デジタル電源ソリューションによる基地局の動作の最適化
著者
Harmik SIngh
2012年09月17日
要約
基地局の電源設計は、サイズ、効率、および性能の間のトレードオフが必要です。デジタルテレメトリに基づく新しい電源ソリューションは、簡素で、柔軟で、スケーラブルです。ポイントオブロード(POL)コントローラのMAX15301を使用して設計された基地局システムは、より高集積で柔軟性の高いものになります。
基地局の電源を扱うエンジニアは、多数の設計上の難題に遭遇します。無線事業者は彼らに消費電力の削減とサイズの小型化を求めます。また、シーケンシング、モニタリング、マージニング、および多数のその他の作業を行うサブシステムの複雑性を最小限に抑えることも求められます。アプリケーションの要件を最適化するためには、電力変換効率とサイズ、性能上の複雑性とコストなど、いくつかのトレードオフが必要になります。このアプリケーションノートでは、新しい、高集積の電源ソリューションによって柔軟性と最適化された性能が提供され、これらの設計上の課題が簡易化されることを示します。
効率の改善
基地局を動作させるためのエネルギーコストは無線事業者にとってかなりの大きさであるため、より効率の良い電源ソリューションの必要性が事業経費の削減にとって重要となります。さらに、消費電力の低減によって発熱が減少するため、事業者はより小型のヒートシンクを無線ユニットに使用することができます。ヒートシンクの小型化が、さらには、より小型のユニットを実装することを可能にします。最後に、これらの無線ユニットは多くの場合柱上または建物の側面に設置されるため、全体的な実装面積を縮小することによって関連する機械的ストレスが最小限に抑えられます。
基地局のベースバンドユニットは、ネットワーク上で大量のデータおよび音声トラフィックを扱うための高速信号処理能力を備えています。ベースバンドユニットには大電流および複数の電圧レールが必要で、その電流は60Aを超える可能性があるため、多相の電源ソリューションと、多くの場合はテレメトリが必要になります。
電力変換の効率を改善するための手法には、導通損失、スイッチング損失、および逆回復損失の最小化が含まれます。導通損失は、低オン抵抗(RON)のMOSFETを選択することによって低減可能です。ゲート駆動電圧を高くすることでも、オン抵抗(RRDSON)をさらに最小化することができます。より高いゲート駆動電圧を使用することによるトレードオフとして、スイッチング損失が増大します。それにも関わらず、ゲート駆動電圧を設定可能であることが非常に望ましい場合があります。より大電流の場合には、高いゲート駆動電圧によって導通損失が低減されます。軽負荷動作の場合には、ゲート駆動電圧を低減することができます。自動化された選択プロセスにより、導通損失とスイッチング損失の間のトレードオフを最適化することで、より良い基地局の設計が実現します。
デジタルポイントオブロード(POL)コントローラのMAX15301は、高度なアルゴリズムを使用して、動作条件の全範囲にわたり最高レベルの効率と過渡応答を達成します。外部MOSFET用の、先進的な、高効率の適応型ゲートドライバを内蔵しています。負荷、電圧、および電流の変化に連続的に適応することにより、効率を最適化します。
電源の複雑性軽減とシステムの信頼性向上
システムの動作パラメータを監視することができれば、システム性能の管理を強化することができます。そしてシステム管理の強化は、常にシステムの信頼性向上につながります。
前述のように、ベースバンドユニットは大量のデータおよび音声トラフィックを扱うために強力な信号処理能力を備える必要があります。パワーアップ/パワーダウン時には、複数の大電流および小電流の電圧を正確にシーケンシングする必要があります。システムの許容範囲内での動作を確保し、警告またはフォルト信号を提供するために、ベースバンド動作全体にわたり電流および温度を監視する必要があります。最後に、テレメトリおよび高度なフォルト管理機能によって、基地局は高い信頼性を達成することができます。アナログ方式を使用する場合、これらの機能を実装するために複数のデバイスが必要であり、パワーマネージャが必要になります。しかし、デジタル方式では、設計の複雑性と個別のパワーマネージャの必要性が低減します(図1を参照)。
