利用。

リード線の抵抗がRAとRTに比べてはるかに小さいと仮定すると、次の式が成り立ちます。

VRTD = VREF × (RT/(RA + RT))

ここでRAは電流制限抵抗、RTはt℃におけるPRTDの抵抗です。VRTDはPRTDの電圧、VREFはADCのリファレンス電圧です。同時に、次の式も成立します。

VRTD = VREF × (AADC/FS)

ここでAADCはADCの出力コード、FSはADCのフルスケールコード(シングルエンド構成のMAX11200では223-1)です。式1と式2を組み合わせると、次の式が得られます。

RT = RA × (AADC/(FS - AADC))

式3から、RAがRTの仕様によって決まる特定の精度要件を満たす必要があることが明らかです。

PRTDの選択と誤差解析

リード線の抵抗による誤差


PRTDは抵抗式のセンサーであるため、PRTDと制御機器の間を接続する銅線によって抵抗が持ち込まれると、誤差が増大します(図3)。

図3. 2線式検出法の配線におけるIR降下によってADCで誤差が発生。

図3. 2線式検出法の配線におけるIR降下によってADCで誤差が発生。

2線式回路における誤差を見積もるには、配線の総延長に、表2に示す米国ワイヤゲージ規格(AWG)の銅線のフィート当り抵抗値を掛け合わせます。

表2. ワイヤゲージ規格の抵抗値
Copper Lead Wire (AWG) Ω/Foot (+25°C)
16 0.0041
18 0.0065
20 0.0103
22 0.0161
24 0.0257
26 0.0418
28 0.0649

一例として、長さ3フィートのAWG 22導線2本をPRTDに接続した場合を考えます。リード線の抵抗RWは、次のように求められます。

RW = 2 × (3ft.) × (0.0161Ω/ft.) = 0.1Ω

リード線による温度測定値の誤差はTWERです。ここでTWER = RW/Sで、SはPRTDの平均感度です。

PT100 (PTS 1206、100Ω)デバイス¹の場合、平均感度がS = 0.385Ω/℃であるため、TWERは次のように求められます。

TWER = RW/0.385 = 0.26°C

PT1000 (PTS 1206、1000Ω)デバイス¹の場合は、平均感度がS = 3.85Ω/℃であるため、TWERは次のように求められます。

TWER = RW/3.85 = 0.026°C

IEC 60751規格に基づくと、PT1000のTWER = 0.026℃は、CLASS F0.3の公差±0.30℃に比べて1桁小さくなります。つまり、3フィートの2線式構成では、配線に関する補正を加えなくても、PT1000をそのまま使用することができます。一方、PT100のTWER = 0.26℃は±0.30℃の公差に匹敵するため、大部分の高精度アプリケーションに許容不可能な誤差レベルになります。この例は、抵抗値の大きなPRTDを2線式回路で使用することの利点を実証しています。


PRTDの自己発熱による誤差


PRTDの誤差のもう1つの原因は、励起電流が流れる際に起こるRTD素子自体の自己発熱です。RTDの抵抗の中を流れる励起電流は、測定対象の電圧を生み出します。この電流は、実用上、出力電圧をADCの電圧ノイズレベル以上に保つことができる大きさである必要があります。同時に、励起電流には電力損失が伴い、これによって温度センサーが加熱されます。その結果、RTDの抵抗が増大し、測定対象の温度に対応した本来のレベルを超えます。RTDの電力損失によるこの熱的誤差は、メーカーのデータシートに記載されているパッケージの熱抵抗から計算することができます。自己発熱による熱的誤差(TTERR [℃])は、次の式で計算することができます。

TTERR = IEXT2 × RT × KTPACK

ここでIEXTは抵抗検出素子を流れる励起電流、RTは現在の温度TにおけるPRTDの抵抗、KTPACKは自己発熱の誤差係数(0.7℃/mW)です1

図2では、電流制限抵抗の最適値RAは、TERRに関する式7のほか、測定システムで使用されるリファレンス値(VREF = 3V)を使用して決定されます。100ΩのPTS 1206と1000ΩのPTS 1206について、そうしたRA値の例を表3に示します。

