MAX9979ピンエレクトロニクスICのPMUモード

要約

このアプリケーションノートはMAX9979のパラメトリック測定ユニット(PMU)の最も一般的な動作モードの中の4つ(FVMI、FVMV、FIMI、およびFIMV)を各モードの等価回路図を参照しながら説明します。すべての機能と動作モードの完全な説明はMAX9979のデータシートを参照してください。

はじめに

MAX9979は、高集積、デュアルチャネルの自動試験装置(ATE)マーケット用ピンエレクトロニクス(PE)用ICです。この設計には、デュアルの4レベル高速ドライバ/コンパレータ/負荷(DCL)から構成され、ドライブ、高インピーダンス、および低リークモードに対応できるクランプ回路が含まれます。動作速度は毎秒1ギガビット(1Gbps)を超えます。この設計には必要なレベルを発生するために、独立した16ビットディジタル-アナログコンバータ(DAC)を全て集積化しています。各チャネルには完全機能型のパラメトリック測定ユニット(PMU)も含まれ、非常に正確な測定能力を備えます。

PMUモードの動作

MAX9979のPMUには多くの動作モードがあります。しかし、このアプリケーションノートでは、この中の4つについて(FVMI、FVMV、FIMI、およびFIMV)論じます

表1 には4つの主要モードにするためのPMUの設定方法を示します。FMODE、MMODE、およびアクティブローのHIZFORCEは内蔵のシリアルインタフェースによって制御されます。アクティブローのLLEAKPは外部端子です。

表1. PMUモードの選択
PMU Mode Driver Comparator Load FMODE MMODE Active-Low LLEAKP Active-Low HIZFORCE
FVMI Low-leak Low-leak Low-leak 0 0 1 1
FVMV 0 1 1 1
FIMI 1 0 1 1
FIMV 1 1 1 1

電圧印加電流測定(FVMI)

FVMIモードでは、内部で生成された電圧(VIN)が直接被試験デバイス(DUT)の出力端子に印加されます。VINは16ビット分解能で-2.5V~+7.5Vにシリアルインタフェースによって設定可能ですが、その正常動作範囲は-1.5V~+6.5Vです。この正常な範囲を超えるVINの設定によってMAX9979が損傷を受けることはありません。

DUTノードに印加される電圧はDUTのノードに入出力する電流を生成します。この電流はMEAS端子で監視および測定されて、次のように計算することができます。

Equation 1.

ここで、ILOADはDUTノードに入出力する電流、VMEASは印加電圧、そしてVIIOSは設定されたオフセット電圧です。シリアルインタフェースビットのRS0、RS1、およびRS2 (表2) に示します)によってレンジ抵抗(RSENSE)を選択します。

表2. PMUの電流レンジの制御
Digital Input Serial Interface Bits Range (RSENSE)
Active-Low LLEAKP Active-Low HIZFORCE RS2 RS1 RS0
X 0 0 0 E (500kΩ ±2µA)
X X 0 0 1 D (50kΩ ±20µA)
X X 0 1 0 C (5kΩ ±200µA)
X X 0 1 1 B (500Ω ±2mA)
X 0 1 X X B*
0 1 1 X X B*
1 1 1 X X A (20Ω ±50mA)
*レンジAの動作はPMUのハイインピーダンス(ハイZ)モードでは許可されません。PMUのデフォルトはレンジBの動作です

VIIOSは0~+5Vに設定可能ですが、正常な範囲+2V~+4Vに設定されています。この正常な範囲を超えて設定してもMAX9979が損傷を受けることはありません。

図1 および表1において、VINは印加入力電圧で、内部DACによって設定されます。DUTノードはU1、S1、S4、U3、S3、およびS2のクローズドフィードバックループによって設定されたVINが印加されます。外部のSENSE端子の制御によって、S4で負荷ポイントをじかに検出するオプションを設定可能です。S4が閉じられると、VINが負荷に印加されます。このオプションを使用することによって、基板配線によるオフセット電圧誤差が除去されます。

1. 電圧印加電流測定(FVMI)

1. 電圧印加電流測定(FVMI).

U2、U4、S5、およびU6はフィードバックループ内にはありませんが、負荷電流を監視するためのMEAS端子用の経路を形成します。MEAS端子に現れる電圧は式1を用いて計算されます。

表3 にはFVMIモードの設定の幾つかの例が掲載されています。

表3. FVMIのモード設定の例
VIN (V) VIIOS (V) Range DUT Voltage (V) VMEAS (V) Load (kΩ) Load Current (µA)
+1 +2.5 D (±20µA) +1 +6.5 50 +20
0 +2.5 D (±20µA) +1 +2.5 50 0
-1 +4 D (±20µA) -1 0 50 -20
*FSR = フルスケールレンジ

電圧印加電圧測定(FVMV)

FVMVモードはFVMIモードと同じように動作します。VINがDUTノード(またはS4が閉じられていると、外部負荷)に印加されます。その相違は測定経路です。スイッチS5が閉じられ、そしてMEAS端子が印加電圧を監視します。MEAS端子はVIOSと呼ばれる内部電圧レベルによってオフセットをかけることができます。VIOSは-0.75V~+3.75Vに設定可能ですが、その正常な範囲は0~+1.5Vに定められています。VIOSを+1.5Vに設定すると、MEAS端子は+1.5Vだけ、オフセットをかけることが可能で、外付けの単極性ADCを接続できます。このように-1.5V~+6.5VのDUTの範囲はMEAS端子では0~+8Vの範囲に対応します。

図2 は図1とはそのモードスイッチがMMODE = 1に設定されるという点で異なります。MEAS端子によってDUTノード、およびグランド検出電圧(DGS端子)とVIOSの電圧を監視します。フィードバックループはU1、S1、S4、U3、S3、およびS2から構成され、FVMIループと同じです。

図2. 電圧印加電圧測定(FVMV).

