要約
GSM携帯電話の普及が一因で不要なRF信号が常に増え続けており、電子回路が適切なRFノイズ除去機能を備えていない限り、出力に歪みが伴うことになります。その結果、電子回路の良好な動作を保証するためには、RF耐性のテストが必要不可欠になっています。
はじめに
今日の携帯電話の大部分は、時分割多元接続(TDMA)規格を利用しています。これは、217Hzのサイクルでオフ/オンを繰り返すことによって高周波の搬送波を変調する多重化方式です。RF耐性のないICはそのキャリアを復調する際、217Hzの信号とその高調波を再生することがあります。これらの周波数のほとんどは音声帯域に落ち込むため、不要な可聴バズ音が生成されます。こうして、RF耐性の乏しい回路は携帯電話のRF周波数を復調し、不要な低周波音声を生成することがあります。品質保証の手段として、テストでは通常の動作時と同等のRF環境下に回路を置く必要があります。
この記事では、ICボードのRFノイズ除去能力を測定するための一般的な手法について説明します。RF耐性のテストでは、そのボードが動作中に遭遇すると思われる強さに相当する制御されたRFレベルにボードを晒します。その結果、定性分析に有益な再現性のある結果を確立した標準的、且つ構造化されたテスト方法が得られます。そうしたテスト結果は、最もRFノイズに強いICおよび回路を選択する一助となります。
RF感受性は、動作中の携帯電話の近くに被試験デバイス(DUT)を置くことによってテストすることができます。しかし、正確で再現性のあるテスト結果を得るためには、一貫性のある方法で再現性のあるRF電界を使ってDUTのテストを行う必要があります。そのための解決策が、標準的な携帯電話が発生するものと同等の、正確に制御されたRF電界を作り出すRF無響テストチャンバーです。
RF耐性テストの機器構成
以下の議論では、MAX4232デュアル演算増幅器(オペアンプ)と競合製品(X社製)に対するRF耐性テストの結果を比較します。RF耐性テスト回路(図1)は、PCBとテスト対象のデュアルオペアンプとの接続を示しています。各オペアンプは、ACアンプとして構成されます。AC信号を入力していない状態で、出力は1.5VDCで安定します(VCC = 3Vの場合)。1.5インチの導線のループを使って反転入力をグランドに短絡させ、入力部のPC配線をエミュレートします。このループは、動作周波数におけるアンテナの役目をしてRF信号の収集と復調を行うという、実際の配線の影響をシミュレートするものです。出力にdBVメータを接続することによって、オペアンプのRFノイズ耐性に対する測定と定量化を行います。
図1. MAX4232デュアルオペアンプのRFノイズ耐性テストを行うためのテスト回路の接続。
マキシムのRFテスト構成(図2)では、RF耐性のテストに必要なRF電界を発生させます。無響テストチャンバーは、ファラデーケージに似たシールドされた本体部分に、電源電圧と出力モニタを接続するためのアクセスポートが設けられています。テスト装置は、以下の機器を連結することによって形成されます。
- 信号発生器:9kHz~3.3GHz (Rhode & Schwarz SML-03)
- RFパワーアンプ:800MHz~1GHz、20W (OPHIR 5124)
- 電力計:25MHz~1GHz (Rhode & Schwarz)
- PW (Parallel-wired)セル(無響チャンバー)
- 電界センサ
- コンピュータ(PC)
- dBVメータ
図2. RFノイズ耐性テストのための機器構成。
信号発生器は、希望の周波数と変調のRF信号を生成して、パワーアンプに供給します。パワーアンプ(PA)の出力を指向性カプラを通して組合された電力計にて測定と監視を行います。信号発生器の出力における周波数範囲、変調方式、変調度、およびPAの出力をコンピュータで制御することによって、必要なRF電界を確立します。均一で、正確に較正され、一貫した再現性のある電界を生成するアンテナ(平面型)を使用して、シールドされた無響チャンバー内に電界が放射されます。
標準的な携帯電話周辺のRF電界強度は、電話機の放射アンテナから4cmの距離で約60V/mです。RF電界強度は携帯電話から離れるにしたがって減少し、電話機から10cmでは約25V/mになります。そのように、チャンバーで60V/mの均一な電界強度を生成して、DUTが置かれることになるRF環境をエミュレートします(60V/mは、受信デバイスをクリッピングレベル以下に保ち、測定誤差を防ぐのに十分な低さでもあります)。RF正弦波は、携帯電話用の周波数である800MHzから1GHzの間で変化させ、1000Hzの音声周波数で100%変調をかけます。217Hzの変調でも同様の結果が得られますが、便宜上、より一般的な音声周波数である1000Hzを選んでいます。チェンバー側面のアクセスポートを通して、DUTへの給電とともに、dBVの測定値(1Vを基準とするdB値)読取りに使用するdBVメータの接続が可能になっています。電界センサを使用しながらチャンバー内でのDUTの位置を調整することによって、RF電界を正確に較正することができます。
図3. 図2の装置を使用した、2種類のデュアルオペアンプに対するRFノイズ耐性テストの結果。
テスト結果
2種類のデュアルオペアンプ(MAX4232とX社製品)のテスト結果として、平均出力をdBVで表したものを示します(図3)。60V/mの均一な電界中において、800MHz~1Ghzの範囲でRF周波数を変化させた時のレスポンスは、MAX4232の平均出力は約-66dBV (1Vに対して500µV RMS)、X社製品の平均出力は-18dBV (1Vに対して125mV RMS)になっています。RF信号が全く存在しない場合のdBVメータの読み値は-86dBVです。
このように、MAX4232の出力はわずか-20dB (-86dBVから-66dBVへ)しか変化していません。言い換えると、RF環境によってその出力が50µV RMSから500µV RMSへと変化しています。強制的に課したRF環境に対するMAX4232の出力の変化は、わずか10倍だと言うことができます。以上より、MAX4232は-66dBVという優れたRF耐性を備えており、認知可能な出力の歪みは一切生じないと考えられます。
X社製品の平均測定値はたった-18dBVであり、これはRFに晒されたとき、その出力が(1V RMSを基準として) 125mV RMSも変化することを意味します。この増加量は、通常時(50µV RMS)の2500倍に相当します。このように、X社製品は低いRF耐性(-18dBV)であると言うことができます。すなわち、携帯電話やその他のRF発生源に近付けた時、問題を起こす可能性がより大きいわけです。ヘッドフォンアンプやマイクロフォンアンプなどのオーディオ処理アプリケーション向けの選択肢としては、明らかにMAX4232の方が適しています。
まとめ
結論として、RF環境における品質性能の維持に配慮するボード/ICメーカー各社にとって、RF耐性のテストは欠かすことのできないステップです。RFチャンバーを使う構成によって、RF耐性を正確にテストするための経済的で柔軟な手法が提供されます。
同様の記事が、「RF Design」誌の2005年10月号にDesign Tip (設計のヒント)として掲載されています。
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