±40Vの過電圧保護性能を備えた冗長性トランシーバRS-232通信リンク

要約

パラレルRS-232トランシーバは安全性が重要なアプリケーションで特別な信頼性を提供することができます。しかしこのような冗長性トランシーバはデータバスに余分の負荷を与えます。このアプリケーションノートはラインプロテクタでトランシーバをバッファすることによりこの問題をどのように克服できるかについて示します。過電圧保護がこの過程において増します。

RS-232規格は主に、1つのトランスミッタと1つのレシーバ間におけるポイントトゥポイント通信を目的として規定されていますが、状況によっては複数個のトランシーバをリンクに接続することが必要な場合があります。例えば、このような場合に冗長性を備えた複数個のトランシーバを使用すれば、安全性が重要視されるアプリケーションにおいて信頼性が更に改善されます。

しかし、複数個のトランシーバはデータバスをロードします。例えば、2個の個別のMAX211トランシーバに内蔵されている各2個のトランスミッタをそれぞれ(同一リンクに)パラレル接続する場合に、データバスのロードによって未使用デバイス(シャットダウン又はパワーオフの状態)がアクティブ状態のデバイスに悪影響を及ぼします。図1に示す回路はこのような問題発生を回避すると同時に、トランシーバとラインプロテクタ間の過電圧保護性能(±40V)を改善します。

パラレル接続の各RS-232トランシーバ(IC1及びIC2)はそれぞれ、2端子のマルチチャネルラインプロテクタ(IC3及びIC4)によってバッファされます。このラインプロテクタの各入力-出力ペア間抵抗は通常約60Ωの値になりますが、パワーをオフにしたとき又はどちらかの端子電圧が電源電圧の+1.5V以内まで増加したときに、その抵抗値はハイインピーダンス状態になります。トランシーバに内蔵されているチャージポンプによってラインプロテクタに電源が供給されるので、電源を供給するトランシーバのパワーがオフになったりシャットダウン状態になると、該当するどちらかのラインプロテクタの電源が失われてしまいます。従って、非アクティブ状態のトランシーバのライン接続は自動的に断たれます。

トランシーバの±5Vトランスミッタ出力仕様に適合する上で十分な電源ヘッドルームをラインプロテクタが確実に備えることを保証するには、ダイオードとコンデンサで構成するチャージポンプを外付けし、トランシーバのV-出力をもっと大きな負電位レベルまでブーストします。トランシーバがシャットダウン又はターンオフ状態のときに、100kΩ抵抗によってこの負電源が放電されます。システムの各種ステートの要約を表1にまとめています。

表1. システムのステート
Txの状態 Tx (V+) Tx (V-) ラインプロテクタ(V-)
アクティブ ~2VCC ~−2VCC ~−3VCC
シャットダウン VCC グラウンド グラウンド
パワーオフ グラウンド グラウンド グラウンド

図1. ラインプロテクタIC3及びIC4は、2個のパラレル接続トランシーバ(IC1及びIC2)のどちらか一方が非アクティブ状態(シャットダウン又はターンオフ)の期間中にデータバスをロードする事態の発生の防止します。

図1. ラインプロテクタIC3及びIC4は、2個のパラレル接続トランシーバ(IC1及びIC2)のどちらか一方が非アクティブ状態(シャットダウン又はターンオフ)の期間中にデータバスをロードする事態の発生の防止します。