表3. 熱的誤差に関わる計算値
VREF KTPACK T°C RT100 RT1000 RA100 RA1000 TERR100 TERR1000 IEXT100 IEXT1000 VRT100 VRT1000
(V) (C/mW) (°C) (Ω) (Ω) (Ω) (Ω) (°C) (°C) (µA) (µA) (mV) (mV)
3 0.7 -55 78.3 783.2 8200 27000 0.015 0.013 362.4 108.0 28.4 84.6
3 0.7 0 100.0 1000.0 8200 27000 0.019 0.016 361.4 107.1 36.1 107.1
3 0.7 20 107.8 1077.9 8200 27000 0.020 0.018 361.1 106.8 38.9 115.2
3 0.7 155 159.2 1591.9 8200 27000 0.029 0.025 358.9 104.9 57.1 167.0

100ΩのPTS 1206についてRA = 8.2kΩ、1000ΩのPTS 1206についてRA = 27.0kΩを使用すると、最大の熱的誤差TERRは、両ケースでCLASS F0.3の公差±0.30℃を1桁下回る0.025℃と0.029℃の間になります。表3に示された温度範囲で、平均励起電流IEXT100とIEXT1000が非常に安定で予測可能であることは明らかです。

表3から導かれるもう1つの結論は、RT100とRT1000のモデルの最大励起電流がそれぞれIEXT1000 = 108µAとIEXT100 = 362.4µAで、大幅に異なるということです。RT1000の励起電流がRT100の3分の1未満であるため、低電力(ポータブル)機器にはRT1000の方がRT100よりも望ましいといえます。RAの抵抗は、公差±0.1%以下、電力定格1/4W以上、低温度係数の金属被膜タイプである必要があります。RAの抵抗は、目的の特性が確実に得られるように、評判のよい供給元から調達してください。

PRTDの直線性誤差

PRTDはほぼ線形なデバイスです。温度範囲やその他の基準によっては、-20℃~+100℃の温度範囲でPRTDの抵抗値の変化を計算することによって、次のように線形近似を行うことができます。

R(t) ≈ R(0)(1 + T × α)

R(t)はt℃におけるPRTDの抵抗で、R(0)は0℃におけるPRTDの抵抗です。TはPRTDの温度(℃)で、定数αはIEC 60751に基づいた0.00385Ω/Ω/℃です(この場合、α = 0.00385Ω/Ω/℃は、実際には0℃と100℃の間の平均温度係数として定義されます)1

式8に基づいたPRTDの計算値を表4に示します。

表4. -20℃~+100℃の範囲におけるPRTDの計算値
a Temp RRTD1000 Lin RRTD1000 Nom RA VREF VRTD ADC Code Err
(Ω/Ω/°C) (°C) (Ω) (Ω) (Ω) (V) (V) (LSB) (%)
3.85E-03 -20 923.00 921.60 27000 3 0.0991656 277286 0.15
3.85E-03 -10 961.50 960.90 27000 3 0.1031597 288454 0.06
3.85E-03 0 1000.00 1000.00 27000 3 0.1071429 299592 0.00
3.85E-03 10 1038.50 1039.00 27000 3 0.1111151 310699 -0.05
3.85E-03 20 1077.00 1077.90 27000 3 0.1150764 321776 -0.08
3.85E-03 30 1115.50 1116.70 27000 3 0.1190269 332822 -0.11
3.85E-03 40 1154.00 1155.40 27000 3 0.1229665 343838 -0.12
3.85E-03 50 1192.50 1194.00 27000 3 0.1268955 354824 -0.13
3.85E-03 60 1231.00 1232.40 27000 3 0.1308136 365780 -0.11
3.85E-03 100 1385.00 1385.00 27000 3 0.1463801 409308 0.00