図2. 電圧印加電圧測定(FVMV)

今度は、測定経路は電圧を監視するためにS4、U3、S5、およびU5で構成されます。S5は「1」の位置にある、即ちMMODE = 1であることに注意してください。MEAS端子は内部で設定されたVIOSによってオフセットされ、単極性のアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)の使用を可能にします。

MEAS端子はまた、DGS端子によってどのようなグランド電位の差に対してもオフセットをかけることもできます。DGS端子で負荷グランドを検出できますので、それを使ってグランドオフセットに起因するどのような誤差をも除去することができます。同様に、SENSE端子は負荷をじかに検出するようにも設定可能です。

表4 にはFVMVモードの設定の幾つかの例が掲載されています。

表4. FVMVのモード設定の例
VIN (V) VIOS (V) Voltage at DGS (V) DUT Voltage (V) VMEAS (V)
-1.5 0 0 -1.5 -1.5
-1.5 +2 -0.5 -1.5 0
-1.5 +1.5 0 -1.5 0
-1.5 +1.5 0 +6.5 +8

表4の最後の2つの設定はVIOSを1.5Vとして設計されています。MEAS電圧範囲は-1.5V~+6.5Vの設定入力に対して単極性(0~8V)です。この表はどのようなADCもMEAS端子に接続可能なようにVIOSの使用方法が示されています。

図1と図2はユーザが単一のADCを共有して、複数のMAX9979のMEAS端子を順番に切替えて使う場合を示しています。各MEAS出力は内部のシリアルインタフェースビット、内部アクティブローのHiZMEASS、または外部からのアクティブローのHiZMEASP端子によってハイZ状態にすることができます。ユーザーは測定しようとしている個々のデバイスに対してハイZ機能をアサートしなければなりません。

電流印加電流測定(FIMI)

FIMIモードでは、VINは内部で選択されたRSENSE抵抗を介して印加されます。VINはこの抵抗を通して電流を流します。この電流は式2に示すように計算されます。設定された+1Vの電圧はその指定されたレンジでのフルスケールレンジ(FSR)を表します。(レンジの選択は表2を参照してください。)例えば、レンジD、RSENSEを50kΩ、VINを1V、そしてVIIOSを0Vとした場合、次の式を使用して印加電流(IFORCE)は20µAであることが分かります。

Equation 2.

したがって、レンジDのFSRは20µAと定められます。

VIIOSがVINに等しい場合、印加電流は0µAです。VIIOSは0V~+5Vに設定可能ですが、その正常な範囲は+2V~+4Vに定められています。FVMIと同じように、この範囲を超える設定によってMAX9979が損傷を受けることはありません。VIIOSはゼロの印加電流の電圧と考えることができます。標準的にはこれは+2.5Vとするのがよく、これは内部で生成されるリファレンスと同じです。VIIOSの主な機能はMEAS端子の電圧を単極性のADCなど多くのさまざまなADCが使えるように設定することです。

図3 に示すように、FIMIモードのフィードバックループはU1、S1、U2、U4、S3、およびS2で構成されます。

図3. 電流印加電流測定(FVMI)

図3. 電流印加電流測定(FVMI)

出力コンプライアンスが+6.5V、または-1.5Vを超えないように正しい負荷を選択する必要があります。表5 はFIMIの設定オプションを示しています。

表5. FIMIモードの幾つかの設定例
VIN (V) VIIOS (V) Range DUT Voltage (V) VMEAS (V) Load (kΩ) Load Current (µA)
+2.5 +2.5 D (±20µA) 0 +2.5 50 0
+6.5 +2.5 D (±20µA) +1.5 +6.5 50 +20
-1.5 +2.5 D (±20µA) -1 -1.5 50 -20
-1.5 +2 D (±20µA) -0.875 -1.5 50 -17.5

電流印加電圧測定(FIMV)

FIMVモードはFIMIモードの説明で説明したのと同じフィードバックループを備えています。このように電流を印加するための式は同様です。FIMVモードではMMODEは1に設定されます。図4 に見られるように、MEAS端子によってDUTの電圧が監視されます。それはS5が1に設定されているからです。

表5はFIMVの設定例として使用することができます。相違はVMEASカラムがDUTの電圧カラムと正確に同じあるということです。言い換えると、MEAS端子でDUT出力を監視できます。

図4. 電流印加電圧測定(FIMV)

図4. 電流印加電圧測定(FIMV)

まとめ

このアプリケーションノートはMAX9979の4つのPMUモードの動作を紹介するために簡単な等価回路を使用しました。FVMI、FVMV、FIMI、およびFIMVです。これらのモードがあるため、顧客設計において、PMUはMAX9979に大きいフレキシビリティを加えます。詳細はMAX9979とMAX9979EVKITのデータシートをご覧ください。