DN-161: 「スマート・ロック」：マイクロパワー・トランスジューサ

はじめに

「スマート・ロック」は、特定のサイトに埋め込まれた位置検出用デバイスです。これは携帯機器から質問があると、その位置、識別番号、または最後の質問以降に収集されたデータに関する情報を応答します。理想的には、スマート・ロックは一度設置すれば、何年あるいは何十年でもインテロゲータからの質問を待ちます。自然遊歩道に埋め込まれたスマート・ロックが旅行者のハンドヘルド・トランスポンダに識別番号を送り、その識別番号がデコードされて、周囲の名所を説明するメッセージが再生されます。また、分かれ道に出会ったとき、どの道に行けばよいかを旅行者に指示するのにも使えるでしょう。また、スマート・ロックを崖の縁に沿って配置しておき、ブルドーザーなどの乗物に組み込まれたインテロゲータを利用して、縁に近づく前にそれらを停止させる用途も考えられます。

マイクロパワー・サブ回路

発振器

図1はマイクロパワー発振器を実現したLTC^®1440を示します。この回路は、スマート・ロックに必要な電圧と周波数の両方の基準を提供します。バッテリ消費電流はわずか数マイクロアンペアです。

IFアンプ

図2にIFアンプを詳述します。このIFアンプの利得は中心周波数20Hzのとき2500です。アンプにLT1495を選択すれば、わずか2µAの消費電流でこれを行うことができます。

パワー・ドライバ

図3に、LTC1480超低スタンバイ消費電力のRS485トランシーバを示します。スマート・ロックでは、LTC1480を送信モードでのみ使用し、約100mAの電流を供給します。その他の時間、LTC1480はシャットダウンされ、1µAの電流しか流しません。

スマート・ロック・システム

レシーバ

Y1とU1Bによって生成される32kHzの基準周波数（図4に示す）は、U2で11分周されU3Aで2分周されて、1489.5Hzの局部発振周波数を生成します。このLO出力はミキサQ3に印加され、Q1とQ2が完全に導通して、C4とL1は並列共振アンテナとして働きます。ミキサQ3の出力はU5AとU5Bで形成されるIFアンプに供給され、そこで信号は約2500倍に増幅されます。U5Bのピン7の信号が1.2V_P-Pに達すると、Q4がターンオンして、START信号ラインを“L”にします。

トランスミッタ

質問中のトーン・バーストが終わり、IFアンプの出力が1.2V_P-P以下に低下すると、Q4はオフになったままで、R11がC11を充電することができるため、STARTノードの電圧が上昇します。U3Bのクロック・ピンのスレッショルドを超えると、Q出力が“H”、Q信号は“L”になります。D5はC13を素早く放電し、U3BのDピンを“L”にして、U3Bの偽再トリガを防止します。D3はSTART信号を“L”にして、IFの過負荷に起因する送信サイクルの早期終了を防止します。Q1とQ2がターンオフし、C4とL1がU4（パワー・ドライバ）の出力に接続される直列共振回路を形成するようになります。同時にU4がイネーブルされ、直列共振タンク回路にLO周波数をドライブします。R12がC12をU3Bのリセット・ピン（ピン13）のスレッショルドに放電するまで、この送信動作が続きます。リセット・ピン（ピン13）のスレッショルドまで放電したらフリップ・フロップがリセットされます（Q＝3V）。U4がディスエーブルされ、Q1とQ2が導通します。

ブランキング

フリップ・フロップをリセットすると、Q出力が3Vにトグルし、それによってD3がブロキング状態に入り、START信号を強制“L”状態から解放します。R13とC13の遅延がR 1 1 とC 1 1 の遅延より長いので、U 3 Bがオフ状態（Q＝3V、すでに存在する状態）にクロックされ、START信号がクロック・ピンのスレッショルドを通過します。一方、IFアンプの出力は送信の干渉から減衰しています。R13がC13をU3BのDピンのスレッショルドに充電する前に、1.2V_P-Pよりかなり下まで低下します。これによって、次の質問信号の受信が可能になるのを待つ間に、偽トリッピングを防止します。

まとめ

1個のリチウム・セルから電源を供給すると、数年あるいは数十年の間、実社会で重要な機能を実行する回路を簡単に設計できます。リニアテクノロジーは、高精度オペアンプ、コンパレータ、電圧リファレンス、アナログ－ディジタル変換器、ライン・ドライバおよびレシーバなどの豊富なナノパワーIC製品を提供しています。