概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Allegro Layout File
- Gerber Files
- UL-217 Test Documentation
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- ADSW-SMOKEALGO-PRODLIC ($27500.00) ADPD188BI Smoke Detection Algorithm
- ADSW-SMOKEALGO-SUP100 ($22500.00) Paid Support 100hrs
- ADSW-SMOKEALGO-SUP200 ($38500.00) Paid Support 200hrs
- ADSW-SMOKEALGO-SUP50 ($12500.00) Paid Support 50hrs
- ADSW-SMOKEALGO-SUPCUST Paid Custom Support
- ADSW-SMOKEDATA-PRODLIC ($11000.00) ADPD188BI Smoke Detection Dataset
- EVAL-ADICUP3029 ($52.97) Ultra Low Power Arduino Form Factor Compatible Development Board
- EVAL-CN0537-ARDZ ($63.56) UL-217 8th Edition Certifiable Reference Design
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
機能と利点
CN0537のリファレンス設計には、煙/火災検出アプリケーション開発を加速するよう設計された、データおよびソフトウェアが完備されています。
データ・パッケージ(EVAL-CNO537-DATA)は、独自のアルゴリズム開発を希望する方々向けに、UL-217認証取得機関で収集された、煙に関する広範なデータ・セット(1000+)を提供します。初期化、キャリブレーション、環境補償、データ前処理のための、CN0537ソース・コードを含んでいます(検出アルゴリズムを除く)。
アルゴリズム・パッケージ(EVAL-CN0537-ALGO)には、データ・パッケージのすべてに加えて、UL認証取得済みの煙検知アルゴリズムと、これに関連するアルゴリズム・プロジェクト・ファイルが含まれています。
製品カテゴリ
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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CN0537 User Guide2020/07/07WIKI
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Smoke Detection Solutions Frequently Asked Questions2020/12/17PDF811 K
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ラピッド・プロトタイピングを実現するためのソリューション2024/04/15PDF4 M
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CN0537: 妨害事象検出機能を持つ UL-217 煙検出モジュール (Rev. 0)2020/07/15PDF530 K
回路機能とその特長
このリファレンス設計と関連ソフトウェアは、UL-217の第8版および同様の煙/火災検出規格に適合するよう、設計およびテストされています。様々な顧客のニーズに対応するため、以下の表にまとめたような多数のソリューションを提供しています。ハードウェアは、Arduino(アルドゥイーノ)フォーム・ファクタと互換性があり、組み込み煙検出アルゴリズムのプロトタイプ作成や評価を促進するよう設計されています。ハードウェアは、CN0537回路ノートおよび対応するEVAL-ADICUP3029マイクロコントローラ・ボードを記述した、EVAL-CN0537-ARDZリファレンス設計により構成されています。データ・パッケージ(EVAL-CNO537-DATA)は、独自のアルゴリズム開発を希望する方々向けに、UL-217認証取得機関で収集された、煙に関する広範なデータ・セットと、CN0537ソース・コード(検出アルゴリズム除く)を提供します。アルゴリズム・パッケージ(EVAL-CN0537-ALGO)には、データ・パッケージのすべてに加えて、UL認証取得済みの煙検知アルゴリズムと、これに関連するアルゴリズム・プロジェクト・ファイルが含まれています。
