A/Dコンバータの駆動方法――シングルエンドの信号を差動入力信号に変換する
図1に示した回路をご覧ください。これは、0V~5Vのシングルエンドの入力信号を差動信号に変換する回路です。その目的は、差動入力を備えるA/Dコンバータ(ADC)に最適な差動入力信号を生成することです。シングルエンドから差動への変換処理には「LT6350」を使用しています。この回路において、初段のアンプはユニティ・ゲイン・バッファとして構成されています。このバッファの高インピーダンスの入力は、シングルエンドの入力信号によって直接駆動されます。図2のFFT結果に示すように、LT6350は、分解能が18ビットのADC「LTC2378-18」の最大性能を引き出せるレベルの信号を出力することができます。
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図1. LT6350を使用して構成した変換回路(その1)。0V~5Vのシングルエンドの信号を±5Vの差動信号に変換します。
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図2. 図1の回路の出力をFFTで処理した結果。入力信号の周波数は2kHz、FFT処理の対象とするデータ数は32kです。
図3に示したのは、LT6350を使用して、±10Vの真のバイポーラ信号の変換を実現する回路です。この回路も、LTC2378-18の入力仕様に対応しています。反転アンプ回路として構成された初段のアンプは、LTC2378-18の入力範囲である0V~5Vまで入力信号を減衰させると同時にレベルシフトを実現する役割を果たします。この反転アンプの構成では、高インピーダンスのアンプの入力は、シングルエンドの入力信号源によって直接駆動されるわけではありません。入力インピーダンスは、抵抗RINによって決まります。RINの値は、信号源のソース・インピーダンスに基づいて慎重に選択しなければなりません。RINの値が大きいほど、LT6350とLTC2378-18を組み合わせたシステムのノイズと歪みは悪化します。抵抗R1、R2、R3、R4の値は、RINの値を基に、所望の減衰量を実現しつつ、初段のアンプの入力インピーダンスのバランスが維持されるように選択しなければなりません。表1に、RIN、R1、R2、R3、R4の値に対するS/N比とTHDの値をまとめました。図4に示したのは、図3のようにLT6350を使用した場合に得られる出力のFFT結果です。
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図3. LT6350を使用して構成した回路(その2)。±10Vのシングルエンドの信号を±5Vの差動信号に変換します。
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図4. 図3の回路の出力をFFTで処理した結果。入力信号の周波数は2kHz、FFT処理の対象とするデータ数は32kです。
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表1. 各抵抗の値とS/N比、THDの関係
図5に、LT6350を使用したもう1つの回路例を示しました。この回路は、LTC2378-18のデジタル利得圧縮機能が有効である場合に向けて、±10Vの真のバイポーラ入力信号を受け取り、その信号をLTC2378-18の狭められた入力範囲に対応するよう減衰/レベルシフトします。図6は、この構成によって得られる出力のFFT結果です。図5に示したLT6350ベースの回路により、デジタル利得圧縮機能が有効になっているLTC2378-18を駆動し、得られた出力をFFTで処理しました。
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図5. LT6350とLTC2378-18を使用して構成した回路。LTC2378-18のデジタル利得圧縮機能が有効である場合を対象にしたものです。LT6350を使って構成した回路は±10Vの入力信号を受け取ります。これらの回路は5.5Vの単一電源で動作します。
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図6. 図5の回路の出力をFFTで処理した結果。入力信号の周波数は2kHz、FFT処理の対象とするデータ数は32kです。
著者について
Bob Dobkin氏、Bob Widlar氏、Carl Nelson氏、Tom Redfern氏の指導の下、オペアンプ、コンパレータ、スイッチング・レギュレータ、A/Dコンバータ(ADC)など、様々な製品を担当。この時期には、...
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