0V~80Vの電源を直接モニタする3mm×3mm QFNデバイス:I2Cインタフェース、ピーク値のトラッキングを特長とし、任意の電源で動作
0V~80Vの電源を直接モニタする3mm×3mm QFNデバイス:I2Cインタフェース、ピーク値のトラッキングを特長とし、任意の電源で動作
著者
CY Lai
2013年07月01日
電源のモニタと制御メカニズムを組み合わせることにより、システムのエネルギー効率と信頼性を大幅に向上させることができます。LTC2945は、小型、堅牢で使いやすい、高集積度のデジタル・パワー・モニタ・ソリューションです。最小限の部品点数で電源をモニタすることが要求されるアプリケーションに適合するよう設計されています。
LTC2945の機能ブロック図を図1に示します。高精度の電流検出アンプ、高精度の抵抗分割器、A/Dコンバータ、ホスト・コントローラと通信するためのI2Cインタフェースなど、電源のモニタに必要なすべての基本要素を内蔵しています。必要なのは外付けの電流検出抵抗だけです。ホストはLTC2945を周期的にポーリングして、利用可能な電力データ、保持された最小値および最大値を確認できます。また、LTC2945からアラートを送信することにより、測定値が設定リミットを超えた場合はホストに割り込みをかけることができます。

図1.LTC2945の機能ブロック図
任意の電源での電力のモニタ
LTC2945 の内部電流検出アンプは0V~80Vの同相範囲を備えているので、さまざまな種類のハイサイドおよびローサイド電流検出アプリケーションに適しています。現在普及している広範囲電源モニタのほとんどは、動作するのに低電圧の2次電源が必要ですが、以下のいくつかの理由で好ましくないことがあります。
- 利用可能な2次電源がない
- 2次電源にはノイズの多いデジタル回路が負荷として接続されている場合が多く、電源モニタの電源電圧除去比は高周波では低くなるので、フィルタ処理を十分に行うか、バイパスする必要がある
- 2次電源は存在するが、アクセスが容易ではない。つまり、プリント回路基板上で離れた場所に配置されており、電源ラインの引き回しが複雑になる
LTC2945 は、4V~80Vの電源から直接電力を供給できる高電圧リニア・レギュレータを内蔵することにより、これらの問題を回避しています。リニア・レギュレータの出力(INTVCC)はLTC2945に電力を供給しますが、電源ノイズが内部回路の精度を落とすことがないようにデバイスの外部でバイパスすることができます。リニア・レギュレータには10mAの負荷を接続することができるので、一部のアプリケーションでは、オプトカプラなどの回路に給電するための専用の高電圧リニア・レギュレータを省くことができます。
4V~80Vの電源をモニタし、同じ電源から電力を得ているLTC2945の標準的なアプリケーションを図2a に示します。バス電圧は内部の抵抗分割を介してSENSE+ピンで測定され、ハイサイドでの負荷電流を測定するのに検出抵抗が使用されます。モニタ対象のバス電圧が2.7Vより低い場合、LTC2945の電源は図2bに示すように電圧範囲の広い2次電源から得るか、図2c に示すように低電圧の2 次電源から得ることができます。

図2a.計測対象電源から電力供給を受けているLTC2945

図2b. 広範囲の2次電源から電力供給を受けているLTC2945

図2c.低電圧の2次電源から電力供給を受けているLTC2945
LTC2945は、80Vを超える動作に対応するため、INTVCCピンに6.3V/35mAのシャント・レギュレータも内蔵しています。バス電圧より6.3V低い電圧でグランドをフロート状態にしたアプリケーションで使用するLTC2945を図3a に示します。バス電圧の大半は外付けのシャント抵抗の両端で降下します。したがって、実際にはバス電圧から分離可能でLTC2945に必要な電流を供給できるすべての電流源を利用可能です。

