概要

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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CN0346-PMDZ ($105.93) Relative Humidity Measurement System
  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
  • SDP-PMD-IB1Z ($64.74) PMOD to SDP Interposer Board
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

AD7746 GitHub Linux Driver Source Code

AD7746 GitHub no-OS Driver Source Code

機能と利点

  • 完全非接触相対湿度測定
  • 小さなPCBフットプリント

回路機能とその特長

図1に示す2つのチップで構成された回路は無接点型の容量式相対湿度(RH)測定のソリューションです。0% RHから100% RHまで2%の精度で相対湿度を測定します。これにより、サイズの大きい湿度計を使用する必要がなくなります。この回路は、HVAC、通信用キャビネット、保育器、その他の産業用または医用アプリケーションなど、温度管理下での正確な無接点型湿度測定が必要なアプリケーションに最適です。

周囲環境の相対湿度が変化すると、容量センサーの誘電率も変化します。たとえば、この回路に使われているInnovative Sensor Technology社のP14-W容量センサーは、トップ電極、ポリイミド層、ボトム電極で構成されており、0.25 pF/% RHの感度と1.5% RHの直線性を持ちます。

湿度センサーの出力は、 AD7745 24ビット・シグマ・デルタ(ΣΔ)容量デジタル・コンバータ(CDC)によってデジタル化されます。2線式のI2C対応インターフェースにより、内部設定レジスタとデータ変換部にアクセスできます。

オフセット電圧が非常に低く(65 μV)、信号帯域幅の広い(20 MHz超)AD8615 レールtoレール・アンプは、ユニティゲイン・バッファとして機能し、適切な駆動信号をセンサーに提供します。

図1. 容量センシングによる湿度測定システム(簡略図:接続とデカップリングはすべて省略)

 

回路説明

RHは、空気中の水蒸気量を、特定の温度で空気中に含有できる最大水蒸気量のパーセンテージで表わした値です。温度と圧力の影響を考慮した測定値であるため、相対湿度は重要です。

湿度計はRHの測定に使われる従来型の装置で、金属と紙のコイル、人の毛髪、乾湿計によるものなど、時を経て数多くの形態をとってきました。現代の電子湿度計は、経年変化、結露、急激な温度変化などの影響を受けにくい容量性素子を使用しています。

容量センサーでは、ポリマー層や金属酸化物層が湿度の変化を受けると誘電率が変化します。容量センサーは、一般に数秒間で湿度の変化に反応します。


湿度センサーの特性

図1に示す回路では、Innovative Sensor Technology社のP14-Wシリーズ容量センサーを使用しています。バルク容量、感度、温度、直線性、ヒステリシスは、センサーの重要なスペックです。

センサーの代表的なバルク容量は30% RHで150 pF ± 50 pFです。このコモンモード容量は相対湿度測定値には影響しませんが、容量デジタル・コンバータに接続するには特別な回路が必要です。

容量性素子の感度は相対湿度の測定値を決定します。感度は相対湿度が1%変化した時の容量の変化であり、2つの異なる相対湿度値における容量を測定し、RHの変化(%)で割ることによって求めます。

CN0346_Image1

P14-Wの代表的な感度は0.25 pF/% RHです。

CN0346_Image2

以下の式と係数(Innovative Sensor Technology P14-Wのデータシートによる)を使用して、特定の相対湿度条件におけるセンサーの温度依存性を計算します。

CN0346_Image3

where:

B1 = 0.0014/°C
% RH = 42%
B2 = 0.1325%
RH/°C T = 23°C
B3 = −0.0317
B4 = −3.0876% RH
TDEPEND = −0.0191% RH.

温度が23°Cの場合は、42% RHの計算に−0.0191% RHの変化が生じます。計算した% RHにこの値を加えることで、センサーの温度依存性を補正します。

Innovative Sensor Technology P14-Wシリーズの直線性とヒステリシスは±1.5% RHです。


相対湿度の計算

相対湿度は、容量Cと温度Tの測定値から次のように計算します。

  1. 容量測定値からバルク容量を引きます。
  2. 感度で割ります。
  3. 計算した値に基準湿度を足します。
  4. 温度依存性TDEPENDを計算します。
  5. ステップ3の結果にTDEPENDを足します。

たとえば、容量センサーの測定値が温度T = 23°CでC = 153 pFで、以下の理論的特性を備えているものとします。

  • バルク容量= 150 pF(30% RH時)
  • TDEPEND = −0.0191% RH
  • 感度 = 0.25 pF/% RH
  • 基準点 = 30% RH, 23°C

