汎用0~1Vアナログ乗算器を使用してバッテリ駆動アプリケーション用の高精度パワーマネージメントを保証

要約

一部のアプリケーションでは、負荷に供給される電力(電圧および電流)の測定は、従来の電流検出アンプで単に電流を測定するよりも重要です。特に、負荷電力の測定によって、バッテリまたはACアダプタによって駆動可能なバッテリ駆動デバイスなど、アプリケーションの高精度パワーマネージメントが可能となります。このアプリケーションノートは、0~1V範囲の2個の入力信号を乗算し、高精度な負荷電力の測定を保証するシンプルな(MAX4210D/E/Fから)アナログ乗算器を作成する方法について示します。

負荷電力測定の重要性

負荷電力の測定は、回路(負荷)全体がリチウムイオン(Liイオン、Li+)バッテリパックまたはバッテリ自身の充電に使用されるACアダプタのいずれかによって給電されるノートブックコンピュータなどのアプリケーションの場合に重要となる可能性があります。電源電圧が電圧ソースごとに異なるため、負荷の電流も異なります。標準的な場合では、ACアダプタは16Vを供給し、バッテリパックは3個のLiイオンバッテリを合成して約12.6V (完全充電の場合)および9V (寿命が近い場合)の電源電圧を供給することができます。

回路の電力を高精度に管理するためには、負荷の電流を測定するだけでは不十分です。それだけでは、電圧ソースのタイプに関する情報が提供されないからです。さらに、一部のポータブルアプリケーションは、マイクロコントローラで利用可能な端子によって制約することができるため、電流と電圧を個別に測定してファームウェアでこれらの2つを乗算するのではなく、電力測定をじかに取得する必要があります。

MAX4210D/E/Fを使用して汎用0~1Vアナログ乗算器を構築

MAX4210D/MAX4210E/MAX4210Fは、真のアナログ乗算器を内蔵したハイサイド電流および電力モニタです。これらのデバイスは、バッテリ電流を0~1Vの入力電圧とじかに乗算することができます。ただし、2個の0~1V信号の間で汎用乗算が必要な場合、入力コモンモード電圧制限(4.5V min)はそれらが使用されるのを防止します。

図1は、0~1Vアナログ乗算器を構築するために、MAX4210D/E/Fがオペアンプ(MAX4477など)、およびnチャネルMOSFETとともにどのように使用されているかを示しています。この回路は、それぞれ最大1Vの2個の独立した入力電圧を乗算することができます。

Figure 1. A generic 1V analog multiplier using the MAX4210D/E/F and MAX4477.
図1. MAX4210D/E/FおよびMAX4477を使用する汎用1Vアナログ乗算器

このアプリケーションノートの目的のため、MAX4210Eを例として使用していますが、MAX4210DとMAX4210Fを使用して汎用アナログ乗算器を構築することもできます。

図1の回路では、電圧入力V1は、オペアンプ、MOSFET、および抵抗R1によって電流に変換されます。その後、抵抗R2がそれをより小さい電圧に変換します。この小さい電圧は、MAX4210Eの差動入力に印加されます。MAX4210Eに印加することができる最大入力検出電圧は150mVです。必要に応じて、R1値とR2値を選択する必要があります(具体的には、R1 = 1kΩ、R2 = 150Ω)。回路全体の電源VCCは5Vです。MAX4210Eは25V/Vの利得を持ちます。したがって、フルスケールの出力値は3.75Vです。

オペアンプは、その入力コモンモード電圧範囲がグランドを含み、その精度がMAX4210Eより優れているように選択する必要があります。25℃のとき、MAX4210Eの総出力誤差は、そのフルスケール出力(FSO)範囲の±1.5%以内です。MAX4477は、pA領域の超低バイアス電流、350µV以下の入力電圧オフセット、および最低90dBのCMRRを備えているため、その誤差寄与は、MAX4210Eの寄与に対し無視することができます。

図2は、第1セットの測定結果のグラフです。ここで、入力V2は0.9Vに一定に維持され、V1は、100mVの増分で、0~1Vの間で変動します。

Figure 2. VOUT versus V1 with V2 = 0.9V.
図2. VOUT 対 V1 (V2 = 0.9V)

計算された利得誤差は0.8%で、総出力誤差はFSOの0.6%です。利得誤差は、理想曲線のスロープに対する、測定スロープと理想曲線スロープ間の差(パーセント表示)として計算されます。各スロープは、リニア条件での2点測定によって決定されます。総出力誤差は、3.75VのFSO値に対する、測定曲線と理想曲線の間の最大差(パーセント表示)です。

図3は、第2セットの測定値のグラフです。ここで、入力V1は0.9Vに一定に維持され、入力V2は、100mVの増分で、0~1Vの間で変動します。計算された利得誤差は0.81%で、総出力誤差はFSOの0.58%です。

Figure 3. VOUT versus V2 with V1 = 0.9V.
図3. VOUT 対 V2 (V1 = 0.9V)

利得誤差と総出力誤差の両方は、両セットの測定値のMAX4210の規格内です。

結論

高精度のパワーマネージメントを実現するために、一部のアプリケーションは、単なる負荷電流監視の代わりに、負荷電力監視を必要とします。負荷電流とソース電圧の両方を監視することができ、MAX4210D/E/Fは、電源電圧がバッテリパックまたはACアダプタによって供給可能なバッテリ駆動アプリケーションに最適です。このアプリケーションノートで提示された回路は、MAX4210D/E/Fを使用し、2個の0~1V信号を乗算して高精度パワーマネージメントを保証することができる汎用アナログ乗算器を構築します。

著者

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Maurizio Gavardoni