図3a.ハイサイドのシャント・レギュレータを通じて電力供給を受けているLTC2945

図3b.ハイサイドの電流検出回路構成でローサイドのシャント・レギュレータを通じて電力供給を受けているLTC2945

図3c.ローサイドの電流検出回路構成でローサイドのシャント・レギュレータを通じて電力供給を受けているLTC2945

図3d.ローサイドの電流検出回路構成で計測対象の電源から電力供給を受けているLTC2945
図4は、整合したPNPペアといくつかの抵抗を使用して、この構成でバス電圧を測定する方法を示しています。ここに示す抵抗値は、VINが165V±10%の場合に合わせて最適化されています。LTC2945のシャント・レギュレータは、ハイサイド電流検出アプリケーションにおいて、使用可能な唯一の2 次電源が80Vを超える場合、図3bに示すように構成することもできます。

図4.ハイサイドのシャント・レギュレータ構成でバス電圧を測定するためのアプリケーション回路
ネットワーク構築、通信、ハイエンドの計算装置用の–48V分散電源システムなど、電源の出力が負電圧である場合、通常は、図3cおよび3dに示すようなローサイドの電流検出が好まれます。図3c に示すのは、シャント抵抗とLTC2945のシャント・レギュレータが、80Vを超える負電源の電圧より6.3V高い電圧にINTVCCを制限している例です。より一般的な例では、図3dに示すように負電源の電圧が80Vより小さいので、代わりに内部のリニア・レギュレータを使用してLTC2945に直接電力を供給できます。この構成では、バス電圧を内部抵抗分割器を介してVDDピンで測定します。
図3cのようなローサイド電流検出アプリケーションで80Vを超えるバス電圧を測定するには、図5に示すように抵抗分割器をADINピンに接続します。

図5.ローサイドのシャント・レギュレータ構成でADINピンによりバス電圧を検出
最大誤差が±0.75%の測定精度
LTC2945は、変換サイクルにわたって測定電圧を本質的に平均化し、トランジェント・スパイクやAC電源ラインの高調波に起因するノイズを効果的に除去するオーバーサンプリング デルタシグマA/Dコンバータを内蔵しています。バス電圧、検出電圧、およびADINの電圧は、産業用グレードの全温度範囲でフルスケール時に全誤差が±0.75%未満の精度で測定されます。
12ビットのデルタシグマA/Dコンバータのフルスケール電圧は、検出電圧の場合は102.4mV(25µV/LSB)、バス電圧の場合は102.4V(25mV/LSB)、ADINの電圧の場合は2.048V(0.5mV/LSB)です。ADINの電圧および検出電圧の積分直線性誤差(INL)の標準値は、図6および7に示すように、どちらも優に±0.5LSB以内に入っています。LTC2945のオフセット電圧の規格値はワーストケースでもADINの電圧の場合は±1.1LSB程度、電流検出電圧の場合は±3.1LSB程度と小さいので、LTC2945は測定値の下端で精度が重要になるアプリケーションにも最適です。

図6.ADINピンの電圧のINL曲線

図7.SENSEピンの電圧のINL曲線
ピーク値のトラッキングと過大値/ 過小値のアラート
多くの電源モニタ・システムでは、測定値の最小値と最大値を常に把握することが重要です。なぜなら、これらのデータを使って使用率の動きを研究し、より効率的な資源配分を行うことが可能であり、システム健全性の指標になることが多いからです。以前は、こうした情報を収集するのにシステムのマイクロプロセッサによる電源モニタの周期的なポーリングが必要で、それによって貴重なCPU時間が費やされ、I2Cインタフェースの渋滞を招く可能性がありました。LTC2945は、電力、電圧、電流、およびADINの電圧の最小値および最大値を記憶することにより、この問題を解決しています。LTC2945のページ読み出し機能により、1回のI2C読み出しでこれら全てのデータを読み出すことができます。電力、電圧、電流、およびADINの電圧について過大値または過小値の制限値違反を通知するようにALERTピンを構成することもできます。
切り捨てのない24ビットの電力データ
デジタル・サーボ・ループを使用してシステムの電源出力を安定化するアプリケーションでは、安定性の問題を最小限に抑えるため、モニタから読み出した電力データを単調で高分解能のデータにする必要があります。LTC2945は、12ビットの検出電圧データと12ビットのバス電圧データをデジタル的に乗算し、結果の切り捨てを行わないことにより、24ビットの電力データを生成します。
光絶縁とシャットダウン
LTC2945は、I2Cシリアル・インタフェースを介してシャットダウンし、静止電流を標準20µAに減少させます。これは、特にバッテリ駆動のアプリケーションで重要です。一般的に、安全性の理由から高電圧の部分を絶縁する必要があるシステムでは、光絶縁が用いられています。LTC2945は、図8に示すように、光アイソレータ・インタフェースを備えたアプリケーションでは、I2CインタフェースのSDA信号をSDAIピンとSDAOピン(LTC2945-1の場合はSDAOピン)に分割することによって絶縁アプリケーションに対応します。