以上の説明と以下の式に従って相対湿度を計算します。

CN0346_Image4

相対湿度測定における温度依存性の計算方法は、選択した湿度センサーによって異なります。したがって、正しい式を決定するにあたっては、必ずデータシートを参照する必要があります。


容量-デジタル・コントローラ(CDC)

24ビットのAD7745 CDCは、図2に示すように、スイッチド・キャパシタ電荷平衡回路を使用することによって容量を測定します。スループット・レートは10 Hz~90 Hzです。

図2. シングルエンド容量センサー実装

 

電荷は電圧と容量の積(Q = V ×C)に比例し、変換結果は入力センサー容量(CSENS)と内部基準容量(CREF)の比を表します。励起電圧(EXC)と内部基準電圧(VREF)は既知の固定値です。

測定するCSENSは、励起信号源とΣΔモジュレータ入力を接続します。変換中は32 kHzの矩形波励起信号がCSENSに加えられ、CSENSを通過する電荷をモジュレータが連続的にサンプリングします。デジタル・フィルタは、1と0のストリームであるモジュレータ出力を処理します。変換値は、ビットストリームの1の密度に含まれています。デジタル・フィルタからのデータはスケーリングされ、キャリブレーション係数を掛けたうえで、シリアル・インタフェースからデータを読み出します。


入力範囲のスケーリング

AD7745で入力容量を測定するにあたっては2つの制約があります。第一に、ダイナミック・レンジは±4.096 pFですが、多くの容量式湿度センサーのダイナミック・レンジはこれより大きくなります。第二に、CDCの最大コモンモード容量は21 pFです。しかし、多くの湿度センサーのバルク容量はこれより大きい値です。

AD7745は、内部7ビット・コンデンサDAC(CAPDAC)のレジスタを設定することによって、入力コモンモード範囲をオフセットさせることができます。CAPDACは、CIN1±ピンに内部的に接続された負の容量として機能します。これにより、コモンモード容量を代表値である21 pFまでとすることができます。

CSENS内での電荷移動をAD7745の入力範囲内に収めるために、図1に示す範囲拡大回路を追加します。そのために励起電圧を1/Fに低減し、センサー容量をF倍に増大できるようにします。


範囲拡大係数の計算

範囲拡大係数を計算するには、AD7745の2つの独立した励起信号源(EXCAとEXCB)を、EXCBがEXCAの逆数となるように設定する必要があります。抵抗R1とR2を図1に示すように接続すると、得られる範囲拡大係数Fは、AD7745のEXCA~EXCB間の差動励起電圧(VEXCA/VEXCB)と、AD8515オペアンプの正入力における減衰励起信号(VEXCS)の比になります。範囲拡大係数は次のように計算します。

CN0346_Image5

減衰励起電圧VEXCSの平均電圧はVDD/2です。AD8515オペアンプは低インピーダンス・バッファとして機能し、AD7745がサンプリングを開始した時にCSENSが完全に充電されるようにします。

センサーのバルク容量は最大200 pFになることがあり、AD7745コモンモード容量の最小値は17 pFです。これによって必要な範囲拡大係数(FCM)が得られます。その値は次のとおりです。

CN0346_Image6

次式によりセンサーのダイナミック・レンジを計算します。

CN0346_Image7

このダイナミック・レンジに必要な範囲拡大係数(FDYN)は、次式により計算します。

CN0346_Image8

これらの計算は、センサーのバルク容量が範囲拡大係数を決定するパラメータであることを示しています。したがって、以後の計算にはF = 11.76を使用します。


抵抗値の選択

必要な範囲拡大係数が得られるようにR1とR2の値を選択します。R1は100 kΩとしました。抵抗R2の値は計算で求め、切り下げにより標準E96シリーズの最も近い値にしました。

CN0346_Image9

ここで、

R1 = 100 kΩ
F = 11.76
R2 = 118.58 kΩ.

誤差1%以下の抵抗を使用してください。どちらかの抵抗(R1またはR2)の値がわずかでも変化すると、範囲拡大係数が大きく変化します。R1の抵抗値を100 kΩ、R2の抵抗値を118 kΩとすると、範囲拡大係数は次のようになります。

CN0346_Image10


CAPDACを使用したコモンモード容量の除去

AD7745の容量性入力は、入力範囲がシングルエンド・モードで0 pF~4.096 pF、差動モードで±4.096 pFとなるように工場でキャリブレーションされています。AD7745はCAPDACを内蔵しており、入力コモンモード容量を調整することができます。 CAPDACは、CIN1±ピンに内部的に接続された負の容量として機能します。CAPDACは2つあり、1つはCIN1(+)に、もう1つはCIN1(−)に接続されています。 CAPDACの分解能は7ビットで、フルスケール値は21 pF ± 20%です。

