ラップトップコンピュータにおけるLVDSグラフィックスのスイッチング
要約
ビデオグラフィックスの能力を容易にアップグレードしてきたデスクトップコンピュータと異なり、ラップトップは歴史的にそのようなアップグレードができないでいました。ラップトップ設計の理想は、グラフィックスカードをアドイン機能となるようにすることです。これを可能とするための簡単なソリューションは設計にスイッチを追加して、内蔵のグラフィックスまたはアドインカードのLVDS出力のいずれかを選択することです。MAX4889は2つのLVDSソースを1つの出力に切り替えることができるため、ラップトップ設計用のスイッチとして理想的な選択になります。
長年、ビデオグラフィックスはデスクトップコンピュータにおいてユーザーが自由にアップグレードすることができる機能でした。初期のIBMコンピュータはMGA (モノクログラフィックスアダプタ)またはCGA (カラーグラフィックスアダプタ)のいずれかで構成されていました。ユーザーは同じモデルのコンピュータを選定して、選択したモニタに従っていずれかのグラフィックスカードを選択しました。このような初期のアダプタが発展してVGA (ビデオグラフィックスアレイ)規格になり、モノクロ、または多色または複数のグレイレベルを備えたカラーグラフィックスのいずれかを駆動することができます。
ビデオグラフィックスが非常に進歩したため、GPU (グラフィックスプロセッサユニット)がデスクトップコンピュータにおける最も高度化したプロセッサの1つになりました。このようなプロセッサは小型の完全なシステムに進化して、512MB程度のメモリと非常に高度な浮動小数点処理、およびさまざまなモニタを駆動する複数の出力を備えています。
近年、ラップトップは販売されたユニット数ではデスクトップコンピュータを上回っています。ラップトップのコストは急激に下落し、多くのユーザーはラップトップをデスクトップの代替品と考えています。フルサイズのキーボードを備えた17インチのラップトップはデスクトップの非常に手頃な代替品となっています。家の中にWiFiを備えると、ユーザーはユニットが充電状態になるようにACパワーアダプタをプラグインすることのみが必要で、ワイヤ、キーボード、マウス、およびスピーカはすべて無くなっています。しかし、ハイエンドのラップトップはゲーマーや在宅知的職業者にも使用され、その両方とも大型のスクリーンとフルサイズのキーボードを必要とします。
2007年までは、ほとんどすべてのラップトップコンピュータはグラフィックスを内蔵していました。コンピュータメーカーはグラフィックスを内蔵したローコストユニットか、またはサードパーティ製のグラフィックスをボード上に作りつけたハイエンド機を作りました。サードパーティ製のグラフィックスを内蔵するとシステムのコストは必ず、ずっと高くなりました。2004年に、NVIDIA®は業界の先進ノートブックメーカーと共同でMSX1と呼ばれる一貫性のあるグラフィックスインタフェースを作りました。これによってメーカーはどのようなベンダーからのグラフィックスソリューションにも対応可能なノートブックコンピュータを作ることが可能になります。このインタフェースによって、複数の構成と1つのシステム設計からのアップグレードが可能になります。これは何年もの間、デスクトップコンピュータが可能としてきたことと同じです。
図1は1端に標準のMXMコネクタ列を備えた実際のMXM GPUを示しています。1ビットのスイッチを備えると、ノートブックメーカーは内蔵のチップセットベンダーのグラフィックスと、より強力なサードパーティ製グラフィックスにアップグレードするMXMスロットを搭載するマザーボードを設計することができます。
図1.下端に標準のMXMコネクタ端子が見えるMXM GPU
アドイングラフィックスモジュールを可能とするノートブック設計のアップグレードは、メモリを単にアドインするよりも、少し困難です。それはモジュールの冷却を考慮しなければならないからです。しかし、ノートブックメーカーは設計して、在庫を必要とする異なった種類のマザーボード数を減らすことができます。そして、ユーザーが所望する特定のグラフィックスは最後の組立て時に決定することができます。多くの場合、小売業者および卸売り業者が要求されたモジュールをユーザーがラップトップを受け取る直前にアドインすることができるため、遅延時間と、ユーザーの要求と違ったグラフィックス機能をユニットが備えていることで、その商売を失う恐れが少なくなります。
ユーザーまたはベンダーがデスクトップコンピュータにグラフィックスカードをアドインする場合、ユーザーは単にカードのVGAまたはDVIコネクタにモニタをプラグインします。ノートブックの場合は、ユニットはLCDスクリーンを備えて駆動します。確かにもともと備え付けのLCDスクリーンはほとんど間違いなくユーザーが使用する第一のスクリーンです。グラフィックスカードが外部グラフィックス用だとすると、ハイエンドグラフィックスカードを購入する意味はほとんどありません。
