DN-337: 簡単な複数の出力範囲をもつ16ビットDACの設計

はじめに

出力範囲をソフトウェアで設定可能な高精度16ビット・アナログ出力は、産業用プロセス制御装置、分析装置、理科学機器、および自動テスト装置でしばしば必要になります。これまで、汎用出力モジュールの設計は手のかかる困難な課題で、この機能に関連したコストとPCBの実装面積は法外だとは言わなくとも大きな問題でした。多様な出力範囲を備えたプログラム可能な16ビットDACを作るのに以前必要とされた回路例を図1に示します。ただし、新しいLTC®1592複数出力範囲DACを使うと、このような複雑さはすべて不要になります。新しいLTC1592をベースにした実装がいかに小さくて簡単であるかを図2に示します。すべての業界標準範囲(0V~5V、0V~10V、±5V、±10V、±2.5V、および-2.5V~7.5V)がソフトウェア制御により正確に実現されます。

旧来の方法

図1に示されているのは、LTC1592以前の複数出力範囲DACの実装です。この回路を動作させることはできますが、コストのかかる部品と広いPCB実装面積が必要です。範囲の切り替え機能には、基本となるDACにアナログ・スイッチと高精度抵抗を追加する必要があります。これらのアナログ・スイッチのいくつかは、回路の他のポイントのスイッチの抵抗を補償するために必要です。示されている回路は相当複雑ですが、それでもこれらのアナログ・スイッチのいくつかは同じパッケージ内の相手とペアになっていないので、無駄に使用されています。アナログ・スイッチは高価です。また、これらはPCBの実装面積を必要とし、低いPSRRを補償してデジタル・ノイズを緩和するためにバイパスとデカップリングが必要です。さらに、仮想グランドでスイッチングしているのではないので、アナログ・スイッチは電圧によってオン抵抗が変化し、そのため直線性が低下します。高温では漏れ電流が問題になる可能性があります。

How NOT to Build a Universal 16-Bit Analog Output 図1.汎用16ビット・アナログ出力の良くない設計例

図1.汎用16ビット・アナログ出力の良くない設計例

整合した高精度抵抗対(つい)がいくつかの供給元から入手可能なので、図に示されています。ただし、高価なデバイスを使わないと精度が低下します。

新しく簡単な方法

対照的なのが図2で、この場合、これらの機能を実行するのに必要なすべての回路がLTC1592に備わっており、すべてがプロセッサによって制御されます。すべての範囲が正確で、そのままで低ドリフト、高速セトリング、および低グリッチ動作が実現できます。LTC1592にはすべてのスイッチと高精度抵抗が内蔵されています。デュアル・オペアンプ、バイパスおよび補償回路を含む実装全体が0.5インチ×0.5インチに収まります。このアナログ出力サブシステムはリアルタイムで設定変更が可能で、シリアル・インタフェースのため光絶縁が簡単になります。

Programmable Output Range 図2.出力範囲をプログラム可能な16ビットSoftSpanTM DAC

図2.出力範囲をプログラム可能な16ビットSoftSpanDAC

まとめ

ソフトウェアで設定可能な複数出力範囲の高精度16ビットDACの作成は、もはや複雑で高価な設計を必要としません。今や明解で単純な設計により、小型化、低コスト、格段にすぐれた精度を実現できます。LTC1592は組み込み型や固定範囲のアプリケーションにも使うことができ、この場合、たとえ範囲の変更が不要だとしても、シリアル・インタフェースを備えた4象限動作により、このデバイスはきわめて魅力的なものとなります。

著者

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Derek Redmayne

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