表4のRRTD1000 Lin列は、式8に基づいた線形近似を示します。RRTD1000 Nom列は、EN 60751:2008の製造仕様に基づいたPTS 1206の公称抵抗値~1000Ωを示します。記載の温度範囲に対する直線性誤差(Err)列の値は、すべて±0.15%の範囲内にあり、PTS 1206についてCLASS F0.3の公差(±0.30℃)よりも優れています。

ADCのMAX11200 (図2)を使用した表4に基づく実用的測定では、デジタル表示した温度測定値の誤差がCLASS F0.3の公差の限度内にとどまることが確認されています。さらに広範囲と高精度を実現するため、温度測定に関するPRTDの規格(EN 60751:2008)では、Callendar-Van Dusenの式という非線形数学モデルによって温度に対する白金抵抗の挙動が定義されています。

0℃~+859℃の温度範囲については、次の式に基づいて線形化の式に2つの係数が必要です。

R(t) = R(0)(1 + A × t + B × t2)

-200℃~0℃の温度範囲については、次の式を使用します。

R(t) = R(0)[1 + A × t + B × t2 + (t - 100)C × t3]

ここでR(t)はt℃におけるPRTDの抵抗で、R(0)は0℃におけるPRTDの抵抗です。tはPRTDの温度(℃)です。式9と式10のA、B、Cは、IEC 60751に基づいてRTDメーカーによる測定値から導かれる、次のような較正係数です。

A = 3.9083 × 10 - 3°C-1
B = - 5.775 × 10 - 7°C-2
C = - 4.183 × 10 - 12°C-4

式8を使用すると、0℃~+200℃の範囲以外の温度では、非直線性誤差が増大することがわかります(図4、ピンク色)。式9 (青色のグラフ)を使用すると、非常な低温の場合を除き、誤差が無視してよいレベルまで減少します。

図4. 式8 (ピンク色)と式9 (青色)を使用して計算した、PRTDの温度に対する直線性誤差の変化

図4. 式8 (ピンク色)と式9 (青色)を使用して計算した、PRTDの温度に対する直線性誤差の変化

図5は、狭い温度範囲について図4の一部を拡大したものです。この図は、式8を使用した場合、限定した範囲内(-20℃~+100℃)の誤差が±0.15%以内であることを示しています。式9を使用すると、これらの誤差はほぼ無視してよいレベルになります。より広い温度範囲(-200℃~+800℃)にわたる高精度な測定では、式9と式10を使用してこうした線形化アルゴリズムを実装する必要があります(これらのアルゴリズムについては、今後の記事で取り上げます)。

図5. 2つのグラフが交わる領域を示す図4の拡大図。

図5. 2つのグラフが交わる領域を示す図4の拡大図。

MAX11200の測定分解能

MAX11200は、広いダイナミックレンジと大きなノイズフリービット数が要求される低電力アプリケーションに適した、低電力、24ビット、デルタシグマADCです。このADCを使用すると、次の式11と式12を使用して、図2の回路について温度の分解能を計算することができます。

RTLSB = (VREF × (TCMAX - TCMIN))/(FS × (VRTMAX - VRTMIN))

RTNFR = (VREF × (TCMAX - TCMIN))/(NFR × (VRTMAX - VRTMIN))

ここでRTLSBは1 LSBにおけるPRTDの分解能で、RTNFRはPRTDのノイズフリー分解能(NFR)です。VREFはリファレンス電圧です。T℃MAXは最高測定温度で、T℃MINは最低測定温度です。VRTMAXは最高測定温度におけるPRTDの電圧降下、VRTMINは最低測定温度におけるPRTDの電圧降下です。FSは、シングルエンド構成(223-1)におけるMAX11200のADCフルスケールコードです。NFRは、シングルエンド構成(10spsで220-1)におけるMAX11200のADCノイズフリー分解能です。

