DN-328: 外付け部品をほとんど使わないモノリシック同期式レギュレータによる4A負荷のドライブ
はじめに
LTC®3414を使うと、2.5V~5Vの電源バスから低出力電圧(最小0.8V)を必要とする電子機器の負荷ポイントでの、小型で効率の良い電圧レギュレータを実現できます。オン抵抗がわずか67mΩの内部パワーMOSFETスイッチによりLTC3414は94%の高い効率で最大4Aの出力電流を供給できます。LTC3414は最大4MHzのスイッチング周波数で動作するのでスペースを節約でき、小型のインダクタやコンデンサを使うことができます。
LTC3414は固定周波数の電流モード・アーキテクチャを採用しており、最大4Aの出力電流を供給することができます。スイッチング周波数は1本の外付け抵抗を使って300kHz~4MHzに設定することができます。代わりに、外部クロックに同期させることもでき、この場合、各スイッチング・サイクルは外部クロック信号の立下りエッジで開始されます。熱管理を改善するため、LTC3414は熱伝導を助ける露出パッド付き20ピンTSSOPパッケージで供給されます。
LTC3414はバースト・モード動作、パルス・スキップ動作、または強制連続動作のどれかに設定することができます。バースト・モード動作は軽負荷でのゲート電荷損失を減らして軽負荷時の効率を最大化し、バッテリの寿命を延ばします。無負荷では、LTC3414はわずか64µAの電源電流しか消費しません。強制連続動作では負荷範囲全体にわたって固定周波数が維持されますので、スイッチング・ノイズをフィルタで除去してRF干渉を減らすのが簡単です。これはEMIに対して敏感なアプリケーションでは重要です。パルス・スキップ・モードでは、軽負荷時の効率と出力電圧リップルのあいだのバランスがうまくはかられています。
LTC3414はバースト・クランプ電流レベルを外部から制御できるので、事実上バースト周波数を変化させることができます。バースト・モードの動作周波数が低いと軽負荷時の効率が向上しますが、軽負荷時の効率と出力電圧リップルのあいだにはトレードオフが存在します。バースト・モードの周波数が減少すると、出力リップルがわずかに増加します。LTC3414では、SYNC/MODEピンのDC電圧を0V~1Vの範囲で変えてバースト・クランプを調整します。このピンの電圧レベルにより、バースト・モード動作時の各スイッチング・サイクルの最小ピーク・インダクタ電流が設定されます。パルス・スキップ・モードにするには、SYNC/MODEピンをゼロ・ボルトに接続します。パルス・スキップ・モードでは、バースト・クランプはゼロ電流に設定され、最小ピーク・インダクタ電流は制御ループの最小オン時間によって決まります。パルス・スキップ動作では、インダクタの電流リップルをできるだけ小さくすることにより、出力電圧リップルを最小に抑えます。
高効率の2.5V/4A降圧レギュレータ
バースト・モード動作に設定した2.5V降圧DC/DCコンバータを図1に示します。この回路は、2.7V~4.2Vの入力から、最大4Aまで安定化された2.5V出力を供給します。図2に示されているこの回路の効率は、3.3Vの入力電圧に対して94%にもなります。この回路のスイッチング周波数は1本の外付け抵抗(ROSC)で1MHzに設定されてます。このように高い周波数で動作するので、値の小さな(したがってサイズの小さな)インダクタを使うことができます。
図1.バースト・モード動作の2.5V/4Aレギュレータ
図2.図1の3.3Vから2.5Vへのバースト・モード動作の効率と負荷電流
この特定のアプリケーションでは、バースト・モード動作により、軽負荷時でも高い効率が維持されます。バースト・クランプ電流はR2とR3の電圧分割器によって設定されます。この分割器により、SYNC/MODEピンに0.49Vの基準電圧が発生します。これは、図2に示されているように、約1.2Aの最小ピーク・インダクタ電流に相当します。
すべてセラミック・コンデンサを使った高効率3.3V/4A降圧レギュレータ
すべてセラミック・コンデンサを使った3.3V降圧DC/DCコンバータを図3に示します。この回路は5Vの入力電圧から最大4Aで安定化された3.3Vの出力を供給します。図4に示されているこの回路の効率は93%にもなります。セラミック・コンデンサは安価でESRが低いのですが、非常に低いESRのためにループが不安的になる可能性があり、多くのスイッチング・レギュレータではセラミック・コンデンサを使うのは困難です。制御ループの位相マージンは、タンタル・コンデンサの高いESRによって通常生じるゼロの助けがないと、不適当なレベルにまで減少することがあります。ただし、LTC3414にはOPTI-LOOP®補償が備わっていますので、入力と出力にセラミック・コンデンサを使っても正常に動作することができます。LTC3414では、ITHピンに接続する補償部品を適切に選択すると、広い範囲の負荷と出力コンデンサでループを安定させることができます
図3.強制連続動作モードの3.3V/4Aレギュレータ
図4.5Vから3.3V強制連続動作の効率と負荷電流
まとめ
LTC3414はモノリシック同期整流式降圧DC/DCコンバータで、最大4Aの出力電流を必要とするアプリケーションに最適です。スイッチング周波数が高く、内蔵パワー・スイッチのRDS(ON)が低いので、高効率の小型電源に最適です。