DN-141: EMI制御を支援するLTC1436-PLL低ノイズ・スイッチング・レギュレータ
電磁妨害(EMI)は回路設計者にとって潜在的な問題です。スイッチング・レギュレータは多くの製品でEMIの発生源になる可能性があります。リニアテクノロジー社は拡散スペクトラム変調、フェーズロック同期およびアダプティブ・パワー™モードなどの不要な妨害を低減可能な新技術を開発してきました。
古くからの問題を解決する新型IC
LTC®1436-PLLは非常に高効率な電力変換を行うために、外部NチャネルMOSFETを制御する定周波数、電流モード、同期整流式降圧レギュレータです。また軽負荷電流時に良好な効率を達成する定周波数スイッチングを提供するアダプティブ・パワー・モードも備えています。図1aに、図2の回路でサイクル・スキッピング・モ-ド動作による3mAの負荷電流(全負荷の0.1%)供給時に、5V出力により発生したオーディオ周波数を示します。このモードは出力コンデンサへのエネルギー・バースト間に多数のサイクルがスキップされる原因になります。これらのエネルギー・バーストは出力電流が十分に低い場合に、オーディオ・バンドに混入します。図1bに、同じ条件でアダプティブ・パワー・モードによってオーディオ周波数ノイズが完全に除去されている様子を示します。
図1a. サイクル・スキッピング・モードでのオーディオ周波数の発生
図1b. アダプティブ・パワー・モード動作時のオーディオ周波数の振幅
図2. 2出力のLTC1436-PLL回路
伝統的に、図1bに示すオーディオ周波数応答を実現するために効率が犠牲になっています。負荷に関係なく、スイッチング周波数で連続インダクタ電流を強制するために、大型同期MOSFETが使用されています。付随するゲート・チャージ損失および比較的大きなインダクタ・リップル電流によって生じる損失のため、軽負荷時に非常に効率が低くなってしまいます。アダプティブ・パワー・モードでは、従来式の降圧モードで小型(SOT-23)MOSFET、Q3、およびD2だけを使用して、電力損失を大幅に低減する定周波数、不連続インダクタ電流動作を可能にしています。小型MOSFETのゲート・ソース間容量は、2つの大型MOSFETのいずれよりも大幅に小さくなっています。部品選択によっては、Q3とQ1/Q2の間でゲート・ソース間容量に50:1の違いがあるので、Q3はQ1/Q2のゲート・ドライブ電力(損失)のわずか2%しか必要としません。これによって軽負荷時の効率が大きく向上します。
新しいEMI制御を提供する新機能
オーディオ周波数の抑止に加えて、LTC1436-PLLには次の3つのRF EMI制御メカニズムが追加されています。
- LTC1436-PLLは、スイッチング・ノイズのスペクトラムを拡散させるスイッチング周波数変調が可能です。図3に示すとおり、周波数変調を通してピーク・エネルギーが減少し、広い周波数範囲にわたって拡散されます。公称190kHzのスイッチング周波数とその高調波を黒いトレースで示しています。色付きトレースはフェーズロック・ループ・ローパス・フィルタ(PLL LPF)ピンを100Hzのノコギリ波で変調した結果を示します。スイッチング周波数のエネルギーは変調時に20dB以上低減され、この例では第2および第3高調波がさらに減衰しています。図4は、図3と同じ条件で、PLL LPF変調をした100MHzまでのスペクトラムを示します。
- スイッチング周波数は発振器コンデンサの容量を適当な値に選択することによって、50kHz~400kHzのどこにでもプログラムすることができます。これによって、455kHzのような敏感な周波数から高調波を遠ざけます。
- スイッチング周波数は外部システム・クロックにフェーズロックすることができるため、スイッチング周波数の高調波と側帯波は、システムが発生したものと同様になります。このフェーズロックはf0の±30%の周波数範囲にわたって維持できます。
図3. 周波数拡散前と後
図4. 周波数拡散による高周波数応答
他の特長
LTC1436-PLLは、さらに低ノイズおよび安定化リニア出力生成のための外部PNPトランジスタを制御する補助レギュレータ、そして出力電圧が範囲外であることを通知するパワーオン・リセット・タイマ機能を備えています。LTC1437は、 LTC1436-PLLのすべての機能と、バッテリ電圧の低下を検知したり他の有用な機能を提供するのに使用できる内部コンパレータを備えています。ベーシックLTC1436はフェーズロック・ループ機能とLTC1437の追加コンパレータを入れ替えています。