1つのDC/DCコントローラICにより、12Vから140Vへの昇圧を実現
【デザイン・ノート1033】 はじめに
アプリケーションによっては、低い電圧を基にそれよりもかなり高い電圧(電源)を生成しなければならないことがあります。一般的な1段構成の昇圧トポロジによってそのような変換処理を行おうとすると、いくつかの課題に直面する可能性があります。例えば、昇圧型のDC/DCコントローラには、デューティ・サイクルの最大値が規定されているはずです。この制限から、必要な昇圧比を得ることができないかもしれません。また、必要な昇圧比は得られるとしても、デューティ・サイクルの値を高く設定すると、一般的に効率が急激に低下します。不連続動作モードを利用すればデューティ・サイクルを下げられますが、その場合、入力電流のピークが大きくなります。そうすると、損失が増加すると共に、EMI(電磁干渉)の問題が発生します。
このような場合、1段構成の昇圧コンバータではなく、2段構成の昇圧コンバータ(以下、2段コンバータ)を使用することになるでしょう。2段コンバータでは、1段目で中間電圧を生成し、2段目で最終的な高電圧までの昇圧を行います。この種の回路は、「LTC3788」のような単一のコントローラICを使用することでも構成することが可能です。LTC3788は、2フェーズの動作に対応するデュアル出力の昇圧コントローラです。同期整流方式を採用しており、すべてのNチャンネルのパワーMOSFETを高い性能で駆動することができます。
LTC3788を使用して構成した1段目では、同期整流方式ならではのメリットを享受することができます。同方式によって電力損失は低減され、効率の最大化と熱に関する要件の緩和が実現されます。LTC3788で同方式を使用する場合、最大出力電圧は60Vです。60Vよりも高い電圧が必要な場合には、2段目を非同期で動作するように設計します。以下、その方法について詳しく説明します。
2段構成の昇圧により、12Vから140Vを生成する
図1に示したのが、LTC3788を使用して2段コンバータを構成した例です。この設計では、以下のような事柄について留意する必要があります。
- 1段目の出力(トランジスタQ1、コンデンサCINT)は、2段目の入力(抵抗RS2、インダクタL2)に接続されています。LTC3788のSENSEピンは絶対最大定格が40Vなので、1段目の出力が40Vを超えないようにしなければなりません。
- ロジック・レベルに対応するMOSFETであれば、5Vのゲート駆動電圧によって適切に制御できます。しかし、5Vの駆動電圧は、標準的なゲート電圧が7V~12Vに達する高電圧対応のMOSFETには適していません。そこで、この回路ではBG2の出力信号によって制御されるゲート・ドライバDRを外付けで使用しています。これにより、高電圧に対応する標準的なMOSFETを駆動することができます。
- 60Vの上限値を超える出力電圧を生成するには、同期整流方式を適用する場合に使用する1個のMOSFETをダイオードD1で置き換えます。
図2は、このソリューションの全体を表したものです。トランジスタQ1、同Q2、インダクタL1で構成される1段目は、38Vの中間電圧を生成します。この1段目は、効率を最大化するために同期整流方式で動作させます。1段目の出力は、トランジスタQ3、ダイオードD1、インダクタL2で構成される2段目の入力に接続されています。2段目の出力は140V/1Aとなります。
Q3は、高電圧に対応可能な標準的なMOSFETです。このトランジスタは、ゲート・ドライバ「LTC4440」によって駆動されます。この回路では、トランジスタQ4をベースとするLDO(低ドロップアウト)レギュレータによって、ゲート・ドライバにバイアスを与えています。その代わりに、「LTC3536」などによって構成したスイッチング・レギュレータを使用すれば、全体的な効率を更に高めることができます。
このソリューションの入力電圧範囲は3V~36Vです(公称値は12V)。入力電圧が10Vを下回る場合、コンポーネントに対する熱ストレスを軽減するために出力電流を低減する必要があります。図3に、この回路の効率の測定結果を示しました。図4には、起動時の出力波形を示しています。図3を見ると、入力電圧が24V、出力電圧が140V、負荷電流が0.4A~1Aの場合、93%の効率が得られることがわかります。この回路は、エアフローが存在しない状態でも、全負荷の条件で動作させることが可能です。
まとめ
LTC3788は、2フェーズの動作に対応するデュアル出力の昇圧コントローラです。高電圧/大電力のアプリケーションに適しています。デュアル出力を2段構成で使用することにより、非常に高い昇圧比で出力電圧を生成することができます。
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