要約
LEDドライバを多重化すると効率が高くなりコストが低減されます。しかし、LEDの多重化回路の設計は厄介です。回路設計が不適切だと望ましくないLED電流が生じ、アプリケーションでイメージのアーティファクトが生じる可能性があります。このアプリケーションノートはLEDの多重化に関する問題を詳述し、メッセージボードにMAX6972~MAX6975ファミリのパルス幅変調LEDドライバを利用するとこれらの障害を解決することができることを説明します。
注:サフィックスの「/」(/MUX1と/MUX0)は端子MUX1とMUX0がアクティブローで機能することを示します。
はじめに
MAX6972~MAX6975は高速マルチカラーおよびビデオディスプレイボード用の定電流LEDドライバです。MAX6972/MAX6973は、じかに16個のLEDまたは多重化で32個のLEDを駆動し、他方、MAX6974/MAX6975は、じかに24個のLEDまたは多重化で48個のLEDを駆動します。多重化動作の利点はドライバあたりのLEDの数が倍になることであり、相当に大きいコストの節約となります。
しかし、不適切に設計されたLED多重化回路はゴーストを生じる可能性があります。ゴーストイメージが生じるのはオフ状態(すなわち、LEDを通して電流が流れない状態)になることを意図したLEDを通して寄生電流が流れるためです。これらのゴーストイメージ電流は通常、コモンにしたLEDのアノードノードの大きい配線に関わる迷容量とLEDそのものがわずかに順方向バイアスされた結果起こります。注意深い多重化回路の設計によって、定電流LEDドライバファミリのMAX6972~MAX6975はディスプレイシステムにおいてこれらのゴーストイメージのアーティファクトを防ぐことができます。
標準の多重化回路
図1はMAX6972~MAX6975で使用される標準的な多重化回路を示しています(MAX6972およびMAX6974のEVキットも参照してください)。
図1. /MUX0によって駆動される赤LEDと/MUX1によって駆動される緑LEDの標準的な多重化回路
多重化用トランジスタ(Q1とQ3)はMAX6972~MAX6975によって交互にオンになり、定電流シンクの駆動端子(OUT0~OUTn)はこの2つの位相間で制御用設定値を交互に変更します。位相1では/MUX1はローで、Q1がオンになり、ノードAはVLEDに強制され、このことによって緑LEDのすべてのアノードはLED電源に接続されます。同様に、位相0では/MUX0はローとなり、Q3がオンになって赤LEDのすべてをVLED電源に接続します。/MUX0と/MUX1はオープンドレインドライバによって562Ωを通してベース電流をシンクしてpnpトランジスタをオンにします。/MUX0と/MUX1がオフのとき、オープンドレインの出力は基本的にオープン回路であり、ベースエミッタ間の抵抗(おのおの182Ω)によって両pnpトランジスタをオフにします。/MUX0と/MUX1の位相の間ではQ1とQ3とも内部クロック(CLK1)の16周期の間オフであり、それは図2のtEMUXとして示されています。
図2. MAX6972~MAX6975の多重化タイミング
標準回路におけるゴーストイメージ電流
多重化によって/MUX0-から/MUX1へ、またはその逆に位相を変えたときに寄生電流によるわずかなゴーストイメージが生じます。この効果は多重化回路の各LEDが異なったカラー(光の波長)であり、したがって所定の電流に対して大きく異なる電圧となる場合に最も顕著です。
分かりやすくするために、図1の多重化回路は残りの説明を単純化するために1個の赤と1個の緑のLEDのみを示しています。以下の例では赤LEDはQ3を通して/MUX0によって駆動され、緑LEDはQ1を通して/MUX1によって駆動されます。
各LEDの電圧降下は次の通りです。
VRED = 2.0V
VGREEN = 3.1V
電源は次の通りです。
V+ = 3.3V
VLED = 5.0V
異なった順方向電圧降下のLEDを多重化するために流れる寄生電流は/MUX0がローとなって赤LEDが点灯する位相0から開始される図として分かりやすく描かれています(図3)。
図3. /MUX0をローにした位相0の間、赤LEDが点灯。
Q3をオンにすると、赤LEDのアノード(ノードB)が4.9Vにプルアップされます。赤LEDを流れる電流とそのポートの定電流ドライバ(OUT0)がアクティブになっています(すなわち、PWMサイクルのある期間、LEDを駆動するチャネル)。ノードBの寄生容量(集中定数CBとして示されています)は4.9Vに充電されます。LEDのカソードノードはおよそ次に等しい電圧に強制されます。
4.9V - VRED = 2.9V(式1)
位相0が終わったとき、OUT0ドライバは非アクティブとなり、/MUX0はハイ(非アクティブ)となり、アノード電圧をLED電源から切り離します。赤LEDのPN接合間の電圧は2.0Vの順方向電圧降下に近い値に維持されます。それは放電路が存在しないからです。同様に寄生ノード容量の電圧VCBは4.9Vに留まります。それは放電路が存在しないからです。この電圧状態は16 CLKIサイクルの位相間の間、そのままです。
