電解コンデンサの長寿命を実現する:LED電球におけるケーススタディ
2013年08月12日
要約
電解コンデンサは、LED電球のような高温のアプリケーションでは寿命が短くなることがよく知られています。最終製品の寿命を損なわないようにするには、このデバイスの仕様を正しく理解して慎重にデバイスを選択することが不可欠です。このアプリケーションノートでは、LED電球内の電解コンデンサに関してこの問題を説明し、そうした製品で電解コンデンサを使用するにはどうすればいいかを分析します。
この記事と同様の記事が、2013年4月6日に「EDN」に掲載されました。
高温のLEDと電解コンデンサの短寿命化
数年前、私はLED電球向けにいくつかの設計に取り組みました。ごく早い段階で、そうした電球内の部品の温度が極めて高くなる場合があることが明らかになりました。私自身、地元の小売店で購入した電球で+130℃もの高い部品温度を測定していました。今では明らかですが、これらは初期に設計されたLED電球でした。これらのLED電球がそれ以前の電球と比べてはるかに小さな電力しか消費しないとはいえ、なお優れた熱設計を必要とすることを、今や各メーカーは理解しています。電子回路の寿命をLED自体の寿命に見合ったものにするには、そうするしかありません。
これらの高温設計の多くに電解コンデンサが含まれていたことは、由々しき問題でした。このコンデンサは、温度が上昇すると寿命が短くなることがよく知られています。これらのコンデンサの寿命のために製品の寿命が大きく損なわれ、LED自体の30,000~50,000時間の耐久性には到底およばないと予想されました。一般に電解コンデンサの定格が+85℃で2,000~5,000時間であったため、私はLED電球の設計では電解コンデンサを一切使用しないことにしていました。
当時、LED電球のメーカーと議論する中で、私は電解コンデンサの問題点があまり理解されていないことに気付きました。たとえば、メーカーでは+105℃定格の部品を使用し、この部品の温度が+100℃であることを確認しているといった説明が一般的でした。+105℃定格のコンデンサは仕様上、+105℃で2,000時間の耐久性が保証されているに過ぎないと私が指摘すると、彼らはよく驚いたものです。
電解コンデンサの温度と耐久性仕様
電解コンデンサの「耐久性」仕様とそれに対する温度の影響の両方を理解することが重要です。温度定格には必ず動作時間が関連付けられており、それは通常、1,000~10,000時間の範囲内です。最高温度の定格は通常、+85℃または+105℃です。温度が+10℃下がるごとにコンデンサの寿命は2倍になるというのが、一般的でおおよそ妥当な経験則です。逆に、温度が+10℃上がるごとに寿命は2分の1になります。したがって、+100℃では、上で取り上げた2,000時間、+105℃定格のコンデンサの耐久性は21/2 × 2,000 (約2,800)時間になります。このコンデンサの平均動作温度が+95℃であったとしても、寿命は4,000時間に増えるだけです。LED電球に期待される30,000~50,000時間には到底およびません。
したがって、電解コンデンサの定格に関するメーカーの誤解のために、これら初期のLED電球の多くが過度に楽観的な定格寿命を持っていたことは驚くにあたりません。私は、1,000時間も動作しないうちに故障した、そうしたLED電球をいくつか分解して調べました。そのほぼすべてで、電解コンデンサが障害を起こしていました。
力率とリップル:トレードオフ
当時、比較的コスト効率に優れたLED電球の設計では、例外なくシングルステージを利用していました。私が知るかぎり、シングルステージアーキテクチャではいずれも、優れた力率または120Hz (100Hz)の低出力リップルのどちらかが得られます。大容量コンデンサを少なくとも1つ使用しないかぎり、両方を実現することはできません。設計上、両方を実現可能なほど大きなコンデンサ値を得るには、電解コンデンサを使用する必要があります。
当時、多くのメーカーは、力率が大きければ、120Hzという相当なリップルを持つ製品でも受け入れていました。私は電解コンデンサを使用せず、LED電流に120Hzという相当なリップルが生じる設計をいくつか手がけました。
寿命を延ばす設計
時を経るにしたがってLED電球のメーカーも洗練され、今では低リップルが求められています。優れたソリューションの1つは、フロントエンドの力率補正(PFC)回路を実装し、その後に別個のレギュレータ(通常はフライバック)を配置した、2ステージの設計を採用することです。2ステージ設計のコストは、アプリケーションによっては法外に高くなることがあります。そこで私は、シングルステージの設計で改めて電解コンデンサの使用を真剣に検討しました。
多くのシングルステージ設計では、大容量の出力コンデンサを追加することによって良好なPFCと低出力リップルの両方を実現することができます。標準的な設計では、使用する直列LEDの数に応じて、このコンデンサは数百µFで、25V~100Vの範囲の定格電圧を持つ必要があります。