図1に示すシングルエンド湿度検出素子の例に必要なCAPDAC設定を計算します。以下に示す10進コード値に相当する17 pFのコモンモード容量に合わせてCAPDACを設定します。

CN0346_Image11


テスト・セットアップ

CN-0346システムの正しいセットアップとキャリブレーションが完了後、テスト・データがとれるようになります。まず、高精度LCRメータ(HP4284A)にアクセスできる湿度を管理したチャンバ内にEVAL-CN0346-PMDZプリント回路基板(PCB)を置きます。LCRメータは、あらゆる容量計算と、センサーの実際の容量値を相互に関連付けます。容器からは、各PCB用に2組のワイヤが出ています。最初のワイヤ・セットはI2Cデジタル通信用です。2組目のワイヤ・セットを使用すればLCRメータによってセンサーの容量を直接測定できますが、これはEVAL-CN0346-PMDZに電源を接続していない場合に限られます。

ベンチ・テスト・セットアップでのデータ収集に使用するブロック図を図3に示します。

図3. ベンチ・テストのブロック図

 

次に、2つの湿度レベル(5% RHと95% RH)において、AD7745を使用してチャンバー内の温度を、LCRメータを使用してセンサーの容量を測定します。さらに、これら2つのキャリブレーション・ポイントを使ってセンサーの感度を計算します。

CN0346_Image12

CalculationsタブにあるRelative Humidity Calculationの該当フィールドに感度を入力します(図4を参照)。10% RHキャリブレーション・ポイントを使い、C_BULKフィールドとRH_REF(%)フィールドに値を入力します。

最後に必要なCAPDACコモンモード値を計算して、図5に示すようにCAPDACフィールドに入力します。

以上でCN-0346システムの準備と計算は完了です。Click to Sampleをクリックすると、Capacitance CalculationウィンドウのC_CALCフィールドにセンサー容量が表示されます。サンプルを収集しながら湿度を変化させて、相対湿度計算の変化を確認してください。

図4. CN-0346評価用ソフトウェアのスクリーンショット(Calculationsタブ)

 

図5. CN-0346評価用ソフトウェアのスクリーンショット(Calibrationタブ)

 


テスト結果

すべてのテスト・データは、図6に示すように、密封容器内にBovedaパック(Boveda, Inc.)と3枚のEVAL-CN0346-PMDZ PCBを設置することによって収集しました。Bovedaパックには純水と塩で作られた特別な溶液が入っており、密封容器内の湿度を、定められた特定の相対湿度±2.5%に保つことができるように設計されています。

図6. データ収集ベンチ・テスト・セットアップ

 

図7は、全相対湿度範囲における相対湿度誤差です。

図7. 相対湿度測定誤差

 


プリント回路基板のレイアウトに関する留意事項

高精度が要求される回路では、基板上の電源とグラウンド・リターンのレイアウトを十分に考慮する必要があります。まず、プリント基板上のアナログ部とデジタル部はできる限り分離してください。このシステムの基板は、大面積のグラウンド・プレーン層や電源プレーン・ポリゴンの4層が積載された構成となっています。レイアウトとグラウンディングに関する詳細は MT-031チュートリアル を、デカップリング技術に関する情報については MT-101チュートリアル をご覧ください。

適切なノイズ抑制とリップル軽減のために、1 μFと0.1 μFのコンデンサを使用してすべてのICの電源をデカップリングしてください。また、コンデンサはできるだけデバイスの近くに配置してください。あらゆる高周波数デカップリングにはセラミック・コンデンサを使用することを推奨します。

電源ラインはできるだけ太いパターンにして低インピーダンスの経路とし、電源ライン上のグリッチによる影響を軽減させる必要があります。クロックその他の高速スイッチング・デジタル信号は、デジタル・グラウンドに接続させ、基板の他の部分からシールドしてください。このプリント回路基板を図8に示します。

この回路ノート用のフルセットの設計支援パッケージについては、 www.analog.com/CN0346-DesignSupportをご覧ください。

Figure 8. Photo of the EVAL-CN0346-PMDZ PCB

 