ソリューション・オプション | 説明 | 装備 |
ハードウェア EVAL-CN0537-ARDZ EVAL-ADICUP3029 |
プロトタイピング/ソリューション評価用の煙検出器リファレンス設計ハードウェア。 評価のため、試験および検証済みのUL-217煙検出アルゴリズムがインストーラの一部として埋め込まれています。 |
ハードウェア
|
データ EVAL-CN0537-DATA |
アルゴリズム開発用に、CN0537ソース・コード(検出アルゴリズムを除く)に加え、UL-217認証取得の試験機関で収集された、1000を超える火災/煙データセット・サンプルを提供。 |
データ
|
アルゴリズム EVAL-CN0537-ALGO |
全ソース・コードと、試験および検証済み のUL-217第8版アルゴリズム、関連プロジェクト・ファイル、CN0537ソース・コード、1000を超える火災/煙データセットが、システム開発を加速。 | ソフトウェア
|
1970年代以降、商業施設や住宅への煙検出器の普及が進みました。現在使われている煙検出器は、2種類の基本的タイプです。電離タイプは、放射性物質を用いて空気を電離させ、電気的不均衡をチェックします。光電タイプは、光検出器から離れる角度に向けた光源を使用して、空気中の粉塵に当たってフォトダイオードに反射される光により光検出器で発生する電流をチェックします。両方のタイプを組み合わせたソリューションが推奨されてはいますが、家庭で発生する一般的な火災の検出における信頼性が向上し、炎の出ない燻(くん)焼に対する応答時間が短縮された、光電式煙検出器のほうが普及しています。
残念ながら、電子技術や一般家庭で使われる素材はその後数十年で進化を続けているにもかかわらず、煙検出器に関する技術も規制も、1970年代当時からほとんど変わっていません。米国保険業者安全試験所(UL)が公開しているANSI/UL-217およびANSI/UL-268や、全米防火協会(NFPA)が公開しているNFPA® 72 国家火災警報コードといった規格の改訂版は、新しい煙検出器の設計に対してより複雑な条件を課すことを通じて、こうした隙間を埋めることを目指すものです。
例えば、UL-217規格の最新版では、炎および煙の検出感度に関する従来の試験に加えて、調理中などの妨げとならないよう、煙検出器が誤認アラームを生成しないよう義務付けています。このように、新しい煙検出器では、調理時の焼け焦げと火災の違いを区別できることが必須条件とされています。
こうした新しい規格は、日々の活動による誤認アラームの発生回数を減らすことによって、安全性を向上させ、火災に関連した死亡件数を減少させることを目指しています。従来であれば、こうしたことを実現するには複数のセンサー技術と一定レベルの人工知能による複雑なソリューションが必要でした。ですが、ADPD188BI を使用することで、はるかにシンプルな形での導入が可能になります。
図1に示す回路は、ADPD188BI高額モジュールをベースにした、UL-217煙検出器のリファレンス設計です。簡単かつ迅速な開発を実現できるよう、Arduino(アルドゥイーノ)フォーム・ファクタ・コントローラ・プラットフォームと互換性があり、「ANSI/UL-217」規格第8版で仕様規定された煙・火災試験による評価済みの、煙検出用カスタム・アルゴリズムを含めた設計となっています。

回路説明
ADPD188BIを使用した煙検出
ADPD188BI光学モジュールは、煙検出アプリケーション専用に設計された、フル機能のフォトメトリック・システムです。ADPD188BIパッケージには、光エレクトロニクス(2個のLEDおよび2個の光検出器)とアナログ・フロント・エンド(AFE)が内蔵されているため、従来型のディスクリート型煙検出回路に代えてADPD188BIを使用することで、設計を大幅に簡略化できます。
ADPD188BIは、デュアル波長技術を利用して煙を検出します。2つの内蔵LEDからは470nm(青色光)および850nm(赤外線)の、2種類の波長の光が放射されます。これらLEDは、独立した2種類のタイム・スロットで点滅し、透過光は空気中に浮遊する粒子状物質によって後方錯乱され、デバイスに戻ってきます。

内蔵された2つの光検出器が、散乱した光を受信して出力電流の比例レベルを生成し、AFEによって内部でデジタル・コードに変換されます。LEDの光パワーが一定に保たれると仮定して、ADPD188BIの出力値が時間に対して増加する場合、空気中の粉塵が増加または蓄積していることを示します。
UL-217煙・火災試験用アルゴリズム