表5は、100ΩのPTS 1206と1000ΩのPTS 1206について、式11と式12を使用した測定分解能の計算値をまとめたものです。

表5. 温度-測定分解能
VREF TC RT100 RT1000 RA (100) RA (1000) RTLSB (100) RTLSB (1000) RTNFR (100) RTNFR (1000)
(V) (°C) (Ω) (Ω) (Ω) (Ω) (°C/LSB) (°C/LSB) (°C/NFR) (°C/NFR)
3 -55 78.32 783.19 8200 27000
3 0 100 1000 8200 27000 0.00317 0.000926 0.021 0.0073
3 20 107.79 1077.9 8200 27000
3 155 159.19 1591.91 8200 27000

表5は、-55℃~+155℃の温度範囲における℃/LSB誤差と℃/NFR誤差の計算値を示しています。ノイズフリー分解能(NFR)は、ADCで識別可能な最小の温度値を示します。RTNFR1000の値が0.007℃/NFRで、表5の範囲内では0.05℃よりもはるかに優れた温度分解能が得られます。これは、産業や医療分野の大部分のアプリケーションには十分過ぎるほどの性能です。

このアプリケーションにおけるADCの要件を検討するもう1つの方法は、表6に示すように、さまざまな温度ポイントについて予想される電圧レベルを確認することです。最後の行は、PRTD100デバイスとPRTD1000デバイスの差動電圧出力の範囲を示しています。右側にある一連の式では、ADCのMAX11200で実現されるノイズフリーコード数を計算しています。

表6. 図6のADCの温度測定範囲
TC (°C) VRT (mV) VRT (mV)
PRTD100 PRTD1000
-55 28.4 84.6
0 36.1 107.1
20 38.9 115.2
155 57.1 167.0
210 28.75 82.46
Noise free codes = (VMAX - VMIN)/Input referred noise
Noise free codes = 82.46mV/2.86µVP-P
Noise free codes = 28,822 codes
Temp (accy) = 210°C/28.82K
Temp (accy) = 0.007°C

PRTDアプリケーションにおける出力信号の全範囲が約82mVであることに注意してください。MAX11200は入力基準ノイズが10spsで570nVと極めて小さいため、アプリケーションでは、210℃までの範囲で0.007℃のノイズフリー分解能が得られます。

図6. この記事の測定に使用した高精度データ収集システム(DAS)のブロックダイアグラム。ADCのMAX11200 (図3)に基づいたこのDASでは、単純な較正とコンピュータ処理による線形化を利用。

図6. この記事の測定に使用した高精度データ収集システム(DAS)のブロックダイアグラム。ADCのMAX11200 (図3)に基づいたこのDASでは、単純な較正とコンピュータ処理による線形化を利用。

図6に示すとおり、MAX11200のGPIO1ピンは、固定のRCAL抵抗またはPRTDのどちらかを選択するリレー較正スイッチ制御用の出力として設定されています。こうした汎用性によってシステムの精度が向上し、必要な計算がRAとRTの初期値の計算に限定されます。

結論

近年、価格低下とパッケージの小型化に伴って、PRTDデバイスはさまざまな高精度温度検出アプリケーションに適合するようになってきました。そうしたアプリケーションでは、ADCと表面実装型のPRTDを直接接続する場合、MAX11200のような低ノイズのADCが必要です。PRTDとADCを組み合わせると、ポータブルの検出アプリケーションに最適な温度測定システムを構成することができます。この組み合わせは、高性能でありながらコスト効率にも優れています。

高いノイズフリー分解能、内蔵バッファ、GPIOドライバを持つMAX11200は、PT1000のような新しい高感度PRTDと直接接続することが可能で、追加的な計測アンプや専用の電流ソースが不要です。配線が少なく、熱的誤差も小さいため、システムの簡素化やコスト削減を一層推し進めることができます。このデバイスによって、設計者は2mまでの距離で2線式インタフェースを実装可能です。

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