幸い、電球メーカーもすみやかに製品の熱設計を改良しました。LEDも時とともに効率化されています。消費電力のうち熱ではなく光を生み出すことに使われる部分が増えています。その結果、電球内の部品温度の低下に伴って部品の選択肢が広がっています。+105℃や+125℃で5,000、7,000、10,000時間もの定格を持つ電解コンデンサはかなり多くあります。それらの多く、とりわけ+105℃定格の部品は、一般的な2,000時間定格の部品と比べてそれほど高価ではありません。
温度条件が改善されているため、私は他者の意見も聞いた上、電解コンデンサの温度を+90℃以下に保つことができると判断しました。+105℃で7,000時間の定格を持つデバイスを使用可能であることがわかりました。±10℃の温度変化で2倍または2分の1になる「経験則」を考慮して、このコンデンサが20,000時間は動作可能であることもわかっていました。これは確かに改善でしたが、十分ではありませんでした。私は、このLED電球を30,000~50,000時間は持つようにしたいと考えていました。
そこで、電解コンデンサの「耐久性」定格の意味についてさらに掘り下げることにしました。私は、+105℃で7,000時間の定格を持つ330µF、50Vのデバイス、Nichicon® UHE1H331MPDを選びました。このデバイスには、ほぼ同じ仕様で同一のサイズと実装面積を持つ、EKY-500ELL331MJ25SというUCC製の類似したコンデンサがあります。
UCCのデータシートには、耐久性仕様について次のように明記されています。
定格リップル電流を伴うDC電圧を(ピーク電圧が定格電圧を超えないように)105℃で指定の時間だけ印加した後、コンデンサが20℃に戻ったときに、次の仕様が満たされるものとします。
- 静電容量の変化は当初の値の±25%以下
- D.F. (tanδ)は当初の規定値の200%以下
- リーク電流は当初の規定値以下1
この説明によると、この部品が+105℃で7,000時間だけ定格最大リップル電流の下で動作した場合、静電容量には25%以下の変化があります。同様に、損失係数、したがってESRは、元の仕様の2倍以下になります。最後に、リーク電流はなお元の仕様を満たします。
これは必ずしもこの部品の耐用期間の終わりではありません。
私は試作品をいくつか作り、はるかに値の小さいセラミックコンデンサを出力部に配置し、大容量の電解コンデンサを以前よりも発熱部品から離して配置しました。私は、想定されるいかなる動作条件下でも、このコンデンサが+90℃を超える温度にさらされないことを確認しました。
次に、コンデンサが最大リップル電流で動作しなければ「耐久」時間が増えることに留意して、このコンデンサが対処すべきリップル電流を計算しました。そうした現象が起きるのは、リップル電流が自己加熱を引き起こすからです。選択したコンデンサが受ける最悪のリップル電流に対して数倍の定格を持つことを示すのは簡単でした。そのうえ、性能データによると、自己加熱が小さくなれば、最大リップル電流を受ける場合と比べてコンデンサは+10℃ほど低い温度で動作することになります。こうした事情をすべて勘案すると、どうなるでしょうか。耐久性が40,000時間に倍増します。
一方、ほかにも考慮すべきことがありました。耐久性仕様によって示唆されている、経時的な静電容量の減少について検討することも重要でした。出力電圧リップルは、耐久性仕様でワーストケースとされている、静電容量が25%減少した状態でも機能仕様を満たすほど小さいことが必要でした。私のアプリケーションでは220µFで十分であったため、330µFの部品を選びました。
ところで、40,000時間までの耐久性では目的の50,000時間にはおよびません。しかし、ここでも40,000時間がこのコンデンサの耐用期間の終わりではないことを思い出しましょう。それはむしろ部品の仕様が低下した状態です。部品の仕様に余裕を見込んだため、そうした仕様の低下によって回路の動作に悪影響が出ることはありません。したがって、コンデンサは調整した耐久性定格の40,000時間を大きく超えて動作するはずです。
こうした分析の結果、私はこのLED電球の寿命について、保守的に30,000時間の定格を与えるのが妥当と考えました。それ以来、私はこれらの電球のいくつかを自宅で3年以上(約30,000時間)にわたって使用しており、そのうち2つは常時点灯した状態です。まだ1つも壊れていません。メーカーもこれらの設計の寿命について問題を報告していません。
得られた一般的な教訓
これは、部品の仕様の詳細を十分に理解することの重要性を示す良い例です。これまで、電解コンデンサの仕様をざっと読むだけでは、目的とするよりもはるかに短い製品寿命しか得られないことを説明してきました。最高使用温度を超える温度定格を持つ部品を選ぶだけでは、まったく不十分です。基礎となる耐久性仕様も検討する必要があります。
結局のところ、電解コンデンサの耐久性のような仕様の意味をより深く掘り下げ、実際の動作条件と比べて大幅な余裕を持つ部品を抜け目なく選択する必要があります。そうして初めて、十分な製品寿命を実現することができます。
結論はあまりにもありふれたことです。いつでも、データシートを読んでそれぞれの重要な仕様の意味を理解するのが賢明です。それらが実際に何を意味しているのかを理解しなければなりません。
リファレンス
- UCC EKY-500ELL331MJ25S電解コンデンサのデータシートを参照してください。
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