UL-217規格では、所定の制限時間および掩蔽状況において、検出器が様々なタイプの火災や煙にも反応できるよう義務付けています。表1は、UL-217に基づく個々の試験で義務付けられている、感度および応答時間をまとめたものです。発注なども含めた詳細については、アルゴリズムおよびデータのページをご覧ください。
燃焼条件 | アラーム時間仕様1 | アラーム掩蔽仕様1 |
木材の燃焼 紙の燃焼 ポリウレタンの燃焼 ポリウレタンの燻焼 木材の燻焼 ハンバーガー焼け焦げ試験 |
試験プロファイル移行まで4分未満 試験プロファイル移行まで4分未満 試験プロファイル移行まで4分未満 N/A N/A N/A |
N/A N/A 5%/フィート到達以前 12%/フィート到達以前 10%/フィート到達以前 1.5%/フィート到達以降 |
1 N/Aは該当なし。
CN-0537リファレンス設計の場合、ADPD188BIによる青色光および赤外線(IR)出力データを煙検出アルゴリズムを通して分析することによって、本仕様を満たしています。
このアルゴリズムはADPD188BIセンサー・アレイに特化したもので、UL-217仕様の規定に従って、火災条件検出中の消費電力を最小限に抑えるよう設計されています。アルゴリズム自体は、表1で示した全テスト・シナリオを網羅する形で、多数のADPD188BIデバイスから収集された、大規模なデータ・セットを使って調整および検証されています。テストは、UL-217試験環境を専門的に扱う認証取得機関で実施しています。これらデータ・セットには、様々な煙発生源でセンサーの性能やアラーム条件を把握するための、リファレンス測定値が含まれます。煙プロファイルの例を、図3で示しています。IRセンサと青色光センサーの測定値を、「ハンバーガー焼け焦げ(Hamburger Nuisance)」シナリオの煙掩蔽リファレンス・データと比較しています。
煙検出器では一般的にバッテリ駆動デバイスが使われるため、センサーへのデータ要求件数およびアラーム決定時の計算数を最小限に抑えるよう、アルゴリズムを作成しています。ADPD188BIでは、このアルゴリズムによってデータ出力量を抑えられるため、マイクロコントローラの消費電力を節約し、消費サイクルを減らしながらも、厳格なUL-217仕様への適合を実現しています。

パワー伝送比の計算
ADPD188BIによる煙応答は、受信した光パワーと送信される光パワーの比として、最もよく表現されます。パワー伝送比(PTR)と表現されるこのパラメータは、実際に使用したハードウェア設定からは独立した値となるため、生の出力コードよりも多くの意味を持っています。更に、図1で示しているように、掩蔽レベル(煙検出器による測定の標準単位)はPTRと直接関係しています。
ここで、
PTRはパワー伝送比(単位:nW/mW)。
γは、ADPD188BIのスケーリング・ファクタ(青色光の代表値 = 0.64、赤外線の代表値 = 0.24)。
βは、ft1における掩蔽レベル。

個々のLEDにおけるPTRは、式2を使用して算出できます。
ここで、
PTRは、LEDのパワー伝送比(単位:nW/mW)。
IPDは、光検出器の電流(単位:nA)。
ILEDx_PKは、ピークLED電流(単位:mA)。
RPDは、光検出器の応答性(単位:A/W。青色光の代表値 = 0.26、赤外線の代表値 = 0.41)。
ηLEDxは、LEDの効率(単位:W/A)。
ILEDおよびIPDの計算
ADPD188BIでは、コース/微調整レジスタおよび 電流スケール・ファクタの組み合わせを介して、LEDごとにピーク電流を構成できます。LEDのピーク電流は、式3~式6を使用して計算できます。
ここで、
ILEDx_PKは、ピークLED電流(単位:mA)。
ILEDx(COURSE)は、コースLED電流(単位:mA)。
ILEDx(FINE)は、LED微小電流(単位:mA)。
ILEDx(SCALE)は、LED電流スケーリング(単位:mA)。
ILEDx_COURSE、ILEDx_FINE、ILEDx_SCALEは、個々のLEDコントロール・レジスタ用の値です。内蔵の青色光LEDの場合、これらはレジスタ・アドレス0x23およびレジスタ・アドレス0x25で設定できます。内蔵の赤外線LEDの場合、これらはレジスタ・アドレス0x22およびレジスタ・アドレス0x25で設定できます。ADPD188BIレジスタでは、青色光LEDはLEDX1、赤外線LEDはLEDX3となることに留意してください。
式7で示したように、光検出器の電流はADPD188BIのデジタル出力を使用して計算します。
ここで、
IPDは、光検出器の電流(単位:nA)。
Codeは、32ビット出力コード(単位:LSB)。
