イヤホンの効率的な充電には冷静さの維持が重要

2020年02月19日
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要約

完全ワイヤレスイヤホンは、一般的に3つ(またはそれ以上)の端子を使用して充電ケースと接続して、データおよび電力を伝送します。端子が多いと必要なスペースが増えるだけでなく、信頼性の問題も生じます。さらに、イヤホンのバッテリ充電時には一般的に固定電圧が使用されますが、この方式は不要な発熱を引き起こします。このデザインソリューションでは、これらの方式の欠点についてさらに詳しく解説した後、2つのICを使用してこれらの問題に対処する複合的方式を紹介します。

はじめに

東洋の一部の文化では、大きい耳は幸運と富の象徴です。残念ながら誰もが生まれつき幸運や裕福なわけではなく、同様に、耳の形と大きさもさまざまです。もし完全ワイヤレスイヤホン(図1)のメーカーが、誰もが大きい耳を持つ幸運に恵まれて欲しいと願えば不誠実のそしりを受けるでしょう。しかし、それらのメーカーは自社製品をどのような耳のサイズの人が装着しても十分に快適なものにするという過酷な課題に直面しています。

図1(a). 完全ワイヤレスイヤホン 図1(b). 完全ワイヤレスイヤホンと充電ケース

図1(a). 完全ワイヤレスイヤホン 図1(b). 完全ワイヤレスイヤホンと充電ケース

サイズの制約だけが唯一の課題ではありません。完全ワイヤレスイヤホンは、その本質上、再充電可能である必要があります。しかし、充電が効率的に行われないとイヤホンは急速に発熱して高温になるため、充電の高速性が制限され、装着者にとっての快適性が失われます。このデザインソリューションでは、ワイヤレスイヤホンのバッテリ充電がどのように管理されるか、およびこれらの小型筐体内でこの実装面積を最小化するという課題について解説します。イヤホンとその充電ケース間の電力およびデータの伝送を管理する革新的な方式を採用したICを使用することによってスペースを節約する方法を提案します。最後に、バッテリ充電の条件を適応的に最適化する機能を備え、それによって熱の形で無駄になる電力を最小限に抑え、充電時間の短縮に貢献するDC-DCコンバータICを紹介します。

イヤホンの充電インタフェース

完全ワイヤレスイヤホンのバッテリは、イヤホンが充電ケースに戻されると再充電を開始します。この構成の簡略ブロック図を>図2に示します。

図2. イヤホンと充電ケースの簡略ブロック図

図2. イヤホンと充電ケースの簡略ブロック図

イヤホンメーカーは、一般的に3端子(またはそれ以上)のインタフェースを使ってバッテリ充電プロセスを管理します。2つの端子は充電の電力伝送に使用され、その他の端子は充電ケースとイヤホン間の通信(またはデータ)チャネルを提供します。このチャネルは、充電ケースとイヤホンの両方でバッテリの状態を追跡管理するために使用されます。これは、ユーザーとシステムの両方が、充電プロセスの状態についての情報を継続的に受け取ることを意味します。また、この通信インタフェースはデバイスのファームウェア更新および/または出荷前のデバッグにも使用することができます。一部のモデルのイヤホンは、専用端子(ポゴピン)を使用してイヤホンがケースに戻されたことを検出します。ホール効果センサーを使って専用ポゴピンの使用を避けるメーカーもありますが、これには充電ケース内に追加の部品が必要になります。

どのような目的であれ、小型のイヤホンに追加の端子を実装すると、個々の端子が製造工程で潜在的な障害点となるため、スペースの面だけでなく、信頼性の面でもメーカーにとって課題が増えます。理想的な状態は、2つの端子のみを使用してイヤホンを充電ケースに接続します。これを実現する方法の1つは、2つの端子を電力伝送に使用し、個別のBluetooth®チャネルを充電ケースとのデータ通信に使用することです。しかし、それには充電ケース内に追加のBluetoothトランシーバが必要になり、さらに多くのスペースと電力が消費されるため、理想的ではありません。

データおよび電力伝送の組み合わせ

イヤホンが充電ケースと通信するためのより効率的な方法は、データおよび電力伝送を組み合わせて1つのチャネルにし、データ信号を効果的に電力上に重ね合わせることです。これは「電力線通信」と呼ばれます(電源コンセントを使って有線ネットワーク通信を延長する方法と似ています)。MAX20340は、スペースに制約のあるポータブル民生機器での使用に適した双方向DC電力線通信インタフェースを提供することによって、この技術の新しいバリエーションを実装します。この方式は、端子数を2つに削減することができるため、理想的なソリューションです。図3は、DC電力線通信マネージメントICのMAX20340をイヤホンと充電ケースの両方に内蔵してこの機能を提供し、最大166.7kbpsの速度での双方向データ伝送を可能にする方法を示しています。マスターICは充電ケース内に配置され、アドレス指定可能なスレーブICは各イヤホン内に配置されます。