位相1が始まると、/MUX1がローになり、Q1がオンになって、緑LEDのアノードが5Vに接続されて、OUT0の電流ドライバが選択されたLEDに対してアクティブになります。最後の定常状態は図4に示されています。
図4. 緑のLEDが位相1の間、Q1とOUT0によって点灯。
緑LEDの電圧降下が大きいため、カソードノード電圧はより低くなり、その値はおよそ次のようになります。
4.9V - VGREEN = 1.8V(式2)
赤LEDのカソードの電圧が1.8Vということはアノードが1.8V + VRED = 3.8Vよりも高くなることはないということです。位相1の初めに、コモンカソードのノード電圧(図におけるOUT0の電圧)は2.9Vから1.8Vに変化しなければなりません。この電圧変化のためにはCBが4.9Vから3.8V以下に放電しなければなりません。CBを放電する電流は図5に示すように赤LEDを通して流れ、輝度にわずかなフリッカを起こします。
図5. 赤LEDを通る寄生ノード容量CBの放電経路によって位相0から位相1への多重化遷移時間にわずかな輝度のフリッカを生じます。
CBを放電する電流は前の位相で赤LEDがオンかオフに関わらず、流れます。位相0の間はノードBの電圧は常に4.9Vに充電されます。ノードBはVREDがVGREENよりも小さい場合に赤LEDを通して放電します。これはカソード接続をコモンにして共有しているためです。図1においてCBの放電によって、1個または複数個の赤LEDがわずかに点灯しますが、これは各種のLEDで順方向電圧降下にわずかな相違があるためです。
ゴーストイメージ電流の除去
ゴーストイメージ電流は寄生ノード容量の放電経路を設けて放電のための時間を作ることによって除去することができます。これは図6に示すように抵抗R1とR2を追加して実現します。抵抗値は多重化位相間のアイドル時間で十分に放電するように選ばれます。
図6. 抵抗R1とR2を追加すると寄生ノード容量CBとCAの放電経路が形成されます。
抵抗R1とR2は次のアクティブ位相が始まるときにLEDが順方向バイアスされるのを防ぐために設ける位相間の期間にアノードノードのAとBが放電する大きさに選ばれます。図示した実例では、ノードBは位相1が始まる前に4.9Vから3.8Vを下回る値まで放電しなければなりません。
位相間の時間は最高33MHzで動作可能なシステムクロック周波数によって決まります。最高周波数を使用すると、R2の値を決定することができます。
位相間の時間(図2でtEMUX)はシステムクロック周波数から得られます。
tCLKI = 1/33MHz = 30.3ns(式3)
および
tEMUX = 16 × tCLKI = 485ns(式4)
アノードとカソード間の寄生容量の公称値はLEDあたりを150pF (トレース、パッケージのリード、および臨界バイアスされたLEDのPN接合の容量を総合して得られたもの)としてノードあたり8個のLEDとしてこれを乗算して推定することができます。
CB = CA = 150pF × 8 = 1.2nF(式5)
位相間の期間にCBを放電するために必要な電流は次の式で算定することができます。
IDIS_B = CB × ΔVCB/Δt(式6)
上述の数字をこの式に入力して、CBの放電に必要とする電流の概略値を求めることができます。
IDIS_B = 1.2nF × (4.9V - 3.8V)/485ns
IDIS_B = 2.7mA
対象とする範囲での最低電圧において、2.7mAの公称放電電流を生じさせる抵抗値は次のようになります。
R2 = 3.8V/2.7mA(式7)
R2 = 1.4kΩ
同じ計算をIDIS_AとCAに対して行うことができます。しかし、位相1から位相0への遷移に対するゴーストイメージ電流の影響はLEDの順方向電圧降下が同じ影響を持たないため、異なります。図6の回路では位相1から位相0への遷移でゴーストイメージ電流は流れないことを示すことができます。しかし、R1はR2と同じ値として含まれており、このことによって赤と緑のLEDが/MUX0と/MUX1の間で交互にミックスされる場合には有効です。
図7. 寄生容量CBはLEDを流れる較正された定電流駆動を乱すことなく位相間のヌル時間tEMUXの間にR2を通して放電されます。
抵抗R1とR2は各位相の間、多重化用トランジスタのQ1とQ3に小さい電流負荷として加わります。
IRn = 4.9V/1.4kΩ = 3.5mA(式8)
この電流は定電流ドライバ出力のOUT0またはLEDを通して流れることはないため、較正されたLED電流に影響しません。
結論
MAX6972~MAX6975の多重化回路は寄生ノード容量を放電するために使用可能な位相間の滞留時間が保証されており、多重化ディスプレイシステムにおけるゴーストイメージ電流を除去します。MAX6972~MAX6975のデバイスごとに2個抵抗を追加すると、ゴーストイメージのアーティファクトのないシャープな表示映像とグラフィックスの保証が最小のコストの増加で可能となります。
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