Qは、ADCの分解能(単位:nA/LSB)。
PULSE_COUNTは、タイム・スロットのLEDパルス数。
ADPD188BIのADC分解能は、LEDパルス幅の設定(タイム・スロットAの場合はレジスタ0x30、タイム・スロットBの場合はレジスタ0x35)および内蔵トランスインピーダンス・アンプ(TIA)のゲイン(レジスタ0x55)設定に応じて変化します。TIAゲイン値を変えた場合のADC分解能については、ADPD188BIデータシートを参照してください。
LED効率の計算
内蔵LED(ηLEDx)の効率は、式3を使用して計算できます。
ここで、
ηNは、LEDの公称効率(単位:W/A。青色光LEDの場合 = 0.38、赤外線LEDの場合 = 0.22)。
kは、LEDのディレーティング係数(青色光LEDの場合、式4を使用して計算。赤外線LEDの場合、k = 1.0)。
C は、デバイス間の差を補償するためのスカラー値。
赤外線LEDの場合とは異なり、青色光LEDの効率は駆動電流の増加に応じて、非線形的に低下します。そのためディレーティング係数は、まず式4を使用して計算する必要があります。
ここで、
A0 = 9.8976 × 10− 1
A1 = −5.1448 × 10−3
A2 = 2.0287 × 10− 5
A3 = −2.9645 × 10−8
ADPD188BIのゲイン・キャリブレーション値読出し
式8で示したように、ADPD188BIのスカラー値はデバイスごとの差異を補償します。これは、個々のLEDのゲイン・キャリブレーションであり、式10~式16を使用して計算できます。
青色光LEDの場合
赤外線LEDの場合
LEDの温度補償
ADPD188BIの全ループ応答は、周囲温度により影響を受けます。青色チャンネルの場合、LED消費電流量に応じて、温度応答曲線の形状が異なる可能性があるため、周囲温度による影響はより複雑なものとなります。図5は、ADPD188BIの動作温度範囲全体にわたる、相対出力応答に対する温度の影響をグラフにしたものです。赤外線LEDの共通設定には100mAを、青色光LEDには175mAを使用します。赤外線チャンネルの場合、温度応答曲線はLED電流の影響を受けません。

相対応答の値を算出するには、周囲温度をリアルタイムで測定する機能が必要です。CN-0537では、温湿度センサーによってADPD188BIに隣接するチャンバ内部の状態を監視します。その後、ADPD188BIの出力を、図5のうち該当するグラフから求めた、現在の周囲温度における相対応答で除算することによって、温度による影響を補償できます。
ここで、
Relative ResponseTは、現在の周囲温度における相対応答です。
CodeTは、現在の周囲温度における出力コードです。
Code25°Cは、温度25°Cにおける出力コードです。
チャンバ内のスペースは限られているため、センサーを選択する際、部品サイズを第一に考える必要があります。このリファレンス設計における、デフォルト・センサーの温湿度の精度定格は、温度が±0.2°Cで、相対湿度が±2%です。
スモーク・チャンバをADPD188BIと使用する
市場で入手可能な煙検出器ソリューションの大部分は、周辺光を除去し、内部的な光害を減少させ、昆虫やクモが測定値に干渉するリスクを最小限に抑えるため、スモーク・チャンバを使用しています。ADPD188BIではスモーク・チャンバを使用することで、測定時に現れるチャンバ表面からの光散乱によるバックグラウンド・シグナルが一定に保たれます。測定時の深刻な誤差発生を防ぐためにも、バックグラウンド・シグナルのレベルをアラーム閾値以下に保つことが重要です。
ADPD188BIからチャンバへの応答は、煙応答に加えてパワー伝送比(PTR)でも表現可能であり、デバイスのPTRデータを解釈する際に考慮する必要があります。
ここで、
PTRTOTALは、合計パワー伝送比(単位:nW/mW)。
PTRCHAMBERは、チャンバ表面内側から受信した光パワーと、送信される光パワーの比(単位:nW/mW)。
PTRSMOKEは、送信される光パワーを散乱させる煙粒子から受信した光パワーの比率(単位:nW/mW)。
ADPD188BIは、デバイスに課される条件や業界における諸条件を満たすよう設計された、アナログ・デバイセズ独自のスモーク・チャンバを使用します。このスモーク・チャンバ内部の形状によって、最高のS/N比(SNR)測定値を実現でき、これによって、ADPD188BIのPTR値を最適にすることができます。
