ADC駆動:差動ADCの駆動

2013年09月10日
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ほとんどの完全差動アプリケーションでは、図1に示すように2つのユニティ・ゲイン・バッファとして構成されたLT6201 ADCドライバを使用してLTC2389-18を駆動することが推奨されています。LT6201は高速セトリングおよび優れたDC直線性に加えて、0.95nV/√Hzの入力換算ノイズ密度を実現しており、図2のFFTプロットに示すように、ADCデータシートに仕様規定されたSNRとTHDを全て満たすことができます。この回路構成はシングルエンド信号のバッファにも使用可能で、図3と図4に示すようにユニポーラおよびバイポーラの疑似差動入力モードでも、SNRとTHD仕様を全て実現します。

図1.  完全差動またはシングルエンド信号源をバッファするLT6201

図1.  完全差動またはシングルエンド信号源をバッファするLT6201

図2. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、完全差動入力で駆動された図1の回路の場合

図2. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、完全差動入力で駆動された図1の回路の場合

図3. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、ユニポーラ入力で駆動された図1の回路の場合

図3. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、ユニポーラ入力で駆動された図1の回路の場合

図4.  32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、バイポーラ入力で駆動された図1の回路の場合

図4.  32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、バイポーラ入力で駆動された図1の回路の場合

シングルエンドから差動への変換

アプリケーションによっては、完全差動入力モードにおいてLTC2389-18の持つ高いSNRという利点を活かすために、TC2389-18を駆動する前にシングルエンドのユニポーラまたはバイポーラ信号を完全差動信号に変換することが望ましい場合があります。LT6201 ADCドライバを図5に示す回路構成で使用すると、0V~4.096Vのシングルエンド入力信号を完全差動の±4.096V出力信号に変換することができます。出力ローパス・フィルタのRC時定数を決める際は、アクイジション時にLTC2389-18アナログ入力のトランジェントのセトリング時間が十分確保されるように考慮します。このフィルタの帯域幅は広いとはいえ、シングルエンドから差動への変換回路の比較的大きな広帯域ノイズが加わると、この回路構成で実現可能なSNRは98.8dBにとどまってしまいます(図6のFFTプロットを参照)。

図5. 0V~4.096Vのシングルエンド信号を±4.096Vの完全差動信号に変換するLT6201

図5. 0V~4.096Vのシングルエンド信号を±4.096Vの完全差動信号に変換するLT6201

図6. 図5に示した回路の32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)

図6. 図5に示した回路の32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)

LT6201の前段にLT6231を配置した、シングルエンドから差動への別の変換回路構成を図7に示します。この回路構成では、アクイジション時のLTC2389-18入力のセトリングに影響を与えずに、ローパス・フィルタAを用いてシングルエンドから差動への変換回路の広帯域ノイズの帯域幅を更に制限することができます。図8のFFTプロットに示すように、この回路ではADCデータシート記載のSNR仕様を全て満たすことができます。

図7. 0V~4.096Vのシングルエンド信号を±4.096Vの完全差動信号に変換するLT6231。後段に完全差動信号をバッファするLT6201。

図7. 0V~4.096Vのシングルエンド信号を±4.096Vの完全差動信号に変換するLT6231。後段に完全差動信号をバッファするLT6201。

図8. 図7に示した回路の32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)

図8. 図7に示した回路の32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)

シングルエンドのユニポーラ入力およびバイポーラ入力

LTC2389-18には、シングルエンド・ユニポーラおよびシングルエンド・バイポーラ信号を直接入力できます。ほとんどのシングル・エンド・アプリケーションでは、図9に示すように、ユニティ・ゲイン・バッファとして構成されたLT6200 ADCドライバを使用してLTC2389-18を駆動することを推奨します。LT6200は、高速セトリングおよび優れたDC直線性に加えて0.95nV/√Hzの入力換算ノイズ密度を実現しており、図10および図11のFFTプロットに示すように、どちらの疑似差動入力モードでもADCのデータシート記載のSNRおよびTHD仕様を全て満たすことができます。

図9. シングルエンド信号源をバッファするLT6200

図9. シングルエンド信号源をバッファするLT6200

図10. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、ユニポーラ入力で駆動された図9の回路の場合

図10. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、ユニポーラ入力で駆動された図9の回路の場合

図11. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、バイポーラ入力で駆動された図9の回路の場合

図11. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、バイポーラ入力で駆動された図9の回路の場合

最新の構成

 LT6237は、LTC2389を駆動するのに更に適したデバイスといえます。低ノイズ・レールtoレール出力オペアンプLT6237は、わずか1.1nv/√Hzの入力換算ノイズ密度を特長とし、消費電流はわずか3.5mA、最大オフセット電圧は315µVに過ぎません。この電源電流とオフセットは、LT6201に比べてかなり低い値となっています。 LT6237を使用した完全差動ドライバ回路を図12に示します。ドライバ出力部にあるRCフィルタの時定数はLT6201の場合と同じですが、抵抗値が大きくなっている点に注意してください。SNRおよびTHD性能は、図13のFFTに示すように、LT6201の場合と実質的に同じです。LT6236/7については、上述のシングルエンド・ドライバおよびシングルエンドから差動への変換ドライバを使用した試験は行っていませんが、性能はLT6200/1と同様です。LT6236/7を使用する際は、必ず回路のフィルタ部分を変更して、抵抗値を大きく、コンデンサ値は小さくしてください。

図12. 完全差動またはシングルエンド信号源をバッファするLT6237

図12. 完全差動またはシングルエンド信号源をバッファするLT6237

図13. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、完全差動入力で駆動された図12の回路の場合

図13. 32kポイントのFFT(fSMPL = 2.5Msps、FIN = 2kHz)、完全差動入力で駆動された図12の回路の場合

著者について

Guy Hoover
Guy Hooverは、Linear Technology(現在はアナログ・デバイセズに統合)で30年以上にわたりIC設計技術者、アプリケーション・エンジニアなどの職務を果たしてきました。

Bob Dobkin氏、Bob Widlar氏、Carl Nelson氏、Tom Redfern氏の指導の下、オペアンプ、コンパレータ、スイッチング・レギュレータ、A/Dコンバータ(ADC)など、様々な製品を担当。この時期には、...

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