チャージ・ポンプ技術が電圧変換にもたらすメリット
要約
本稿では、パワー・マネージメントに役立つ情報としてチャージ・ポンプ技術の話題を取り上げます。具体的には、降圧レギュレータの代わりに高電圧に対応するチャージ・ポンプを利用する手法を紹介します。この手法では、中間バス電圧を生成する手段としてチャージ・ポンプを活用します。インダクタと共に用いる降圧レギュレータの代わりにチャージ・ポンプを使用すれば、より高い変換効率が得られます。それ以外にも、性能やコストに関するいくつかのメリットが得られます。
はじめに
一般に、電源システムにおいて高い電圧から低い電圧を生成するためには降圧レギュレータが使用されます。中間バス電圧を生成するケースも、その例外ではありません。ただ、その中間バス電圧は厳密にレギュレートされていなくても構わないケースも少なくありません。その場合には、降圧レギュレータの代替技術としてチャージ・ポンプを使用することができます。そうすれば、より高い変換効率が得られます。また、インダクタが不要になるため、コストを削減することが可能になります。
チャージ・ポンプによる中間電圧の生成
電源のアーキテクチャにおいて、中間バス電圧は重要な役割を担います。その種の電圧レールを設ければ、より低い定格電圧のパワー・コンバータICを使用することが可能になるからです。また、非常に高い入力電圧を対象として電力変換を行う場合と比べて、降圧レギュレータをより望ましいデューティ・サイクルで動作させられます。結果として、電圧変換段においてより高い効率が得られるようになります。図1に示したのは、中間バス電圧を使用する電源アーキテクチャの例です。ご覧のように、12Vの電源電圧を基に6Vの中間電圧を生成しています。この電圧レールは、システムで直接使用するわけではありません。そのため、厳密にレギュレートする必要はありません。中間電圧は、それに続く各電力変換段に引き渡されます。各電力変換段ではPOL(Point of Load)コンバータによる降圧が行われ、必要な値の電圧が生成されます。
図1. 12Vを使用する電源のアーキテクチャ。6Vの中間電圧を生成しています。
中間バス電圧は、一般的にはインダクタを使用する降圧型のスイッチング・レギュレータを使用して生成されることが多いでしょう。その場合の変換効率は90%ほどになるはずです。図1の例で使用しているチャージ・ポンプは、それに代わる効率的な手段となります。
例えば、チャージ・ポンプをベースとするDC/DCコンバータ「LTC7825」を使用すればよいということです。そうすれば卓越した変換効率が得られます。具体的には、12Vから6Vへの降圧を行う場合、負荷電流が5A(30W)の条件では97.5%、負荷電流が10A(60W)の条件では96%に近い効率を実現できます。
このような性能が得られるのは、同ICが内蔵するチャージ・ポンプ用のスイッチに高度な制御システムが適用されているからです。その実装方法は、優れた電磁環境適合性(EMC)ももたらします。
図2は、LTC7825が備えるチャージ・ポンプ回路の概念図です。この回路には、スイッチング・レギュレータで使用されるような制御ループは含まれていません。12Vの入力電圧をフォローすることで、6Vの出力電圧を生成します。つまり、入力電圧の1/2の電圧が常に維持されるということです。この電圧変換は、上記のとおり、制御ループを使用することなく自走型で実現されます。しかも、卓越した効率と優れたEMC性能が得られます。加えて、この回路はインダクタを必要としません。このこともメリットの1つです。特に、多くの負荷電流を供給しなければならない場合には、サイズが大きいインダクタが必要になります。そうすると、コストがかさむことになります。
図2. 中間バス電圧を生成するためのチャージ・ポンプ回路の概念図
アナログ・デバイセズは、「LTspice®」というSPICEベースのシミュレータを提供しています。図3に示したのは、LTspiceでLTC7825の動作をシミュレーションするための回路です。LTspiceを使用すれば、チャージ・ポンプのトポロジのシミュレーションを高い精度で実施できます。そのため、LTC7825のような回路の機能と制約に関する的確な知見を得ることが可能になります。
図3. LTspiceでLTC7825のシミュレーションを実施するための回路
従来、チャージ・ポンプは少ない電力を扱う回路で使われていました。その状況は、LTC7825のような新たな製品が登場したことで変化しました。つまり、最大100Wといった高い電力レベルでチャージ・ポンプを使用することが可能になったのです。更に大きな電力を扱いたい場合には、チャージ・ポンプに対応する「LTC7820」のようなDC/DCコントローラICを使用するとよいでしょう。同ICと外付けのスイッチを組み合わせれば、非常に大きな電力に対応することが可能になります。
まとめ
多くの電源システムでは、入力電圧をその1/2程度の電圧に変換するということが行われます。その際、出力電圧は厳密にレギュレートされていなくても構わないというケースは少なくありません。そのような場合には、チャージ・ポンプ回路を使用して電圧変換を実施するとよいでしょう。そうすれば、スイッチング・レギュレータを使用する場合と比べて、より高い効率と優れたEMC性能が得られます。しかも、インダクタを使用する必要はありません。
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