機械的設計は、JESD22-A101、JESD22-A103、JESD22-A104、UL-217、UL-268、EN-54、AEC-Q100などの業界規格において仕様規定されたストレス・テストを使用して、認証を取得しています。ディスクリート型の煙検出器に対するADPD188BIのサイズはかなり小さいため、チャンバもほとんどの既存のソリューションに対して、かなり小さくなります。設計上、2つある大きなフランジの両端を測るとわずか36mmで、内部下方には109.36mm2ものスペースが残ります。
従来型の煙検出器で使用している前方散乱システムとは対照的に、ADPD188BI内蔵の光エレクトロニクスは後方散乱システムを採用しているため、従来のスモーク・チャンバ設計にはADPD188BIとの互換性がありません。
加熱による結露防止
回路設計においては、結露がADPD188BIの測定値に及ぼす影響についても考慮する必要があります。チャンバの内側表面に露や結露が形成されると、光の散乱を起こす場合があります。システムはこうした光の散乱を、煙として認識します。高湿度の熱帯地域では、結露がごく当たり前に発生するため、このような原因による光の散乱が特に問題になります。
結露による影響を減らすため、光学モジュールの周囲には、必要に応じて結露を防止できるよう、十分な熱を放出する加熱抵抗器が配置されています。結露防止用の抵抗器を選択する際は、温度上昇の許容範囲と、電源から取り込む電流との兼ね合いを考慮する必要があります。
この加熱ブロックによって、設計上のシステムの合計消費電力が大幅に上昇することに留意してください。抵抗値を下げると生成される熱量は増加しますが、より多くの電源電流が必要になります。バッテリ電源システムの場合はバッテリー寿命が短くなる原因となるため、設計時にはこの点も考慮する必要があります。
CN-0537リファレンス設計では、3つの25 Ω抵抗器を並列に組み合わせて使用しているため、温度上昇範囲は10°C~20°Cとなります。マイクロコントローラ・ボードはトランジスタ・スイッチによって、パルス幅変調された(PWM)出力または汎用の入出力(GPIO)ピンを介して加熱回路ブロックを作動させます。
システム・パワー・マネージメント電源の管理
CN-0537への電源は、コントローラ・ボードからArduino(アルドゥイーノ)フォームファクタ・コネクタを介して供給され、回路内で作動しているデバイスの大部分は、3.3Vおよび5V電源から直接電力を供給されます。ただし、ADPD188BIを正しく動作させるには、1.8Vおよび6Vの供給電圧が必要になります。
ADPD188BIへの電力供給に必要な1.8Vを生成するには、ADP151に3.3Vの安定化電源を供給する必要があります。このCMOSリニア電圧レギュレータの入力電圧範囲は2.2V~5.5V、最大出力電流は200mAです。ADP151の出力電圧は、デバイス製造時には1.8Vに固定されており、回路設計の動作に必要となるのは入出力コンデンサのみであるため、回路設計を大幅に簡略化できます。
同様に、ADPD188BIに内蔵されている青色光LEDへの電力供給に必要となる6V電圧を生成するため、図12で示したような形で実装された、超低消費電力ブースト・コンバータLT8410 には、5V電源が供給されます。
LT8410のレギュレーション出力は、正帰還ピン(FBP)の電圧レベルと直接関連しています。目的とするレベルのVOUTを生成するために必要となるVFBPレベルは、式18を使用して計算します。
ここで、
VFBPは、FBPピンとGND間の電圧(単位:V)。
VOUTは、必要となる出力電圧(単位:V)。
出力電圧が6Vの場合、式18で得られるVFBPは約0.1884Vとなります。この電圧レベルに到達するため、LT8410は図12で示したように、リファレンス電圧1.235Vの単純な分圧器を内蔵しています。分圧器用の抵抗器を選択する際は、VREFピンに負荷がかからないよう、直列抵抗値が200kΩより大きくなるようにしてください。
LT8410データシートで推奨しているように、入出力ピンに使用するコンデンサは、入力が2.2μF、出力が1μFとなっています。CAPピンおよびVREFピンには、0.1μFコンデンサを使用しています。
インダクタの選択に関して、LT8410のデータシートでは、最低でも45μH以上、定格飽和電流がピーク・インダクタ電流よりも大きいインダクタを推奨しています。最大ピーク・インダクタ電流は、式19を使用して計算します。
ここで、
IPKは、ピーク・インダクタ電流(単位:mA)。
ILIMITは、スイッチ電流の制限値(単位:mA)。
VINは、入力電圧(単位:V)。
Lは、インダクタンス(単位:H)。
この設計では100μHのインダクタを使用しました。この値を式に代入すると、入力電圧5Vおよび最大スイッチ制限電流30mAでのインダクタのピーク電流は、37.5mAとなります。
