オートメーション分野で活用されるイーサネットPART 2

2015年07月02日

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本シリーズの Part 11 では、オートメーションの分野において、なぜイーサネットに注目が集まっているのか、その理由を説明しました。その中で、イーサネットを採用することにより、従来のフィールドバスでは得られない数多くのメリットが得られることを明らかにしました。イーサネットをベースとするソリューションは、非常に広い帯域幅と高いエネルギー効率を実現します。また、その種のソリューションであれば、多様な種類の機器/デバイスに対応することができます。こうした特徴は、基盤になる技術の柔軟性、数十年間にわたる開発作業、ベンダーによって構成される成熟したコミュニティによってもたらされています。

Part 2 のテーマは、EtherNet/IP® です。特に、プラント規模のオートメーション・システムや制御システムにおける実装方法に注目して解説を行います。EtherNet/IP はイーサネットをベースとしているので、既存のインフラとの間で容易に互換性を確保することができます。また、プラントの能力とコスト効率を高めるための最も有力な候補となる技術でもあります。

Cisco Systems と Rockwell Automation は、共同執筆した記事を 2011 年に発表しています2。その中で両社は、「競争の激しい製造業界で求められる柔軟性、可視性、効率を得るために最も重要な要素は何でしょうか。それは、イーサネットに代表される標準化済みのオープンなネットワーク技術を採用した単一のシステム・アーキテクチャです」と説明しています。

オートメーションの基盤としての EtherNet/IP ―製造フロアとエンタープライズ・ネットワークの両方に対応するアプリケーション層のプロトコル

Control Engineering 誌は 2013 年 11 月、「Mobility, Ethernet,and Wireless Study」という企画に向けて 200 人を対象とした調査を実施しました。その結果、調査対象者の間で最も広く使われている産業用プロトコルは、EtherNet/IP であることが明らかになりました3。他のプロトコルを大きく引き離し、調査対象者のうち 70 % 以上が自社の施設で EtherNet/IP を採用していると回答しました。

EtherNet/IP は、鉱物の採掘所や自動車の工場など、非常に多くの場所で使われています。プラント規模のオートメーションにおいては、無数のアプリケーションのコンバージェンスをサポートしつつ、リアルタイム性能を確保できる点が大きな魅力となります。EtherNet/IP を採用すれば、工場の全体を網羅するイーサネットを利用して、オフィスに必要な通信だけでなく、製造現場に必要な通信も実現できます。

Cisco と Rockwell は、産業分野で使用するネットワークを設計するためのリファレンス・アーキテクチャとして「ConvergedPlantwide Ethernet(CPwE)」を提供しています4。EtherNet/IPは、これに適合する形で実装することができます。CPwEは、産業用のオートメーション・システムや制御システムのアプリケーションを、機器を対象として提供される標準的なネットワーク・サービスを介して、より広範なエンタープライズ・ネットワークに統合することを目的としたものです。EtherNet/IP は、そのための基盤の 1 つになります。

EtherNet/IP をプラント規模で実装する場合には、ネットワークを構造化する必要があります。レイヤ 2 とレイヤ 3 のマルチスイッチ階層を設けるとともに、各機器の機能や性能/可用性に対する要件に基づいて、ゾーンの分割を行います。最下層にあるのはアクチュエータやロボットなどです。その上にドライブやバッチ制御などのアプリケーションがあります。最上層はエンタープライズ・ネットワークです。

この EtherNet/IP の設定について、もう少し詳しく説明します。まず、VLAN(Virtual LAN)を使用することにより、産業に関連するトラフィックと、それ以外のトラフィックを分けることができます。また、製造ゾーンとエンタープライズ・ゾーンを遮断するために、ファイアウォールが必要になります。さらに、管理された産業用イーサネット・スイッチにより、必要不可欠なレジリエンシー(回復力)、ループの防止、マルチキャストの管理、診断などのサービスをネットワークに提供します。ギガビット・レベルのファイバ通信に対応するアップリンクと冗長パスに加え、プラントの実際のレイアウトをモデル化した論理トポロジにより、レジリエントなネットワークが実現されます。

CPwE と EtherNet/IP の組み合わせがもたらすメリット

プラントを担当する経験豊富なオペレータであれば、EtherNet/IP の設定を行うためのリソースをすでに数多く有しているはずです。また、そのプロセスを容易化するために、EtherNet/IP では、標準的なイーサネット技術に手を加えることなくそのまま利用します。では、CPwE に従って EtherNet/IP を実装することにより、企業はどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。

EtherNet/IP をはじめ、イーサネットをベースとするプロトコルを活用することには基本的なメリットがあります。そのメリットは、イーサネットと IP(Internet Protocol)技術のコスト効率、柔軟性、進化によってもたらされます。また、EtherNet/IPは、既存の技術を利用して分散型のオートメーションを実現するモジュール式の標準規格です。

このことからも、同様のメリットが得られます。このようなメリットによって、以下に示すような問題が解決されます。

  • システムの保守 : イーサネットは、エンタープライズ・レベルでの統合が容易であることに加え、保守コストを低く抑えられます。そのため、既存の技術に基づくオートメーション・システムや制御システムに適用可能な優れた代替策となります。また、イーサネットや IP を扱うための人員や専門知識は、他の技術を対象とする場合よりも、容易に調達することができます。
  • データの管理 : イーサネットをベースとするプロトコルを採用すれば、可用性が高まるとともに、リアルタイム性能が向上します。単一のネットワークを使用すれば、多数のアプリケーションやシステムに関連するデータの管理も簡素化されます。
  • ビジネス・プロセスとの統合 : 製造フロアとエンタープライズ・システムをリンクさせることで、より迅速に意思決定が行えるようになります。プラントに特化した設計と徹底的な検証によって、信頼性と持続可能性が確保されます。

EtherNet/IP など、イーサネットをベースとするプロトコルを採用してプラント規模のオートメーションを実現すれば、保守が容易なイーサネットや IP 関連の標準規格を利用しつつ、確定的な性能に対する要件を満たすことができます。現在では、オートメーションの分野において、産業用イーサネットは非常に有力な選択肢となりました。産業用イーサネットの性能と利便性が、従来のフィールドバスを上回るレベルまで継続的に押し上げられてきたからです。


オートメーション分野で活用されるイーサネットPART 1: 産業用途向けのイーサネット・ソリューションが求められる理由、その活用形態

オートメーション分野で活用されるイーサネットPART 3: MODBUS TCP と PROFINET

 

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