基地局の電源管理には、通常は非常に複雑なパワーマネージメントコントローラおよびそれぞれの機能用に複数の個別コンポーネントが必要になります。それに応じて、全体の基板スペースと設計の複雑性も増大します。また、基地局の設計は極端に広い温度にわたって動作するため、広い動作温度範囲にわたる堅牢性も必要です。従来のアナログ電源ソリューションでは、1つの固有の動作条件において補正の設定を行い、それによって広い動作範囲に対応させる必要があります。同時に、インダクタやコンデンサなどの受動部品には変動幅があるため、電源の補正がさらに難しくなります。
これに代わる方式として、デジタルアーキテクチャ方式に基づくシステムがあります。デジタルアーキテクチャでは、自動的に補正を行う機能を実装することが可能で、帯域幅の最適化に有利です。広帯域化によって負荷過渡応答が向上し、それによって耐性の向上や出力コンデンサの除去が可能になり、ソリューションのサイズが改善されます。さらに、受動部品は温度によって変動する可能性がありますが、自動補正によってこれらの変動する条件に適応することが可能です。これにより、全温度範囲にわたる最適化が可能になります。
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図1. アナログ方式(左)とデジタル方式(右)のシステム設計。デジタル方式は、個々のDC-DCコンバータ用のパワーマネージャを統合化します。その結果、柔軟でスケーラブルなシステムが実現します。デジタルテレメトリにより、システムコンポーネントを常に監視し、最適化された基地局の動作を確保することが可能になります。
MAX15301などのMaxim InTune™製品は、これらの電源管理の難題に対応します。これらの製品により、より小さなフィルタ容量で動作し、より高い効率を備えた、高性能なDC-DC電源の設計の実現が容易になります。このデジタル電力技術は、ほとんどのデジタルコントローラで標準的に使用されるPID (proportional-integral-derivative:比例・積分・微分)制御ではなく、「状態空間」または「モデル予測」制御に基づいています。MAX15301の自動補正ルーチンは実測パラメータに基づき、外付け部品を含む電源の内部数学モデルの構築を可能にします。その結果、安定性を保証しながら、可能な限り高いダイナミック性能を達成するスイッチング電源となります。また、この技術は広範囲の動作条件にわたり効率を最適化するいくつかの独自アルゴリズムも可能にします。
基板スペースの削減
建物、鉄塔、または電柱の上にアンテナが設置され、その重量が問題になる場合があるため、無線ユニットの基板スペースを削減することが重要です。ベースバンドユニットの場合、より大型で、より強力なデジタルプロセッサがより多くのスペースを必要とするため、結果として、基板サイズを小さく保つのがより難しくなります。
MOSFET内蔵ソリューションは、POL電源用により小さな外形サイズを提供します。この方式は電力レベルが低い場合には問題ありませんが、より大電流の設計では困難さが増します。内蔵MOSFETを備えたデバイスは、特定の動作条件での効率が最適化されています。コントローラに基づくソリューションは、個々の特定の条件についてMOSFETの選択を最適化することができるため、最適化に関してある程度の柔軟性があります。また、熱管理のために基板上で熱をより拡散させることが可能です。この場合の明らかなトレードオフとして、より多くの基板スペースが必要になります。
同時に、ベースバンドユニットの電流はレール当り最大60Aに達する場合もあり、多相の電源ソリューションが必要です。過渡の要件に適合するために、これらの大電力レール用の受動部品(この場合はコンデンサ)の数が増大します。MAX15301は、スタンドアローンとしてまたは多相ソリューション内で動作するように構成可能です。
MAX15301デジタルコントローラは独自の自動チューニング機能を備えており、設計が簡素化されます。ユーザーはエンジニアによる電源の補正を必要とせず、最適な補正が確保されます。テレメトリの内蔵も外部ICの低減につながるため、より稠密な設計が可能になります。
要約
基地局の電源設計は、サイズ、効率、および性能の間のトレードオフが必要です。デジタルテレメトリに基づく新しい電源ソリューションは、簡素で、柔軟で、スケーラブルです。MAX15301を使用して設計された基地局システムは、より高集積で柔軟性の高いものになります。コンポーネントを常に監視することにより、全体的性能の最適化および信頼性の向上が可能です。最後に、デジタルテレメトリは困難なトレードオフの作業をより容易にします。
著者について
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