4チャネルデシリアライザによるスキューマージンの測定
要約
LVDSデシリアライザのスキューマージンによってジッタ耐性が分かります。このアプリケーションノートはスキューマージンを制限する条件を述べ、また4チャネルデシリアライザによるスキューマージンの測定手順を示します。
はじめに
LVDSデシリアライザのスキューマージンによってジッタ耐性が分かります。アプリケーションノート3821:Skew Margin Measurement for 4-Channel (3 Data Channels Plus Clock Channel) LVDS Serialzers/DeserializersはシリアライザとLVDSの相互接続を利用するスキューマージンの測定方法を示します。本アプリケーションノートはデシリアライザのみを使用してスキューマージンを測定する方法を説明しています。概説した手順はどのようなデシリアライザでも実際に使用することができます。
レシーバのスキューマージン(RSKM)
RSKMはデシリアライザがLVDS入力データを正確にサンプルすることができる正しい時間ウィンドウです。データビット時間(単位インタバルまたはUI)内でデータをサンプルするために、タイミングストローブ信号がLVDS入力クロックから生成されます。理想的には、このストローブ信号は最大のRSKMがLVDSデータビットの半分に近づくことができるようにデータパルスの中位の位置にあるようにしなければなりません。しかし、多くの非理想的な内部または外部条件が使用可能なタイミングマージンを減らし、最終的にはサンプリングウィンドウが閉じてしまい、データエラーが生じます。
RSMKを制限するチップセット内部のパラメータの幾つかを次に示します。
- デシリアライザの内部ストローブの不確定性、これはデータのセットアップとホールドタイミング要件に関係します。
- トランスミッタのパルス位置の変動、これはシリアライザLVDSクロックに対して個々のシリアライザ出力データビットの位置が変化することです。
- ケーブルスキュー
- 符号間干渉(ISI)
- シリアライザからデシリアライザに渡される並列入力クロックのジッタ
RSKMの改善
ケーブルスキューに寄与する主な要素はケーブル長、ケーブルのタイプ、およびケーブル品質です。次の設計上の推奨事項はRSKMを改善するために実施可能です。
- 単位長当たりのスキューが小さい短く高品質のケーブルの使用(10~20ps/ft)。コネクタおよびPCBトレースのスキューは全体のスキュー経路に含まれます。品質の良いコネクタと優れたボードレイアウト(例:整合されたトレース長など)とするとスキューが増加することは殆どありません。
- 短いケーブル、DCバランスのとれたモード、および伝送線路のイコライザを使うと、ISIの影響が最小化されます。
- シリアライザにノイズのない入力クロック信号を印加すると、データ/クロックのジッタ性能が改善され、良好なスキューマージンが維持されます。また、適切な伝送線路の終端を行うと、反射が防がれ、信号品質とスキューマージンが維持されます。
推奨する装置
Agilent™ 8133Aパルス発生器
Tektronix® CSA8000または同様なディジタルサンプリングオシロスコープ
Tektronix P6248差動プローブ
Tektronix 1103 TEKPROBE BNC™電源
SMAケーブル
DC電源
試験手順
- シリアライザをDCバランスモードに構成します。図1はAC結合構成を示し、図2はクロックとデータの間のタイミング関係を示しています。
図1. DCバランスモードとしたMAX9242/44/46/54デシリアライザのAC結合構成。
図2. DCバランスモードとしたデシリアライザのシリアル入力のクロックとデータ間のタイミング関係。 - 等長ケーブルを用いてAgilent 8133Aパルス発生器のチャネル1差動出力を4チャネルデシリアライザ(MAX9236、MAX9244など)のRxIN0-およびRxIN0+に接続します。正しい設定とするために以下のステップに従います。
- クロック周波数を32MHzにします。
- パルスモードを選択します。
- デューティサイクルを11.1%(1/9)にします。
- COMPキー(信号のコンプリメントをとる)を使用します
- 次の信号レベルとします。High = 1.5V, Low = 1.0V (DCオフセット = VCM = 1.25V)
- Agilent 8133Aパルス発生器のチャネル2差動出力をデシリアライザのRxCLKIN+およびRxCLKIN-入力に接続します。同じ信号レベルを使用し、ステップ2a~2eに従います。
図3はステップ1~3で述べた手順に従うデータとクロック波形を示しています。
図3. ステップ1~3の試験構成に従って作り出されたデータとクロック信号 - 使用可能なサンプリングオシロを使ってクロックを測定するために差動プローブを使用します。その後、次の測定を行うために、デシリアライザの差動データ入力に同じプローブを接続します。
- 図4はデータとクロックが最初は揃っていないことを示しています。理想的には、クロックとデータは差動グランドで交差します。このようにならない場合は、データに遅延を加えて、クロックと揃えます。Agilent 8133Aパルス発生器のチャネル2の"delay"オプションを使用します。これは「遅延オフセット」と呼ばれます。
図4. クロックとデータ間の不整合/オフセット。 - デシリアライザのRxOUT0端子をモニタします。通常の動作状態ではこの端子はVCCレベルになります。
- マルチメータを使用してRxOUT0のレベルを監視しながらデータ遅延を増加してゆきます。RxOUT0信号が1から0に遷移したら直ぐに遅延量を記録します。これを"+ delay"と呼びます。
- 次に遅延を負の方に減らしてゆき、RxOUT0が1から0に遷移したら、再び遅延量を記録します。これを"- delay"と呼びます。
- "+ delay"から遅延オフセットを減算します。これは"RSKM-"と呼ばれます。遅延オフセットを"-delay"に加算します。これは"RSKM+"と呼ばれます。図5はデシリアライザの内部ストローブ信号に対するRSKM-およびRSKM+領域を示しています。
- 理想的にはRSKM+とRSKM-は同じになります。しかし実際には常に差があります。 RSKM+とRSKM-が近い値になるほど、デバイスのスキューマージンが良くなります。
図5. RSKM-、RSKM+、およびストローブ信号の関係。
- 図4はデータとクロックが最初は揃っていないことを示しています。理想的には、クロックとデータは差動グランドで交差します。このようにならない場合は、データに遅延を加えて、クロックと揃えます。Agilent 8133Aパルス発生器のチャネル2の"delay"オプションを使用します。これは「遅延オフセット」と呼ばれます。