DS2784の低電圧保護遅延(tUVD)の理解

要約

電池の過放電を防ぐために、DS2784は低電圧保護を備えています。このアプリケーションノートは低電圧保護遅延(tUVD)がどのようにして起こるかを説明します。

はじめに

DS2784は低電圧保護回路を備えており、電池の過放電を防ぎます。低電圧状態が検出されると、DS2784は充電および放電用のFETをオフにして、保護レジスタのUVフラグを設定します。このアプリケーションノートはDS2784の電圧および温度測定用ADCの機能、およびその機能の低電圧保護遅延(tUVD)との関係について説明します。

説明

DS2784はADCを使用して温度とバッテリ電圧の両方を測定します。ADCの入力は温度と電圧測定を220msごとに切り換えて、2つの信号を多重化します。18.6kHzのサンプル速度で、ADCは220msごとに4092サンプルを獲得し、そのサンプルの平均値をユーザに通知します。温度と電圧測定はそれらの測定周期の最後にあたる440msごとに更新されます。図1はADCの温度と電圧測定の多重化タイミングを示しています。

図1. ADC測定の多重化タイミング。ADCは220msごとに電圧と温度測定を切り替えて440msごとにレジスタを更新します。

図1. ADC測定の多重化タイミング。ADCは220msごとに電圧と温度測定を切り替えて440msごとにレジスタを更新します。

低電圧条件に関してアナログコンパレータや組み込まれた遅延はありません。電圧測定は平均化されるため、本質的に遅延があります。220ms周期の終わりの時点の電圧レジスタ内の電圧がVUVより小さければ保護回路はUV保護モードに入ります。低電圧状態となる応答をユーザが知るために要する時間は、電圧レジスタがADCのサンプル値の平均値に基づくため、大きく変わります。例えば、バッテリ電圧が220msウィンドウの大部分の間VUVを少しだけ上回り、220msウィンドウの最後の少し前にVUVを急激に下回り、そのウィンドウの平均値が低電圧スレッショルドを下回る場合、そのウィンドウの最後に低電圧状態が通知されます(図2)。しかし、バッテリ電圧がVUVを十分に上回り、220msウィンドウのはじめの近くにVUVを少しだけ下回る場合は、そのウィンドウの平均値はVUVを上回ります。この場合、低電圧状態は次の220ms電圧測定ウィンドウの終わりまで、検出されません(図3)。

図2. 最小tUVDの条件。この例では、バッテリ電圧は測定ウィンドウの大部分の時間V<sub>UV</sub>を上回りますが、220msのウィンドウの間の測定された平均電圧をV<sub>UV</sub>未満にするほど、十分に小さく低下する例です。

図2. 最小tUVDの条件。この例では、バッテリ電圧は測定ウィンドウの大部分の時間VUVを上回りますが、220msのウィンドウの間の測定された平均電圧をVUV未満にするほど、十分に小さく低下する例です。

図3. 最大tUVDの条件。この例では、バッテリ電圧がVUVよりも十分に大きいため、電圧が低電圧スレッショルド未満に低下しても、220msの間の平均電圧がVUVを上回ったままです。このように低電圧状態は次の電圧測定ウィンドウまで、定まりません。

図3. 最大tUVDの条件。この例では、バッテリ電圧がVUVよりも十分に大きいため、電圧が低電圧スレッショルド未満に低下しても、220msの間の平均電圧がVUVを上回ったままです。このように低電圧状態は次の電圧測定ウィンドウまで、定まりません。

要約

DS2784のADCは440msごとに220msの平均電圧を通知するため、この回路では低電圧遅延は本質的に存在します。低電圧遅延を作るために、特別に内部回路は不要です。