図3. MAX20340を使用するイヤホンと充電ケース間のデータおよび電力伝送

図3. MAX20340を使用するイヤホンと充電ケース間のデータおよび電力伝送

2つの端子のみをインタフェースに使用すると、障害点の数が減少することによって信頼性が向上します。MAX20340は、他にも複数の特長を備えています。このデバイスの最大充電電流は1.2Aで、より高速のバッテリ充電が可能です。また、自動スレーブ検出を備えているため、イヤホンが収納されたことを充電ケースが認識するのに必要なホール効果センサーや専用ポゴピンも不要です。このデバイスは堅牢なESD保護を内蔵しているため、追加のTVSダイオードは不要です。このICは、9ピンウェハレベルパッケージ(WLP) (1.358mm × 1.358mm、0.4mmピッチ)で提供されます。

発熱の低減

発熱を防止するために、イヤホンのバッテリ再充電は可能な限り効率的に行う必要があります。このプロセスの分析によって、見落としがちな電力損失の発生源が明らかになります。充電ケース内のリチウムイオンバッテリ(通常は3.7V)は、通常はDC-DCコンバータICを使って5Vに昇圧されます。この電圧は、次にイヤホン内のリニアチャージャによってバッテリ充電に使用されます。しかし、充電中にイヤホンのバッテリ電圧が上昇しても、それは常に5V以下のままです。この過大な電圧は、熱の形で電力が無駄になる原因となります。これを防ぐには、充電時のバッテリ電圧の上昇に応じて、リニアチャージャへの入力(ブーストコンバータによって供給される電圧)とバッテリ電圧の間の電圧差を継続的に最小化する必要があります。

動的電圧スケーリング(またはDVS)と呼ばれる手法を使用してこれを管理することができるバックブーストコンバータを図4に示します。

図4. DVS内蔵バックブーストDC-DCコンバータのMAX20343

図4. DVS内蔵バックブーストDC-DCコンバータのMAX20343

図5は、MAX20343をMAX20340とともに使用してどのように発熱を低減することができるかを示しています。MAX20340はイヤホンのバッテリ電圧を断続的に問い合わせて、この情報をケース側のマイクロコントローラに提供します。次に、マイクロコントローラはMAX20343の出力電圧を調整して、イヤホンのバッテリ電圧とリニアチャージャに必要な追加のオーバーヘッドとの合計に一致させます。これには、ケース側バッテリでのエネルギーの無駄が最小限に抑えられ、イヤホン内の発熱が低減するという特長があります。この発熱の低減は、イヤホンをより高速で充電することができることも意味します。このMAX20343は、16ピンWLP (1.77mm × 2.01mm、0.4mmピッチ)または12ピンFC2QFNパッケージ(2.50mm × 2.50mm、0.5mmピッチ)で提供されます。

図5. MAX20340およびMAX20343を使用する充電

図5. MAX20340およびMAX20343を使用する充電

まとめ

完全ワイヤレスイヤホンは、多数の設計上の課題がある小型機器です。完全ワイヤレスシステムでは、電力伝送の媒体以外に、イヤホンと充電ケースの間で双方向にデータを通信する方法が必要になることを示しました。多くのモデルは、追加の端子を使ってこのデータチャネルを提供するとともに、専用のポゴピンも使用して充電ケースがイヤホンの収納を認識することができるようにしています。しかし、追加の端子は限られたスペースを消費し、追加の障害点になります。これは、製造工程で信頼性の問題につながる可能性があります。また、イヤホンの充電時にエネルギーがどのように熱の形で無駄になるかも説明しました。その後、これらの問題を克服する2つのICを紹介しました。MAX20340は電力およびデータ伝送を1つのチャネルに組み合わせて、イヤホンと充電ケースとの接続に必要な端子を2つのみにします。MAX20343はバッテリの充電プロセスの効率を向上させることによって、エネルギーを節約し発熱を低減します。これらのICは、組み合わせまたは個別で、補聴器、ゲーム用ヘッドセット、ハンドヘルド無線、およびPOS機器などの同様のアプリケーションにも最適です。



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