ノートブック用ディスプレイは従来よりグラフィックスカードからのデータの受信にリボンケーブルを使用します。MXMアプリケーションのデータは4または8ペアのLVDS信号の形態で通信され、この場合、モジュール入力は最大16レーンを備えるPCI Express® (PCIe®)インタフェースで、出力はVGA、TMDS® (DVI™/HDMI™用)、DisplayPort™、およびLVDSを含みます。
最低コストモデル用に内蔵のグラフィックスを使用し、よりハイエンドのモデル用にはサードパーティのグラフィックスにアップグレード可能となるような設計をノートブックメーカーが所望する場合は、信号の幾つかのセットを切り替える必要があります。このアプリケーションノートではLVDS信号の処理についてのみ述べています。ローコストのラップトップはシングルリンクのLVDSを使用しますが、ハイエンドのシステムはデュアルリンクのLVDSを使用します。データ速度はペア当たり最高800Mbpsが期待されます。LVDS信号はDC結合であるため、長時間のDCバランスの問題がありません。LVDS信号は±250mVP-P (min)の振幅でおよそ~1.25VのDC成分があります。受信感度は100mVP-Pであるため、送信と受信信号間では8dBの損失が許容されます。
LVDS信号をスイッチするためには、このためのスイッチによる総合損失が1dBを超えてはなりません。さらに、スイッチは低容量として、反射や不整合の原因となるリアクティブ成分が加わらないようにしなければなりません。PCIeパッシブスイッチのMAX4889はこれらのニーズを満たし、LVDSアプリケーションに最適です。+3.3Vで動作させると、この製品は容易にLVDS信号の最大レンジ(0.67V~1.8V)を処理することができ、入力容量は2pFを下回ります。LVDSのデータ速度が800Mbps以下の場合、挿入損失は0.5dBを下回ります。
MAX4889は2:1のアプリケーションで4ペアの信号を切り替えます。これは考えうる2つのソース(例えば内部グラフィックスまたはMXMグラフィックス)と1つの出力です。18ビットのグラフィックスの場合は、MAX4889は1つのみ必要で、24ビットのグラフィックスの場合は、2つのMAX4889スイッチを使用しなければなりません。この場合、MAX4889は内蔵グラフィックスか、またはMSXモジュールの2つのソース間での選択に使用されます。この場合は、先ず、MXMモジュールの存在がテストされて、存在すればMXMがグラフィックスのソースとして選択が許されます。
図2は18ビットシングルチャネルのグラフィックスのアプリケーションで4ペアのLVDS信号の切替えに使用されているMAX4889を示しています。デュアルチャネルの場合LVDSスイッチはODDおよびEVENビットのフルセットに使用されることになりますが、分かりやすくするために、図ではR、G、B (RGBのODDピクセルとH,V)とクロック信号2のみが示されています。この図は18ビットグラフィックスのアプリケーションです。デュアルチャネルの場合は図には示されていないEVENピクセルを処理するためのもう1つのスイッチが必要です。2つ目のスイッチ(示されていません)が下位ビットを処理するために使われます。
図2. 18ビットのアプリケーションでMAX4889が4つのLVDS信号を切り替えます。
結論
MXMによってノートブックメーカーが内蔵グラフィックスを低コストで使用するか、または性能を高めたグラフィックスとしてユーザーの要求を満たすためにアドインのMXM GPUの使用を可能とするための1つのマザーボードを組み立てることが可能になります。MSXモジュールと内部グラフィックスの両方がラップトップのLCDパネルを使用するために、ある形態のスイッチングを行わなければなりません。理想的なスイッチは電気的なスイッチであり、シシテムが単にMXMモジュールの存在を検出することができるか、またはユーザーは手動で内部か、またはMXMモジュールの選択を可能とします。いずれの場合も、スイッチングは信頼性および大きさ/電力を小さくする要件から半導体スイッチで行われます。MAX4889はそのようなLVDSの用途に対して理想的なスイッチです。3.3Vで動作させると、MAX4889はLVDS信号レベルを800Mbpsまで容易に取り扱い、どのような動作状態でも120µA以下の電流しか消費せず、挿入損失は0.5dBを下回り、2pFを下回る容量になります。
参考資料
1 MXM:Mobile PCI Express Module。これはモバイルPCI Expressグラフィックス用に合意されたインタフェースです。MXMの詳細はMXM Graphics Moduleのウェブサイトでご覧いただけます。
2 Open LDI:Open LVDSディスプレイインタフェース、1999年5月13日。Open LDI標準は次のような信号について記述しています。2つのred (赤)、2つのgreen (緑)、2つのblue (青)、および1つのピクセルクロック。