バリエーション回路

容量センシングは、近接センサーの実装にも利用できます。基本的な近接センサーはレシーバとトランスミッタからなり、それぞれが基板の各層に形成された金属トレースで構成されています。AD7745は励起信号源を内蔵しており、これをセンサーのトランスミッタ・トレースに接続します。レシーバとトランスミッタのトレース間には電界が生成されます。ほとんどの電界は、センサー基板のこの2つの層の間に集中します。しかし、フリンジ電界はトランスミッタから基板の外部に広がり、レシーバ背面まで達します。レシーバでの電界強度は内蔵Σ-ΔCDCで測定します。人間の手がフリンジ電界内に入ると電気的環境が変化し、電界の一部はレシーバに達することなくグラウンドに流れます。結果として容量が減少し(電界全体がピコファラドの規模の場合はフェムトファラドの単位)、コンバータによって検出されます。

回路の評価とテスト

この回路は、EVAL-SDP-CB1Zシステム・デモンストレーション・プラットホーム(SDP)評価用ボードと、EVAL-CN0346-PMDZボードを使用しています。2つのボードには、迅速な回路のセットアップと性能評価を可能にする120ピン・コネクタがあります。

この回路ノートに示すように、EVAL-CN0346-PMDZボードには評価対象回路が含まれています。EVAL-SDP-CB1Zは、CN-0346評価用ソフトウェアとともに使用し、EVAL-CN0346-PMDZのデータを取り込みます。SDP/PMDインターポーザ・ボード(SDP-PMD-IB1Z)は、図3に示すように、EVAL-CN0346-PMDZボードをEVAL-SDP-CB1Zボードに接続するために使用します。


必要な装置


以下の装置が必要です。

  • EVAL-CN0346-PMDZ評価用ボード
  • EVAL-SDP-CB1Z評価用ボード
  • SDP/PMDインターポーザ・ボード(SDP-PMD-IB1Z)
  • CN-0346評価用ソフトウェア
  • Windows® XP、Windows® Vista(32ビット)、またはWindows® 7(32ビット)搭載のUSBポート付きPC
  • 容量式湿度センサー、Innovative Sensor Technology P14-W(EVAL-CN0346-PMDZボードに含む)
  • 6 V(100 mA時)電源
  • 6 V ACアダプタ
  • 湿度管理されたチャンバ


測定の準備


PCにCN-0346評価用ソフトウェアCDを挿入して、評価用ソフトウェアをロードします。マイ・コンピュータを使用して評価用ソフトウェアCDがあるドライブを探し、Readmeファイルを開いてください。Readmeファイルに示されている説明に従い、評価用ソフトウェアをインストールして使用します。


機能ブロック図


テスト・セットアップのブロック図は図3を、回路図についてはEVAL-CN0346-SDPZ-SCH-RevX.pdfファイルをご覧ください。このファイルは、CN-0346設計支援パッケージに含まれています。


セットアップ


EVAL-SDP-CB1Zの120ピン・コネクタをSDP-PMD-IB1Zボードに接続します。120ピン・コネクタの末端にある穴を利用し、ナイロン製ハードウエアを使って2枚のボードをしっかり固定してください。EVAL-CN0346-PMDZを、SDP-PMD-IB1ZボードのコネクタJ2に接続します。

電源オフの状態で、6.0 V DCバレル・ジャックをSDP-PMD-IB1ZボードのコネクタJ1に接続します。さらに、EVAL-SDP-CB1Z付属のUSBケーブルをPCのUSBポートに接続します。電源オフの状態で、6 V電源をEVAL-CN0346-PMDZ評価用ボードのJ5コネクタに接続します。この時点では、まだUSBケーブルとSDPボード上のミニUSBコネクタを接続しないでください。

セットアップしたもの全体を湿度管理された密封チャンバに入れます。必要に応じて、検出素子だけを対象環境内に置くこともできます。外付けの湿度計やその他のキャリブレーション済み湿度センサーを、CN-0346評価用ソフトウェアからの出力データのキャリブレーション用または検証用の基準点として使用することもできます。


テスト


SDP-PMD-IB1ZボードのコネクタJ1に接続したバレル・ジャックの電源をオンにします。EVAL-CN0346-PMDZボードのJ5コネクタの電源をオンにします。CN-0346評価用ソフトウェアを起動して、PCのUSBケーブルをEVAL-SDP-CB1ZのミニUSBコネクタに接続します。

USB通信を確立したら、EVAL-SDP-CB1Zボードを使用してEVAL-CN0346-PMDZのシリアル・データの送信、受信、取り込みができます。

EVAL-SDP-CB1Zに関する情報は「SDPユーザー・ガイド」に記載されています。テスト・セットアップとキャリブレーションについての情報と詳細、およびキャリブレーション用ソフトウェアを使用してデータを収集する方法については、「CN-0346ソフトウェア・ユーザー・ガイド」をご覧ください。