ASKレシーバの感度の計算方法

2004年06月17日
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要約

RFIC振幅変調(ASK)またはオンオフキーイング(OOK)レシーバの感度は、リモートキーレスエントリ(RKE)システム、タイヤ空気圧監視(TPM)システム、ホームオートメーションシステムなどのアプリケーションの設計における重要な仕様です。これらのレシーバは一般的に、315MHzまたは433MHzで動作しますが、その結果はほぼすべての搬送周波数に当てはまります。

RFICのユーザや設計者は、設計の改善がまったく問題なく動作するかどうかを判断できるよう、これらのレシーバの理論上の限界を知ることが大切です。

このアプリケーションノートでは、システムノイズ指数、IF帯域幅、およびベースバンド帯域幅が与えられた場合のASKレシーバの感度を予測するための段階的な方法について説明します。

この結果を見れば、受信信号強度インジケータ(RSSI)アンプ内での対数の振幅検出が、入力SNRが低い場合の出力の信号対ノイズ比(SNR)を減少させること(スレッショルド効果)、また感度はIF対ベースバンド帯域幅比の平方根に比例して増大することがわかります。

現代の振幅変調(ASK)レシーバのほとんどは、そのまま、または1回以上の周波数変換の後、変調されたRF信号を振幅ディテクタに送出することによってデータを検出します。振幅ディテクタは、大抵の場合、RSSI (受信信号強度インジケータ)ディテクタを備えたRFまたはIFアンプです。このディテクタの出力は、RFまたはIF信号の入力電力の対数に比例します。

RSSIディテクタは非線形のディテクタであるため、入ってくる信号の信号対ノイズ比(SNR)を変更します。ASK感度を計算する上での鍵は、RSSIディテクタのSNROUT対SNRIN曲線です。

SNROUT対SNRINの関係がわかったところで、特定のノイズ指数、IF帯域幅、及びデータレートが与えられた場合のASK感度を求める手順を以下に示します。

  1. 対象となるBER (今回の例では10-3)に必要なEb/Noを決定し、以下の式を用いてEb/NoからSNRを計算します。
    • SNR = (Eb/No) × (R/BBW)
    • ここで、Rはデータレート、BBWはデータフィルタの帯域幅です。
  2. 「IF (検出前)のBW対データフィルタのBWの比(dB)」の分だけ、前の手順で計算したSNRを減らします。たとえば、600kHzのIF BWと6kHzのデータフィルタBWであれば、SNRを20dB減らすことになります。これは、データフィルタが高周波ノイズ(IF BWを占有するものと想定)を取り除く前にRSSIディテクタから出力される信号のSNRになります。感度におけるこの比率は通常、dB単位で負の値となります。
  3. RSSIのSNROUT対SNRIN曲線を用いることによって、RFまたはIFアンプとRSSIディテクタへの入力端におけるSNRがわかります。実際には、曲線を「逆に」利用して、手順2で計算したSNROUTが与えられたときのSNRINを求めます。
  4. レシーバのフロントエンドにSNRの公式を使用して、レシーバ入力端での信号レベルを求めます。これは、感度Sとなります。
    • S = (SNRIN) × (kTBIFFS)

ここでkTは290Kにおけるノイズスペクトル密度(-174dBm/Hz)、BIFはIF (検出前)のBW、及びFSはレシーバのシステム(フロントエンドだけではない)ノイズ指数です。

RSSIディテクタは対数ディテクタであるため、SNRの入力/出力の関係は、扱いにくい関係ではあるものの、閉じた形の式で表すことができます。IEEEの「Transactions on Aerospace and Electronic Systems」 の中で発表された昔の論文で、この式が導かれ、SNROUT対SNRIN曲線がプロットされています。この記事における曲線は短くて十分なグリッド線もありませんが、Excel表計算で式を評価し、これをより詳しくプロットすることが可能です。この曲線を、比較のため、単純なSNROUT = SNRIN曲線(直線性の検出)とともにプロットして以下に示します。スレッショルド効果に注目してください。3.7dBのSNRの「交点」より下側では、SNRはディテクタを経ることでさらに悪くなっています。交点よりも上側でSNRが改善されています。

図1.
図1.

別のExcel表計算で、SNROUT対SNRIN曲線を用いて上記の手順1~4を1つにまとめて、次のグラフに示すような感度計算を作成します。これらは、ノイズ指数として7dBを使用し、3つのIF帯域幅について「感度対データレート」としてプロットされています。感度はおおよそ、IF BWまたはデータレートのいずれか一方の平方根に比例して向上していることがわかります。なぜなら、感度においては、SNROUT対SNRINの勾配が対数スケールでほぼ2 (二乗関係)となるようなRSSI SNR曲線の範囲内で実験しているからです。

曲線は、慎重に設計されたASKレシーバの場合の実際の測定値とよく一致しています。たとえば、3kbpsのデータレートと280kHzのIF BWでは、感度は-114dBmです。この計算には、ASKの場合の10-3 BERに相当する11dB Eb/Noを使用しており、安定したCW信号について約12dBのSNRが得られます(データは、平均して50%のデューティサイクルであり、BBW対データレートの1.5:1の比率に対して約2dB少ないため、「ピーク」のEb/Noは14dBです)。

図2.
図2.

ここでは次の2つの仮定を認識することが重要です。すなわち、(1) RSSIディテクタの出力端でのノイズ帯域幅はIF帯域幅と同じである、(2) RSSIディテクタの出力端でのノイズ分布はガウス分布である、という2つの仮定です。実際には、RSSIディテクタのノイズ帯域幅は、IF帯域幅よりもはるかに大きくなる可能性がありますが、これは、実効システムノイズ指数を増やすことで対処することができます。また出力ノイズ分布はガウス分布ではないため、完全な解析を行うためには、RSSI出力端での正確なノイズ分布に対する誤差の確率を計算することが必要になります。特定のBERに対するEb/No内の誤差は小さく、以下に挙げたこのアプリケーションノートの根本的な結果を変えることにはならないものと考えられます。

  1. RSSIディテクタのSNROUT対SNRIN関係の特性を明らかにした。
  2. スレッショルド効果があり、3.7dBを超える入力SNRにについては出力SNRが向上し、3.7dB未満の入力SNRについては低下する。
  3. ASK感度は、直線的ではなく「IF帯域幅対ベースバンド帯域幅比」の平方根に比例して向上する。
参考資料
Bales, C. W., "A Comparison of Logarithmic and K-th Law Detectors", IEEE Trans. AES, July 1978, pp. 693-696

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