LT8410回路の最大出力電流は、式20~式23を使用して計算します。
ここで、
IRIPPLEは、インダクタのリップル電流(単位:mA)。
IIN(AVG)は、LT8410の平均入力電流(単位:mA)。
IOUT(NOM)は、公称出力電流(単位:mA)。
IOUTは、最大出力電流(単位:mA)。
これらの式に、インダクタンス100μHおよびピーク・インダクタ電流37.5mAを代入すると、入力電圧5Vおよび代表的なスイッチ制限電流25mAでの最大出力電流は、14.23mAとなります。このLT8410回路を、負荷電流範囲にわたってLTspice®でシミュレートした結果、図13で示した効率線図が得られました。
個々のLEDについて、ADPD188BIがADP151およびLT8410の回路から必要とする電源電流量は、式24を使用して計算します。
ここで、
ILED_AVE_xは、タイム・スロットAまたはタイム・スロットBにおける、LEDの平均電源電流(単位:mA)。
SLOTx_LED_WIDTHは、タイム・スロットAまたはタイム・スロットBにおける、青色光LEDのパルス幅(単位:秒)。
ILEDx_PKは、ピーク電流(単位:mA。式3~式6を使用して計算)。DRは、出力データ・レート(単位:Hz)。
PULSE_COUNTは、タイム・スロットAまたはタイム・スロットBのLEDパルス数。
バリエーション回路
煙検出アルゴリズムに湿度検出機能が不要な場合は、ADT7302 デジタル温度センサーを使用できます。ADT7302は小型であるためチャンバ内に設置でき、精度は2°C、分解能は0.03125°Cですが、デフォルト・センサーの数分の一のコストで入手できます。
回路の評価とテスト
以下のセクションでは、CN-0537を評価する際の一般的なセットアップについて簡単に説明します。セットアップ方法の全容や、その他の詳細な説明についてはEVAL-CN0537-ARDZのハードウェア・ユーザ・ガイドを参照してください。
必要な装置
- EVAL-CN0537-ARDZ
- EVAL-ADICUP3029
- Micro SDカード
- micro USB - USBタイプA変換ケーブル
- USBポートのある、パソコンまたはノートパソコン
- シリアル・ターミナル・アプリケーション
- CN0537.hexファイル
セットアップとテスト
CN-0537にはシステム評価用に、実証アプリケーション・ソフトウェアが付属しており、ユーザーはEVAL-ADICUP3029開発プラットフォームを使用して、オンボードのADPD188BIと通信できます。このソフトウェアを使用するには、以下の手順を実行します。
- EVAL-CN0537-ARDZのハードウェア・ユーザ・ガイドから、CN-0537実証アプリケーション・ソフトウェア(*.hex)ファイルの最新バージョンをダウンロードします。
- EVAL-ADICUP3029をコンピュータに接続します。コンピュータの画面では、ボードは外部DAPLINKドライブとして表示されます。
- HEXファイル(*.hex)をDAPLINKドライブにドラッグアンドドロップして、CN-0537実証アプリケーション・ソフトウェアをEVAL-ADICUP3029にアップロードします。
- コンピュータで、シリアル・ターミナル・プログラムを実行します。
- シリアル・ポートを、EVAL-ADICUP3029に割り当てられたポートに設定します。
- EVAL-CN0537-ARDZのP5ポートに、micro SDカードを挿入します。
- Arduino(アルドゥイーノ)フォームファクタ・コネクタを介して、EVAL-CN0537-ARDZをEVAL-ADICUP3029に接続します。
- EVAL-ADICUP3029のS1プッシュボタン(3029_RESETと表示)を押します。シリアル・ターミナルには起動時のバナーが表示され、ユーザの入力待ちの状態になります。
- データ・ストリームを開始するには、「s」というコマンドを入力します。
- ソフトウェアが青色光と赤外線に関する応答状況の取得を開始して、シリアル・ターミナルのPTR値に表示します。
- データ・ストリームを終了するには「i」というコマンドを入力します。
シリアル・ターミナルにプリントされたファイルのコピーを取得するには、micro SDカードをEVAL-CN0537-ARDZから取り出して、コンピュータを使ってファイルの内容を読み出します。データ・ストリームの内容は、「.csv」ファイルとして保存されます。
セットアップ方法の全容や、その他の詳細な説明については、EVAL-CN0537-ARDZのハードウェア・ユーザ・ガイドを参照してください。