図8.LTC2945とマイクロコントローラ間の10kHz I2Cインタフェースの光絶縁
内部のリニア・レギュレータまたはシャント・レギュレータを使用してI2Cバス上のプルアップ抵抗にある程度の電流を流すことができます。内部レギュレータを用いることが望ましくなかったり、他の低電圧の電源がない場合には、LTC2945-1ではプルアップ抵抗を高電圧に直接接続することができます。SCLピンとSDAIピンは、6.3V/3mAの内部クランプにより安全な電圧に制限されています。SDAOピンの信号は(SDAOピンに)反転されるので、図9に示すように光アイソレータの入力ダイオードのアノードでクランプすることができます。

図9.LTC2945-1とマイクロコントローラ間の1.5kHz I2Cインタフェースの光絶縁
電源トランジェント
バス電圧が80Vよりはるかに低いアプリケーションであっても、LTC2945の動作電圧範囲の広さは有利です。例えば、自動車のロード・ダンプでの誘導性逆起電力によるトランジェントや、活線挿抜における出力短絡では、通常の動作電圧を大幅に超えた過電圧が発生するため、そういった電圧に耐えることのできる堅牢な電源モニタ・ソリューションが必要となります。
LTC2945の絶対最大定格は100Vであり、選択できるトランジェント電圧サプレッサ(TVS)ダイオードの範囲が広いので、こうした種類の電圧サージに対する保護は容易です。大きなMOSFETパワー・デバイスがブレークダウンして誘導性のスパイクを安全にクリップできる場合で、ブレークダウン電圧が100V未満である大半の12Vシステムおよび24Vシステムでは、TVSダイオードを省略できる場合があります。
TVSダイオードまたはMOSFETのブレークダウンによる電圧のハードクランプは、誘導性エネルギーが高すぎるか予測できない場合、実用的ではないかもしれません。200Vのサージを切り抜けることができるLTC2945 ベースの電源モニタを図10に示します。ここでは、高電圧ピンがT1によって80V未満にクランプされています。通常動作では、M1はデバイスのグランドがシステムのグランドより数mV高い線形領域で動作します。サージが加わっている間、デバイスのグランド電位はT1によって持ち上げられ、残りのサージ電圧がM1の両端にかかります。BSP149のブレークダウン電圧は200Vであり、サージの印加時間はBSP149の安全動作領域によって制限されます。たとえば、室温ではVINに200Vのサージが1ms加わっても大丈夫です。.

図10.最大200Vのサージ保護を備え堅牢化された4V~80Vハイサイド電力モニタ
まとめ
LTC2945は、広範なシステムに容易に適合する高集積電源モニタです。0V~80Vの同相電圧範囲、2.7V~80Vの動作電圧範囲、電圧および電流の高精度(±0.75%)測定機能を備え、電力を計算するデジタル乗算器を内蔵しています。電力、電圧、電流および外部電圧をモニタするため、ピーク値や谷の値などのデジタル・ウォッチドッグ機能とウィンドウ・コンパレータが用意されています。SDAピンを分けたことにより、簡単に光絶縁を行えます。LTC2945は、省スペースの3mm×3mm QFNパッケージおよび12ピンMSOPパッケージで供給されます。
データシート、デモボード、およびその他のアプリケーション情報については、www.linear-tech.co.jp/LTC2945 にアクセスしてください。
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